コイコワレ (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.61
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本棚登録 : 301
感想 : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051982

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争末期。日本の敗色が濃くなる中、東京から東北の田舎へ集団疎開した小学生たち。そのひとり、清子は疎開先で、リツという少女と出会う。「海」と「山」という、絶対相容れない宿命的な対立の出会いでもあった――。
戦争という巨大で悲劇的な対立の世界で、この二人の少女たちも、長き呪縛の如き、お互いを忌み嫌いあう対立を繰り広げるのだが…….


「螺旋」プロジェクト、激動の昭和前期篇、ついに登場!

感想・レビュー・書評

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  • 螺旋プロジェクトの一つ、今回は昭和のはじめ、太平洋戦争末期。清子は集団疎開で東北へゆく、そこでリツに会う。清子の目は母親と同じく蒼い。リツは立派な耳を持ち、野山を駆ける「山犬」のような少女。互いに気配を感じるほどの「海」と「山」の二人であった。一人の男性を軸にして関わりあう二人、嫌悪感を抱きながらもなんとか互いに歩み寄ろうとする。
    これもおとぎばなし風? に思えた。そして、清子がリツに歩み寄ろうとしているところ、青春の一ページのよう。そう、今回では、海と山が平行線だけでなく、わかろうとしているところに力を置いていたように感じた。海と山のワンシーンでもあるのか。螺旋のパワーを感じる一冊でもあった。
    螺旋は全部読んでみる方が楽しめるかな。共通したキーワードとかあるしね。全部は読めるかどうかわからないけれど、もう少し読んでみる予定です。

  • 蒼い目を持つ故に周囲から疎まれている清子と、犬のような尖った耳を持つ故に周囲から疎まれているリツ。
    似た者同士でありながら相容れない二人。出会ってはいけない二人が、戦時中の集団疎開先で出会ってしまう。

    「夏光」のような息苦しくなるような青春の一時を描いているのかと思いきや、ファンタジー要素がかなり入っている。
    甘酸っぱい初恋を知った少女たちだが、その初恋の行方はあまりに残酷で、それ故に決定的な事件が二人の間に起きてしまう。
    このまま清子とリツの関係はどうなってしまうのか、相手を排除するまで終わらないのかとハラハラしていたら、清子の母親の登場により新しい展開へと向かう。

    『嫌いだという感情をただぶつけるのは、お腹が空いたから泣く赤ん坊と同じ。憎しみを抱いても、争わないでいることはできるはずです』
    『自制しなさい。好きな相手には、自然に気持ちの良い振る舞いができるもの。だから嫌いな相手には特に意識して、誰よりも丁寧に、親切になさい』

    相容れない相手リツに対してであったり清子の目を理由に差別する同級生たちについての清子の態度を諭す母親の言葉ではあるけれど、いろんなことにも通じる言葉のように感じた。

    そして運命の東京大空襲の日。
    こうやって僅かなことが生死を分けたという出来事はたくさんあったのだろう。
    亡くなった人々、家族を失った人々、一人ひとりにそれぞれのドラマがある。

    ただどうしてこんなファンタジー要素を入れる必要があったのだろうと疑問に思うことも多かった。
    謙次郎の突然の退場、源助の片目が蒼い謎の放置、リツのその後…モヤモヤするところも多い。

    読み終えて初めて知ったが、文芸誌『小説BOC』創刊にあたり、8組の作家による「螺旋プロジェクト」が企画されていて、この作品はその中の一つということらしい。
    他に大森兄弟、澤田瞳子、薬丸岳、伊坂幸太郎、天野純希、朝井リョウ、吉田篤弘が参加。海と山の一族の対立という共通テーマで原始~未来を描く。
    だから切り取り感があったのかと納得。また蝸牛のような螺旋模様のペンダントが重要視されていた理由も。
    とは言え、それぞれの作家さんの作品は独立していて、清子とリツの物語はこの作品だけらしい。

    個人的には浅い感じが否めなかったので、全体的にもったいない感じのする作品だった。

  • 「螺旋プロジェクト」の1つ。
    全てを読んでいないし、海のものと山のものが相いれないという設定に難しさを感じる。
    今回は戦時中、東京から東北に疎開した先での出来事。
    東京の清子、疎開先のリツ。出会った瞬間からお互いを嫌いあう。
    最後にはそんな2人が会話をし、リツは清子を助ける事になる。
    嫌い合いながらも、無にする事はできない存在。

  • 相容れない「海」と「山」の種族の2人の少女。
    本能的な憎しみを克服してお守りを作るリツの努力に心を打たれる。

  • 海と山の民の対立を書いた螺旋プロジェクトの昭和前期を舞台としたもの。児童疎開が舞台になっていて良く調べているかなとは思いました。が、全体的に教科書に載っている小説という感じで、よくかけているのだけど、面白いかどうかでいうと、かなり薄味。


