スマイリング! 岩熊自転車 関口俊太

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 158
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048951

作品紹介・あらすじ

函館市内の中学校に通う関口俊太は、ロードバイクにあこがれていた。しかし、父は失踪、母は自分のことばかりで、お金も愛情にも恵まれない俊太は、一人、ママチャリでトレーニングする毎日だった…。そんな俊太を周りは憐れみ、あるいはからかう。だが、ある日、岩熊自転車という町の自転車屋の店長との出会いが、俊太を変えることに-!『超高速!参勤交代』の著者による助け合うことの大切さと、最後まで諦めないことの意味を教えてくれる成長物語。

感想・レビュー・書評

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  • 自転車競技の過酷さや危険さは近藤史恵さんのシリーズで読んではいたので、まさかあの競技を中学生がやるとは驚き。
    自分の身体で時速㌔以上出すなんて、本当に信じられない、しかも生身だからその危険さたるや!
    物語の中で俊太が転倒して怪我をするたび、自分も傷を負ったような痛みを感じながら読んだ。
    俊太がまだほんの子どもなのに、人生に希望をもてないでいる姿にも人の親として心が痛む。
    そういう痛みの中からつづく、レースの終盤、そして物語のラスト。心に折り重なっていたもやもやが一瞬の風でもって吹き飛ばされたような爽快さを味わった。
    子どもが夢を持って生きられるよう、大人も精一杯生きなきゃ。そんな気になる一冊。

  • 一番好ましく感じたのは読みやすい小説だなあということ。文章も難しくないし、話の展開も無理がなくて人の生活をのぞき見している生々しさもあってよかった。
    しかしやっぱり小説に既視感は少ないほうがいい。どこかで読んだような話だなと思うことが多く、読みながらチラホラ頭に昔観たあの映画あの漫画が思い浮かぶばかりだった。そして多感な中学生の社会を物語の中枢に置いている割には読後の清涼感もなんだか中途半端で感情を揺さぶられなかった。
    主人公が社交性の低い中学生で自分をうまく表現できなかったり感情をうまく伝えられないのは仕方ないけれど、それならその上手く伝えられなさをもう少し丁寧に描くべきではないのか。周りの大人が「あいつはかわいそうなやつなんだ」なんて簡単に一言で言ってしまうとなんだかそれで片付けられてしまったようで悲しかった。

  • 超高速参勤交代を読んで、この作者にきょうみをもち、読んでみました。時代背景もストーリーも違いますが、爽快さや、登場人物のキャラ立ち感がまさに同じで、一気に読めて、面白かったです。

  • 5冊目の土橋章宏の本。星五つ。

    自転車レースの話。主人公は中学生。母親もキャバ嬢でシングルマザーで、その上いわゆる毒親的な所もある。そんな中で育った少年が、岩熊自転車店のオヤジと出逢い、ツールド函館のジュニア部門に参加する話。

    生きていくのが申し訳ない気持ちだったり、自分だけが不幸を背負う負け犬根性であったりと、さんざんな少年が、立ち直り、周りのおとなの傷を気が付いたりと、自己啓発的な要素がとても感動する。

    土橋氏の本では一番面白かった。

    下記に特に自己啓発的な、励ましの台詞を抜き出す(岩熊自転車のおっちゃんが主人公に):

    134:いつの時代にも、めぐまれたやつってのはいる。でもな、男は配られたカードだけで勝負しなきゃならねえ。

    144:前にも言ったろ。夢と仲間がありゃいい。夢を追ってればきっとおまえと同じようなやつと出会う。世界の端っこにはわりと人数がかたまってるんだぜ。

    176:簡単に諦めるな俊太。絶望は愚か者の結論に過ぎん。

  • メディア掲載レビューほか
    今つらい人に、笑って泣いてほしい

     デビュー作『超高速! 参勤交代』が小説も映画もヒットした土橋章宏さん。新作『スマイリング!』はデビュー前に函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリを受賞した作品がもとになっている。

    「僕は大学時代にオートバイで北海道をよく走りまわっていたんです。景色がよかったんですよ。社会人になった頃にロードレースが流行りだして自分でもロードバイクに乗るようになり、これは題材にして書かなきゃ、と思ったのです」

