心底惚れた-樹木希林の異性懇談

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051739

作品紹介・あらすじ

「だから、最初に言ったでしょう。ぼく個人のあれだから」
「もちろん個人の、長さんのあれを聞きたいの。その女のどういうのがよかったんですか、どの部分が」

これは当時33歳の樹木希林さん(当時の芸名は悠木千帆)と44歳のいかりや長介さんの対談の中でのやりとりです。
男女関係の核心をつこうとする樹木さん、逃げるいかりやさん、そこを樹木さんがさらに追い込みます。

内田裕也さんと結婚して3年目、テレビドラマ『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』でブレイク中の樹木さんが、1976(昭和51)年に雑誌『婦人公論』で1年間(出産をはさみつつ)連載した伝説の対談が、初めて書籍になりました。

ゲストは、前出のいかりや長介さんに加え、渥美清さん、五代目中村勘九郎さん、草野心平さん、萩本欽一さん、田淵幸一さん、十代目金原亭馬生さん、つかこうへいさん、山城新伍さん、いかりや長介さん、山田重雄さん、米倉斉加年さん、荒畑寒村さんと、映画スター、TVの人気者から元祖・社会主義運動家まで多種多彩かつ超豪華。
樹木さんは、彼ら12人に、徹底して男と女の話を問いつめます。

解説を寄せた武田砂鉄さんの表現によれば、「相手を当惑させながら、当惑させている間に、相手との距離を縮めていき、思わず相手から必要以上の言葉をこぼれさせるのは、相当な名インタビュアーと言える」。

相手の本心をグッとつかんでしまう言葉と語り口に、最初は度肝を抜かれるかもしれません。
でも、そこには後年の「ありのまま」「自然体」の生き方に通じるものが感じられます。
樹木さんは30代からすごかったのです。

対談の最後には、それぞれ樹木さんの味わい深い「一言」があります。
詩人・草野心平さんの回はこうです。

「この世に生まれてしまった身を恥じらい、なお生きてるということを恥じらう気持ちがフッとみえた時、わたしは男って色っぽいなと思うのです。
そんな時こそ男にとって女が必要だし、女は男に心底惚れるのじゃないでしょうか」

至言ではないでしょうか。本書のタイトルは、ここから取りました。

翌77年、樹木希林と改名後に行われた女性だけの座談会「男は何の役に立つか」(樹木さんと作家・津島佑子さん、ジャズ歌手・安田南さん)も収録。必読です。

感想・レビュー・書評

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  • 樹木希林がまだ悠木千帆と名乗っていた33歳の時の対談集。
    話は男と女、SEXの話がほとんど。まだ33歳なのに忖度無用で男の本音に迫る独特の感性ははさすがであるが、晩年の樹木希林が達した境地にはまだ及んでいない。

    対談相手の男性も俳優、スポーツマン、詩人、コメディアン、社会運動家など個性的な男性ばかりだが、概ね20代から40代の若者か壮年で彼女が投げかける言葉に答えるだけのものがまだ出来ていない。詩人の草野心平と社会運動家の荒畑寒村の二人だけが70代80代の高齢者で、この二人との対談は面白い。樹木希林も亡くなる前の晩年数年が彼女の真骨頂、人生のピークだった。

    肉体的な醍醐味は若い時ピークに達するが、精神的な醍醐味は老年にピークを迎える。
    恋もできず全力疾走もできない老年になって、人は精神的至福を手に入れる。
    私は72歳。今の精神のままで20歳の肉体に戻れたらと時々夢想する。
    肉体的醍醐味と精神的醍醐味を同時に味わう、叶わぬ夢である。

    彼女の没後多くの名言集が出版されたが、
    「私の話で救われる人がいるって?それは依存症というものよ、あなた。自分で考えてよ」
    「おごらず、他人と比べず、面白がって、平気に生きればいい」
    この二つが、彼女の名言のすべてである。

  • 知らない人たちばかりだったので、こんな人がいたのね、という発見。

  • 今から45年ほど前の対談集なのだから当然なのかもしれないが、欽ちゃんと田淵以外、最後の座談会の二人を含めて本書の登場人物は全員鬼籍に入っている。時の流れを噛み締めてしまう。
    昔の対談というのは話し言葉をそのまま文字に起こしているからか、ところどころ何を言っているのかわからない箇所もあるが、深く考えずに楽しめた。
    それにしてもあの荒畑寒村があの樹木希林と、幸徳秋水や菅野スガの話をしている状況というのが、時の遠近感が狂うというか、時間軸が歪む感じが物凄かった。

  • この本の最後「著作権者不明等の場合の裁定制度」を用いた旨の記載がありました。安田南さんのところでしょうか。

  • 渥美清、五代目中村勘九郎、萩本欽一、つかこうへい、田淵幸一、山城新伍、米倉斉加年…。33歳の樹木希林(悠木千帆)が、12人の多彩なゲストと男と女についての深い話を繰り広げた、『婦人公論』連載対談を書籍化。

    なんと申しましょうか・・・。

  • 大変貴重な記録。悠木さん憧れる…。

  • 30代樹木希林のアナーキーを読めるのはこの本だけ! 渥美清、いかりや長介ら豪華男性陣から引き出した男と女のあの話

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著者プロフィール

樹木希林(きき・きりん/役者)
本名:内田啓子(旧姓:中谷)。1943年生まれ、東京都出身。61年に文学座附属演劇研究所に入所、芸名「悠木千帆」とし、女優活動をスタート(77年、「樹木希林」に改名)。64年、森繁久彌主演のテレビドラマ『七人の孫』にレギュラー出演、一躍人気を博す。66年、津野海太郎らと六月劇場を旗揚げ。また、同年、テレビドラマ『とし子さん』に主演。以後、『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』『ムー』『夢千代日記』『はね駒』『向田邦子の恋文』などのテレビドラマに出演。また、富士フィルム、ピップフジモト「ピップエレキバン」、味の素「ほんだし」などのテレビコマーシャルに出演。00年代以後、映画出演が増え、「歩いても 歩いても」( 08)、「わが母の記」(12)、「そして父になる」(13)、「神宮希林わたしの神様」(14)「あん」(15)「モリのいる場所」「万引き家族」「日日是好日」(18)などに出演。「人生フルーツ」(17)『転がる魂 内田裕也』などドキュメンタリー作品のナレーターも務めた。企画・出演をした映画「エリカ38」(19)が遺作となった。夫はロックンローラーの内田裕也、長女に作家の内田也哉子、娘婿に俳優の本木雅弘。2018年9月15日に逝去、享年75。

「2019年 『いつも心に樹木希林~ひとりの役者の咲きざま、死にざま~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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