続 横道世之介 (単行本)

  • 中央公論新社 (2019年2月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784120051630

作品紹介・あらすじ

人生のダメな時期、万歳。人生のスランプ、万々歳。

青春小説の金字塔、待望の続篇。


バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐこの男。名を横道世之介という。いわゆる人生のダメな時期にあるのだが、なぜか彼の周りには笑顔が絶えない。鮨職人を目指す女友達、大学時代からの親友、美しきヤンママとその息子。そんな人々の思いが交錯する27年後。オリンピックに沸く東京で、小さな奇跡が生まれる。

感想・レビュー・書評

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  • 吉田修一さん著 「続 横道世之介」
    前作より引き続き読了。

    今回の作品は前作より6年後が舞台。世之介24歳の一年間の物語。前作同様、4月から一月毎にチャプターを打ち、その間に20年後の今回の登場人物達の未来も描かれていくのだが、その20年後はもう既に世之介のいない世界。

    この物語、24歳フリーターの日常譚なのだが凄く読まされる。読みようによって、深く引っかけようとすれば限りなく深く引っ掛かってくる。

    幾つか感じた事を書いてみたい。

    まず世之介と父親。
    世之介が年の瀬に再発したギックリ腰、心配した父親が長崎から世之介のアパートに上京してくる場面。
    狭い部屋で親子二人きり、気まずさの中で父が放った一言
    「世之介、おまえ、今日のことをよく覚えておけよ」
    「ここがおまえの人生の一番底だ。あとはここから浮かび上がるだけ」
    フラフラした生活をしているからフラフラした人生を送っているんだとも言った父親。
    息子を叱るでも励ますでもなく、最終的に自分の力で這い上がれと後押し。
    印象的な一場面だった。
    そんな父親の持ってきた経年劣化したボロボロのバック、父親の顔に刻まれたシワのように感じられた。
    年を取り色んな表情筋で作られたシワと共に老いていく父親、他にも幾らでも息子に投げかけたい言葉があったのだろうが、その言葉以外を言葉にしない父親の息子を思う気持ち。それを感じとる世之介。素敵だった。

    そして世之介と亮太。
    亮太が母桜子に怒られている場面。
    強い人間っていうのはあまりいないと世之介。亮太には見込みがあるから強い人間になれと亮太に諭す。
    その他の場面でも正に父親のように彼なりの誠実な道徳心で亮太に寄り添っていく世之介。そうして亮太の長距離走者としての才能を最初に見抜いたのも世之介。
    20年後の東京オリンピック、亮太が他者に与えた感動、それは彼自身が強い人間になった証だと感じた。
    ふと想像してみれば死んでしまっている世之介がオリンピックという大舞台で、まるで土手を伴走するかのように亮太の背中を押しているようにも感じられた。
    そうしてパラリンピックでは亮太が安藤の伴走を務める。世之介から亮太へのバトンタッチ、今度は亮太が違う誰かの背中を押しているかのように感じられた。

    そしてなんといっても隼人と光司。
    光司の死の場面、感情がとんでもない感じになりそうだった。
    隼人の懺悔と後悔は読者である自分にも伝わっていた。
    「もちろんそこには愚かな行為があり、被害者があり、加害者がいる。決して許されぬ罪があり、癒せぬ傷がある。
    ただ、その傷を、みんなが必死になって、それこそ傷だらけになって癒そうとしてきたのである」
    本当にそう思える。隼人が一番、光司の生を嘱望していた。
    加害者として…
    友人として…
    人間として…
    隼人主導だが二人で築いた13年の月日。

    その光司の死。隼人の気持ちが分かりすぎて辛すぎた。
    それを忘れることなく刻みこんでいくように次の一歩を踏みだそうとする彼の強さも読み取れた。最高すぎる。自分も去り行こうとする隼人に、世之介と一緒に「イチ、ニ、サン、シ」ってエールを大声で叫びたい気持ちでいっぱいになった。

    最高だった。
    この物語に「善良」という言葉が幾度と出てくるが、それは自然体の善良であって、意識的に作った善良ではない。
    意図して作った善良なんて誰でもできるわけだけれど、世之介のそれは彼自身の固有の善良であり、彼の生来の性質、特長だ。
    彼の善良さが周りに与える影響力は他者を卓越している。見えている死があるからこそ飾らない彼の生の歩みがそう思わせる。

