R帝国

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120050008

感想・レビュー・書評

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  • 文明の進んだ民主主義の国、R帝国。
    私たちの現在の日本より少し先を行く感覚。
    国民はHPと言われる人工知能の相棒を1人一台持ち、そのHPにも人格があり、持ち主に似た性格になる。
    快楽や苦痛もプログラムで与えることができる。
    意思がある。
    国民は皆自分の国に誇りを持ち、与党であるR帝国政府は国家党であり、支持が高い。
    ある日、コーマ市にY宗国が攻めてくる。
    戦争は政府の陰謀で、資源と金儲けのため起こされ、世論も政府に操られ、国民たちは操られていることに気づかない。
    戦争、政治、宗教の現実。
    読んでいて、あの国やあの国の事かな?と思える描写もあります。
    この結末は、民主主義国の未来なのかな。

  • 中村文則の持ち味が全開で最高でした。
    そのまま鵜呑みにするつもりはさらさらないのですが(それこそ作中のチンパンジーかと、、)、戦争が起きるかもしれない今、まぁとにかく不安でいっぱいになれます。
    次回作も楽しみな作家のひとりです。

  • 夕刊連載ということもあるのか、著者の作品にしては珍しくド直球の作品。構図が単純な分、本当に考えさせられる内容だった。特に342頁からの加賀の語りは示唆に富んでいる。また作品中に「小説」として出てくる現実世界の歴史解釈にも目を見張るものがあった。深いが読みやすくあっという間に読了。「掏摸」とは全く違う意味で著者の作品が好きになった。北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、水爆実験をも実行している今こそ、是非読みたい一冊だと思います。

  • AIの発達した近未来の世界で、国家の策略による戦争に翻弄される人々を描いた長編小説。

    わかりやすくテンポの早いストーリー展開で読ませるが、この作品の本質は小説の名を借りて作者が訴えているメッセージにあるだろう。
    登場する国々は、名称こそ架空ではあるものの、背景からは日本やアメリカをはじめ、現実の世界をなぞっていることは明白だ。
    過去の戦争を「小説」という形で分析し、痛烈に批判する。さらには、情報操作を利用した政府の陰謀、政府の犬となったマスコミ、何より愚かなチンパンジーとして支配されていることに気づかずにネットで騒ぐ一般人など、現在の私たちの延長上にあるかもしれない未来に警鐘を鳴らす。

    日本だけでなく、世界的な規模での異様な国粋主義、右傾化の加速する現代において、いったい私たちには何ができるのだろう。個々の無力さを痛感する。
    同時に、皮肉、風刺を通り越して種々の愚かさを真っ向から見せつけられ、一人ひとりが未来のために危険に気づくことから始まる第一歩の重要性を考えさせられる、力作だった。

  • 今年一番重かった本。政治、国家、国民、戦争、宗教、神。そういう重いテーマをがっつり正面から書いている。今の日本そして世界で既にこの物語は始まっている。中村氏、体力と頭を酷使する本得意だね。でもまあこういう本は読んだ方がバカにならなくて良い。最終章の加賀の語り、読み終わるとぐったりする。

  • 図書館で借りた本。冒頭の朝目が覚めると戦争が始まっていた。で始まる近未来の話。情報操作をしAIが最前線で活躍する中、人々はチンパンジー並みの知性しか持たなくなり、ささやかな承認欲求を満たす為にネット上で幸せ自慢大会。そんな世の中にも疑問を持ち行動する人間も出てくるのだが国は…という内容。後味悪い読感。

  • 読み始めて途中で何とも言えない不安な気持ちがつのってしばらく中断してしまった。
    なんだろう、この嫌な感じは。
    近未来の島国R帝国。そこで起こる戦争や、続いている社会的問題、そのどれもがすぐ目の前にあるようで怖い。薄キモチワルイ。こんな未来が来るのか。
    もうすぐ選挙。

  • 建前として民主主義で運営されているR帝国。国は実質「党」が支配し、マスコミも支配下にある。野党すら「党」に選定されている。しかし国民は結構豊かな生活を享受している。そんななか突如Y宗国という宗教原理主義国の侵略を受け、戦争状態に陥る。侵略されたコーマ市は島で、沖縄のように軍事基地建設を拒否していた行政区であった。この唐突に始まった戦争は、何の目的で起こったのか、その理由が徐々に明らかになっていく。
    そして、主人公達の極小さなグループは、世論を操り、戦争を主導している権力に対し、真実を明らかにすることで戦争終結を試み、成功を収めたかに思えた。
    しかし、「人々が欲しいのは、真実ではなく、半径5メートルの幸福なのだ」となる。
    パラレルワールドであり、Rは日本、YはISIS、Cは中国みたいな世界観なので、イメージはし易い。
    ただそれ故に、R帝国の悪どさも、現日本の陰湿さと似通っていて、新味が感じられないのは残念。
    戦争・格差・人種差別・・・これらに対して、現代日本の(世界的なのかも知れないが)少し延長上にある考え、人間の本質をいやらしく書いた、なかなか面白い本では有る。

  • 「人々が欲しいのは真実ではなく半径五メートルの幸福なのだ」
    戦争、宗教、国家、人種差別、情報操作、原子力、移民問題、テロ、ウィルス兵器、、、、
    盛りだくさんの問題提起
    自分たちの見たいものしかみない
    流された方が楽
    そんな人々が増え続けた世界
    自分たちの都合の良い事だけ信じていたいし
    嫌な事からは目を背けたい
    常に自分を正当化していたい
    そんな心理をついた情報操作
    目の前のことをただ鵜呑みにするのではなく、しっかりと自分の頭で考え、耳の痛い話も都合の悪い話も、自分自身の狡さや弱さも、せめて自覚していられるようにしたい。

    作者のメッセージ性はすごく伝わるんだけど、なんでか誰にも気持ちが入っていかない。

  • 2017年の時点で、これを書いた作者はすごい。現実が、今見ているスマホの画面が、テレビのワイドショーが、そら恐ろしくなる。
    最後の作者からのメッセージに、不覚にも涙が滲んでしまった。自我を持って、自分の目で見て、自分の頭で考えて生きていきたいなあ。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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