1984年に生まれて (単行本)

  • 中央公論新社 (2020年11月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784120053559

作品紹介・あらすじ

ヒューゴー賞受賞作「折りたたみ北京」のカク景芳が描く〈中国×1984年〉。


一九八四年、春。天津市の工場でエンジニアとして働く沈智は、半年後に第一子の誕生を控えていた。ある日、友人の王老西から起業の計画を持ちかけられ、一度は断るが、自分が間もなく三十歳になること、毎日同じことを繰り返す日々を過ごしていることにふと気がつき愕然とする――



二〇〇六年、春。軽雲は父・沈智の暮らすプラハに来ていた。大学卒業を控え、十年以上会っていなかった父に留学の相談をしに来たのであった。父は優しく娘の背を押すが、結局、軽雲は覚悟を固められない。友人たちが目標に向かって邁進していくなか、軽雲は留学申請に失敗、祖父のコネで地元の統計局に職を得る。ところが、毎日同じことを繰り返す日々を過ごすうち、鬱を発症してしまう……



時代の大転換に翻弄され、ついには家族を置いて国を出る決断をした父・沈智。現代中国で自分の生き方を見失う娘・軽雲。選択しなかったもう一つの人生への憧憬。二つの時代の中国で、人生の分岐をさまよい続けた父娘が描く円環の軌跡の先に、物語は衝撃の結末を迎える!

感想・レビュー・書評

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  • 郝景芳『1984年に生まれて』(中央公論新社)を読了。再チャレンジ。「自伝体」小説。最初は、取っ付き難く、サクサクとは読めないが、読み進めると、じわじわと感動が広がる。SF「折りたたみ北京」の著者。
    著者の郝景芳、装画を担当した平野美穂、共に1984年生まれ。

  • 1984年に生まれた私(軽雲)の自伝「体」小説。
    本書は中国版純文学という感じで、刺さる人にはすごく刺さりそうな内容だなと思った。自分はすごく好きです。
    ジョージ・オーウェルの『1984年』に出てくるウィンストンが登場したり、政治体制など似通っている部分があるのは、私たちの目の前の世界は別の世界(たとえば『1984年』)の結末だということを作者は言いたかったとのこと。
    ただ自分は純粋に「私」の自伝体小説としても楽しめた。物語の流れとしては一章の中に昔の父パートと現代の私パートがあり、時間が進んでいくという形。父のパートが特に良くて、最後の17章なんかとても良かった。こちらまで胸がしめつけられるような描写はこの作者の力量によるものだと思う。この作者の他の作品がとても気になりました!(そもそもSF作家として有名だというのだからびっくり)

  • 郝景芳(ハオ・ジンファン)の自伝体小説。自伝<体>ってところがミソ。
    そしてしっかりとSF!ひえー、すごい作家さん。
    「作文の授業ではしょっちゅうこういった奇妙な現実が現れた。そのうちいくつかは紙の上だけの事実だった。小さい頃から捏造を学び始めれば、それをマスターするのはいとも容易いことだ。」(p.264)ってねぇ。中国の闇は本当に深い。

    1984年に生まれた軽雲とその父の沈智。
    歴史的な転換期を迎えていた1984年。それ以前の大躍進政策、文化大革命に翻弄された祖父や父の苦悩。一方、自分の進む道を探しあぐねている経雲は混乱の後に出奔して海外にいる父に会いに行く。軽雲が抱える、自由についての問いには、同時代に生きる人間として共感してしまう。個人的には平生、こういうやついるーって感じだけど、彼の今後がかなり心配だ…。時々挟まれる0章の不思議を感じ、そして視点の妙に感服。

    ジョージ・オーウェルの1984を読んだことがなくても楽しめたけど、ウィンストンの人生も知りたいのと思って読みたくなるし、読んでからまた再読したらきっとまたさらなる面白さがあるのだろうなあ。基本的な知識として、かんたんな中国の近代史は読む前に知っておいたほうがいいです。私はyoutube学習しました。

  • 1984年に生まれて ハオ・ジンファン著 中央公論新社 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/668148

    平野 実穂 — Gallery Sumire
    http://gallerysumire.squarespace.com/jp/miho-hirano/

    1984年に生まれて|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/11/005355.html

  • 父の章で深圳に向かう列車の風景がよかった。
    生活感や、ここではないどこかに向かう高揚感の背後にどこか漂う後ろめたさ
    その後ろめたさはずっと後で明かされてそういうことかさだったのかと

