- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120053030
作品紹介・あらすじ
著者はこれまで300人を超える元受刑者を取材してきた。そのなかで、近年顕著になってきたのは、高齢の受刑者たちである。塀の外の孤独で不安定な生活より、安全な刑務所を志願する老人たちが増加しているという。受刑者に占める65歳以上の割合は18.1%、数にして20年前の10倍となった。これは、刑務所の老人ホーム化なのか。再犯者率の増加、社会復帰・更正への対策は、ようやく進められているところだが、それだけでは解決できない、高齢化社会ならではの問題と言える。人生100年時代と呼ばれ、後半戦を健康で豊かに過ごそうという多くの高齢者がいる反面、社会から見捨てられ、置き去りにされる老人受刑者たち。刑務所、更生保護施設、支援組織を取材、高齢受刑者本人へのインタビューを行い、漂流する老人たちの現実に迫ったルポルタージュ。
感想・レビュー・書評
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タイトルに惹かれて図書館で借りたが、巻末の著者紹介文を見ると、「1941年生まれ」と書かれていた。老人受刑者を取材する側も老人だったとは……。だからと言うわけではないが、週刊誌ネタのような勢いはなく、落ち着いた筆致で安心感はあった。そして安住を求めて再犯を繰り返す高齢受刑者や、介護福祉士化する刑務官など、驚きの実態を知ることができ有意義な読書だった。
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刑務所における高齢者問題のルポ。
社会が高齢化すれば受刑者も高齢化する。他の色々な施設と異なり、刑務所は来る人を選ぶことはできない。医療や介護の提供と、刑罰に服させるという二つの役割の両立。社会復帰についても、若い人以上に受け入れが困難になる。
著者自身も高齢者のためか、視点に時々違和感を覚えることもあった。 -
<メモ>
元受刑者専用求人雑誌「Chance!!」https://www.human-comedy.com/
安田恵美(國學院大學准教授)「再犯防止から社会参加へ
ヴァルネラビリティから捉える高齢者犯罪」日本評論社
出所者等就労奨励金支給制度(2006~法務省・厚労省)
【西田博氏 特別寄稿】高齢受刑者で介護施設化する刑務所。その未来は税金の投入か、それとも収容の回避か
https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no509/
永山則夫「人民を忘れたカナリアたち」
更生保護施設は全国に103か所(2019年時点)
本間龍『名もなき受刑者たちへー「黒羽刑務所 第16工場」体験記』
福島市 自立更生促進センター
医療刑務所…東京昭島市、岡崎、大阪、北九州
介護の必要な高齢受刑者を収容…旭川、長野、府中、神戸、徳島、尾道
出所者が働ける業界は建設や運送など肉体労働系が中心のため、高齢出所者への求人数は少ない。犯罪歴のない高齢者ですら働き口を見つけるのは若い人より大変なのに、衣食住に困って再犯に走ってしまうという悪循環。地域の自治体担当者も受け入れを拒むところが多いというが、刑務所だけに更生を依存している態勢も問題解決に至らない一因だと思う。 -
増加する高齢の受刑者たち。彼らは刑務所を安住の地としなければならないのか。漂流する老人たちの現実をさぐったルポルタージュ。
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介護や医療を必要とする受刑者がいて、刑務所内での矯正や更生と両立が難しく、さらに出所しても、社会とのタメがない。高齢化社会とは、刑務所にも等しくやってくる問題であるという気づきになりました。
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「塀の中の事情」とあわせて、朝日新聞の書評で見かけたので読みました。
こちらは、取材のすべてをここに記載している、裏を返せばちょっと取材もとが限られている、という印象を受けました。自分もしてきたような1回限りの見学記・インタビューを並べたものより、せっかくなら、出所者のその後等、まとまった期間、継続的な形で生活を取材したようなものが読みたかったです。
特に知らない話で面白かったのは、出所者の社会復帰のための民間事業を行っている人へのインタビューでした。受刑者専門の求人誌を発行している女性。出所者支援といっても対象・強みはいろいろであり、この女性の言う通り、出所者支援の組織・事業が横断的に連携できる仕組みがあるといいと思いました。
自分もこんなこと言える立場かわからないけど、すみません、時々、日本語の文法が気になりました。。校閲する人は手が回らないのか、あるいは、あまり強く言えないのでしょうか。 -
テーマは非常に興味深いけれど、データや記事の一部がかなり古かったりするのが惜しい。著者も受刑者の老人たちと同年配。それが取材に良い影響を与えれば更に面白くなったのだろうけど…ルポルタージュを執筆するのには少々無理がある年齢の方だと思えた。
著者プロフィール
斎藤充功の作品





