R帝国

著者 : 中村文則
  • 中央公論新社 (2017年8月18日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120050008

R帝国の感想・レビュー・書評

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  • 夕刊連載ということもあるのか、著者の作品にしては珍しくド直球の作品。構図が単純な分、本当に考えさせられる内容だった。特に342頁からの加賀の語りは示唆に富んでいる。また作品中に「小説」として出てくる現実世界の歴史解釈にも目を見張るものがあった。深いが読みやすくあっという間に読了。「掏摸」とは全く違う意味で著者の作品が好きになった。北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、水爆実験をも実行している今こそ、是非読みたい一冊だと思います。

  • 建前として民主主義で運営されているR帝国。国は実質「党」が支配し、マスコミも支配下にある。野党すら「党」に選定されている。しかし国民は結構豊かな生活を享受している。そんななか突如Y宗国という宗教原理主義国の侵略を受け、戦争状態に陥る。侵略されたコーマ市は島で、沖縄のように軍事基地建設を拒否していた行政区であった。この唐突に始まった戦争は、何の目的で起こったのか、その理由が徐々に明らかになっていく。
    そして、主人公達の極小さなグループは、世論を操り、戦争を主導している権力に対し、真実を明らかにすることで戦争終結を試み、成功を収めたかに思えた。
    しかし、「人々が欲しいのは、真実ではなく、半径5メートルの幸福なのだ」となる。
    パラレルワールドであり、Rは日本、YはISIS、Cは中国みたいな世界観なので、イメージはし易い。
    ただそれ故に、R帝国の悪どさも、現日本の陰湿さと似通っていて、新味が感じられないのは残念。
    戦争・格差・人種差別・・・これらに対して、現代日本の(世界的なのかも知れないが)少し延長上にある考え、人間の本質をいやらしく書いた、なかなか面白い本では有る。

  • AIの発達した近未来の世界で、国家の策略による戦争に翻弄される人々を描いた長編小説。

    わかりやすくテンポの早いストーリー展開で読ませるが、この作品の本質は小説の名を借りて作者が訴えているメッセージにあるだろう。
    登場する国々は、名称こそ架空ではあるものの、背景からは日本やアメリカをはじめ、現実の世界をなぞっていることは明白だ。
    過去の戦争を「小説」という形で分析し、痛烈に批判する。さらには、情報操作を利用した政府の陰謀、政府の犬となったマスコミ、何より愚かなチンパンジーとして支配されていることに気づかずにネットで騒ぐ一般人など、現在の私たちの延長上にあるかもしれない未来に警鐘を鳴らす。

    日本だけでなく、世界的な規模での異様な国粋主義、右傾化の加速する現代において、いったい私たちには何ができるのだろう。個々の無力さを痛感する。
    同時に、皮肉、風刺を通り越して種々の愚かさを真っ向から見せつけられ、一人ひとりが未来のために危険に気づくことから始まる第一歩の重要性を考えさせられる、力作だった。

  • 図書館で借りた本。冒頭の朝目が覚めると戦争が始まっていた。で始まる近未来の話。情報操作をしAIが最前線で活躍する中、人々はチンパンジー並みの知性しか持たなくなり、ささやかな承認欲求を満たす為にネット上で幸せ自慢大会。そんな世の中にも疑問を持ち行動する人間も出てくるのだが国は…という内容。後味悪い読感。

  • 中村文則だなー!!
    以下ネタバレ含む。




    R帝国の一部が、Y宗国によって侵攻された。
    そこで矢崎はアルファという敵国の女兵士と出会うのだが、彼女を通して、自国への反抗心を育みはじめる。
    自国の国民を守るのではなく、国という透明な存在を維持するために犠牲にし、見捨てることの出来るシステム。
    概念を生み出し、概念に喰われる私たちがいる。

    筆者が巻末で希望の少ない作品というようなことを述べていた。
    確かに、この作品の中で「正常」なまま生き残ることの出来る人物は少ない。
    むしろ強大な暴力の嘲笑が響き渡りながら、幕を下ろす。まあ、そんな感じ。

    半径5メートルの幸福のために、人間は真実を遠ざけようとする。
    起死回生の勝利のために、人間は人間を盾にして時間を稼ぐことが出来る。
    「見方」によっては、それは美談となり、それは凶悪犯罪にもなる。

    そして、それを可能とするのが人間です、と。

    ただ、チンパンジーと見做されている人間の中には、AIですら真似の出来ない揺らぎがあるはずだ。
    自分を絶望で染めても仕方がない。
    サキが立ちはだかる未来だけを信じたい。

  • 読み始めて途中で何とも言えない不安な気持ちがつのってしばらく中断してしまった。
    なんだろう、この嫌な感じは。
    近未来の島国R帝国。そこで起こる戦争や、続いている社会的問題、そのどれもがすぐ目の前にあるようで怖い。薄キモチワルイ。こんな未来が来るのか。
    もうすぐ選挙。

  • いまだからこそ、色々考えさせられる風刺に満ちた小説。風刺という表現とはちょっと違うかもしれないが。文章は硬めで、小説としてはあまり読みどころを感じないが、最後の部分の独白は、力強く迫って来るものがある。

  • いろいろと気持ち悪い。

    たくさん詰め込まれていました。

  • テレビも新聞もネットも、100%の真実は知らない。どれもひとつの意見を起点に流れる、メディアによって濾過された情報だ。

    今や世界との距離は0㎝。情報に飲み込まれた21世紀を生きる私たちは、情報を「選び取る」ことが必要になった。大震災以降、すべてが変わったように思う。意図的に切り取った映像による印象操作だとか、誤ったデータがテレビで流れていただとか。そういうニュースを、毎日のようにネットで目にするようになった。

    たぶん、疑うことが好きな人はいない。でも世界を疑わなければ、世界を新鮮な目では見られない。ひとつの方向だけしか見ていなかったら、その裏に隠れている真実も埋まってしまうからだ。いい意味で、ちょっと疑い深くなれる。それがこの本がくれるものだと思う。

  • 分かり易すぎる登場人物たち。

    この作品の特徴である不自然な分かり易さは、政治云々の長々とした語りよりも、不意に巻き起こる色恋シーンで如実に現れる。「……お前は私の、……彼氏だな」などという今時少女漫画にも登場しないようなセリフや「付き合ってください」「私も付き合いたい」といった中学生の告白シーンのような謎めいたやり取り。奇妙である。現実というのはもっと複雑だし、登場人物たちみたいにこんな単純じゃないと、私たちはそう思うだろう。

    一方この本の中には、現実が「小説」という形で再現されている。小説として読むと、なんて馬鹿馬鹿しいストーリーなんだろうと思うことばかりだ。R帝国の人々がその小説に向ける視線も、不可解な異世界を覗き見るときのそれである。私たちは小説の中の人々を眺めて単純だなと思う。一方で、小説の中の人々も小説の中の私たちを見て単純だなと思っている。この構造が、仕掛けだ。

    そういえば、加賀はこう言っていた。「文化全体のレベルを、一見わからないように少しずつ下げていくこと。くだらないものに人々が熱狂するくらい、文化的教養を下げていくこと。」

    文化的教養の下がった世界での出来事は、単純だしどこか不自然に見える。でも私たちのこの現実を、私たちがこの小説に投げかけた視点と同じところから見てみたら。

    現代への諦観を超えて、それでもこの小説が存在するということそのものが紛れもない希望なのかもしれない。

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