    その一方で1984年に中国に生まれること、の生きづらさが僕らのそれに似ていることも驚かされるんだけど、外から眺めている(ある程度は状況を客観的にわかっている気にもなっている)側の人間としては、前の向き方が、現実と折り合いをつけるためのある種の諦めのようにも思える
    sf的展開を勝手に期待してしまったせいか、もっとダイナミックに現実に対する換骨奪胎な展開でもいいのになー、てのはある。

    しなやかさとか強さでもあるんだろうけど、その戦略を取れるのも、ある意味で限られたものだけなんだろうな、と。中国国内の内なる他者にとってはたぶんそれすら無理、というか。
    なんでもかんでも政治と結び付けたくはないけど、昨今の中国界隈の人権問題関連のニュースが頭をよぎってしまうし、1984を伏線にする以上、その読みからは逃れられないわけでちょっともやもや
    と言いながらも、一気読みしてしまうくらいに面白かったです

  • 郝景芳(ハオ・ジンファン)という、1984年生まれの著者は、訳者あとがきによれば清華大学で天体物理学を学んだあと、大学院で経済を専攻し、博士号まで取ったとなっています。そしていまは、作家活動の他、貧困家庭の子どもたちへの教育プロジェクトも運営しているとなっていますが、この本を読んでいると、思想・哲學もかなり読み込んでいるのではないかと思わせるところが多々あります。
    私は、この著者の本は初めて接しましたが、どうもSF作家として令名が高いようです。しかし、この本は著者あとがきにもあるとおり「自伝体小説」で、SF臭はありません。
    国共内戦から始まって大躍進、文化大革命、開放経済から現代を、三代にわたる家族を、時空を自由に移動しながら描いたものです。
    激動の時代は、登場人物が翻弄されている姿が描かれながらも、なぜか読んでいると極めて静的な世界でのように感じられます。
    それが一転するのは、主人公の内面の葛藤を描いたあアリで、このもがき苦しむ姿の激しさは、翻訳の良さもあるのでしょうが、驚嘆すべき筆致です。
    この重たさを前に、それなりに読むのが早いと自負している私も、予想外に時間をかけてじっくり読んでしまいました。決して読みにくというのではありません、じっくり読まさせる力を持った小説です。
    この、例えようもない才能を感じさせる小説を読んでしまうと、ちょっと、他の著作にも手を伸ばしたくなりました。

  • 「1984年」に生まれ、生きづらさを感じながら現代を生きる主人公。
    共産党体制下で数々の苦難に会う父。

    ビッグブラザーはいなくとも、体制や空気、日々の生活が我々を縛る中で、人は各々の自由を求め抗っていく。

    “They are watching you”
    ああ息苦しい。

  • 父パートと自分パートを行ったり来たりしながら、中国のここ数十年の歴史を個人を紡ぐ物語なのかなと思いきや。その歴史の片隅で生きる家族の物語なのかなと重いきや。主人公は、やりたいことがわからないとかウダウダ言ってて広義の自分探し物なのかな、面倒臭いなーなどと、まんまと思わされ。しかし、そう自伝小説ではなく、自伝「体」小説なんだった。ラストでまた私はたたまれてしまった。こう来たか。

  • 自意識について、極めて生真面目に、というか、恐ろしく誠実かつ明晰に考え、それがこの上なく率直に語られている。小説としては、構成がかっちりし過ぎているのかもしれないが、自我と世界について、こんなにうまく語られたのを見たことはない。また、改革開放から現在に至るまでの中国の社会状況を知る上でも有用。ちなみに、「訳者あとがき」はネタバレなところがあるので、後から読んだ方がよい。

  • 自伝体小説、「体」でおよそ400ページひっぱってそれはないだろう、という感想になったけれども、おおそうくるか!とテンションが上がる人もいるのかもしれない。

    小娘が「わかっちゃった」ステージに上がってから妙に上から目線な物言いをしだすのがまた小娘だったのかもしれないが、さんざん一方的な話をした後ですっきりされてもねえ... ちょっと距離置かせてもらいますわ... という気持ち。自分の考え方次第で世界は変わるという小娘のスタンスもあまり賛同する気にならず。この子またなんかあったらぼきっと折れそうだなあ、でも次は別の人に話を聞いてもらってね... あと、母親を顎で使うのと一方的に憐れむのはやめなさいね...