     函館に暮らす貧しく孤独な中学生・俊太は自転車が大好きだが、別れた父が昔買ってくれたシティサイクル(ママチャリ)は故障寸前、高価なロードバイクを乗りまわすクラスメイトたちの中ではずれ気味だ。しかし商店街のちっぽけな個人商店「岩熊自転車」の主人と出会い、かつて「ツール・ド・フランス」にメカニックとして帯同したこともある岩熊と「ツール・ド・函館」ジュニア部門レースの制覇を目指すようになる。王道のスポ根エンターテイメントだが、俊太のママチャリを岩熊がロードレース用に改造していくシーンなどの機械描写、また「パンチャー(瞬発力で勝負するタイプの競技者)」と岩熊に分類された小柄な俊太が肉体を鍛え上げていくリアルな身体描写が読ませる。

    「大藪春彦さんのファンなのですが、大藪さんの描写というのは、銃に関することが延々3ページくらい書いてあったり(笑)。小説には、よく分からなくても書き込むくらいのマニアックなところがあった方がいいんじゃないかな。今回も自転車屋さんやジムトレーナーに取材して、もう、きっちり書こうと思ったんです」

     主人公が滑走するときに頭上に流れていく函館近辺の景色がのびやかだ。

    「地元の人から色々なコースを案内してもらって写真に撮り、それを見ながら書きました。志賀直哉の『城の崎にて』とか、描写の巧い文学者って物凄く目がいい。僕はそれほど目がよくないので、だったら現代の機械の力を借りて書けば目がいいのと一緒かな、と思って(笑)」

     走行中に俊太が発する「ににににににに……!」といううなり声が印象的だ。

    「構ってもらえず、ネグレクト気味に育った子供って独自の言葉を呟いたりするんです。母親にかえりみてもらえない彼もそうだろう、と。僕は児童問題や貧困、介護問題などに関心があって、今つらい状況にある人が楽しい気分になる小説を書いていきたいのです」

    評者:「週刊文春」編集部

    (週刊文春 2017.01.01掲載)
    内容紹介
    函館市内の中学校に通う関口俊太は、ロードバイクにあこがれていた。
    だが、父は失踪。母は水商売で、お金も愛情にも恵まれず、一人、ママチャリでトレーニングする毎日だった……。

    そんな俊太を回りは憐れみ、あるいはからかう。
    だが、ある日、岩熊自転車という自転車屋の店長との出会いが、俊太を変えることに! 」

  • 中学生男子ロードバイク物語。軽く読めて少し感動。
    2018.4.28

  • 家族に恵まれず孤独と貧しさに苦しむ少年関口俊太が、ロードレースと腕利きの自転車整備師に出会うことで生きる縁を見つける物語。児童小説のような語り口と早い展開なので、深くじっくりと味わう物語ではなかったのが残念です。得難い出会いや友情の機微が、どれも安直で都合が良いように感じました。でも苦しい生活を強いられている少年に、夢中になれる物やそれを後押ししてくれる親切があるのは良かったです。子どもたちが生まれの格差を感じなくて済むような教育が望まれます。

  • 弱虫ペダルでもハマったロードサイクルの物語。
    貧乏な男の子が、町の自転車屋のオヤジと二人三脚でツール・ド函館にチャレンジ。
    子供のせいではない親がどうだっていう理由に悩みを持ちつつも、新しい出会いが大切なものを見つけるキッカケを作り、持つものが持たざるものをうらやみ、それを乗り越えた先の友情。
    予測はついてしまったが感動せずにはいられなかった。

  • 大阪に向かう新幹線で読了。
    読みやすいし、単純明快で爽やかではあるけど…。それ故物足りない。
    小中学生が読めばちょうどよい。と思う。

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著者プロフィール

土橋章宏
1969年、大阪府豊中市生まれの脚本家、小説家。関西大学工学部卒業。『超高速! 参勤交代』で第三十七回城戸賞を受賞し、2013年に同作小説『超高速! 参勤交代』で作家デビュー。同名映画に原作・脚本で関わり、第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。作品も第57回ブルーリボン賞に輝く。2015年9月にはシリーズ二作目の『超高速! 参勤交代 老中の逆襲』を刊行。同作は2016年9月「超高速! 参勤交代リターンズ」として映画公開された。他の著書に『幕末マラソン侍』『引っ越し大名三千里』『駄犬道中こんぴら埋蔵金』『身代わり忠臣蔵』など。

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