    次作の最終章、心に刻みながら読んでいこう。

    • チャオさん
      いいね、ありがとうございます。
      横道世之介シリーズとても良いですよね。まさに、吉田修一さんらしさが滲み出る大好きな作品です。
      国宝きっかけで...
      いいね、ありがとうございます。
      横道世之介シリーズとても良いですよね。まさに、吉田修一さんらしさが滲み出る大好きな作品です。
      国宝きっかけで、多くの読者が吉田修一作品を読んでくれて嬉しいです。(関係者じゃないけど笑)
      2025/08/22
    • NSFMさん
      チャオさん、いいねとコメントありがとうございます。

      国宝きっかけで読んだ横道世之介シリーズですが、また一味違いますね。普通の青年の日常譚な...
      チャオさん、いいねとコメントありがとうございます。

      国宝きっかけで読んだ横道世之介シリーズですが、また一味違いますね。普通の青年の日常譚なので身近感は国宝より強く感じられますし。
      国宝もそうでしたが、吉田さんの描く登場人物達が魅力的すぎます。
      国宝では、徳治に。
      世之介では、隼人に。

      心奪われています。
      最終章、読み進めて行きますね。
      2025/08/22
  • 横道世之介シリーズ2冊め

    世之介が大学を卒業して、就職難民となり、バイトとパチンコでどうにか生活しているところから話は始まる。
    そんな状況でも世之介は、マイペースで明るく、新しく出会う人たちは、今回も個性派揃いで魅力的。

    私は桜子さんがイチオシで大好き!
    桜子さんの息子の亮太くんと世之介の関係も、微笑ましくて本当の親子みたい。

    子供同士のけんかで、桜子さんが亮太を叱ったときに、世之介が亮太を土手につれだし、強い人間と弱い人間の話をする。そのシーンには胸が熱くなった。

    「地に足ついた生き方」の世之介

    来る者は拒まず、どんなことにも真面目に取り組む善良な人。

    また世之介に会いたくなりました。

  • 本とゆうのは読み手側からアクション起こさないと物語が始まらず止まったままになってしまう。とりあえず読みたくなったらいつでも手の届くところにスタンバイしてありましたが開くことができず数日が過ぎてました。なにせ前作で世之介が40歳で死ぬことが分かってるだけにページをめくり時間を進めるのが辛くって。
    とゆうことでしたが落ち着いたので開けてみると、そこには、大学を留年してようやく卒業しバイトとパチンコで食いつなぐ24歳の世之介がいました。
    100円ショップとか出始めた頃の1993年と2020年東京オリンピックのマラソンの場面とが交差する物語です。
    初版が2019年2月なので東京オリンピックが始まる前に書かれた作品で、コロナの影響で1年延期になったことや暑さ回避でマラソンは札幌で行われた事までは予測不能だったところにタイムパラドックスが生じているのですが、そこからいろいろ想像させてくれました。
    世之介が桜子と結婚していたらどんな未来だっただろうかとか・・。
    7月の章を読み終えて、寝落ちしながらせめて10月の章までは読もうと遠ざかる意識に夢見心地でいると眠ってしまったようで夢の中に世之介が現れて、スクランブル交差点で信号待ちしている世之介と知り合いたちが青になり交差点で出会い挨拶したり声かけたりしながら、それぞれの方向に向かって歩きだす姿がありました。寿司職人を目指しているハマちゃんとか、大学時代からの友人コモロン、桜子に亮太、桜子の兄の隼人。夢の中の世之介の歩みはゆっくりで信号変わってしまっても何処行くか決められず立往生してたりでしたが、うっ、これって冒頭のデジャブだぁw

    読了してみて、
    整理せずに引出しにしまい込んでた数々のスナップ写真をランダムにみてるような。順序正しく思い出せないけれどあの頃の匂いとか感情が浮かんできてその1つ1つのシーンに確かに世之介が寄り添ってくれてたんだと、別になんの頼りにもならない奴だったけど・・・。