  • 言葉にできない。不思議とも違うし、哲学のような、今まで感じたことのない感覚をもつ小説でした。

    中国で資本主義化が始まったという1984年に生まれた主人公と、文化大革命を経験した父の物語。
    時代、社会の中でどうしようもないこと、現代を生きる中でも価値観や格差、競争の中での生きづらさ。
    読んでいると苦しくなるばかりなのだけれど..
    主人公と共に自由について考え、本当の自由に気づいていき…主人公が悩み、心病み、どん底を味わい苦しみ、そこから自ら気づき立ち上がって進んでいく姿に心震えました。
    13章目。
    洪水のように溢れる言葉たちに衝撃を受ける..胸にどすんと響くような。

    「自由っていうのはとどのつまり心の中のことだから。」

    著者の自伝的小説ということで、中国の社会で生きる人々のリアルな様子、リアルな気持ちが描写されていてすごく興味深かったし、知ることができてよかったです。

    また、翻訳の言葉や文章がとても綺麗で、すっと入ってくるのが心地よかったです。

    「人の理性的選択というのは、目にしたものすべての中で最も合理的に見えるものを選択してそれを信じること、それから目にしたあらゆる方法の中で最も理知的と思われるやり方でそれを行うこと。このプロセスで一番大切なのは、実はどうやって選択したかということではなく、何を見たかということ。」

    「これまで私は仕事というものをひどく誤解していた。どの仕事にも事実の美しさというものが存在することが見えていなかった。事実の美しさに深く分け入って初めてその意味の美しさが目に入るのだ。もう少し早くこのことがわかっていたならば、こんなに回り道をしなくて済んだかもしれなかった。ただ話を元に戻すとら心の中に目を向けてみれば、この世には回り道などないのである。」

  • 「折りたたみ北京」が面白かったので、その作者の自伝「的」小説と思って読んでみた。
    ある家族3世代の人生を通して、近代の中国のリアルな庶民の生活の様子や考えなどがわかって、たいへん興味深かった。
    私は1970年代後半の生まれなので1984年生まれの作者の方が若いのに、両親の世代でも文革や改革開放などを経験している。両親の世代というとつい最近に感じてしまうので、つい最近までこんなに大変な時代だったのだということが改めて実感されて、びっくりしてしまった。そして、世代によってこれほど体験が異なっていたら、世代間で価値観や感覚を共有するのは難しいだろうなと思った。
    以前、日本のテレビ番組で、日本に出稼ぎにきている中国人の男の人を追ったドキュメンタリーを見た。自分はつつましい生活をして病院に行くお金も節約して、稼いだお金のほとんどすべてを中国の妻と娘に送っていた。帰国する費用も節約しているので、10年以上妻や娘にも会っていないと言っていた。彼の望みはただ一つ、娘が自分や妻よりも良い人生を送ること。自分の人生を犠牲にしても、次の世代がより良い人生を送ることを願う人がいるなんて思いもよらなかったので、大きな衝撃だった。この本を読んでいて、なんとなく、そのドキュメンタリーの中国人男性のことを思い出した。

    作者の小さいころにはすでに海賊版で日本や香港、台湾の音楽や漫画(ドラえもんやベルばらなど)が出回っていて庶民も楽しんでいた等、1980年代のリアルな中国の日常が垣間見えたのも興味深かった。2000年代の大学生の生活なども、思ったよりも私たちと違わないという発見があって面白かった。

    …という風に読み進めていったら、最後に「え?」という仕掛けがあって、さすがSF作家だなと思ったし、私などにはとても追いつけないような頭の良い人だと思った。
    これは、自伝「的」じゃなくて、自伝「体」小説なんだそうだ。
    こんなこと書いちゃって当局に目をつけられたりしないんだろうかと心配してしまうような箇所もあったので、あくまで自伝風の小説ということにしておいた方がよいのかなと穿った解釈までしてしまったが…

