盤上の向日葵

著者 :
  • 中央公論新社
3.89
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本棚登録 : 2634
レビュー : 409
  • Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049996

感想・レビュー・書評

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  • 苦しい。読了直後の第一声はこれに尽きました。

    まずは、できる限りネタバレにならないよう配慮しつつ簡単なあらすじを紹介します。
    ある山中で白骨死体が発見されますが、その懐には初代菊水月作の名駒(時価総額600万円相当)が沿えられていました。かつてプロ棋士を目指していた新米刑事・佐野とベテラン刑事の石破は、この白骨死体が誰なのか、誰が死体を埋めたのか、なぜ名駒が沿えられていたのかを捜査していくことになります。
    他方、将棋界では世間の注目を集める大一番の対局が行われていました。十年の一人の逸材と呼ばれた天才棋士・壬生芳樹と、将棋のプロになるための道である奨励会を経ずにプロになった異端の棋士・上条柱介の七番勝負の最終局、竜昇戦です。
    これら2つの出来事が並列的に描写され、加えて上条柱介(以下「柱介」とします)の過去とともに3つの時間軸をもって物語が進んでいくこととなります。

    本作のポイントは、豊かな表現力のもとに紡ぎ出される人間関係と心理の描写です。
    初代菊水月は、幾重の人物のもとへ渡り歩き、まるで将棋の分岐のように複雑な人間関係を作り出します。物語が進むにつれて明らかとなる柱介の過去に読者は感情移入せざるをえないでしょう。
    人間関係に重きが置かれている作品のため、読む人にとっては異なる場面で憤り、悲しみ、そして笑うことになると思います。
    ですが、最後まで読み終えた方は、冒頭の私の感情を理解してくれるのではないでしょうか。
    将棋についての事前知識は必要ありませんが、将棋の最低限のルール、そして将棋のプロになるということの厳しさを多少把握しているとより深い感慨に耽ることができることと思います。

    盤上に咲く向日葵が意味するものはなにか、将棋でも指しながら語り合うことでまた違った見方が出てくるかも知れませんね。

  • 柚月裕子『盤上の向日葵』中央公論新社。

    柚月裕子作品は外れが無いので、後でじっくり堪能しようと暫く寝かせていた単行本。

    将棋界を舞台にした珍しい警察小説。プロットが巧みさとストーリーの面白さ、登場人物の人物像、人間ドラマと謎に満ちたミステリー、どれを取っても一級品だ。

    埼玉県の山中の工事現場から発見された白骨死体は初代菊水月の作によるこの世に7組しか無い将棋駒を抱いていた。現場叩き上げの石破刑事とかつてプロ棋士を志していた若手の佐野刑事が事件を捜査するが……

    序章に描かれる平成6年の天童市でのプロ棋士の対局シーン、事件発覚はその数ヵ月前。ひたすら将棋駒の行方を追い掛ける捜査と同時進行する形で描かれる序章で対局するプロ棋士・上條桂介六段のの生い立ち……とても女性作家とは思えぬ程の度胸で、章を重ねる度に凄味を増していくストーリーは見事だ。そして、事件の真相と結末。そう来たか……

    本体価格1,800円
    ★★★★★

    • moon-miさん
      柚月さんの作品にはまってます。
      次に読んでみようと思います!
      柚月さんの作品にはまってます。
      次に読んでみようと思います!
      2020/03/04
  • 畜生!!!!!!!くっっっっっっそ面白かった!!!!!!!!
     これほどページをめくるのがもどかしく、そして残りページ数が少なくなっていくスピードが速かったのはここ数年なかった。まさに文学エンターテイメントの神髄!!!!
    山中から身元不明の死体が発見され、その死体は数百万円はする将棋の駒が一緒に埋葬されていた。
    この事件を埼玉県警捜査一課のベテラン刑事と元奨励会出身の駆け出し刑事のコンビが追う。刑事二人組が事件の真相を追っていくという王道のミステリー。
    ただのミステリーではなく、文学としてもじっくり読ませる。奨励会を経ずして異色のプロ棋士となった鬼才の棋士の人生と随一の腕を持つ真剣師(金を賭けて将棋を指す棋士)との人生が複雑に絡み合っていく。
    将棋の知識が無くとも十二分に楽しめるが、将棋を知っている人が読めばさらにおもしろさは倍増する(自分も将棋は指さないが『3月のライオン』を全巻揃えているくらいの将棋の知識はある←)。
    ストーリーテリングの妙とプロットの巧みさ、そしてこの二人の刑事コンビの良さ。柚月裕子の小説は初めて読んだが、大好物となりました。
    ぜひ、この刑事のコンビはシリーズ化してほしいが、将棋の世界を舞台にした話だからこの二人のコンビが生きるんだよな~。でもシリーズ化できるほど将棋界で事件があったら困るよね(笑)。

