シーソーモンスター (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.72
  • (57)
  • (181)
  • (140)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1513
レビュー : 191
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051821

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 中央公論新社創業130周年記念企画創刊文芸誌「小説BOC」文芸競作企画「螺旋」プロジェクト作品。

    昭和後期「シーソーモンスター」と近未来「スピンモンスター」の2編収録。
    プロジェクトとしてのルールはあるが、「シーソーモンスター」の方は伊坂作品らしいサスペンスミステリーで最後のどんでん返しまで一気読みでした。
    最後の最後に朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」にもつながるネタが出てプロジェクトらしさもありました。
    時系列的には朝井作品からつながる「スピンモンスター」は、伊坂さん得意の不条理な逃走サスペンスなのですが、朝井作品との具体的つながりは見られないのがプロジェクトシリーズとしては物足りないです。
    むしろ、「シーソーモンスター」の続編といってもいいかもしれない作品となっていました。
    とはいえ、ラストのどんでん返しや落ちがないあいまいな感じで終わっているように思えて、ちょっと残念でした。

  • 「螺旋プロジェクト」なるものの一環として書かれた二つの作品。昭和のバブル期を描いた標題作と、東京五輪後の近未来を描いた「スピンモンスター」の2編からなる。

    螺旋ものを読むのは朝井リョウの「死にがいを求めて生きているの」に続いて2作目。
    リョウ君の作品の時も思ったけど、螺旋に共通する「海族と山族の対立」という設定や、巻頭、巻末に置かれる海と山の伝承「螺旋」の本文などが「なんだかな~」な私には、読んでいてそこにつなげようとする部分が見えてくると「あ~あ」ってなっちゃう。

    とはいえ、そこは伊坂さん完全なる伊坂ワールドを構築していて、嫁姑問題を扱った「シーソーモンスター」は嫁と姑の経歴から、普通の嫁姑問題だけに留まらず二人のプライドをかけた戦いになるあたりは間諜もの好きの私には堪らない。

    「スピンモンスター」は、善意の気弱な男が巻き込まれて終われるという、「ゴールデンスランバー」の設定に被りまくりで、「ゴールデンスランバー」は大好きなんだけど、ちょっと新鮮味に欠けるのよね~。
    ただ、「スピンモンスター」の嫁がここにも意外な形で登場して、相変わらずの強さなのが嬉しくてそういう所はさすがに伊坂さん上手い。

    軽妙な展開のなか、「監視社会の恐怖」とか「争いの必然」とか実はゾッとする内容を描いているところが伊坂さんならでは。
    でも、まあ、もう螺旋プロジェクトはいいかな・・・

  • 「螺旋プロジェクト」を全く知らずに、伊坂氏最新作を読む。
    久しぶりに著者の会心作だと感じた。
    とにかく物語の語り口が抜群に良い。特にシーソーモンスターは昭和の終わりという「既知の過去」を舞台にしているためか、すんなり没入できる上に、嫁姑がともに間諜の先輩後輩でありながら海族と山族で磁石の同極という、面白くないはずがない設定。
    スピンモンスターも負けずの力作だが、この終わり方には疑問が残った。
    伊坂氏の作品は、このようなある外部的制約というかルールごとがある方が、その力量が十二分に発揮されるのではと感じた。この素晴らしいストーリテリングを待っていました。

  • 争いはなくならない
    だとしたら僕たちはどうすればいいんだろう。

    「あまりに寂しい時は笑うしかないでしょ」
    「どこまで行かれるんですか?」
    「明日まで、明日の日本に着くまで」
    伊坂さんの何気ない一言が好きです。
    強く、でも果てしなく優しい女性。
    元スパイの90歳のおばあちゃん。
    宮子さん、素敵すぎです。

