「グレート・ギャツビー」を追え (単行本)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053412

作品紹介・あらすじ

盗まれたのは、フィッツジェラルドの直筆原稿。その行方を知る者は? 村上春樹が翻訳する最強の文芸エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • ー ある晩、プリンストン大学の図書館から、フィッツジェラルドの直筆原稿が盗まれた。原稿の行方はどこに消えたのか?その捜査に協力することとなったスランプの新進女性作家マーサーの運命はいかに?

    ジョン・グリシャム×グレート・ギャツビー×村上春樹さん。
    これは、期待しちゃうでしょ。即買いですよ。

    しかし…

    いや〜、確かに面白いですよ。
    すぅ〜っと吸い込まれるようなストーリーテリングは素晴らしい。400ページを超える翻訳小説だけど村上さんの訳も素晴らしいのだろう、スラスラ読める。
    また、村上さんが解説で書いてるとおり、稀覯本取引の実態やアメリカの書店経営のあれこれは実に興味深い。本好きにはたまらない内容なんじゃないでしょうか?

    しかし…

    いつまで経ってもマーサーは小説を書き上げない。
    そろそろ書けよ、だんだんダラダラしてきたなぁと腹立たしく思いはじめたところで、この小説事自体がスパッと終わってしまった、そんな印象。

    読後、見事なまでに心に何も残らない。
    まるでフィッツジェラルドの直筆原稿と一緒に強奪犯に、僕のこの本に対する感想まで奪われてしまったかのようだ。

    ビッグネームの共演にちょっと期待し過ぎたかもしれないです。

  • 大学図書館で保管されているフィッツジェラルドの直筆原稿が窃盗団によって盗まれた。一味の一部は逮捕されたが、残りの仲間と原稿は行方不明のまま歳月は過ぎた。
    一方、大学の非常勤講師の契約をうち切られ、先行き真っ暗な売れない小説家マーサーは、突然調査会社の女性からある提案を持ちかけられる。それは、祖母との思い出が残る海辺のコテージで暮らしながら、フィッツジェラルドの直筆原稿を購入したと思われる書店経営者に近づき、彼の情報を提供してほしいというものだった。果たして彼女はミッションを果たせるのか。

    私がこれまで読んだことのあるジョン・グリシャムの作品は「依頼人」だけだが、小さな依頼人の安全をめぐる攻防は手に汗握るスリリングな展開で、面白いけれど読み終わった後はどっと疲れる、というのが正直な感想だった。
    この本は、冒頭にややなまぐさいシーンはあるものの、基本的には自分の腕一つで店を大きくした書店経営者と、彼がサポートする小説家たちとの交流がストーリーの中心になっており、全体的に牧歌的な雰囲気が漂う。だから私にとってはある意味読みやすかったが、ジョン・グリシャム=法廷サスペンス、というイメージを持つ者は肩透かしをくうかもしれない。
    ミステリとしては、フィッツジェラルドの原稿を巡る書店経営者とマーサー(とそのバックにいる調査会社)、窃盗団の三つ巴の攻防が見どころになるはずだが、探偵役の調査会社が力不足という感じで、正直消化不良は否めない。ただ、どうも続編が出るようなので、そのあたりは今後解消されるのかもしれない。

    書店経営の裏側を描いていたり、小説家が本音をぶつけあっていたり、と興味深い内容もあるので、続編が出たらまた読んでみたい。


  • プリンストン大学に厳重に保管されていた、『グレートギャツビー』を含むフィッツジェラルドの5作品が、一夜にして全て盗まれてしまった。

    犯行は綿密に計画された上で行われており、防犯カメラの映像と、ただ一点の真新しい血の染みを除いて、何一つ証拠は残らなかったが、それらの証拠をもとにFBIが動き出し、また別のグループも密かに行動を起こしていく。

    多視点で展開されていく、盗まれた作品はどこに?という大きなテーマを掲げたこの本は、冒頭から常に緊張感が漂っており、長編小説にありがちな、あまり意味のなさない気だるくなるやり取りがなく、じっくり腰を据えて一気読みすべきだったと、少しばかり後悔しました。

