ピアノの近代史-技術革新、世界市場、日本の発展 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052675

作品紹介・あらすじ

19世紀の世界のピアノの技術の向上と同時に国産に情熱を傾けた山葉寅楠、独立した河合小市によりヤマハやカワイなどの日本の楽器メーカーが世界を席巻するまでに独自の発展を成し遂げた経緯を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 音楽学者の著者(愛知県立芸術大学音楽学部教授)が、19世紀から現代までのピアノの産業史を丹念に振り返った一冊。

    『ピアノの近代史』という書名ではあるが、中心となるのは日本の話だ。
    著者によれば、「日本におけるピアノ製造の発展メカニズムを探り、世界の流れの中に置き直してみたいと考えた」ことが、本書執筆の「一番の動機」(「プロローグ」)だという。

    ゆえに、第1章では日本にピアノが入ってくる以前(19世紀)の欧米のピアノ事情が概観され、以後の章でも随時、欧米の話が織り込まれている。

    日本の国産ピアノ第1号が作られたのは、1900(明治33)年のことだという。
    欧米におけるピアノの量産化開始よりも約1世紀、ピアノ自体の誕生(1700年直前)と比べれば約2世紀遅れてのスタートであった。

    後発国にも関わらず、日本はピアノ製造において足早に欧米に追いついた。明治のうちにはすでに欧米にピアノを輸出し始め、20世紀後半には急激に生産台数を伸ばし、「日本は世界に冠たるピアノ大国とな」った。

    ピアノの質の面でも、日本はいまや世界有数の高さを誇る。1985年に日本のヤマハとカワイが「ショパン国際ピアノコンクール」の公式楽器となって以来、両社のピアノがさまざまな国際コンクールの公式楽器となっていることが、その証だ。

    そのような短期間での急速なキャッチアップを成し遂げた、日本のピアノ製造の戦いの歴史がドラマティックに辿られていく。
    核となるのはヤマハとカワイという2大ピアノメーカーの歴史だが、それ以外にもさまざまな〝プレイヤー〟が登場する群像劇である。

    膨大な文献を渉猟し、独自調査も重ねた著者の取材は丹念で、本書は音楽史の貴重な資料にもなっている。

    ヤマハ創業者の山葉寅楠、カワイ創業者の河合小市の2人はそれぞれキャラも濃く、印象的なエピソードも多い。この2人を主人公に据え、NHKのテレビドラマとか作ったら面白そうである。

    ピアノ製造史をフィルターとして、日本の「ものづくり」の強さ・素晴らしさを謳い上げた書としても読める。と同時に、日本の洋楽受容史をピアノを通じて辿る書でもある。

    ピアノを弾く人ならもっと味わい深く読める本だろうが、私のような門外漢にも十分面白い。

  • 日本経済新聞の日曜版に紹介されていた本。
    ヤマハとカワイという”カタカナ”には慣れ親しんでいたつもりだったが、ヤマハが”山葉寅楠”で、カワイが”河合小市”という創業者からきていることを知り、日本のピアノの原点とその歴史について学びたいという衝動にかられ、即購入。
    教科書的な要素はあるものの、これだけの内容がまとめられている本書は読むに値する。創業者の情熱とともに、両社の切磋琢磨する攻防は、ドラマを超えたまさにドラマティックな現実を味わうことができる。
    電子ピアノに、ほぼとって代わられたといってよいほど市場は逆転していることに唖然とした。数十年にわたる我が家のアップライトピアノ”KAWAI”の文字が愛おしく感じる。

  • 19世紀の世界のピアノの進化と、同時に国産に情熱を傾けたヤマハやカワイなどの楽器メーカーが独自の発展を成し遂げた経緯を描く

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著者プロフィール

井上さつき

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院博士課程満期退学。論文博士(音楽学)。修士課程在学中にフランス留学。パリ・ソルボンヌ大学修士課程修了。

現在、愛知県立芸術大学音楽学部教授。主な著書に『パリ万博音楽案内』(音楽之友社、1998)、『音楽を展示する――パリ万博1850-1900』(法政大学出版局、2009)、『フランス音楽史』(今谷和徳氏と共著、春秋社、2010)など。訳書にミシェル・カルドーズ『ジョルジュ・ビゼー』(平島正郎氏との共訳、音楽之友社、1989)、アンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュ『グスタフ・マーラー――失われた無限を求めて』(船山隆氏との共訳、草思社、1993)、アービー・ オレンシュタイン『ラヴェル――生涯と作品』(音楽之友社、2006)などがある。

「2020年 『ピアノの近代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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