わたしの良い子 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 144
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052309

作品紹介・あらすじ

「どうしてちゃんとできないの? 他の子みたいに」



出奔した妹の子ども・朔と暮らすことになった椿。

勉強が苦手で内にこもりがちな、決して《育てやすく》はない朔との生活の中で、椿は彼を無意識に他の子どもと比べていることに気づく。

それは、大人としてやってもいいことなのだろうか――。



大人が言う「良い子」って、何?

女性共感率No.1作家・寺地はるなが、真っ正面から描き出す!

感想・レビュー・書評

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  • 自然と涙が出た。
    あぁ、今作も良かった。

    なんだかスポンジと化した心に、言葉がどんどん吸収されていく感じ。
    そしてそれがまんべんなく心に行き渡ったあと、今度は自然と涙となって流れ出す感じ。

    わたしの良い子。良い子だよ。なんてシンプルなのに重みのある言葉なんだろう。
    きっとこの言葉一つで、子はもちろん親も心がふわっと包まれる。何歳になっても大切な誰かに言われるだけで心が解きほぐされる、そんな気がした。

    寺地さんが描く、子育て世代、見守る世代の心にそっと寄りそってくれる物語。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      今作もいい感じだね。
      「夜が明るいとはかぎらない」がよかったから次も読んでみようと思いつつまだ読んでないま...
      こんばんは(^-^)/

      今作もいい感じだね。
      「夜が明るいとはかぎらない」がよかったから次も読んでみようと思いつつまだ読んでないままだよ。
      私に合うかなぁ。
      ダークな感じもあるのかしら?
      2019/10/14
    • くるたんさん
      けいたん♪
      おはよう♪

      うん、今回は小さな男の子が可愛いかったの。子育て時代を思い出しながら読める作品だし、私は反省しながらの読書だったよ...
      けいたん♪
      おはよう♪

      うん、今回は小さな男の子が可愛いかったの。子育て時代を思い出しながら読める作品だし、私は反省しながらの読書だったよ。
      ちょっとダークなっていうか、許せない部分もあるけど、読後感は良かったよ♪

      装丁も可愛いよね(*≧∀≦*)
      2019/10/14
  • 『生きていくって…きっぱり解決しない物事とうまく付き合っていくことなんだろう。』

    主人公である椿は、いつも何かを考えていて、自分が思っているよりずっと真面目。そんな性格だから、妹の勝手な理由で子供を預けられても、責任感を持って育てていくことを決めた。
    でもそうやって突然一緒に過ごすことになった「朔ちゃん」は、ちょっと育てにくい男の子。集団に馴染めず、表現が苦手で、だから何を考えているのかわからない。

    比べたくないと思っていても、周りの子供が優秀に見えて、意識してしまう。

    「隣の芝生は青い」という言葉があるように、ちょっと憧れることがあると、そっちにばかり目がいってしまうもの。

    それをわかっているからこそ、踏みとどまらなければ、と、もやもやする椿。
    本当の親子でないことの難しさと、叱っていいものなのかを迷いながら日々を過ごす。そんな姿に、親ではない自分までも、考えさせられてしまう。

    あることをきっかけに、朔ちゃんを怒った時、我慢していた糸がぷつりと切れてしまったように感じた。きっと後悔するだろうな、と思っていたら、やはり椿は、そんなことをした自分をいつまでも引きずっていた。

    よかったことと同じように、あの時しなければよかったことも、一緒に積み重なってできたものが、人生なのだと思う。振り返ってみると綺麗に見えるけど、ところどころ色が違っていて、色違いばかりが気になって、不安になってしまう。だからときどき、目をそらすことも必要だと思う。

    物語が進むにつれ、椿が、他から見て恵まれた環境にいたことを少しずつ知っていく。
    自分が恵まれていることは、なかなかわからない。でもいつか気づく瞬間があって、そのときにまた、ハッピーがやってくるのだ。

    そして、最後に明かされる、心温まる真実。
    秋の夜長の一冊に、加えてみるのはいかがでしょうか。

  • わたしの良い子。
    はじめてこのタイトルを目にした時は、なんて恐ろしい言葉なんだと背筋が寒くなったのを覚えている。
    わたしの、良い子。
    まるで子どもを縛る呪いのような言葉じゃないか。正しい愛と理想の息子、より攻めてるタイトルだな、さすが寺地はるなさんだな、と。

    しかしながら、1ページ、1ページ、じっくりと読み進めるうちにこれが呪いではなく励ましの呪文なのだと気づく。それは子どもである朔への言葉というより、椿や鈴菜への励ましの言葉のようにわたしには聞こえた。

