シーソーモンスター (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.88
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本棚登録 : 660
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051821

作品紹介・あらすじ

出会ってはいけない二人が出会ったとき、世界の均衡は崩れ、物語は暴走する――

【時代をまたいで疾走する、エンターテインメント小説2篇!】

我が家の嫁姑の争いは、米ソ冷戦よりも恐ろしい……。
バブルに浮かれる昭和後期の日本。ある日、嫁は姑の過去に大きな疑念を抱くようになる。(「シーソーモンスター」)

突然、僕は巻き込まれてしまった。時空を越えた争いに――。
舞台は2050年の日本。ある天才エンジニアが遺した手紙を手に、死んだ男の元同僚と配達人が見えない敵の暴走を前に奮闘する!(「スピンモンスター」)

感想・レビュー・書評

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  • かなり大詰めのところでお米が炊き上がりそうになって、ああ、どうしてこんなタイミングで、と嘆きながらも自炊をはじめ、そうしたらわたしの頭の中でその先の物語がどんどん膨れ上がっていって、嫌だそんなの嫌だ、そんなわけない、と頭を振ったり目をつぶったり、包丁を持つ手がおぼつかない。手が、身体がかくかくと、震え始める。
    さあ、ご飯ができたぞ、早く食べて続きを、と思ったところで楽しみにしていたラレジエーションハウスが始まりそうになって、ああ、どうしてこのタイミングで、と嘆きながらもラジエーションハウスが始まったら一気に夢中になって、そうしたら今度はドラマの合間の車のCMで自動運転がなされていて、気持ちはすぐに物語へ戻る。
    で、結局ラストは想像と違ったわけだけれど。

    伊坂先生の呼びかけで始まったという「螺旋プロジェクト」。伊坂先生の新刊(本作品)が出版されるのは知っていたし、この企画を知ったのは朝井さんの作品に触れている時だったのだけれど、本当にちょうどいいタイミングで朝井さんの作品を読み終え、本作品を購入したので、続けて読んでみました。
    またしても一気読みで読了。いつも、主人公が追い込まれて追い込まれて追い込まれた時の、あの緊張感と臨場感は、息をすることすら忘れるくらい。
    伊坂先生の作品に出てくる女性は、いつも強い。女性に対する敬意のようなものが感じられて、結構好きです。今回は、綾瀬はるか、でしょうか。そして、平凡な日常を送る平凡な男性主人公、といえばやはり濱田岳がしっくりきます。
    「シーソーモンスター」:本作品では螺旋プロジェクトが背景にあるから、海とか山とか、そうしたことでの対立として描かれているけれど、実際問題、自分と似ているからこそ、相手の反応の裏とかまで全部わかってしまって、イライラして、でも距離を置くととても心地よく関われるっていうこと、あるなーと思いました。そして夫婦愛に癒された。
    「スピンモンスター」:モダンタイムスを読んだ時に感じたような、空恐ろしさがありました。LINEに疲れてガラケーにした、という大学生のインタビューを見たことがあって、もう片足突っ込んでるな、みたいな。大切なデータがハッキングで見つかるより、紙に書いて分厚い本に挟んだ方が見つからない気がする。結局、便利さというのは代わりに個人情報を差し出すようなもので、それが進むと、個人情報が裸で歩きまわる、監視社会となる。それで結局また、アナログに立ち返る。

    伏線回収は今回もお見事ですが、一点、どうしてもわからなかったところがありました。ここからは物語の核心にふれるので、読もうとしている方は絶対に、絶対に読まないでください!
    さて、その疑問点というのが。中尊寺敦がしていた人体実験、つまりは水戸の眼に埋め込まれたカメラなんですけど、あれって、水戸が遭った事故のあとに運び込まれた病院で埋め込まれたわけですよね?ということは、その事故に遭った時にはまだカメラは埋め込まれていなかったわけで、どうして水戸はデータセンターで事故の場面を確認することができたんだろう、って。この疑問だけがずっとぐるぐるしていて。本当は水戸が檜山で、その光景は檜山のものなのか!?とも思ったのですが、どうやらそれも違いますよね。
    お分かりになる方は、教えていただけたら幸いです。

