シーソーモンスター (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.66
  • (82)
  • (320)
  • (258)
  • (24)
  • (3)
本棚登録 : 2376
レビュー : 314
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051821

作品紹介・あらすじ

出会ってはいけない二人が出会ったとき、世界の均衡は崩れ、物語は暴走する――

【時代をまたいで疾走する、エンターテインメント小説2篇!】

我が家の嫁姑の争いは、米ソ冷戦よりも恐ろしい……。
バブルに浮かれる昭和後期の日本。ある日、嫁は姑の過去に大きな疑念を抱くようになる。(「シーソーモンスター」)

突然、僕は巻き込まれてしまった。時空を越えた争いに――。
舞台は2050年の日本。ある天才エンジニアが遺した手紙を手に、死んだ男の元同僚と配達人が見えない敵の暴走を前に奮闘する!(「スピンモンスター」)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • かなり大詰めのところでお米が炊き上がりそうになって、ああ、どうしてこんなタイミングで、と嘆きながらも自炊をはじめ、そうしたらわたしの頭の中でその先の物語がどんどん膨れ上がっていって、嫌だそんなの嫌だ、そんなわけない、と頭を振ったり目をつぶったり、包丁を持つ手がおぼつかない。手が、身体がかくかくと、震え始める。
    さあ、ご飯ができたぞ、早く食べて続きを、と思ったところで楽しみにしていたラレジエーションハウスが始まりそうになって、ああ、どうしてこのタイミングで、と嘆きながらもラジエーションハウスが始まったら一気に夢中になって、そうしたら今度はドラマの合間の車のCMで自動運転がなされていて、気持ちはすぐに物語へ戻る。
    で、結局ラストは想像と違ったわけだけれど。

    伊坂先生の呼びかけで始まったという「螺旋プロジェクト」。伊坂先生の新刊(本作品)が出版されるのは知っていたし、この企画を知ったのは朝井さんの作品に触れている時だったのだけれど、本当にちょうどいいタイミングで朝井さんの作品を読み終え、本作品を購入したので、続けて読んでみました。
    またしても一気読みで読了。いつも、主人公が追い込まれて追い込まれて追い込まれた時の、あの緊張感と臨場感は、息をすることすら忘れるくらい。
    伊坂先生の作品に出てくる女性は、いつも強い。女性に対する敬意のようなものが感じられて、結構好きです。今回は、綾瀬はるか、でしょうか。そして、平凡な日常を送る平凡な男性主人公、といえばやはり濱田岳がしっくりきます。
    「シーソーモンスター」:本作品では螺旋プロジェクトが背景にあるから、海とか山とか、そうしたことでの対立として描かれているけれど、実際問題、自分と似ているからこそ、相手の反応の裏とかまで全部わかってしまって、イライラして、でも距離を置くととても心地よく関われるっていうこと、あるなーと思いました。そして夫婦愛に癒された。
    「スピンモンスター」:モダンタイムスを読んだ時に感じたような、空恐ろしさがありました。LINEに疲れてガラケーにした、という大学生のインタビューを見たことがあって、もう片足突っ込んでるな、みたいな。大切なデータがハッキングで見つかるより、紙に書いて分厚い本に挟んだ方が見つからない気がする。結局、便利さというのは代わりに個人情報を差し出すようなもので、それが進むと、個人情報が裸で歩きまわる、監視社会となる。それで結局また、アナログに立ち返る。

    伏線回収は今回もお見事ですが、一点、どうしてもわからなかったところがありました。ここからは物語の核心にふれるので、読もうとしている方は絶対に、絶対に読まないでください!
    さて、その疑問点というのが。中尊寺敦がしていた人体実験、つまりは水戸の眼に埋め込まれたカメラなんですけど、あれって、水戸が遭った事故のあとに運び込まれた病院で埋め込まれたわけですよね?ということは、その事故に遭った時にはまだカメラは埋め込まれていなかったわけで、どうして水戸はデータセンターで事故の場面を確認することができたんだろう、って。この疑問だけがずっとぐるぐるしていて。本当は水戸が檜山で、その光景は檜山のものなのか!?とも思ったのですが、どうやらそれも違いますよね。
    お分かりになる方は、教えていただけたら幸いです。

