R帝国

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 1081
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120050008

感想・レビュー・書評

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  • 夕刊連載ということもあるのか、著者の作品にしては珍しくド直球の作品。構図が単純な分、本当に考えさせられる内容だった。特に342頁からの加賀の語りは示唆に富んでいる。また作品中に「小説」として出てくる現実世界の歴史解釈にも目を見張るものがあった。深いが読みやすくあっという間に読了。「掏摸」とは全く違う意味で著者の作品が好きになった。北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、水爆実験をも実行している今こそ、是非読みたい一冊だと思います。

  • AIの発達した近未来の世界で、国家の策略による戦争に翻弄される人々を描いた長編小説。

    わかりやすくテンポの早いストーリー展開で読ませるが、この作品の本質は小説の名を借りて作者が訴えているメッセージにあるだろう。
    登場する国々は、名称こそ架空ではあるものの、背景からは日本やアメリカをはじめ、現実の世界をなぞっていることは明白だ。
    過去の戦争を「小説」という形で分析し、痛烈に批判する。さらには、情報操作を利用した政府の陰謀、政府の犬となったマスコミ、何より愚かなチンパンジーとして支配されていることに気づかずにネットで騒ぐ一般人など、現在の私たちの延長上にあるかもしれない未来に警鐘を鳴らす。

    日本だけでなく、世界的な規模での異様な国粋主義、右傾化の加速する現代において、いったい私たちには何ができるのだろう。個々の無力さを痛感する。
    同時に、皮肉、風刺を通り越して種々の愚かさを真っ向から見せつけられ、一人ひとりが未来のために危険に気づくことから始まる第一歩の重要性を考えさせられる、力作だった。

  •  近未来の架空の世界を舞台に描いた、いわゆるディストピア小説。
     とある島国のR帝国が開戦した朝から物語は始まり、情報統制や、AI、テロ、移民問題、ヘイトスピーチ等々、昨今日本、世界で問題となっている様々な要素を誇張して読者の危機感を煽ろうという内容だ。
     ところどころ、そうした現実への問題提起など、面白いことも言ってはいる。
     移民の子だった登場人物の一人に、こう語らせる。

    「受け入れるというなら、なぜ迎えに来てくれないのだろう?私達に自力で、危険な海を越えさせようとするのだろう?」

     なるほど、寛容な態度を見せる国家も、かなり建前なところもあるということだと気づかされる。

    「わざわざ他人にアピールしなければ、自分を幸福と思えない人達。自分も含め、人の目ばかり気にしてしまう人達。」

     SNSに幸せな自分の姿を投稿する「リア充」に対する皮肉だろう。
     そんな多くの現実を織り込みながら、架空の世界で物語は進行していく。

     架空の世界の架空の島国R帝国では、絶対権力を有する「党」が国民を支配し、国家に対する批判的な意見は監視カメラや集音装置で拾い上げられ、反逆者はマスコミや世論を通じて社会的に抹殺、あるいは本当に”消される”世界。情報統制はメディアを牛耳るほか、スマホの発展形であろう、高度な人工知能を搭載した「HP(エイチピー)」と呼ばれる端末を人々に持たせ、実はその管理も「党」が握っているという建付けだ。
     その党も少数の人間が支配、人々の記憶を消す薬を開発した製薬会社の大ボスが黒幕だったり、世に起こる戦争、テロも実は諸外国の陰謀が張り巡らされて起きているという「陰謀説」に立脚した世界観の中で描かれている。
     その中で、国家の嘘、欺瞞に疑問を抱いた一般人矢崎、R国に攻め込んだ側の女戦士アルファ、野党幹部秘書の栗原、地下組織のサキなどが、真実を求め『抵抗』を試みるお話。

     マンガだな。マンガが悪いと言ってるわけではないが、世界の歴史は全て裏で操っている者がいるという陰謀史観や、現状の事象の極端なデフォルメに終始した世界観が、なんとも幼稚で目新しさがなかった。
     今の世の中の事実を、物語として換骨奪胎を試みた作品としては『カエルの楽園』(百田尚樹著)などもあったが、あれほど稚拙な置き換えではなく、多少は練られてはいたが陳腐。国家の名称はアルファベットで表される。一番の同盟国はA国、C国は餃子が主食だそうだ。笑止。R帝国のRはなにを暗喩したものかとあれこれ想像力を駆使しながら読み進んだところ、
    「左派は個々の幸福を、右派は全体の幸福を見る。その前提に立ち一般的に言えば、左派はその世界を拒否し、右派は肯定することになる」
     という文章が出てくる。そして国家に反対する地下組織がL。なんのことはないRight(右翼)とLeft(左翼)か。ヒネリがないねぇ。
    「ポケモンGO」を模した、「移民GO」(地域に住む移民を発見していくゲーム)が登場した場面など鼻白むというか、描くにしても悪趣味すぎるだろう。VRをちょっと発展させて実在の人物でポケモンGOをやったら、なんて宴席の話題でのバカ話。その延長程度の発想だ。

