1984年に生まれて (単行本)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053559

作品紹介・あらすじ

ヒューゴー賞受賞作「折りたたみ北京」のカク景芳が描く〈中国×1984年〉。


一九八四年、春。天津市の工場でエンジニアとして働く沈智は、半年後に第一子の誕生を控えていた。ある日、友人の王老西から起業の計画を持ちかけられ、一度は断るが、自分が間もなく三十歳になること、毎日同じことを繰り返す日々を過ごしていることにふと気がつき愕然とする――



二〇〇六年、春。軽雲は父・沈智の暮らすプラハに来ていた。大学卒業を控え、十年以上会っていなかった父に留学の相談をしに来たのであった。父は優しく娘の背を押すが、結局、軽雲は覚悟を固められない。友人たちが目標に向かって邁進していくなか、軽雲は留学申請に失敗、祖父のコネで地元の統計局に職を得る。ところが、毎日同じことを繰り返す日々を過ごすうち、鬱を発症してしまう……



時代の大転換に翻弄され、ついには家族を置いて国を出る決断をした父・沈智。現代中国で自分の生き方を見失う娘・軽雲。選択しなかったもう一つの人生への憧憬。二つの時代の中国で、人生の分岐をさまよい続けた父娘が描く円環の軌跡の先に、物語は衝撃の結末を迎える!

感想・レビュー・書評

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  • 郝景芳(ハオ・ジンファン)の自伝体小説。自伝<体>ってところがミソ。
    そしてしっかりとSF!ひえー、すごい作家さん。
    「作文の授業ではしょっちゅうこういった奇妙な現実が現れた。そのうちいくつかは紙の上だけの事実だった。小さい頃から捏造を学び始めれば、それをマスターするのはいとも容易いことだ。」(p.264)ってねぇ。中国の闇は本当に深い。

    1984年に生まれた軽雲とその父の沈智。
    歴史的な転換期を迎えていた1984年。それ以前の大躍進政策、文化大革命に翻弄された祖父や父の苦悩。一方、自分の進む道を探しあぐねている経雲は混乱の後に出奔して海外にいる父に会いに行く。軽雲が抱える、自由についての問いには、同時代に生きる人間として共感してしまう。個人的には平生、こういうやついるーって感じだけど、彼の今後がかなり心配だ…。時々挟まれる0章の不思議を感じ、そして視点の妙に感服。

    ジョージ・オーウェルの1984を読んだことがなくても楽しめたけど、ウィンストンの人生も知りたいのと思って読みたくなるし、読んでからまた再読したらきっとまたさらなる面白さがあるのだろうなあ。基本的な知識として、かんたんな中国の近代史は読む前に知っておいたほうがいいです。私はyoutube学習しました。

  • 1984年に生まれて ハオ・ジンファン著 中央公論新社 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/668148

    平野 実穂 — Gallery Sumire
    http://gallerysumire.squarespace.com/jp/miho-hirano/

    1984年に生まれて|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/11/005355.html

  • 父の章で深圳に向かう列車の風景がよかった。
    生活感や、ここではないどこかに向かう高揚感の背後にどこか漂う後ろめたさ
    その後ろめたさはずっと後で明かされてそういうことかさだったのかと

    その一方で1984年に中国に生まれること、の生きづらさが僕らのそれに似ていることも驚かされるんだけど、外から眺めている(ある程度は状況を客観的にわかっている気にもなっている)側の人間としては、前の向き方が、現実と折り合いをつけるためのある種の諦めのようにも思える
    sf的展開を勝手に期待してしまったせいか、もっとダイナミックに現実に対する換骨奪胎な展開でもいいのになー、てのはある。

    しなやかさとか強さでもあるんだろうけど、その戦略を取れるのも、ある意味で限られたものだけなんだろうな、と。中国国内の内なる他者にとってはたぶんそれすら無理、というか。
    なんでもかんでも政治と結び付けたくはないけど、昨今の中国界隈の人権問題関連のニュースが頭をよぎってしまうし、1984を伏線にする以上、その読みからは逃れられないわけでちょっともやもや
    と言いながらも、一気読みしてしまうくらいに面白かったです

  • 郝景芳(ハオ・ジンファン)という、1984年生まれの著者は、訳者あとがきによれば清華大学で天体物理学を学んだあと、大学院で経済を専攻し、博士号まで取ったとなっています。そしていまは、作家活動の他、貧困家庭の子どもたちへの教育プロジェクトも運営しているとなっていますが、この本を読んでいると、思想・哲學もかなり読み込んでいるのではないかと思わせるところが多々あります。
    私は、この著者の本は初めて接しましたが、どうもSF作家として令名が高いようです。しかし、この本は著者あとがきにもあるとおり「自伝体小説」で、SF臭はありません。
    国共内戦から始まって大躍進、文化大革命、開放経済から現代を、三代にわたる家族を、時空を自由に移動しながら描いたものです。
    激動の時代は、登場人物が翻弄されている姿が描かれながらも、なぜか読んでいると極めて静的な世界でのように感じられます。
    それが一転するのは、主人公の内面の葛藤を描いたあアリで、このもがき苦しむ姿の激しさは、翻訳の良さもあるのでしょうが、驚嘆すべき筆致です。
    この重たさを前に、それなりに読むのが早いと自負している私も、予想外に時間をかけてじっくり読んでしまいました。決して読みにくというのではありません、じっくり読まさせる力を持った小説です。
    この、例えようもない才能を感じさせる小説を読んでしまうと、ちょっと、他の著作にも手を伸ばしたくなりました。