    また、多くの人物が登場するこの作品は、個人の心理描写を奥深く描くには、ページ数を増やさなければならず、逆に少なすぎると、内容に厚みが出ないというバランスの良さが必要で、その辺りの葛藤もあったかと思われます。

    村上春樹氏も巻末で書かれておりますが、古書に興味がなくとも、本を読んだり、その他何かをコレクションしている人にとっては、読んでいてきっと楽しい作品かと思われます。

  •  ジョン・グリシャム久々のハードカバー。最近は文庫化された邦訳本がほとんどだが、その中身は、相変わらず充実したサウスアメリカン・リーガル・スリラー。なので、本書には驚かされることが実に多かった。

     村上春樹訳ということで、売り上げが一桁変わるのかもしれないが、『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』(1996年)を書いているフィッツジェラルダーの村上春樹らしく、本書は、彼が外地で読んですかさず翻訳したくなった作品であるらしい。売れっ子作家・村上春樹が翻訳したいと思った本は、それなりに翻訳本でも売れる、ということなのだろうな。村上春樹を翻訳小説にもどうにしかして求めようと試みる根強いハルキ・ファンによって。

     ぼくは、グリシャムも村上春樹も、どちらもほぼ全作読んでいるから、その辺の事情は特に拘らない。春樹訳ではなくても、グリシャムというだけできっと本書を読んでいると思う。ぼくはスコット・フィッツジェラルドのファンでもない。若いひとときアメリカ文学に凝ったことがあった(ロシア文学に凝ったこともある)ので、有名作家の代表作くらいは読んでいるけれど、『華麗なるギャッツビー』を村上春樹による新訳『グレート・ギャツビー』で再読する気になるほど、のフィッツジェラルド読者ではない。映画でも書物でも、さしてギャッツビーに惹かれるものがなかった。しかしアンチの側に属するものでもない、どちらかといえばニュートラルである。

     そんな名作の直筆原稿がプリンストン大学の図書館から5人組の強盗団によって盗まれるアクション・シーンから始まる本書は、起承転結の模範のような構成が見事である。さすが読ませる作家グリシャムだ。スピーディでスリリングな序章の後に、まったくこの事件から読者の眼を遠ざけるかのように、本当の主人公とも言えるブルース・ケーブルの書店経営に至る経緯が語られ始める。

     続いて作家の卵であり本書のヒロインであるマーサー・マンが、盗まれた原稿の行方を探るスパイとして雇われる経緯に移る。こうして盗賊たち、書店経営者、真相を探る探偵役と言うべきマーサーの三つの世界が、重ねられてゆく絵模様ができあがるのだが、メインストーリーとは別に稀覯本の世界、個性豊かな作家たちの生活がマーサーの体験を通して広がってゆく。実はこの辺りが読みどころであり、本書が出版社によるならば<最強の文芸ミステリー>たる所以である。
     
     しかもそれを本来リーガル・サスペンスの作家として知られるグリシャムが、彼らしさを全く見せず、リゾート地を舞台にした駆け引きとラブ・ロマンスを洒落たセンスで描き切っているのである。グリシャムにはノン・ミステリの傑作・快作もあるのだが、ミステリ・レベルで新機軸を打ち出したのには驚きである。この作品にはブルースを主人公にした続編もあるという。本書で印象深かった脇役たちに再会できるのかと思うと、何だかぞくぞくするこの期待感がたまらないのである。