     そんな陳腐な世界観の説明に大半を要した第1部。第2部で多少展開があるのかと期待するが、謎解き部分が、端末HPに入っていたデータのハッキングで容易に判明(栗原が仕える野党議員片岡の正体)、黒幕加賀の独白で語られるとか、やっつけ仕事もいいところ。陳腐だけどせっかく築きあげた世界なんだから、その中で予想もつかない展開で読者を魅了して欲しかった。ほぼほぼ出オチ的な作品。

     世界の在り方、歴史の真実(とやら)を、若き反逆者たちに滔々と語って聞かせる大人たち。洗脳しようとするその口調は、読んでいるうちに、そのまま著者のもののように思えてきて薄ら寒い感じさえする。
     著者は、単行本であっても「あとがき」を記すことを常としているそうだ。構想、筋立て、訴えたかったことを簡単に記すらしい。今回の作品にも、上記のような陳腐な表現になってしまった言い訳のような短文が付されてた。 不要。

     そして近著の「あとがき」の最後の決め台詞らしい、「共に生きましょう」。
     この物語の世界を牛耳る黒幕が囁いているようで、これまた非常に気持ちの悪さを覚えてしまった。

  • 図書館で借りた本。冒頭の朝目が覚めると戦争が始まっていた。で始まる近未来の話。情報操作をしAIが最前線で活躍する中、人々はチンパンジー並みの知性しか持たなくなり、ささやかな承認欲求を満たす為にネット上で幸せ自慢大会。そんな世の中にも疑問を持ち行動する人間も出てくるのだが国は…という内容。後味悪い読感。

  • 読み始めて途中で何とも言えない不安な気持ちがつのってしばらく中断してしまった。
    なんだろう、この嫌な感じは。
    近未来の島国R帝国。そこで起こる戦争や、続いている社会的問題、そのどれもがすぐ目の前にあるようで怖い。薄キモチワルイ。こんな未来が来るのか。
    もうすぐ選挙。

  • 建前として民主主義で運営されているR帝国。国は実質「党」が支配し、マスコミも支配下にある。野党すら「党」に選定されている。しかし国民は結構豊かな生活を享受している。そんななか突如Y宗国という宗教原理主義国の侵略を受け、戦争状態に陥る。侵略されたコーマ市は島で、沖縄のように軍事基地建設を拒否していた行政区であった。この唐突に始まった戦争は、何の目的で起こったのか、その理由が徐々に明らかになっていく。
    そして、主人公達の極小さなグループは、世論を操り、戦争を主導している権力に対し、真実を明らかにすることで戦争終結を試み、成功を収めたかに思えた。
    しかし、「人々が欲しいのは、真実ではなく、半径5メートルの幸福なのだ」となる。
    パラレルワールドであり、Rは日本、YはISIS、Cは中国みたいな世界観なので、イメージはし易い。
    ただそれ故に、R帝国の悪どさも、現日本の陰湿さと似通っていて、新味が感じられないのは残念。
    戦争・格差・人種差別・・・これらに対して、現代日本の(世界的なのかも知れないが)少し延長上にある考え、人間の本質をいやらしく書いた、なかなか面白い本では有る。

  • 希望がことごとく砕かれていく。
    何を信じれば良いか、恐怖すら感じる。
    考えた事も無かった。
    未来はAIはどうなるのだろう。
    でもきっと我々の想像を超えるのだろう。

  • 今年一番重かった本。政治、国家、国民、戦争、宗教、神。そういう重いテーマをがっつり正面から書いている。今の日本そして世界で既にこの物語は始まっている。中村氏、体力と頭を酷使する本得意だね。でもまあこういう本は読んだ方がバカにならなくて良い。最終章の加賀の語り、読み終わるとぐったりする。

  • 発想はいい。近未来の社会を想像し、1つの世界を構築しようとする努力も評価できる。ただ、文章が稚拙だ。そして「教団X」も、「私の消滅」にも言えることだが、女の描き方にリアリティーがない。

  • いまだからこそ、色々考えさせられる風刺に満ちた小説。風刺という表現とはちょっと違うかもしれないが。文章は硬めで、小説としてはあまり読みどころを感じないが、最後の部分の独白は、力強く迫って来るものがある。

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著者プロフィール

中村 文則(なかむら ふみのり)
1977年愛知県生まれ。福島大学行政社会学部応用社会学科卒業。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。『遮光』で野間文芸新人賞、『土の中の子供』で芥川賞、『掏摸』で大江健三郎賞、『私の消滅』でドゥマゴ文学賞を受賞。2014年にはノワール小説への貢献から、デイビッド・グーディス賞を受賞している。
その他の代表作に、映画化された『去年の冬、きみと別れ』『悪と仮面のルール』などがある。

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