  • シーソーモンスターとスピンモンスターの2部構成となっており、それぞれ80年代バブル期、近未来が舞台となっている。
    海と山の一族という対立する種族というお題に沿って、複数の作家が時代背景を変えて描く螺旋プロジェクトの一冊である。
    シーソーモンスター
    姑との確執の中、嫁である宮子は、姑の動きに疑いを持っていく。しかし、夫の直人のトラブルから意外なことがわかっていく。
    テンポよく進む話と各種設定がおもしろく、どんどん読み進められた。時折挟まれる80年代バブルの話とその後がわかるからこその突っ込みも興味深く、その頃では考えつかないことが今となってはというのが、色々出てくるのもおもしろい。
    わかっていくにつれての宮子の心情が、そうなのかとわかりつつも納得いかなーいという雰囲気でよく、後に繋がる嫁姑の落としどころも、2人の関係にあっていて、妙に外れているような感じが良かった。
    スピンモンスター
    近未来アナログが見直されることで、発生した配達員の仕事。配達員の水戸は、手渡された手紙から、巻き込まれていくように逃走していく。そして学生の頃からの仇敵、檜山との関係についても、事実が明らかになっていく。
    近未来という視点でデジタルでの情報伝達の危険性から、アナログが重視されるなどの設定がおもしろい。全自動運転など実現していく部分もあるが、極端に進んでいないところがよい。
    逃走劇の中で、シーソーモンスターの関係者にも会うことで、話のつながりもある。話が進むにつれ、何が真実かということが揺さぶられるようなところがある。結果として、ちょっと救われない感じもありつつ、ここでも対立する者達の落としどころが、過度な期待でなく描かれるのはよかった。
    テンポもよく楽しんで読めた。対立する者たちが、どうしていくかという点もよい加減で落とされていると思った。他のプロジェクト作品にも興味が惹かれるものもあるので、読んでみたいと思う。

  • 昭和の終わりが舞台の「シーソーモンスター」と近未来の「スピンモンスター」2編。螺旋プロジェクトのもの。
    シーソーモンスター
    元スパイの妻は姑と仲が悪い。これは相性の問題なのか(山の人間? 海の人間?)。義父は事故死、その事件に関係する浮浪者もその後、亡くなっており妻は義母に疑いを持つ。昔のスパイ機関より情報を求め真相を探る中、夫が誘拐されてしまう。すべての真相は、そして姑との戦争はどうなるのか。
    スピンモンスター
    人工知能が発達し幅を利かせている2050年。E-mailではなく、情報が残らない手紙を運ぶ仕事をする水戸。移動中の新幹線で隣に座る男より突然、もうすでに報酬は入金してあるとも言われ、依頼を受ける。しかし、それが大事件となって水戸に降りかかる。人工知能の破壊に関わる内容であった。水戸は子供の頃、車の旅行中に事故で家族を失っている。その事故で水戸同様家族を失った檜山。山の人間と海の人間か。檜山は正義感ある警察官であり、水戸を追い詰める。
    伊坂さん独特の会話の面白さで、あっという間に読み終えました、面白かったね。しかし、登場人物の魅力にややかけるような気もするけれど、それじゃ螺旋プロジェクトの一部のせいかもしれんね。個別に楽しめるようだけれど、螺旋の全部を読んでどうつながっているのか味わいたいです。しかし、うまくまとめているなあ。人と人との対立の物語かなあ。スピン〜の方はこんな未来になっちゃうのかなと怖い気もしながら読みました。

  • 久しぶりの伊坂さんはやっぱり面白かった。
    ページをめくる手が止まらなかった。
    だから晩ごはんを作るのが遅くなった。

    嫁姑問題なんだと思って読み進めたら、なんか嫁が凄い事になってるし。
    そしたら最後にはもっと意外な事になるし。
    まさかだったな~

    そこからだいぶ未来のスピンモンスター。
    嫁が絵本作家として再登場。
    内容はガラッと変わるんだけど、基本テーマは一緒みたいな。
    最後はどうなるんだろう?とハラハラした。

