あとは切手を、一枚貼るだけ (単行本)

  • 中央公論新社
3.00
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本棚登録 : 637
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052057

作品紹介・あらすじ

きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたの――


共に生きながら、今は遠く離れてしまった「わたし」と「ぼく」。


小川洋子と堀江敏幸が仕掛ける、かつて夫婦だった男女の優しくも謎めいた悲劇とは。

感想・レビュー・書評

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  • 小川洋子と堀江敏幸の二人が編んだ小説、なんて買わないわけにいかないでしょう(笑)

    にも関わらず、恐らく二人が詰め込んだ、種々の仕掛けの幾つもを、呑気に読み飛ばして、零してしまっている自覚がある。

    読んでいく中で、どうして「私」と「ぼく」はこんな風な手紙のやり取りをしているんだろう、と不思議に思っていた。

    最後となる十三通めと十四通目で明らかになる出来事だけを、真実としていいのかな。
    レビューで考察してくださる方、待ってます!

    チェレンコフ光、パブロフの犬の頬の穴、五つ子の育成記録、たばこ屋さんのおばあさん、やぎさんゆうびんの循環……。

    ねえ、二人は一体何のやり取りを?
    と思いながら、そんな不思議なキーワードで繋がり合えることが羨ましかった。
    自分の世界を作り上げている断片たちに、こんな風に関わり、寄り添ってくれる人は、そうそういないと思うから。

    「わたし」が一通めを出したこと。
    その思いは、十四通目の返信でどんな風に変わっただろう。

  • 交互に綴られる、「私」と「ぼく」の手紙からだんだんと浮き上がってくる二人の関係性、過去と現在が、うつくしく繊細な言葉にくるまれて綴られていく物語。小説というよりは、詩を読むような感覚で、丁寧にやさしくいとしく相手を思うやりとりが交わされていきます。それは時折難解で、とても遠まわしに感じられることもあるけれど、それだけの事情があったことが察せられてくると、距離をとった二人のあいだに、実は心理的な距離はないままだったことがわかってきます。そうしてきりきりと切なくさせられるのです。
    …結局、その切なさのままひっそりと幕は閉じ、手紙の後の彼らがどうなってしまうのかはわかりません。けれど、相手を想いあう、それだけは変わらなかったことだけは強く信じられるので、少しでも安らかな日々を続けられたことを、祈るように思ったのでした。

  • 私と僕の往復書簡。私のパートを小川さん、僕のパートを堀江さんが書かれており、光を失った2人の手紙のやり取りが穏やかで美しかったのですが、途中から私が怒りを表す文章になり、不穏なやり取りに変化する。何故、私はずっとまぶたを閉じる事を決意したのだろうか。僕は何故目が見えないのだろうか。何故2人は離れ離れになったのだろうか。タイトルのあとは切手を、一枚貼るだけ、の意味を考えると2人は本当に手紙のやり取りをしていたのだろうか。文中の引用で、やぎさんゆうびんの歌詞が出てくる。それはお互いの手紙を読んでいない。しろやぎさんは私であり、くろやぎさんは僕で姪っ子は手紙を配達する人だとすると、やはりお互いの手紙を読んでいないのでは、と。アンネの日記の事も書かれているが、アンネの日記は架空の人物に手紙を宛てているので、私と僕のどちらかはもう存在していないのでは、とか勝手に想像してしまいました。文中の引用を全て理解していないとこの作品の全貌は理解できなでしょうし、何度読んでも結末は作家のお二人に聞いてみないと解らないと思いました。超難解で極上に美しい文章の一冊でした。

  • 元恋人たちの往復書簡というカタチで全14通で14篇でもある一冊。好きな作家さんたちだしー、と、さもしい私はほんの少しだけロマンティックを期待したのだけれど、分かりやすいロマンティックではなかった。
    いいんです。
    物語というより言葉が作り出す印象の中でやさしい儚さを味わえたからいいんです。
    言葉や記憶や故事について交わしながら互いの気持ちも探り汲んで進んでいく。
    まどみちおさんの詩が出て来るあたりから『わたし』は″痛み″を表出し『ぼく』は″なぜ″を加重させる。水を感じさせる言葉が多かったのに振り返るとなぜかドライ感。好き。