    そうそう桜子の元夫が登山家だったとゆうところが引っかかりました。

  • また会えました。

    1年留年し、大学を卒業したもののバブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐ世之介は、24歳。
    パチンコ台の取り合いに負けた相手は、居酒屋の店員であり、しかも散髪屋の前でも会うという…。
    そこで五分刈りにした浜本は、鮨職人を目指す。
    ケンカ相手がスルッと友人になる面白さ、いい。

    まぁ、ダラダラと過ごしながらもどん底だとは思ってないのが世之介の個性と捉えるのか。
    留年組の小諸(コモロン)の部屋から双眼鏡で見つけた母子・日吉桜子と亮太との妙な出会いから交際まで。
    どっぷりと桜子と兄や友人との濃い時間を過ごし、桜子には2度プロポーズしたのにフラれる世之介。

    久しぶりに行った散髪屋の理容師から軽そうな奴から責任感を感じたと言われる。
    関わってきた人や出来事で、考えなさそうな雰囲気なのにしっかり大人になっているのかもしれない。

    コモロンとのアメリカ旅行で、途中で離れてタクシー詐欺に遭う…なんてこともあり。
    お隣さんは、集団生活をしている中国人でその1人が救急車を呼ぶほどの病だったり…。
    桜子の兄・隼人の友人・光司の死であったり…。
    まぁ、いろいろあるわけだ。

    今回のラストは、日吉隼人が甥の亮太に宛てた手紙。
    27年後である、オリンピックで活躍したことを誇りに思うことから始まり世之介のことをよく思い出すと…。
    頼りない世之介の顔が浮かぶということ…。

    世の中がどんなに理不尽でも、自分がどんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であることを諦めちゃいけない。そう強く思うんです。

    この文を読んで、前回も読んだはずなのに忘れてしまっていた自分に反省…。
    そうなんだ、世之介は善良なんだよな。
    何やってもまぁ許せるってことは、善良なんだ。


    この時代に出てくる紫のマークⅡも「ジップロック」が新商品というのも今読むからより楽しめた気がする。
    再読してよかった

  • 1993年の4月から1994年の3月までの横道世之介、24歳から25歳にかけての物語プラスアルファです。
    プラスアルファというのは、この物語独特の視点で、登場人物の数年から数十年後が時おり入るからです。

    前作により、横道世之介は、亡くなる時期やその理由がすでに明らかになっています。

    以下完全にネタバレになりますので、これから読まれる方はご注意ください。



    世之介は、40歳の時に線路に落ちた女性を助けようとして、飛び降り、間に合わずに電車の事故で、カメラマンとして亡くなります。

    世之介の24歳から、25歳の時期は
    「一応大学は卒業したものの一年留年したせいで、バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコでどうにか食い繋ぎながら始まった一年であり、世之介のこの一年が、決して最高の時期ではなかったのは間違いない。ただ、ダメな時期はダメな時期だったからこそ、出会える人たちというのもいるのかもしれない」-本文より。

    世之介は、この時期に大学の同級生のコモロン、パチンコ屋で知り合った女性で、後に、銀座で鮨屋を開く、浜ちゃん、そして二度のプロポーズをする元ヤンキーで彼女になる日吉桜子と息子の亮太、桜子の父、兄の隼人らと出会っています。
    世之介の全人生が、どんなものだったかは、わかりませんが、桜子の家の自動車工場で働いている世之介はもの凄く幸せそうにみえました。
    後にカメラマンになるらしいので、その後の人生はどうだったのかわかりませんが、決してバイト暮らしの悪い事のみの時期ではなかったと思います。

    世之介は、桜子の兄の隼人にも「ただ善良であることの奇跡を感じます」後に言わしめさせて、完全に認められていました。
    だけど、桜子との結婚がなかったのはちょっと、淋しくもありました。
    桜子と別れてから、世之介はまた、恋すること、愛することがあったのでしょうか。

    亮太が世之介のことをいつも強く思い出すというのが、本当によかったね。世之介の人生、きっといい人生だったんだねと言ってあげたくなる最大の出来事かもしれないと思いました。