  • 柚月裕子さんの本を初めて読んだのは『最後の証人』で2017年1月のこと。
    『盤上の向日葵』で8冊目になる。

    ”盤上”というタイトル通り、将棋の世界を舞台にしたミステリー。
    天木山山中で発見された白骨死体の手には将棋の駒。
    駒は初代菊水月作の名駒、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒。
    犯人を追う佐野と石破。
    佐野はかつて奨励会に属し、プロ棋士を目指していた。
    名駒からたどり着いた容疑者とは…

    この作品は2015年8月から2017年4月まで「読売プレミアム」に連載されていた。
    ということは、藤井颯太くんの活躍よりも前のこと。
    今ほど、将棋が注目されていなかったのではないだろうか。
    そのことを知って、改めて柚月さんって凄さを感じる。

    本の中に将棋を指すシーンが度々ある。
    将棋を知っていれば、さらに楽しめたと思う。
    生憎私は将棋のことを全く知らない。
    映画「聖の青春」と「3月のライオン」を見たくらいのこと。
    それでも勝負の緊迫感は十分に感じることができる。

    タイトルにもある”向日葵”。
    いくつもの意味があるのだが、その一つがゴッホの”向日葵”だ。
    先日、原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読み、ゴッホの生涯に胸を震わせたばかり。
    『盤上の向日葵』にもゴッホが登場し、その偶然に胸がときめいた。

    560ページあまりの束の本だが、ページを繰る手が止まらなかった。

  • 将棋のタイトル戦に訪れた刑事二人。一つの白骨死体とそこに置かれた将棋の駒を巡り、捜査を進めてきた中で判明していったこととは。
    事件を追う二人の刑事と棋士の過去が章を入れ替えながら、綴られていく。真相に関わる人だけでなく、捜査に関わる人の細かい描写により、奥行きがある反面、サラッと流してもいいような感じのところもある。

    後半、将棋の棋譜の描写がある。駒の動きは、なんとなくしかわからないものの、周りの人たちの心情描写で、その手の意味することがわかるようにはなっている。きちんとわかれば、さらに面白みが増すのかな?という気がした。
    コンビを組んだ二人の内、若い佐野の方が、上司の石破に対して、持つ感情の変化と、石破が認めていくような様子が、よかった。

    トリックや謎というよりは、何故にそこに至ったかを、人生の流れを元に描写していくという人を描いていく部分が引き込まれて読むことができた。

    ただ、個人的には最後のところは、あまり好きな終わり方ではなかったです。それまでの積み上げた話の終わり方としては、理解できるんですけど。

  • 社会的に成功を収めた者が、自らの忌まわしい過去を知るものを排除する―松本清張の『砂の器』ーそのパターンかと思って、読み進めたら、ちょっと違いましたネ。
    二人の刑事(新米刑事と、一癖あるが捜査能力のある老練刑事ーこの組み合わせも絶妙)の捜査行動と、主人公ともいうべき一人の男の、少年時代から現在までの歴史が、章ごとに交互に綴られる。
    被疑者は予想つくが、被害者は果たして誰なのだろうか。
    倒錯的手法で読者を、グイグイと最後まで引き付ける著者の筆力に、改めて感服した一冊でした。

  • 埼玉県の山中で、身元不明の白骨死体が将棋の駒とともに発見される。それは名匠作の伝説の将棋駒であった。かつて棋士を目指していた佐野巡査は、県警捜査一課のベテラン刑事・石破と組んで駒の持ち主を捜す。そして容疑者を特定した佐野たちは、天才若手棋士による対決が注目される、竜昇戦会場へと向かうが・・
    刑事の石破、上条の父親、天才真剣師の東明と、タイプは違えど強烈なキャラクターの中年男が見事に描かれている。刑事側からの犯人捜しのミステリーというより、上条側からのヒューマンドラマとして読んだ。ラストは意外というか切なさも。

