死にがいを求めて生きているの

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 137
  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051715

感想・レビュー・書評

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  • 初、朝井リョウ。物心ついた頃からゲームやSNSがあって、ゆとり教育やら同調圧力があるのを当たり前の社会だと思って生きてきた世代の、それでも対立と和解をどう解決して行くのか、探って行く物語。のように思えた。納得できなかった。以下、なぜかを述べる。

    「俺は、死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を、生きていい時間にしたいだけなんだ。自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてないんだから、その時々で立ち向かう相手を捏造し続けるしかない」(398p)

    「自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてない」なんて、平成生まれのこの子は、どうしてそんな風に自分のことを思ってしまうんだろう。どうして、いつも誰かにどう見られるかが、何かの基準になるのだろう?こんなに若いのに、何を焦っているんだろう?丁寧にその心理を幼少の頃から辿っているはずなのに、やはり私にはピンとこない。

    組み体操のピラミッド存続問題やRAVERSや大学寮存続問題、無人島仙人問題など、現実にあった問題からモチーフを「強引に」自分のテーマに引き入れる書き方は、感心しなかった。揶揄はしていないが、あの事柄をある程度知っている人にとっては、揶揄されていると怒るかもしれないような書き方もあった。安藤くんじゃないけど、この作者に対しても「こうやって喋って満足するだけのおままごとはもう、終わり」にしよう、と言いたくなる書き方もあった。朝井リョウは何を焦っているんだろう? 自分に求められている「役割」を過剰に意識し過ぎているんじゃないか?こんな風にホントにあったことをなぞるならば、表層だけを見るんじゃなくて、「核」の部分を描いて欲しい。その表現、作者は、その部分で1番もがいているのかもしれない。そこは伝わってくる。でも、まだ足りない。決定的に何かが足りない。人気作家だけど、こんな感じならば、認めるわけにはいかない。

    • adagietteさん
      イイネ ありがとうございます。
      そうかぁ 厳しいですね〜 
      でも こちらの評もとても面白く読みました。なるほどなぁ ...
      私から見る...
      イイネ ありがとうございます。
      そうかぁ 厳しいですね〜 
      でも こちらの評もとても面白く読みました。なるほどなぁ ...
      私から見ると "息子” 年代の朝井リョウ。
      自分の外にあるものは綴れても 女子に比べて言葉でもって自分をさらけ出すことがあまりうまくないのが男性。
      まさに ”その部分で1番もがいている”点を 私は評価しました (^^) 
      2019/08/28
    • kuma0504さん
      本ぶらさんへ。
      ご返事遅れてすみません。
      そんな全ての世代にもある焦りもあったのかもしれませんが、この世代特有の焦り⁉︎それとも朝井リョウ特...
      本ぶらさんへ。
      ご返事遅れてすみません。
      そんな全ての世代にもある焦りもあったのかもしれませんが、この世代特有の焦り⁉︎それとも朝井リョウ特有の焦りも、あるように感じました。
      文学は細部が大事なので、やはり一読しないとわからないかもしれません。
      2019/08/29
    • kuma0504さん
      adagietteさんへ。
      コメントありがとうございます。
      男の子は、どうしても社会と向き合おうとします。
      私は基本的に、権力のあるものにつ...
      adagietteさんへ。
      コメントありがとうございます。
      男の子は、どうしても社会と向き合おうとします。
      私は基本的に、権力のあるものについては、風刺的に描いてもオーケーだと思っていますが、自分より弱い人たちを風刺的に描く、或いは表層的に描くことは慎重であるべきだと思っています。もちろん弱い人たちを批判的に描いてもいい。けれども、こんな小説では、少なくとも真摯に向き合うべきです。私は居酒屋の場面は現実にあったようにリアルに感じました。けれども、RAVERSや大学寮問題、無人島生活など現実にあった話を取り上げる時には、ネット情報からのみから判断したように感じました。ネットには情報が溢れていて、それなりに取捨選択する技術も持っている人はいます。作者も慎重に取捨選択したように見受けられます。けれども、それでも私は「浅い」と思いました。私が当事者ならばいくつかの点で「揶揄された」と感じたと思う。朝井さんは人気作家なので、力は朝井さんの方が上です。そういう描き方をするべきでなかった。そもそも現実あった問題から、小説に取り込む必要はさらさらないのです。
      朝井さんは、平成の子供の立場から平成の問題を描こうとしている。けれども、絶対上から目線になってはいけない。下から見た世界を描くべきです。でも既に朝井さんの立ち位置が、上にあるのならば仕方ない。一作で朝井さんを判断するつもりはありませんが、この本を読んだ段階で、私はそう判断しました。よっぽどのことがない限り、朝井さんの本を読むことはないと思います。