  • また世之介に魅了された一冊。

    前作は笑いや微笑ましさ多めの印象だったけれど、今作は涙多め、泣きどころ多め、またしても世之介の魅力に魅了された巻だった。

    大学を卒業後、パチンコとバイト生活から始まった彼の春夏秋冬。

    人から見れば人生のどん底。
    だけどやっぱり彼は彼らしく捉え飄々としていたのがうれしい。

    どん底だから出会えた縁、見えた自分以外の周りの人生、そして流れている時間の愛おしさ。
    それらが伝わってくるたびに涙も流れまくり。

    亮太くんと過ごした時間にはこちらまで心柔らかく包まれた。

    次なる彼の"善良"な日々が楽しみ。

  • 世之介シリーズ2作目。
    世之介の大学卒業後の1年の物語。
    やっぱり、世之介いいよね。
    みんな、思うよね。
    「善良である」ってことの素晴らしさ。

    そんで、この物語の醍醐味は、「偶然のつながり」だと思う。

    人生の、偶然性……
    時に運命と呼ばれたり

    でも、そう言う、ちょっとした出会い、も、関わり合いを続けたことによって変化していく関係があったり。関わり合おうとしないと始まらない…

    人を巻き込むことも、巻き込まれることも、それなりの勇気と覚悟が必要である。



    引用

    ただ、ダメな時期はダメなりに、それでも人生は続いていくし、もしかすると、ダメな時期だったからこそ、出会える人たちというのもいるのかもしれない。
    桜子や亮太はもちろん、隼人さんに、親父さん、浜ちゃんだって、コモロンだって、もし世之介が順風満帆な人生を送っていたら、素通りしていったかもしれない。

    とすれば、人生のダメな時期、万歳である。
    人生のスランプ、万々歳なのである。

    すごい肯定的思考…

    しんどい状況も、あっけらかんと、ケセラセラ。
    前向きと言うより、何もかも、あるがまま、受け入れる、受け流す
    飲み込む強さ
    鈍感力

    しなやかに、正直な世之介のように生きられるといいよなぁ

    ブクログさんの評価が高い、最終作「永遠の横道世之介」も楽しみです。

    • タロさん
      コメント失礼します

      >善良であることの素晴らしさ

      ぼくは、心が汚れてしまったのか、もうそうは思えなくなっているのがとてもとても悲しいです...
      コメント失礼します

      >善良であることの素晴らしさ

      ぼくは、心が汚れてしまったのか、もうそうは思えなくなっているのがとてもとても悲しいです

      傲慢と善良 辻村深月さんの本をよかったら手に取っていただきたいです

      冒頭の文章に刺激されコメントしてしまいました、すみません
      2024/05/26
    • ぐっちょんさん
      タロさん
      コメントありがとうございます
      タロさん
      コメントありがとうございます
      2024/05/26
    • ぐっちょんさん
      傲慢と善良
      みなさんの本棚にあったので気になってました
      読んでみますね
      傲慢と善良
      みなさんの本棚にあったので気になってました
      読んでみますね
      2024/05/26
  • 読みたかった横道世之介の続編。

    ああ、どこまでいっても世之介は善良なヤツなのだ。

    留年せずにそのまま行けば、最後のバブル就職に間に合ったのに、どこまでもタイミングの悪い世之介。
    パチンコとバイトで食いつないでいるのだが、風に吹かれるまま気の向くままといった感じで、出会う人びととの縁にからめとられながら楽しそうに生きている。
    どう見ても世間的には「負け組」なのだろうけれど、「勝ち組」より幸せに見える世之介。

    バブル期を多少なりとも知っている世代には、懐かしい時代の色が浮かび上がる。

    2020東京オリンピックにまつわる話が物語の一部をになっているのだが、この本は2019年に出版されたのだった…そこだけパラレルワールドの話のように感じられる。
    2021.3.30

  • 傑作の続編も傑作でした。

    世之介なき現代とバブル後崩壊の過去エピソードを行き来する構成の妙が冴えています。

    いろいろブレることはあっても、基本、善良であること。

    少しでも近づきたい!