  • 螺旋プロジェクト

    おおおお、これぞ伊坂幸太郎だ!と納得の一冊でした。
    Aは○であり、Bは△である。と思わせておいて、実はAが△でBが○で…と思いきや、実はAは◎でBは▽だった、というような。
    これとてもわかりにくいたとえなんだけど、なんとなくそんな感じ、うまく言えないけど。
    そして時を超えて全く別の物語が繋がっていくあの感じが大好きな伊坂ファンにはたまらん一冊。
    新幹線の中でのくだりの種明かしは、んなあほな!と突っ込みながら笑っちゃいました。それと小さいんだか大きいんだか、という嫁姑戦争の「理由」に、ほっほぉ、とうなずいたり。
    先が気になるのでどんどん読み進めて行っちゃうんだけど、伊坂さんの小説は二度目がおいしいので。
    じっくりといろいろ拾いながら読む、二度目のおいしさよ。

  •  平成も残り少なくなった4月に、伊坂幸太郎さんの新刊が届けられた。2編を収録しているが、時代設定は昭和のバブル期と近未来の2050年。

     「シーソーモンスター」。一見平凡な家庭だが、夫は妻と母の嫁姑問題に悩んでいた。妻には夫が知らない過去があった。そんな経歴を持つ妻でも、義母との冷戦の日々は気詰まりで仕方ないが、徐々に義母への疑惑を深めていく。

     この時代らしく連日接待に明け暮れる夫。世代的に懐かしいキーワードが多く出てくるが、伊坂作品には珍しい時代設定か。内容の方は、実に王道的な伊坂作品と言えるだろう。あまりにバカ正直にピンチに陥る、お人よしな夫。そして妻は…。わははは、最後の展開は読めなかった。なるほど、ピリピリするわけである。

     多くのファンは満足したはずだ。そして続く「スピンモンスター」。空気感が大きく変わるが、こちらも王道といえば王道だろう。近未来を舞台に、現代社会に警鐘を鳴らすような設定は、伊坂作品でもしばしば描かれてきた。

     シリアスな設定ながら、どこかとぼけたキャラクターの魅力で、シリアス一辺倒にはしないのが伊坂流。そう思っていたが、本編に関してはシリアス色が濃い印象を受ける。仕事中の主人公が新東北新幹線の車内で遭遇したのは、あいつだった…。

     成り行き上巻き込まれ、追われる身となるのはお約束。意外な形で意外な人物が登場し、そう来たかと唸る。色々な敵役が登場した伊坂作品だが、これほど強大な敵は初めてだろう。2050年の世の中が、ここまで進んでいるのかはわからないが。

     近未来を舞台にしつつ、そのキーワードは今現在持て囃されており、現代社会も似たような状況にある。最後まで目が離せない展開だが、すっきりしない結末かなあ。敢えてこういう結末にしたのだろうとは思う。それだけ強敵だったのだ。

     十分に堪能した、いつもの伊坂作品ではあった。ところで、本作は中央公論新社によるプロジェクトの1冊として刊行されており、伊坂さんを含め8組9人の作家が、共通のルールで異なる時代を描くのだそうな。どれか他の作品も読んでみるか。

  • この作品は螺旋プロジェクトによる中編2作、連作です。

    『シーソーモンスター』
    米ソが、冷戦状態にあった昭和後期(バブル期)の日本が舞台。
    情報員の仕事をしていた宮子は、仕事中に新幹線の中で、偶然知り合った北山直人と結婚して仕事を辞めます(情報員だったことは秘密)。しかし結婚後同居した義母との折り合いが悪く、また義母の周りであまりにも事故死が多く、宮子は義母を疑い始めます。そして次は自分の命が狙われているのではと確信を持つようになりますが・・・。