      長々とすみません。adagietteさんの意見ももっともだと思います。
      2019/08/29
  • 余談から入りますが、なるほどなと思ったもので。タイトルの一部分である「死にがい」。近くの図書館で話を聞くと、「死にがいを求めて」という言葉に反応して読みたいという高齢者がわりといるそうで。内容的には若者主体だが、若者は「生きがい」を追い求め、高齢者は「死にがい」を求める。どんな年齢になっても「生きる意味」とは答えのない永遠のテーマなのだなと思った。
    生きている上でどこかで悩む自分の存在意義、生きる意味とは。皆が注目する肩書きがほしい生き方をする雄介とそれを見ている智也。そして周囲の人たち。色々な視点から生きがいを模索している。それを騒ぐことなく冷静に淡々と作者らしい表現で訴えかけている感じがした。今の時代の若者ってたくさんの情報にさらされて、自分を見失いそうになったり、見つけたり、踊らされたり、共感したりと選択肢の多さに余計に悩んで迷子になりそうで大変だよなぁと思う。螺旋企画である海山伝説はあまりピンとこなかったけど、対立する軸としては必要だったのかな。

  • 何者かになりたいが、なれないもどかしさ。著者はそういう人物を描くのに長けているが、今回もその「イタさ」を存分に味わった。コンプレックスを誤魔化し生きる意味を見つけようとする人たちの様が、自分とも重なり痛みを覚える。

    今回は、敵を作りそれに対抗している自分、というポジションを確保することで「自分は生きていていい」=生きがいにしている者が主軸にいたが、結局のところ、人は自分を物語に落とし込まないと生きていけないのではないか、と感じる。程度の差こそあれ、常に生に意味を付けたがるのが人間なのかも。

  • 生きがいがないと生きている気がしない。
    何かを成し遂げる人にならなければ生きている意味がない。
    絶えずそれを求めもがきながら生きている。
    そして今も、親友を看病することを生きがいとしてる。
    そんな生き方をしてる雄介と、それを見守る智也の長い付き合い。
    なんのために生きているのかと自問自答したくなる作品。

  • 生きがいを見い出せない日々は、自分の存在価値だとか必要性について考えてしまう。自分の幸福だけを祈って生きる人生は物足りないですか。一番大切なもの、人達だけ守り抜けば許されませんか。
    自分が幸福でもないのに、誰かを幸せにしたいだなんて、滑稽ですか。外れていますか。
    人間は、幼き頃から、ある程度自分の役割に沿って生きていくのかもしれない、そう感じていた。子供の頃から貴方にしか割り当てられない立場があって、私にしか解らない居場所がある。それを覆すことはとても難しく、悩ましく、時に自分自身を辞めたくなる。
    飛び立ち残された後の殻は、もう不要なのでしょうか。
    私が存在していける社会に、笑って生きていける未来に、貴方はとても必要であって、出来れば害のある者は近付けたくない。それは皆同じ筈だけれど、そんなに都合良く世界は出来ていないから、私達は時に対立を繰り返しながらも自分自身で選ぶ手段を道を作って行くしかない。でもそれが簡単ではないから、私も貴方も苦しみながら生きているのではないか。
    答えの出ない難しいテーマであった。
    でも凄く心の中を見透かされた気になり、考えろ!と閉じられた瞼の裏側で、必死に何かを手繰り寄せようとしている自分がいました。