  • ジョン・グリシャムの法廷モノが昔すごく好きだったけど、最近は全然追っていなかった。なんか最近はちょっと軽んじられているような気がしなくもなくて。
    村上春樹がそんなジョン・グリシャムを訳すってけっこう意外な感じだったんだけど。古典的名作の新訳とか、あるいは見つけてきた斬新な作家の作品とかならわかるけど。
    あとがきで村上さんが、旅行中に読むものがなくなって買って読んでみたらすごくおもしろくて読みふけった、って書いているけれど、そういう感じ。エンタメで軽く読めて旅行中とか読んだらいいなっていう。
    ストーリーは、フィッツジェラルドの直筆原稿が盗まれ、その捜査上に小さな町の書店主が浮かびあがり、極秘捜査のために新進小説家が送り込まれて、っていう。ミステリとしてそれほどサスペンスフルだとかではなかったけれど、書店や本や作家の話が盛りだくさんで、読んでいてすごく楽しかった。舞台が、ビーチに近い小さな田舎町なんだけど、個性的な独立系書店があって、カフェもついていて、イベントもひらかれて、いろいろな作家が出版ツアーとかで立ち寄ったりして、そしてそこに本好きで文化的な人たちが集まる、なんて、もうそれだけで楽しい。そんなところに住んでみたい。

  • 「最強の文芸ミステリー」と帯にはあるが、文芸・ミステリー、どっちつかずの一作。

    そもそもグリシャムの法廷以外のミステリってどうなんだろうと思いながらも村上春樹氏のあとがきにひかれて読んでみたが、中途半端な一作。

    書店や稀覯本売買の世界は面白いし、作家たちの社会を掘り下げてあるところは興味深いが、文芸というレベルでは全くないし、ミステリとしてみたら焼き直した「華麗なる賭け」みたいで緊迫感も謎もなく単調で凡庸。

    村上氏が絶賛するほどキャラに魅力も感じられず、グリシャムのブランド名が無かったら読むことも無かっただろう。

    この動的なストーリーを予想させるようなタイトル自体が詐欺っぽい。原題は「カミーノ・アイランド」で、その地での生活に再び戻れたヒロインのノスタルジックな想いと、古くからある書店を中心とした作家コミュニティを表しているのだから。

  • 作中にさりげなくアメリカ文学が紹介されているのが嬉しい。村上春樹さんの訳というのはそんなに
    特徴がわからない。(作風的に村上色ではないのかも)比較してはいけないのだろうけども『ビブリア古書堂の事件手帖』のような文芸ミステリーを思わせた。というもののさすがに作者のコンゲーム的な仕掛けに圧巻だった。原題からはフィッツジェラルドの関係性がわからない。

  • グリシャムがフィッツジェラルドものを書いて、春樹が訳す。
    何というコラボレーション。

    プリンストン大学に保管されているフィッツジェラルドの手書き原稿がプロの窃盗集団の手によって奪われる。

    行方を追う役に白羽の矢が立ったのは新作の出せない女流作家としての人生に悶々と思い悩みつつ、大学の非常勤講師の職を今まさに失いかけるところのマーサー。
    原稿の在りかとして疑いの目が向けられているのは、フロリダ州カミーノアイランドの独立系書店のオーナー、ブルース・ケーブル。

    悩める素人女性スパイと粋な伊達男の腹の探り合いをベースとしたジェットコースター系ミステリ。
    実力あるミステリ作家としての成せる業なのか、訳者の表現力によるものなのか定かではないが、すっと馴染みつつ、薄っぺらくないストーリーテリングに、あまり好みではないジャンルの割に引き込まれ楽しく読めた。

    ダブル主役の双方を次回に向けて生かしておく結末も粋。

  • グリシャム、村上春樹そしてフィッツジェラルドとくれば、もう読むしかないのよ。さすがに一気に読んじゃうくらいに面白いです。ラストはあっさりうまくいきすぎ感あります。もうふたひねりぐらい欲しかった。

  • 登場人物が多く覚え辛かったのと、クライマックスに向かって盛り上がる感じがなかった。村上春樹氏は好きな作家だが、訳が微妙だった。

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著者プロフィール

ジョン・グリシャム
一九五五年アーカンソー州生まれ。野球選手になることを夢見て育つ。ロースクール卒業後、八一年から十年にわたり刑事事件と人身傷害訴訟を専門に弁護士として活躍し、その間にミシシッピ州下院議員も務めた。八九年『評決のとき』を出版。以後、『法律事務所』『ペリカン文書』『依頼人』『危険な弁護士』など話題作を執筆。その作品は四十ヶ国語で翻訳出版されている。

「2022年 『「グレート・ギャツビー」を追え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョン・グリシャムの作品

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