    ラストはやっぱりいつもの伊坂さんでした。
    悪人も出てきますが、嫁、姑のバトルは思わぬ方向へ進み、最後はクスリと笑うことができました。

    『スピンモンスター』
    近未来の2050年の日本が舞台。
    両親と姉を交通事故で失った水戸直正。やはり同じくその事故で家族を失った檜山景虎。二人は総合学校4年の時に偶然再会し、対立しています。
    その後直正はフリーの配達人の仕事に就き、新札幌駅行の新幹線の中で出会った、科学者の寺島テラオに頼まれ、彼の同級生の中尊寺敦とかかわり警察と(檜山も警察官としてまたしても再会)ウェレカセリ(人工知能)の手から逃げます。寺島の残した「君の言うとおりだった。オツペルと象」という手掛かりをもとに仙台から東京へと逃げて、人工知能の暴走を止めようとしますが・・・。
    『シーソーモンスター』に出てきた人物の再登場とその人物が大活躍するシーンが読みどころでした。

    最後は『フーガはユーガ』に続きまたもや、悲しい終わりですか?伊坂さん。と思いきや、今回は希望の光がみえました!

    • kanegon69 さん
      さすが!出たばかりの新刊を早速読了とは。参考にさせていただきますね^ ^
      さすが!出たばかりの新刊を早速読了とは。参考にさせていただきますね^ ^
      2019/04/10
    • まことさん
      kanegon69さん。
      そんな、とんでもないです。
      でも、人気作になるであろう作品を初めにレビューするのって、なんか勇気いりますね!
      ...
      kanegon69さん。
      そんな、とんでもないです。
      でも、人気作になるであろう作品を初めにレビューするのって、なんか勇気いりますね!
      2019/04/10
  • 「対立」を軸に展開される二篇の小説。
    「螺旋プロジェクト」の1つに位置付けられているためか、いつもよりキャラクターの個性が弱い気がした。物語を通底する軸(海族と山族の対立)の記述に力が入っており、物語自体に集中しづらい気がした。

    とはいえいつもの伊坂節は健在。「スピンモンスター」の中尊寺は人間らしい良いキャラクターだし、「シーソーモンスター」の綿貫は『マリアビートル』の王子に通ずる悪役キャラ。

  • 特殊なスパイをしていた嫁姑の間柄
    まさにフィクションといったスリリングな展開

    そして近未来で起こる人工知能の暴走?問題
    「事件があるからニュースが流れるのか、ニュースが流れるから事件があったことになるのか」

    高度な情報社会が生む、情報の信頼性
    そしてプライバシーの保護
    デジタルが進んだ上の、機密性の保護のためのアナログ化
    人工知能の発展

    「対立があるからこそ、変化が生まれる」
    その言葉が心に残った。

    スピンモンスターの近未来感と展開の読めないハラハラした流れが非常に面白かった。

  • 今のところ今年読んだ本の中で一番面白かった。宮子さんが最高すぎる。でもスピンモンスターの最後はちょっともやもやが残るな…

  • 日常にふと紛れ混んでいる巨大なもの。
    それが噴き出した時、物語が動き出す。
    ギャップ、緩急、どこかとぼけた感じ。
    久々の伊坂作品、純粋に楽しんだ。

  • シーソーモンスターの方が、私が思う伊坂さんっぽい感じがして好きでした。螺旋プロジェクトの2作。今は全て追いかける気力はありませんが、ゆるゆると機会があれば。宮小さんが通して登場していて、とても魅力的な女性でした。今より先、90歳でさえ20歳ほど若くなるのか・・・。それならば、人類は生きている限り若くなるんだね。自動運転や人工知能、近い将来実現するんだろうけど、ちょっと怖い。

  • シーソーモンスター好きだなあ。元スパイの最強おばあちゃんとか好きになるしかない。螺旋の中でも特に好きだった。
    そろそろスッキリハッピーエンドの話も読みたいかもしれない。ビターエンドが書きたいのはわかるけど…
    まさかシーソーとスピンが同じ分量とは思わなかった…

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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