    悲惨な事件が起きてもなぜか心が揺れるような感じがしない。逆にそれが不思議だった。
    技術的にはいろいろ思うことはあるのですが、プロの方に私が指摘するなど僭越でしょう。
    自分の中に止めて、自作の参考にしたいと思います。

  • 最初、二人の女が一人の男を取り合う話かなとおもったが、浅はかでした。
    これは近代の老若男女どの立場の人間全てが読むべき道徳本でした。
    憎しみを相手に向けるのではなく自分の中で戦う。
    自制心。
    ラストは分かりやすいが安定した着地で読み終えた。
    これ、後から全8つの物語からなるうちの一冊と知った。
    仕方がない、読むかw

  • 螺旋プロジェクトの一作らしいが、朝井リョウと伊坂幸太郎のものを読んできたが、これが今のところ一番良かった。しかしこの企画には無理を感じる、海の民と山の民の争いの物語ということであるが、このテーマが出てくると途端に物語が不自然になってしまう。本作も「この世界の片隅に」風の戦時中の疎開生活で健気に生きた少女たちの記録であり、終わりかたも「この世界」を彷彿とさせる。単体の物語としてはファンタジー要素も入った秀作だと思う。

  • 図書館で借りたもの。
    ☆螺旋プロジェクトのひとつ。
    太平洋戦争末期。敗色濃厚の気配の中、東京から東北の田舎へ集団疎開してきた小学生たち。青い目を持つ美しい少女、六年生の浜野清子もそのひとりだった。その目の色ゆえか、周りに溶け込めない孤独な彼女が出会ったのが、捨て子で疎開先の寺の養女、那須野リツ。野山を駆け巡る少年のような野性を持つリツも、その生い立ちと負けん気の強さから「山犬」と揶揄される孤独な少女だった。だが、それは「海」と「山」という絶対に相容れない宿命の出会い。理由もなくお互いを嫌悪するふたりだが、ひとりの青年をめぐり、次第に接近してゆく…。

    初読みの作家さん。
    一気読み!
    これまで読んだ中で一番、お互いがお互いを嫌悪していた感じ。
    自分の合わない人とどう向き合うか。
    そのまま関わらないままでもいいけど…。
    今までの自分とは違う行動をとるのは難しいことだけど、少しずつ清子はそれを成し遂げていく。
    自分が変わることで周りも変わっていく。

    今回の話はお守り(首飾り)が重要な役割を果たしていた。

    ラムネを守って亡くなった母の描写に涙。

    教師になった清子が、次の時代の「シーソーモンスター」に繋がっていくみたい。
    その後、清子とリツは会ったのだろうか。。

  • 海と山との対立を描いた「螺旋プロジェクト」の一作。戦時中に疎開先で出会う、絶対に相いれない宿命を持つ二人の少女。双方ともに周りからは異質のものとして扱われつつ、しかしお互いに関して壮絶な嫌悪感を持ちながら対峙するという痛々しい物語です。まあ好き嫌いというのはあるけれど、ここまで絶対的というのはもうどうしようもないのでは、と普通なら思ってしまうところなのですが。
    お守りの存在と清子の母をきっかけにして変わっていく二人の姿は、前半の重苦しい雰囲気をがらりと変えていきます。たしかにこういう行動をとるのは難しいかもしれないけれど、絶対に無理なわけではなく。自分が変わらなければならない、ということには納得。どんどん清々しい思いさえ感じられるようになるのだけれど。
    この結末は、ある程度当時の歴史について知っていれば見当がつくことだけれど。それでもつらいなあ。でも彼女たちの未来にはまだまだ希望があるのだと信じられそうです。

  • ローファンタジー

    【螺旋プロジェクト】争う宿命の海と山2種族の対立と行末を描いてゆく物語/昭和初期編

    海の清子は戦時疎開先で、山のリツと出会い本能で磁石の同極をあわせたかのように合わず反発、お互い忌み嫌う

    清子は滝で溺れるが九死に一生を得、母の助言もあり人との接し方を変えることで徐々に周囲との距離も変わって行き、巡り巡ってリツから命を救われることになる

    空襲、物資の不足、辛い時代を克明に描いた作品


    螺旋のバトンは、水渦の御守からカタツムリに渡される

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著者プロフィール

乾ルカ

1970年北海道生まれ。2006年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。10年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『わたしの忘れ物』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆した。近著に『明日の僕に風が吹く』『龍神の子どもたち』がある。

「2021年 『おまえなんかに会いたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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