  • 特殊なスパイをしていた嫁姑の間柄
    まさにフィクションといったスリリングな展開

    そして近未来で起こる人工知能の暴走?問題
    「事件があるからニュースが流れるのか、ニュースが流れるから事件があったことになるのか」

    高度な情報社会が生む、情報の信頼性
    そしてプライバシーの保護
    デジタルが進んだ上の、機密性の保護のためのアナログ化
    人工知能の発展

    「対立があるからこそ、変化が生まれる」
    その言葉が心に残った。

    スピンモンスターの近未来感と展開の読めないハラハラした流れが非常に面白かった。

  • 日常にふと紛れ混んでいる巨大なもの。
    それが噴き出した時、物語が動き出す。
    ギャップ、緩急、どこかとぼけた感じ。
    久々の伊坂作品、純粋に楽しんだ。

  • 義理の母が良いよね。
    設定も大概だけど、夫のピンチに駆けつけてきたまさかの義母が最高クールだったわ。
    二話目はちょっと釈然としないところはあるけど、やっぱりスパイ妻がクールだったね。
    スピード感のある展開だと、読むほうも一気読みしたくなるな。

    いろんな作家さんのリレー的な、同設定を主軸に年表を語るこの試み、すごく面白いと思う。

  • 螺旋シリーズ、シーソーモンスター、スピンモンスターの2作。
    別々の話かと思いきや、シーソーモンスターの登場人物が数年後の設定でスピンモンスターに出てくる。ひとことひとこと面白いし、ドキドキハラハラして楽しめた。

    螺旋シリーズ他の作品も読んでたから、海と山の対立の事よく解ってたけど、これだけ読んでたらあんまり解らなかったかも。

  • +++
    我が家の嫁姑の争いは、米ソ冷戦よりも恐ろしい。バブルに浮かれる昭和の日本。一見、どこにでもある平凡な家庭の北山家だったが、ある日、嫁は姑の過去に大きな疑念を抱くようになり…。(「シーソーモンスター」)。ある日、僕は巻き込まれた。時空を超えた争いに―。舞台は2050年の日本。ある天才科学者が遺した手紙を握りしめ、彼の旧友と配達人が、見えない敵の暴走を阻止すべく奮闘する!(「スピンモンスター」)。
    +++

    どこにでもありそうな嫁姑問題が描かれていながら、その裏では目には見えないが凄まじい攻防が繰り返されていて、表に見えるものと、その裏側の真実の姿とのギャップが激しすぎて興味深い。そして、二作目は、まったく別の物語かと思いきや、そう来たか、という展開で、絵本作家の名前とか、折々にほんのわずか引っかかるが、突き詰めることなく読み過ごしたあれこれを、ひとつずつ腑に落としてくれるのは、さすが伊坂さんである。当然のこととして描かれる近未来の日常が、まったくの絵空事ではなさそうで、怖くもあり、うなずける部分もあるので興味深い。日常の物語の体裁をとったアクションストーリ―とも言える一冊かもしれない。

  • 気に入ったセリフ。

    ・嫁姑の大事な相槌「さしすせそ」を知ってるか?さすがですね。知らなかった。素敵ですね。せっかくですから。そうですね。

    ・とにかく人と人とのやり取りには裏メッセージが込められていたり、込められていなくても勝手に勘繰ることが多いんだよ。

    ・熊とうまくやっていけるのは、熊の恐ろしさを知っているものです。愛があれば動物とうまくやっていけるはず、と無邪気に信じる心の美しさでは太刀打ちできません。

    ・一方が圧倒的に強くなると、秩序が壊れる。拮抗した綱引き状態がベストなのだ。

    ・記憶とは面白いもので、自然と忘れてしまうことはあっても、「このことは忘れてしまおう」と自らの意志によって忘れることはできない。嫌な思い出、不快な場面に限っていつまでも覚えている。

    ・俺が検索しているつもりが(中文省略)、覗き込むものが覗かれている。

    ・記憶なんてものは不正確この上ないんだよ。感情を伴えば、それに応じて、修整される。思い出すたびに、加工される。それに比べて、カメラでの録画は純然たる事実の記録だ。間違えようがない。

    面白い。シーソーモンスター、スピンモンスターそれぞれを長編として読みたいと思った。バブル時代から近未来へ。時代は変わっても「分断」「対立」は永遠のテーマなんだろうか。

全191件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

シーソーモンスター (単行本)のその他の作品

伊坂幸太郎の作品

ツイートする