  • 『昨日、大きな決断を一つしました。まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです』―『一通め』

    連歌のようにお互いの言葉から次の言葉が引き出されて世界が膨らんでゆく。最初から物語が消えゆくように閉じることを予感させながらも、うたかたに交わされる恋文をなぞらえて。少し引いて眺めれば、小川洋子の描く「記憶」という物語が、堀江敏幸による「本当のような嘘の話」に置き換えられていく、そんな印象を抱く。二つの異なる世界を上手く消化することは容易そうで案外と難しい。それは物語の主人公が交互に自分自身のことを内省的に語るからでもある。その意味では、「一通め」は最も小川洋子らしく、「十四通め」が最も堀江敏幸らしい物語であるとも言える気がする。しかし内省的に語るのは手紙の常でもある。

    少し斜めから本書を読めば、物語を通して作家がお互いの特徴を語るのが文芸評論のようでもあるところが面白い。小川洋子のこだわりは「記憶」であるとずっと思ってきたけれど、堀江敏幸によれば「閉じ込められた」物語への執着があるという。確かに、そう指摘されてみると小川洋子の作品のあれもこれも閉じ込められた世界を描写する物語であると気づかされる。

    しかし果たしてこの文通を模した文章のやり取りは一つの物語を描いているといえるのだろうか。互いの言葉に触発された空想を投げかけ合い可能性を広げながらも「閉じることを運命づけられた」という印象があちらこちらに散らばっている。そのことは、通常の手紙のやり取りにある親密さを少しずつ削いでいく。その予感が邪魔をして物語として読むことを拒まれる感触が残る。予定調和的である訳ではないけれど、どこへもたどり着かない物語であることを意識しながら、慎重に、チェスの一手を指すように、その駒の動きの持ち得る意味を語り尽くす。二人の作家が作り上げたものは、そんな棋譜の解説のような作品であるように思う。

  • 小川さんが担当する女性、堀江さんが担当す男性、共に目の光を失った、かつて愛し合った二人による往復書簡という形式の物語。

    率直な感想は正直難しい。

    小川さんパートは小川さんらしく、静謐で、まるでファンタジーのようで、優しさに包まれている感じがある。

    それに答える堀江さんのパートでは様々な知識の海が押し寄せてきて、それを受け止めるキャパが読者側にないとうまく手紙のやり取りとして実現できないのではと思うほど、難しさに打ちのめされる。

    ただ、逆に堀江さんパートだけ読んでいけば、難しい知識の宝庫を一つ一つ噛み砕いていけば、また違った面白さに気づけるのでは思わされる。

    結局この作品、一回だけで終わらせることなく何回も読み込んだ方が、よりこの作品の良さを引き出せるのはないかと思う。

    難しいから面白くないということは全くなく、美しさ、空気感、雰囲気がたまらなく、読み進めていくページが止まることない。

    よしもう一度読もう。

  • 二人の作家の往復書簡は森の中の湖の上を揺蕩うよう。

    静謐な美しさの先でより瞬く過去と悲しみ。

  • 2019 10/10

  • オールを漕ぐ水の重さを手に感じる。

  • 小川ワールド全開って感じでした。現実と非現実の行ったり来たりで好きな人にはたまらないんでしょうが、相変わらず読みづらい・・・ 混乱する。

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著者プロフィール

一九六二年岡山県生まれ。早稲田大学
第一文学部卒。八八年「揚羽蝶が壊れ
る時」で海燕新人文学賞を受賞。九一
年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。
二〇〇四年『博士の愛した数式』で読
売文学賞、本屋大賞を受賞。同年『ブ
ラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、〇
六年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎
賞、一三年『ことり』で芸術選奨文部
科学大臣賞を受賞。

「2020年 『口笛の上手な白雪姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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