    とにかく面白かったです。

  • 嫁姑の対立をえがく家庭ものかと思いきや、話は思わぬ方向へ。
    意表をつく展開の「シーソーモンスター」が、たのしかった。
    日常に侵入してくる、非日常なトラブル。
    ぶれない姑への対抗心と、宮子のもうひとつの顔のギャップが、おもしろい。
    事実でない情報が独り歩きし、権力や世間から追い詰められていく「スピンモンスター」は、筆者らしい展開。
    こちらでも、宮子の活躍がたのしい。

    『小説BOC』螺旋プロジェクトの1冊だけれど、単体の小説として成立している。
    におわせるものはたくさんあり、ほかも読んだ方がより深く楽しめそう。

  • バブル真っ只中の日本で、嫁姑問題に怯えるサラリーマン。
    近未来の日本で、見知らぬ科学者から預かった手紙から逃れられない宿命にまた対峙することになる配達人。

    知らぬ運命に翻弄されていく男たちの物語が二編収められた小説です。まったく別の物語のようで実は繋がっている巧さは作者の十八番であり、日常の中にいつの間にか非日常的な職業の方が紛れ込んでいるのもまた十八番。
    ですので読み手としては、日常生活を描いているように見えていつしか奇想天外な世界に巻き込まれるのを、ただずぶずぶ浸かっていれば楽しめるので、安心して身を任せていればいい、という気分でした。
    ただ非日常な設定を繰り出しているのではなく、善意の通用しない鋭い悪意を紛れ込ませていたり、配達人の過去から浮き上がるひとつの事実からの感情の刹那の激しさに胸を打たれたり、飄々とした描写のなかからしっかりと抑えるところは抑えているので、ただ楽しい物語というわけではありません。
    そのあたりの重さのつけかた、バランスのとり方がいつも見事だなあ、と感じました。

  • 昭和のバブル期。嫁姑の対立。そこから展開されていくもの。人と人との対立やそれをそばで見ている人の思い。思わぬ方向に進む物語で緊迫した空気が張り詰めたりもするけれど、そんな時にもユーモアがあるところがいい。嫁姑問題から広がりを見せ命に関わる出来事にどんどん巻き込まれていく。その日常のなかに入り込んだ非日常の面白さがある。昭和のバブル期から2050年の近未来へ舞台は変わる『スピンモンスター』。時代は変わっても対立はあり、人々を動かし混乱させているのは変わらない。時代が進み、人とテクノロジーの共存、便利さ、恐怖。人を脅かすものと、それでも人からは奪えないもの。人がつなげてきたものと、そのなかで対立しだしたもの。そういう構図が面白い。『シーソーモンスター』から続くもの、つながっているもの。未来を思うと悲観的にもなるけれど伊坂さんの作品を読むとそんなこともないんじゃないかという気にもさせてくれる。

  • シーソーモンスター、スピンモンスターの2作品。
    海族、山族の人たちは決して相容れない、というお話。

    シーソーモンスターの方は、「生きた板挟み」のダンナさんのお悩み相談から始まって、嫁姑問題に入っていくのですが、もうとってもおもしろいです。間違いなく星5。
    スリルと爽快感、読後感の良さ。
    ほんと楽しいストーリーでした。

    スピンモンスターの方はもう少しシビアな感じでした。
    こっちは星3です。
    けど、みやこさん登場でうれしかったです。

  • シーソーゲームはさらっと
    面白く読んでそのあとのスピンモンスターが、
    なかなか乗り切れないよ、どうしよ、と思ってたら
    新幹線降りた辺りからどんどん加速して、あとは一気読み。
    面白かったぁ。

    現代にあるいろんな場所や普通のツールや
    言葉を使って、
    少しだけねじれながら未来を書く、そんな感じが
    なんかもう現実感ありすぎた。

    近い将来AIと対峙することがありそーな気にさせる。
    もちろん、私はなーんも気づかないで
    ぼんやりしてそうだけど。

    しかし、70歳に見える90歳はだいぶ若いぞ!

  • 一話目の方が好き。飄々とした一般人が実は、という伊坂ワールドが心地よい。この話だけで一冊あってもよかったくらいの満足度。二話目も悪くないけど長い割には結末ががウーンという感じ。

全314件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

伊坂幸太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

シーソーモンスター (単行本)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×