愛なき世界 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.67
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本棚登録 : 2647
レビュー : 266
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051128

作品紹介・あらすじ

恋のライバルが人間だとは限らない! 

洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――

本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「知りたい、知りたい、知りたい」
    みんなの情熱が本から溢れ出てきそうだった。
    愛なき世界への愛と奇跡の物語。

    主人公は植物に恋する女の子、本村さん。
    植物の不思議、深さを教えてくれる。

    愛おしく居心地のいい松田研究室。助け合い、議論し合う大切な仲間。
    だけど、それだけじゃない。
    みんなはライバルで、胸に秘めたプライドもあり、妬みもある。
    仲間たちのうにょうにょした気持ち、私は彼らが大好きになった。
    人間もやっぱり不思議で深くて愛おしい。

    本村さんにとって、植物はアイドルであったり、箱入り娘であったり、何より「うちのかわいい子たち自慢」の文字を読んで、あぁ…言葉が出なくなりました。もうそれは愛だよ、愛!

    松田の哀しい過去は苦しいね。
    決して知ることのない彼の想い、たぶん救われることのない気持ち。松田先生好きや。

    藤丸くんがちょっと苦手でした。

  • T大にて植物学を研究する本村。何よりもシロイヌナズナが好き。そんな本村に洋食屋の見習い・藤丸は思いを寄せるが…。本村も藤丸も、研究室の面々をはじめ、登場人物はしをんさんならではの魅力的な人たちばかり。内容もしをん節炸裂。面白いだけでなく、本村のシロイヌナズナ愛の書きっぷり、素晴らしい。そして、植物を通して考える愛。研究者って普通の人と目の付け所が違って新鮮で、そこからくる考え方、個性を垣間見れ、そう言った面からも楽しめました。藤丸と本村の関係も変わらぬ爽やかさで素敵。愛なき世界だけれど、でも愛、大あり。なんとなく『舟を編む』を思い出しました。

  • 愛なき世界?
    いや、「愛」は確かにそこに在った。

    植物に恋してしまった本村は大学院でひたすら研究に邁進する。
    「どうして」「知りたい」を繰り返し植物の謎をとことん追及し続ける姿勢にとても好感が持てる。
    そしてそんな本村に恋してしまった藤丸の、本村を静かに温かく見守る視線が柔らかい。
    「恋」よりも深い「愛」がじわり伝わる。
    植物のことを知りたいと願う本村や本村の仲間の研究者達の、一見静かだけれど内に熱く燃える情熱は確実に「愛」だと言える。
    そして私は円服亭の料理が食べたくてたまらない…。

    読んでいて『舟を編む』を思い出した。
    しをんさんの、一心不乱に物事を突き詰める、風変わりな人達を追う物語はやっぱり面白い。

  • やばい、今日の午前中読み終えて浸ってたくせに、午後は「ボヘミアン・ラプソディ」見ちゃったからレビュー書くの忘れてた。

    藤丸くんはいい人だね~フラれても本村さんの事見守ってあげてて。
    植物に入れ込み過ぎてる女子は、どうしたら心開いてくれるのかしら。気長に待つしかないのかね~

    やっぱり中盤の松田先生の親友の話は泣き所でしょう。
    この本のように厚味がある本は感情移入もしやすい。読むのに躊躇しちゃいそうだけど、やっぱり大作ってこういう時いいなって思います。
    しをんさん本当にうまい。
    円服亭のオムライスとナポリタン、食べたいです。

  • T大近くの洋食屋で見習いとして働く藤丸青年が恋したのは、T大の植物学研究室の大学院生・本村さん。
    彼女は色恋沙汰には興味がなく、植物、特にシロイヌナズナへ一心に情熱を傾ける研究者の卵だったのです。

    本当にいい人たちばかり出てくる物語で、読んでいてほっこりとしました。
    登場するみんなを応援したくなってしまい、箱推しとはこういうものか…と妙な感想を抱いてしまいました。
    著者のしをんちゃん自身も含めて、自分の好きなことに深く深くのめりこめる人はなんて素敵なんだ、と改めて実感した次第。
    『愛なき世界』と言いつつ、愛、あふれてます。

    日夜、研究に打ち込む研究者や学生たち。
    図書館から彼らを少しでもサポートできるよう、私もがんばろう、と決意を新たにした年始の読書でした。

  • 美しい装幀。
    シロイヌナヅナもこの中にいるはず!

    「舟を編む」で何年もかけて広辞苑を作る人たちの世界を丁寧に描いていて面白かったが、
    今回は植物を研究している大学院を中心に、これまたマニアックな世界が描かれている。
    タイトルは「愛なき世界」だが、実は「植物に対するなみなみならぬ愛、にあふれた世界」が微笑ましい。
    普段近寄りがたい研究者という人たちの日々の生活や、研究にたいする葛藤など
    興味深いことばかりだった。
    輝かしいノーベル賞やいまだ謎のSTAP細胞を思い出してしまうが…
    日々、地道な基礎研究を続ける人たちへの大きなエールとなる作品だと思う。

    大学近くの洋食屋で働く藤丸青年と、大学院生本村さんのういういしい交流も
    応援したくなった。

  • 洋食屋で働く青年の、藤丸。
    彼が恋したのは、植物を研究する大学院生だった。
    穏やかであたたかな作品。
    専門的な内容も多かったけれど、かみくだかれていたのでわかりやすかった。
    植物と向き合う地道な作業。
    その中にある、植物愛や、驚きや、きらめく喜び。
    だんだんとキャラの味が出てきて、たのしくなる。
    おもわずくすりと笑ってしまったり、松田教授の思いには泣けたり。

  • 私もどっぷり研究室にいたなぁと思う。
    何よりも何よりも研究に夢中になる本村さんには人間との恋愛なんて頭にない。
    そんな本村さんに恋する藤丸君や研究室の面々、指導教授も本村さんの研究を温かく見守る。
    地道な実験、研究の果てに得られた結果には胸が熱くなる思いだった。
    予測通りの結果に満足をせず、意外性を求めるのが研究の醍醐味なのかな。
    藤丸君、めげないで頑張ってね!と声を掛けたくなる。

  • 植物には脳も神経もない。思考も感情もなければ愛という概念もない。それでも旺盛に繁殖し、多様な形態を持ち、環境に適応して、地球のあちこちで生きている。見返りは一切望んでいない。ストーリーの展開の中には、ところどころ愛を期待させる瞬間もあるにはあるが、実を結ぶことはない。けれども確かに愛はある。見返りを望まない愛は澄み切っており崇高。純度は極めて高い。愛なき世界なれど深く愛を感じさせられた。

  • 「愛なき世界」
    空しく、さびしいタイトルだと思ったが、逆説的だった。
    人との恋愛を遠ざけて、植物の研究に打ち込む人たち。
    しかし、知りたい、という欲求と熱意は、まさに素晴らしき愛だ!
    そこまでうちこめるなんて、とてもうらやましい世界。

    研究や実験の克明な描写を読むのは大変だったが、これをちゃんと読まないと、餡パンのトッピングの芥子粒みたいな種を1200粒蒔いたりして、白目剥いたり肩が凝ったりする登場人物たちに寄り添えないのだ。
    料理大好きで、植物も好きで、本村さん大好き、そしていろんなことに興味津津な、藤丸くんのおおらかさが微笑ましい。
    新年一冊目、素敵な読書になった。

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著者プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。最新刊に、『愛なき世界』。

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