    文庫になったら買って、また読んでみたい。

  • 1984年。ジョージ・オーウェルの「1984年」、中国の1984年は都市、港が解放され、銀行と企業の改革が行われた。その分岐点と言うべく年に軽雲は生まれた。そして父の沈智は妻と娘の元を出奔した。父の時代の話と軽雲の現在の時代の話が入れ替わりながら綴られる。地方に下放されて苦労し、結婚してからでも、少しでも良い生活をと努力する父と母。新たな時代で自分の進む道を探しあぐねている娘。二つの時代を生きる父と娘。不思議な雰囲気の小説だが、面白かった。

  • P223ギブアップ
    後ろ向きの内面をずっと語られるとしんどい

  •  表紙と装丁に惹かれて本屋さんで偶然手に取ったのだけれど、とんでもなく素晴らしい小説に出会えました。一日一章ずつ、ゆっくり味わって読みましたが、じんわりくるというか、奥行きがあるというか、重層性があるというか、そういう感じが自然に滲んでるお話で、もう虜です。こんなにloveと思ってしまえる文芸書は今年初めて。しかも偶然見つけるという出会い。
     中国文学を読むのは多分初めてでしたが(高校の時の漢文以来?)、今後、アンテナ広げて色々読んでみたくなりました。

  • 深い!
    自伝的小説のリアリティがこの深みを生むのだろうか。その代わり、心のヒダまで表現するような文章の波とたわむれることになるので、流し読みはできません。どっぷりと浸かるしかない。

  • ふむ

  • 1984年に生まれた女性の半生が自伝の形で綴られた長編小説です。彼女の抱える苦悩と鬱屈、社会へ自分自身を馴染ませることへの抑圧感などを、中国の近代社会の変遷を背景に綿密に描いています。

    作中には彼女自身の半生だけでなく、その父親の人生も描かれています。現在の彼女の視点では自由人であるかのような父親が、どのような人生を送っていたのかがわかるにつれて、彼自身もその時代のさまざまなものと闘ってきたのだと知れます。

    このふたりの半生を重ねてつづりあげて一つの道筋を示す過程だけでも相当な読み応えなのですが、最終章にひとひねり加えられていることで、収束したかに見えた物語にもう一つ大きな環が加わります。このスパイスを加えた、作者自身の視野の広さ、物語を作りあげるという技のダイナミックさが凄いな、と感じました。

    さまざまな規制が強まる中で、この作品も相当に気を遣いながら描写されているように感じました。その社会の生きにくさをダイレクトに感じる中で、ひとりの女性が「自由」を獲得し、生き直していく姿を描いたことは、ひとつのメッセージなのかもしれないとも思いました。

    訳文がとても滑らかな文章で、傍注も細かく入っていて、読みやすさが常にありました。翻訳に尽力された方々へも敬意を示したいです。

  • 折りたたみ北京で著者の作品に初めて触れて、今回こちらを読んでみた。
    折りたたみ北京の紹介やこの本のあとがきにもある通り、SFと文学、その両ジャンルを素晴らしい形で両立させていると感じた。

    恥ずかしながらオーウェルの1984年は、読んだ当時自分にはまだ難解すぎて理解がほとんどできなかった。
    今作は1984年ほどではないにしても、読むのにかなり時間を要してしまって、途中から小説なのか自伝なのかよく分からなくなったまま読み進めており、最終章のウィンストンとの対話シーンによってようやく小説、しかもSF小説であったことを思い出した。

    SF的要素が描写に占める割合はかなり小さいものの、最後は見事にSFとして成立させていて、読み終わった後、素直にやられた…と思った。(もちろん良い意味で)

  • 文学ラジオ空飛び猫たち第37回紹介本。 郝景芳は1984年生まれの中国を代表するSF作家。「折りたたみ北京」で知られています。今作は自伝体小説。ジョージ・オーウェルの「1984」へのオマージュでありながらほぼ純文学です。中国の歴史に翻弄される父と、2000年代に生きる娘の長い道のりの物語。自由とは何か?を考えされられます。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/37-1984-ev4dud

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著者プロフィール

1961年東京都生まれ。中国文学者、慶應義塾大学教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中国文学専攻単位取得退学。東京大学文学部助手、慶應義塾大学商学部准教授などを経て現職。訳書に『迷いの園』(李昴著)『別れの儀式』(楊絳著)『黄金時代』(王小波著)『フーガ 黒い太陽』(洪凌著)などがある。

「2020年 『1984年に生まれて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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