  • 螺旋プロジェクトとか、そういう予備知識なし、知らないで読んだ本なので、なかなか入っていけなかったが、智也の章でいろいろ合点し、読み返し、朝井リョウという作家の凄さを感じた。

  • 対象となりそうな敵をみつけては、それが"何か"もよく分かっていないまま"何か"を声高に主張して"何か"をした気になっている若者を挑発したような小説。
    皮肉が効いててけっこうおもしろかった。現実で何人か思い浮かんじゃう若者いるもんな。やたら敵意むき出しで"何か"と戦ってる若者。
    雄介に対する「あいつが言ってることがコロコロ変わるのが気持ち悪いんじゃなくて、立ち向かう相手をいきなり定めて、それに合わせてさも昔からずっと腹立ってましたって怒りを急造する感じが気持ち悪いんだ」という旧友・前田の考察が、辛辣で的確でイイネ!となる。
    何かを成し遂げた人になりたいんだよな。その気持ちすごくわかる。あの焦燥感ってどこから湧いてくるんだろう。決して野心じゃない。モチベーションはいつだってただの焦燥感なんだよな。
    三種類いる人間のうちの、三つ目の人間。生きがいがない人。他者貢献でもなく自己実現でもなく、自分自身のための生命維持装置としてのみ、存在する人。生きてて何が楽しいんだろう。死にがいでしかない"何か"を求め彷徨うことしかできずに。

    最後の展開はちょっと主題がおおきくなりすぎて意味わかんなかった。
    智也の看病という次のミッションをみつけた雄介の姿はおぞましくて面白いが、海山伝説とかの壮大な歴史冒険ファンタジーの要素はいらなかった気がするけれど。螺旋プロジェクトってなんや……。

  • 他人ときちんと向き合い、その時点で自分にできる範囲で真摯に関わること。
    それがいつの間にか、この作品で描かれているほどに難しい世の中になってしまったのか。
    他人と競うことや他人と比べることは、勝ち負けや優劣を競うこととは違ったはず。
    他人と、そして自分ときちんと向き合う機会を、私たちはこれ以上手放してはいけないのではないか。
    そんな危機感を強く感じた。

  • 朝井リョウ 結構好きな作家で、ラジオでの毒舌キャラも面白く、
    斜に構えながら 他人の動作や機微を分かり易く 鋭く言葉に乗せていく。
    等身大の若者の揺らぎを書かせたら ダントツだろう。

    今回は5人の主人公が章に分かれているが、
    皆が共通して出会い関わる 本当の主人公たち「堀北雄介と南水智也」
    目立ちたがり屋でいつも何かに戦いを挑み リーダとして上に立つ(立ちたい!?)雄介
    そんな雄介と友人ながら 同調するでもなく見守り続けている 智也
    海族・山族伝説という ちょっとSFチックな謎とともに
    二人の関係が年齢を追って成長し 膨らんでいく。

    たぶん 誰にでも湧き上がる 青い熱気を帯びた感情と後から抱く自分の薄っぺらい言葉や行動への羞恥心とやるせなさ 朝井リョウ 上手い!さすがだ。

    読み終わってから 
    伊坂幸太郎をはじめとする八組の作家たちで「対立」をテーマにつなぐ
    「螺旋」プロジェクトであると知った。(時代を分担 今回は平成)
    キーワードの「海族・山族」や登場人物も隠れキャラとして入れ込んでいるらしい。

    この小説だけでもジリジリと 気持ちを揺さぶられる
    他の作家と出会える機会でもあるので この試み 乗ってみたいと思う。

  • 螺旋プロジェクト平成編。『シーソーモンスター』と『スピンモンスター』の間に入るお話。アイムマイマイとか、鬼仙島(嬉泉島)とか、共通項はいくつも。

    海族だから山族とは離れなければ、と説く父親。反発する子。自分の立ち位置を模索する若者たち。対立はアイデンティティの確立に必要なのか。

    単独の物語としては、今一つぴんとこなかったのは、私が古い人間だからなのでしょう。苦しんでるのは、うん、分かるのだけど、どうにもしてあげられんよな、という傍観者の感覚。

    プロジェクトとしては……不安。

    あと、審判は誰だったんだろう……

著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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