四神の旗 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052965

作品紹介・あらすじ

国の中枢で渦巻く謀略、忍び寄る疫病の影

一三〇〇年前の惨劇を、この国は繰り返すのか?



武智麻呂、房前、宇合、麻呂の四兄弟は、父・不比等の意志を受け継ぎ、この国を掌中に収めるため力を合わせる。だが政の中枢には、不比等が唯一畏れた男、長屋王が君臨していた。

皇族と藤原家。それぞれの野心がぶつかり合い、謀略が交錯するとき、古代史上最大の闇が浮かび上がる――。

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞受賞おめでとうございます。馳古代史三部作の第二巻。不比等の息子四兄弟を主人公にしたのは新鮮で面白い。物語は権謀術数、陰謀まみれで、聖武天皇を筆頭に藤原ファミリーも志やヴィジョンがなく、ゲスい。組織ではなく人で、論理ではなく私情で歴史が動くのは日本らしい。ひたすらダークな権力抗争というのは馳星周らしいところか。ただ、みんなが天皇に対し「首様(おびとさま)」と名前で呼んでいたのは気になりました。

  • 前作「比ぶ者なき」にて藤原不比等はオンリーワンの活躍で、日本書紀の完成、娘と首皇子との婚姻を実現させた。しかし、藤原家の最終目標である天皇および日本の支配の道半ばで不比等の寿命は尽きる。残されたミッションは不比等の息子たち藤原4兄弟に託される。まず、彼らが目指すは妹、安宿媛を皇后にすることと産まれてくる皇子を天皇に即位させることだ。

    4兄弟の味方は首皇子とその后となった妹の安宿媛。立ちはだかるのは皇族の長屋王。そして、敵にも味方にもなり得る不比等の妻であった橘三千代とその子葛城王。さらに4兄弟たちも一枚岩ではない。本書は古代奈良時代の王朝を舞台に、協力、陰謀、裏切りが繰り返される壮大な政治ドラマ。

    4兄弟を含め、すべての登場人物が個性的で野心を隠し持っている。そんな複雑な人間関係を描きつつ、ストーリーは史実に忠実。完成度の高い納得の歴史小説だ。

    今も昔も政治の世界は複雑だ。正義感や義理人情、向上心、情報力など様々な能力をバランス良く発揮することが求められる。藤原4兄弟はその能力で長屋王より勝っていた。そして、4兄弟にも優劣の差があることもしょうがない。

  • 藤原四兄弟(房前を除く)と長屋王との暗闘に引き込まれた。天皇も含めて皆が人の業をこれでもかと見せてくれた。房前は愚かだが不憫でならない。

  • 皇族と藤原家。野心と野心がぶつかるとき、古代史上最大の闇が浮かび上がる。藤原不比等の四人の子がもたらすのは繁栄か、破滅か。

  • 藤原不比等の息子四兄弟と長屋王との宮中陰謀話。ノワール小説のイメージの著者の時代小説。意外に淡々としてて、悪くはないけど、物足りなく感じてしまった。

  • 父・藤原不比等の遺志を継ぎ、4人の子らはこの国を掌中に収めると誓う。だが政の中心には不比等が恐れた長屋王が君臨していた。皇族と藤原家の壮絶な政争。

  • 面白い!
    特に房前。
    房前の後の物語を知っていると、より面白く思えます。
    でもこれ、事実なんですよねぇ。
    このあたりの歴史は読み応えあります。

  • 藤原不比等の息子たち、藤原四子が主人公。参考文献にもあげられてる、木本好信「藤原四子 国家を鎮安す」(ミネルヴァ評伝選)が色濃くベースになっていると感じた。すなわち、藤原四子は一致結束して政権運営にあたったのではなく、いち早く参議となった房前は不比等の後継者ではなく、長兄武智麻呂が後継者、房前とは最終的に対立し、宇合、麻呂は武智麻呂に協力した、という視点。/武智麻呂:藤原家を繁栄させる 房前:自分は藤原の一門である前に天皇の臣下。ただ天皇でも間違えば臣下として諫言する。 宇合:この国を唐と並ぶ強国にする 長屋王:政を皇親の手に取り戻す 聖武天皇:朕の意のままに政を行う 安宿媛:首様を支える/それぞれの思いが交錯し、ぶつかり合い、強引ともいえる決着の付け方、そして祟りとも云われる終わり方に、史実を知る身であっても、割り切れぬ、重いものを飲み込んだような心持ちに。また、特徴としては、史実はもとにしているけれど、何年にこれがあった、という記載がほぼないので、時間の長さがあいまいにされ、例えば、長屋王の変直後に、武智麻呂らが罹患したようにも読める、そのあたりは意図したものなのかな、と思った。まだそこまではっきりとは形になっていないけれど、突き詰めれば、支配者の独裁か、有力者の合議制か、という対立軸になり、そこに皇位継承に関するそれまでのしきたりと天皇自身の我が子、我が孫に継がせたいというプライベートな思いがぶつかりあい、そこに自らのお家を繁栄させたい各家の思いがからまりあい、と。/しきたりは、いずれ新たなしきたりに取って代わられる(不比等)/天皇といえども、すべてが思いのままになるわけではない----長屋王は朝堂でそう言い放った。やり方さえ考えれば、天皇はすべてを思いのままに動かせる----武智麻呂は天皇にそう教えている//「兄上にとっては正しいと思われることでも、わたしにとっては間違いとしか思えぬこともあるのです。どうしてそれがわからないのですか。自分が絶対に正しいからですか。兄上は絶対に間違いを犯さないのですか」(麻呂)/「あなたは自分でも気づかぬうちに驕っていたのです。左道も呪いもどうでもいい。このような事態に陥ったのは、あなた自身が招いたことです」「人は感情に左右される生き物です。あなたは原則を盾に、その感情を無視した」(武智麻呂から長屋王へ)/「わたしなど、滅相もありません」 驕ってはならん。長屋王の死はわたし自身への戒めだ(武智麻呂)/「権力に正しいも悪いもない。権力はただ権力だ。」「話をしたことはない。だが、普段のあいつの様子を見ていれば察しはつく。おまえはなにを見ていたのだ。ただ、自分が正しくある、それだけを考えていたのだろう」(武智麻呂から房前へ)/個人的には一番宇合に惹かれていたようだ。気がついたら、宇合の言葉、思いに一番多く付箋を立てていたから。

  • 藤原不比等の子供達の物語。
    飛鳥時代を現代でも起こりうるような陰謀を題材に。
    人を誅殺する、という部分を除いて、企業の企みに置き換えて読むと現代に通じてします。
    とかくに1400年経とうが、人は変わらない、ということか。

  •  前作よりも、さらに古代史のギラギラとしたざらつきを感じる。そして、この長屋王の死が旅人によって、令和という年号の背景へとつながっていくという『万葉ポピュリズムを斬る』(品田悦一)を重なっていくとなると。いろんな本を読む楽しさを実感。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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