  • 「1984年」に生まれ、生きづらさを感じながら現代を生きる主人公。
    共産党体制下で数々の苦難に会う父。

    ビッグブラザーはいなくとも、体制や空気、日々の生活が我々を縛る中で、人は各々の自由を求め抗っていく。

    “They are watching you”
    ああ息苦しい。

  • 父パートと自分パートを行ったり来たりしながら、中国のここ数十年の歴史を個人を紡ぐ物語なのかなと思いきや。その歴史の片隅で生きる家族の物語なのかなと重いきや。主人公は、やりたいことがわからないとかウダウダ言ってて広義の自分探し物なのかな、面倒臭いなーなどと、まんまと思わされ。しかし、そう自伝小説ではなく、自伝「体」小説なんだった。ラストでまた私はたたまれてしまった。こう来たか。

  • 自伝体小説、「体」でおよそ400ページひっぱってそれはないだろう、という感想になったけれども、おおそうくるか!とテンションが上がる人もいるのかもしれない。

    小娘が「わかっちゃった」ステージに上がってから妙に上から目線な物言いをしだすのがまた小娘だったのかもしれないが、さんざん一方的な話をした後ですっきりされてもねえ... ちょっと距離置かせてもらいますわ... という気持ち。自分の考え方次第で世界は変わるという小娘のスタンスもあまり賛同する気にならず。この子またなんかあったらぼきっと折れそうだなあ、でも次は別の人に話を聞いてもらってね... あと、母親を顎で使うのと一方的に憐れむのはやめなさいね...

  • 「折りたたみ北京」が面白かったので、その作者の自伝「的」小説と思って読んでみた。
    ある家族3世代の人生を通して、近代の中国のリアルな庶民の生活の様子や考えなどがわかって、たいへん興味深かった。
    私は1970年代後半の生まれなので1984年生まれの作者の方が若いのに、両親の世代でも文革や改革開放などを経験している。両親の世代というとつい最近に感じてしまうので、つい最近までこんなに大変な時代だったのだということが改めて実感されて、びっくりしてしまった。そして、世代によってこれほど体験が異なっていたら、世代間で価値観や感覚を共有するのは難しいだろうなと思った。
    以前、日本のテレビ番組で、日本に出稼ぎにきている中国人の男の人を追ったドキュメンタリーを見た。自分はつつましい生活をして病院に行くお金も節約して、稼いだお金のほとんどすべてを中国の妻と娘に送っていた。帰国する費用も節約しているので、10年以上妻や娘にも会っていないと言っていた。彼の望みはただ一つ、娘が自分や妻よりも良い人生を送ること。自分の人生を犠牲にしても、次の世代がより良い人生を送ることを願う人がいるなんて思いもよらなかったので、大きな衝撃だった。この本を読んでいて、なんとなく、そのドキュメンタリーの中国人男性のことを思い出した。

    作者の小さいころにはすでに海賊版で日本や香港、台湾の音楽や漫画(ドラえもんやベルばらなど)が出回っていて庶民も楽しんでいた等、1980年代のリアルな中国の日常が垣間見えたのも興味深かった。2000年代の大学生の生活なども、思ったよりも私たちと違わないという発見があって面白かった。

    …という風に読み進めていったら、最後に「え?」という仕掛けがあって、さすがSF作家だなと思ったし、私などにはとても追いつけないような頭の良い人だと思った。
    これは、自伝「的」じゃなくて、自伝「体」小説なんだそうだ。
    こんなこと書いちゃって当局に目をつけられたりしないんだろうかと心配してしまうような箇所もあったので、あくまで自伝風の小説ということにしておいた方がよいのかなと穿った解釈までしてしまったが…

    文庫になったら買って、また読んでみたい。

  • 1984年。ジョージ・オーウェルの「1984年」、中国の1984年は都市、港が解放され、銀行と企業の改革が行われた。その分岐点と言うべく年に軽雲は生まれた。そして父の沈智は妻と娘の元を出奔した。父の時代の話と軽雲の現在の時代の話が入れ替わりながら綴られる。地方に下放されて苦労し、結婚してからでも、少しでも良い生活をと努力する父と母。新たな時代で自分の進む道を探しあぐねている娘。二つの時代を生きる父と娘。不思議な雰囲気の小説だが、面白かった。

  • 自意識について、極めて生真面目に、というか、恐ろしく誠実かつ明晰に考え、それがこの上なく率直に語られている。小説としては、構成がかっちりし過ぎているのかもしれないが、自我と世界について、こんなにうまく語られたのを見たことはない。また、改革開放から現在に至るまでの中国の社会状況を知る上でも有用。ちなみに、「訳者あとがき」はネタバレなところがあるので、後から読んだ方がよい。

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著者プロフィール

1984年、中国・天津生まれ。2006年に清華大学物理学科を卒業後、同大天体物理センターを経て同大経営学部で経済学の博士号を取得。高校在学中の2002年に30歳以下を対象とした「新概念作文大賽」で一等賞を受賞し頭角を現す。2006年からSF作品の執筆を始める。2007年、「祖母家的夏天(おばあちゃんの家の夏)」が銀河賞の読者ノミネート賞を受賞。社会科学に関心を抱きはじめ、博士課程は清華大学経済管理学院に学び、2013年に国際貿易研究で博士号を取得した。長篇小説『流浪蒼穹(蒼穹の流浪)』(2016年)、短篇集『去遠方(遠くへ行くんだ)』、本書『孤獨深處(孤独の底で)』(2016年)のほか、紀行エッセイ『時光裡的欧洲(時間の中のヨーロッパ)』(2012年)が単行本として刊行されている。
2014年に発表した本書収録作「北京 折りたたみの都市」は中国系アメリカ人作家のケン・リュウによって2015年に英訳され、2016年、ヒューゴー賞(中篇小説部門)を受賞した。

「2019年 『郝景芳短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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