  • この本を読みはじめる前に、ぜひお願いしたいことが1つ、あります。
    それは「表紙写真を5秒間、じっくりながめること」です。

    前作を知らずに手にした方にとっては特に、この本の表紙写真は、なんてことない写真だと思います。
    そして前作を読んだ人にとっては、「この子誰よ!?」的な写真です。

    ですがそうした思いはひとまず置いて、本編を読みはじめる前に、ぜひとも表紙の写真をじっとながめてみてください。
    そして読み終えてからもう一度、じっくり表紙写真をながめてみてほしいのです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    前作「横道世之介」は主人公・世之介の大学時代の1年間のお話でしたが、今回の「続 横道世之介」は、世之介24~25歳の1年間のお話です。
    今回のお話には、24~25歳の世之介の日々とほぼ並行して、2020年の東京オリンピックの様子が、書かれています。
    はじめは世之介と東京オリンピックがどうつながるのか、さっぱりわからずでしたが、読み進めるにつれ「そういうことなのか…」と、胸がぎゅっとしました。

    前作ですでに、もっとオトナになった世之介がどうなったのかは明かされていますので、「横道世之介」と「続 横道世之介」、どちらか読んでも、話は通じます。
    けれど「どちらから読めばいい?」かと聞かれたら、わたしは「どちらからでも」と答えるでしょう。
    なぜなら「横道世之介」には、そのときの世之介が、「続 横道世之介」には「続」のときの世之介が、そこにいるだけですから。
    順番は関係ないのです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    「自分て役に立たないヤツだな」とか、「自分の人生なんて、いつ終わってもいいや」とか、生きているとそんな気持ちになることが、1度や2度、ありますよね。

    「続 横道世之介」の世之介も、見る人がみればおそらく「なんの役にも立っていない人」です。
    正社員でもないし、この先どうするとかもないし、24歳だし、正直この先どうするつもりなの?アナタは、という感じです。
    世之介も「どーすんだろオレ」と心の角で思いながらも、生きています。
    けれど、そんな世之介の姿をみていると、とてもうらやましくなっている自分がいます。

    「人間には、役に立たなくてもいいから、誰かそばにいてほしいときがある。」(41ページ)

    役に立たなくても、そばにいてほしい人。
    横に居てくれるかわりに何もあげられないとしても、それでも横に居てくれる人。
    それが横道世之介という男です。
    いやでも変わっていく自分の隣に、変わっていく自分をふと不安になったときに、何も言わず、けれどそこに「居てくれる」男、それが横道世之介です。

    もしそんな人があなたの横にすでに居たとしたらもう、しあわせラッキー意外のなにものでもありません。
    でも、なかなかそうもいかないのが現実です。

    それでも、誰かにそばにいてほしいときは、否応なくおとずれます。
    だからこそ「続 横道世之介」という本は、必要なのです。
    そっと本を開けばいつでも、「役に立たなくてもいいから、そばにいてほしい」世之介は、すぐそこにいてくれるのですから。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    この本のなかには、世の中の時がどんなにすぎても、時代が変わったと言われても、それでも忘れたくない日々がつまっています。
    過去は過去のままま、時間がいくら経っても変わることはありません。
    だからこそ、どんなに「自分」の未来が進んでも、いつでも本を開けば、そのままの世之介が、いつでもそこに居てくれるのです。

    さてさて、「続 横道世之介」を、あなたも読み終えたころでしょうか。
    パタンと本を閉じたら、表紙写真をながめつつ、ゆっくりとした時間をお過ごしください。では。

  • 裏表がなく空気のような世之助なんだけど、関わった全ての人の心に深く残る。みんなそれぞれ問題を抱えているんだけど、自然と背中を押してあげる。コモロン、浜ちゃん、桜子、亮太、隼人さん。この人達も魅力的に輝く。軽いノリでクスリと笑えるんだけど、ちょっと心温まりちょっと悲しくなる感じがとても良かったです。大好き度❤️❤️❤️

  • 続編も面白かった。大学を5年かけて卒業した後の、24〜25歳の世之介の1年間。「学生」という身分がなくなると「青春」と言い難くなり、学生の身分の大きさを実感したが、良い意味で偏見を持たない世之介の日常は相変わらずマイペースで幸せ(に見える)。世之介の人柄が周りの人々を惹きつけてやまず、前編から最後がわかってしまっているのが切なくてたまらないが、少なくとも世之介が濃い良い人生を送ったことは続編からも良く分かった。