    『わたしの』
    それはmineというよりfor meのような。
    所有ではなく、固有のような。
    不特定多数の誰かにとっての良い子である必要はない。誰だって特定の誰かにとっての良い子なのだ。

    作中にあるように、『他人はいつも、物語を欲する。自分が納得できる物語を。』
    自分の都合のいい物語を他人に押しつけて、型に嵌めて、自分の物差しで測る方が楽だからだ。

    妹の子どもを育てる椿は、確かに他人から見れば変わっているし、自分を犠牲にしているのかもしれない。
    でも椿と朔の、いや、椿と鈴菜と朔の物語は決して他人には読めないものだ。

    三人はこの先もきっと何度も間違える。
    でも、守るべき優先度だけはきっと間違えないから、朔はきっといつも『良い子』でいられるのだ。『親』の手を離すその時まで。

    読後はぎゅっと抱きしめたくなるような作品だと前評判で聞いていたが、その言葉に違わず、この小さな賢明な物語が傷つくことのないよう、抱きしめてみたくなった。ただ、そのための適切な力加減をわたしはまだ知らない。


    追記。
    余談ですがとっても可愛らしいカバーを外してみると、中の装丁もものすごく美しくてびっくりしました。また違った意味で抱きしめたくなりました。

  • 子どもを産み、育てたことのない私が読んでわかるのだろうか?と思いながら、手に取りました。妹の子、朔を預り育てる話が中心になるけれど、職場の上司や同僚、恋人、家族など、椿自身の生き方についての物語でした。途方にくれたり大声をあげたくなることがあっても、どこか冷静だったり、気を使わない姿は格好いい。
    椿のように、生きられたらいいなとも思った。

  • 寺地さんの本は難しい考察や解釈なしで心に直に触れて染み込んでくる。平凡な簡単なことをこうしてさらりと平易な表現に落とし込んでいくことは実はとても難しいことだと思う。
    タイトルが今回も上手い!

  • 出来ないことが多過ぎた。何故自分だけが出来ないのか、考える隙も無い程に、それを当たり前の様に出来ない自分が悪いのだと塞ぎ込んで。たまに何か出来た時に「やれば出来る子だから」と言われ、やっても自分には出来ないこともあったのだと気付いたのは大きくなってからのこと。
    何故、もっと各々が自由じゃいけないのか。
    大人になるにつれ、出来る様になることも増えた。けれどそれは強くなったからでは無い。ではなんで。どうして弱いままなのだろう。なんで人は嘘をついてはいけないと教わってきたのに、大人は「大丈夫」と大丈夫じゃないのに言うのだろうか。
    誰よりも悩み、寄り添い、生きている。自分自身と。
    だから知らない誰かに判断されることではないのだ。良い悪いは。

  • 生まれたばかりの子どもを見たとき人はただただ「健やかに元気の育ってほしい」とだけ祈るはず。
    それがいつの間にか、あれもさせたい、これもさせたい。これは人よりうまくできる、人より早くできる、これはできないあれもできない…と周りの子どもとの差に一喜一憂しあれこれと押し付けるようになる。
    「子どもの将来を思って」の愛情ゆえ、である。でも、それって本当に子どものためなの?自分のためじゃないの?
    子どもと暮らすことはたくさんの時間と労力を必要とする。そしてそれと同時にたくさんの何かを与えられる。
    甥っ子との年月が椿から「奪ったもの」と「得たもの」。どちらがどうかなんてわからない。よかったのか悪かったのか。
    けれど、周りから「ちょっと変わってる人」と見られている椿だからこそ、周りより「いろんなことがちょっとゆっくり」な朔の成長をしっかりと支えられたのは間違いない。
    寺地小説はこういう「ちょっと変わっている不器用な人」が良く出てくる。人と同じことを同じタイミングですることのできない人。
    そういう不器用さを抱えた人への福音のような一冊でした。
    「良い子呪縛」がんじがらめになっている誰かへ。
    あなたはあなたのままでいいんだよ。そのままで大丈夫。とそっと背中を撫でられるような心地よさ。

  • 親に厳しくしつけられた姉と自由奔放に育った妹。やがて妹は結婚もせずに子供を産み、その子を姉に押しつけて姿を消してしまう。心の中で文句を言いながらも、姉はその子の面倒を見る。これまで読んだ作者の他の作品と同じく、本書に出てくる人達もみんな優しい。虐待とは対極にいる人達。やがて訪れる和解と寛容。心温まる作品。

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著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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