  • 将棋青年の物語。駒の行方も追いながらも、息もつかさず最後まで読み進めました。力が入っちゃいました。将棋の魔力に取り憑かれてしまった将棋の世界の人々でした。いつ犯人にたどり着くか、そして死体は誰か。楽しめました。真剣師の気迫はビシビシと伝わりましたが、向日葵のところと犯人の心の内はあと一歩のところかなと。そこのところ、個人的にはもう少しドロドロしたものが欲しかった。いやでもまあ充分満足の一冊。
    将棋の知識がなくても楽しめるけれど、知識がある人がより一層なのではないかな。

  • 盤上の ...で始まるタイトル。
    結構ありますね。
    盤上の敵、盤上のアルファ、盤上の夜.....
    本作は将棋。
    冒頭、プロ将棋の人気カードの描写、昨今の将棋ブームに乗った (?)作品ですね。

    山中の白骨死体の発見から埼玉県警の佐野がクセのあるベテラン石破と組んで捜査にあたる。
    目的は遺留品の超高級将棋駒の出所調べ。
    佐野は、じつはプロ棋士を目指して奨励会にいた過去をもつ刑事。
    個性の強いベテランと有望新人の組み合わせは、孤狼の血と似ていて、とくに佐野は可能性大なキャラ、魅力的です。

    捜査対象の将棋うちも、異色のプロ上条、博打将棋専門の東明と 一癖も二癖もあるキャラが満載。
    上条に将棋をおしえた諏訪の唐沢も、引きでみたらだいぶ個性の強い人だし。

    ただ、そこに将棋戦の描写がぶっこまれているのですな...それも多数。 正直、そのあたりになると全然わかりません。
    柚月さん、将棋うちなのかしらん?
    しかし、キーアイテムが 駒 であることを考えるとどうかなぁ....... なんとなくもったいないのです、そのあたりのてんこ盛り感からくる、そこはかとないズレが。

    上条はあららららな展開でしたが、佐野は良いよ 佐野は。
    柚月さんが 宮内さん級に盤上に詳しいなら、佐野はシリーズ化でしょう。

  • 白骨死体と共に見つかった将棋の駒。
    初代菊水月作錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒は400万円以上の価値のある名駒である。なぜそれほどの価値のある駒が、遺体と共に見つかったのか。
    最後まで読むと、そういうことだったのかと感嘆の声がもれた。

    物語は中盤からぐっと入り込みやすくなる。
    というのも並行して進む事件の解決と、上条圭介の半生が徐々に結びついてくるからだ。

    初めの頃、物語の主役は刑事2人だと思っていたのだが、途中で主人公はすっかり入れ替わってしまった。
    壮絶な幼少期を過ごし、恵まれなかった上条が唯一好きだった将棋。
    上条の人生を知っているからこそ、事件の犯人となってしまった上条に同情を隠せない。

    最後的にしんみりとした余韻を残して物語は終結した。
    幸せになれなかった主人公に胸が痛むが、ドラマを一本見終えたような素晴らしいストーリーだった。

    • しずくさん
      NHKドラマで観ました。俳優陣が良く面白く拝見、原作では若手刑事が男性だったと教えてもらい驚きました。女性の刑事でも充分愉しめました。
      NHKドラマで観ました。俳優陣が良く面白く拝見、原作では若手刑事が男性だったと教えてもらい驚きました。女性の刑事でも充分愉しめました。
      2020/07/31
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著者プロフィール

柚月裕子

一九六八年、岩手県生まれ。二〇〇八年、『臨床真理』で第七回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。一三年に『検事の本懐』(宝島社)で第一五回大藪春彦賞を、一六年に『孤狼の血』(KADOKAWA)で第六九回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、『慈雨』(集英社)で〈本の雑誌が選ぶ二〇一六年度ベスト一〇〉第一位、一八年に本作『盤上の向日葵』で二〇一八年本屋大賞第二位を獲得。その他の著作に『最後の証人』『検事の死命』(以上、宝島社)『パレートの誤算』(祥伝社)『ウツボカズラの甘い息』(幻冬舎)『あしたの君へ』(文藝春秋)など。

「2020年 『盤上の向日葵(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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