  • 本作が「横道世之介」の続編なので、世之介が亡くなると分かっていて最後まで読むのがとても辛かった。それでももしやと期待して別なラストに一縷の望みをつないだがあり得るはずがない。前作は大学1年生の1年間が描かれていたが、今作は留年して卒業した後の24歳から25歳の1年間が描かれている。バブル期最後の売り手市場に乗り遅れ、就職できずに相変わらずウダウダしている世之介。20年後の2020年に浜ちゃんやコモロンや桜子が世之介のことを思い返すシーンも挿入されている。
    作中に世之介の存在を善良であることの奇跡と書いてあった。世之介の友人であるコモロンは世之介をキツイ時に併走してもらう持って来いの相棒と言い、写真コンクールで審査員をしていたプロ写真家は、世之介の写真を善良さがある作品と評していた。
    一番印象深かったのは、桜子の息子・亮太が公園の砂場で自分より小さい子のおもちゃを取ってしまい、「僕の方が強かったから」と言い訳をして叱られていた時に、世之介が「弱い人間は弱い人からおもちゃを取ろうとする人のことだ。強い人間は弱い人に自分のおもちゃを貸してあげられる人のこと」「強い人間っていうのはあんまりいないんだ。本当に少ないんだ。でも、お前の母さんはな、亮太のことをそんな人間にしたいんだよ。分かるか?」と話し、更に諭した言葉。「亮太には見込みがあるからだよ。たくさん子供がいる中で、本当にちょっとしかなれない強い人間におまえならなれるかもしれないって思っているからだよ。実はな俺もそう思った。初めて亮太に会った時『ああ、こいつは強い人間になれるかもしれない子供だぞ』って」。世之介は来るものを拒まずですべてを受け入れているようでもあるが、彼なりに譲れないものを持っている。バイト先の会社で盗み疑惑をかけられたり、アメリカで同乗詐欺を受けるなどと、貧乏くじを引いてもへこまずに、お人好しで明日を信じて生きる明るさが彼の魅力だろう。
    作中最後に、隼人が亮太宛てに書いた手紙が最後に添えられていて、そこに世之介へ対する著者の気持ちがこめられていると思った。
    『世界中を船で回っていると本当にこの世界にはいろんな国があります。そしていろんな問題があります。眼を覆いたくなること。悲しみ。痛み。憤り。本当に奇跡でも起こってくれないかと思います。そんなとき、ふと浮かんでくるのが、あの頼りない世之介の顔なんです。世の中がどんなに理不尽でも、自分がどんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であることを諦めちゃいけない。そう強く思うんです』
    2020年、亮太は東京パラリンピックで視覚障害者マラソン選手の伴走者をつとめ、コモロンはパラ開催に関わっていた。世之介の「善良」なるものと出会った人たちが、彼の醸す「善良」と関わり、その後の生き方に影響を与えたのだろうと思う。
    タイムリーにも今朝の新聞俳壇に神戸市に住む男性の俳句が取られてあった! 彼のファンがここにも居たと思うととても嬉しくなった。”風花や空に世之介行くごとく”

  • 主人公の24歳の一年間を描いたシリーズ第2作。第1作が19歳、最終の第3作が39歳の1年間。文庫版あり。
    第1作〜第3作まで読み終わりました。「頼りないし、お調子物だし、聖人君子なんかじゃない。でも、そばにいるとほっと…」する主人公の「起承転結もなければ、気の利いた伏線も、その回収もなし」の物語です。でも、読み出したら止まらなくなる作品でした。

  • 世之介くん続編。大学卒業後、バイトとパチンコで食いつないでいる。
    パチンコ暮らしをしていても、世之介さんはマイペースで善良。読んでいてこちらもその調子に飲み込まれる。今回も周りとの人との関わり合い、楽しかったなあ。。世之介といると周りが安心するんじゃないかな。そういう人は貴重だなあ。
    寿司職人の女友達は最初だけで後は影が薄くなっちゃったかなと感じた。

  • 世之介。
    懐かしい友と再会できてとても嬉しい。
    「会社で嫌なことがあっても、ふと世之介のことを思い出すと、なんかほっとするんだよ。無理しなくてもいいよなって。世之介みたいな奴でもちゃんと生きていけるんだもんなあって」
    学生時代の友人コモロンが語る世之介像。
    世之介とは正にこういう奴。
    幾つになってもふわふわと掴み所がない。
    けれど一度知り合った人の心は何故か捉えて離さない。

    あれから社会の荒波に揉まれ、どうにか大人になったけれど、若かったあの頃をふと懐かしく思い出すと、ニヤケ顔の世之介が直ぐに目に浮かぶ。
    こちらが大人になっても世之介はずっとあの頃のまま変わることはない。
    そこが堪らなくいいのかもしれない。
    善良。
    確かに世之介を一言で言い表すとしたら、これ程しっくりくる言葉はない。
    いつも呑気で頼りなくて、けれどいつもバカみたいに本気な世之介。
    世間がどんなに理不尽で辛くても、世之介だけはいつも混じりっけなしの善良さで変わらずそこにいる。

    世之介といつの日にか再び逢える日を夢見て。
    いつもと変わらぬ飄々としてお人好しの世之介を楽しみに待つとしよう。

    続編が出る、と初めて聞いた時は、あの続きをどのように描くのかとても不思議だった。
    読んで納得。
    吉田さんの演出の巧さに唸った。

  • 大学を卒業してパチンコ、バイト生活を送る世之介。本当なら暗くなってしなうのに、それでもふわぁと切り抜けていく。
    祥子さんとは別れてたのか、残念と思ってたら全然タイプの違う桜子との出会い。祥子も良いけど、桜子はこれまたいいね。桜子の兄貴、親父とのやり取りも笑ってしまう。
    世之介の写真を見た大御所の「君の写真は善良なんだ」って良いですね、写真って撮った人の人柄が表れるのか!
    さあ後は「永遠の横道世之介」だなあ、どんな話になるのか?

  • 今回は大学を卒業してからの話でした。
    一作目にはない感じの家族のストーリーや泣き所もあって楽しめました。
    やっぱり世之介最高!

  • 前作を読んでから結構経っていたので、内容がうろ覚えでしたが、読み始めてすぐに私の中に世之介が蘇ってきました。冒頭の交差点での佇まい。そうそう、これが世之介。久しぶりに会えた!って気分。
    だらしないし頼りないけど、善良で憎めない。何かを成し遂げた訳ではないけど、関わった人たちの心の中に残り続ける。それでいいんだよねと優しい気持ちになりました。
    しばらく間をあけて、続きを読みたいと思います。

  • 前作も世之介のお母さんの手紙で終わって、今回は、隼人さんの手紙で終わっている。 「ただ善良であることの奇跡」「世の中がどんなに理不尽でも、自分がどんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であることを諦めちゃいけない」 っていい言葉だなぁ。

    マラソン大会のレースから脱落したときに横を歩いてくれる奴。息が整うまで一緒に歩いてもらって、自分が整ったら、世之介を置いていく、と言った親友コモロンの例えは絶妙。そう、世之介は出会った人々の名伴走者。まさに善良の権化。あとはここから浮かび上がるだけ。と言った父も同じ香りがして最高。

    • ちゃーさんさん
      世之介と登場人物、最高ですよね

      「永遠と…」もぜひ、僕はこれから読みます
      世之介と登場人物、最高ですよね

      「永遠と…」もぜひ、僕はこれから読みます
      2024/05/05
    • のりこさん
      ちゃーさん
      ホント!分かります。最高ですよね。
      「永遠と…」も一緒に楽しみましょう^^
      ちゃーさんの感想も楽しみにしてます。
      ちゃーさん
      ホント!分かります。最高ですよね。
      「永遠と…」も一緒に楽しみましょう^^
      ちゃーさんの感想も楽しみにしてます。
      2024/05/06
    • ちゃーさんさん
      のりこさん

      コメントありがとうございます!
      読むモチベーション上がりました
      のりこさん

      コメントありがとうございます!
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      2024/05/06
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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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