クラゲ・アイランドの夜明け (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.30
  • (5)
  • (10)
  • (23)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 190
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053665

作品紹介・あらすじ

クラゲが好きだったあの子は、どうして死んだんだろう?



殺人、傷害、交通事故、違法薬物、違法労働、虐待、自殺者がゼロの海上コロニー――通称《楽園》。

その七つのゼロをはじめて「自殺」で破った少女・ミサキ。

彼女の死に疑問を抱いた僕は、彼女の行動を探りはじめる。そこには、七日前に現れた新種のクラゲが関係していた?



気鋭作家・渡辺優の描く、新世界。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 期待していたどおりの面白さ!
    突然の近未来設定と、当然のように進んでいくSFチックな話に1度困惑。しかし、読み進めるうちにだんだん想像力が刺激されていった





    ルナはよくナツオのことを優柔不断だと言っていたが、ミサキもそう思ってたのか?

    最終的にコロニーから2人で脱出するのではなく、自殺という選択をしたのも、ナツオに世界をも揺るがすような大きな決断をさせたかったからなのだろうか。

    あと、コロニーの中の状況や陰謀論、オンライン授業など、非常にこのコロナ禍と似通った環境が設定されていて興味深い。

  • ブックオフで表紙とタイトルに惹かれて購入です。

    岩手の沖に建設された海上コロニーという、SF的な舞台設定。そこで、新種の猛毒クラゲが確認され、街はパニック状態に。そんななか、ミサキという少女が自殺し、友人のナツオはそれを目撃しますが、どうやらコロニーを管理している「セントラル」に隠蔽されてしまった様子。自分の意見が持てず、クラゲのように流されながら生きているナツオはミサキが自殺した理由を知るために、走り回りますが……。

    コロニーに移住してきた人々は、抽選によって選ばれ、厳しい条件のもとではあるのですが、ベーシックインカムをもらいながら悠々と暮らしています。当然、本土の人から羨望と嫌悪(これらは裏返しである!)の目線を受けます。このコロニーはそういう意味ではマイノリティコミュニティの象徴とも捉えられるでしょう。そこでは、不都合なことは「起こってはいけない」。統制されています。平穏な社会は大きな事件によってかき乱され、本土とコロニーの対立、互いへの猜疑心が描かれますが、実のところ、どちらに住んでいるのも、ごく普通の、ありふれた人間でしかないことがが示されていきます。このことは、現実のマイノリティコミュニティについての示唆を与えているようです。
    マジョリティが思っているより、マイノリティ側の人間は普通の生活をする普通の個人であるし、マイノリティが思っているよりもマジョリティはプラクティカルな(イデオロギーではない)世界に生きているのです。

  • 海上フロートコロニーに住む少年少女の話
    インターネット黎明期が60年前らしいから現在より3〜40年後の近未来かな
    コロニーに毒性の強いクラゲが現れる
    序盤主人公かと思った少女ミサキがあっけなく亡くなり、その葬儀からミサキの幼馴染少年ナツオの一人称でミサキの自殺の真相を知るための物語が動き出す
    楽園=ディストピアかつ実験場(?)
    クラゲ=ナツオ(?)
    ゲノム編集
    ミサキはクラゲを見に行き、ナツオの眼前で自らの意思で海に落ちてクラゲの毒で死ぬ
    楽園政府セントラルは自殺ではなく事故死とする

  • 渡辺優さんの作品って、主人公が個性的なことが多くておもしろい。『ラメルノエリキサ』しかり、『きみがいた世界は完璧でした、が』しかり。この作品もクラゲ大好きな女子高生が出てきますが、どうすればそういう発想が生まれるのか不思議。近未来の世界で、世界観が分かるまでにちょっと時間がかかったので、もっと前半にそのあたりがわかるとよかったかも。

  • クラゲがキーワードで何かの暗喩かと思いきや、本当に巨大クラゲが襲ってくる話。面白いのだが、最後が??少年が大人になったって事かな?

  • クラゲが好きだったあの子は、どうして《楽園》での最初の死者になったのか? 七色に光りる新種のクラゲが、世界を変えていく。

  • 地球温暖化など様々なリスクを回避するため、プロジェクトとして岩手県沿岸の海上にコロニーという名の町を作った。通称「楽園」。発足して7年。殺人や傷害など7つの項目で件数はゼロ状態だった。しかし、ナツオの友人・ミサキが自分の目の前で海に自ら飛び込んだ。でも楽園を管理するセントラルは、これを否定し、事故死として処理された。何故?
    ナツオは死の真相を探るため、彼女の生前の行動を調査することに。次々と分かってくる空白の時間。そこにはクラゲがキーワードとなって明らかになっていきます。
    一方、楽園では新種のクラゲが発生。毒で人を殺すという。ジワジワと楽園に襲いかかってくるクラゲや悪天候。
    「楽園」としての理想が段々と剥がれていきます。

    海上に「町」ができるという近未来的な話でしたが、現実の未来でもありそうな話で面白かったです。「楽園」としての理想と現実や本土との格差、二つの陸と海で見えてくるメリット・デメリット。同じ日本なのに住む所が違うことで生まれる比較に人間の欲望や嫉妬などが渦巻いていて、共存することの難しさを感じました。
    また、人間が手を施すことで自然界のバランスが崩れていく現実に考えさせる場面がありました。

    この作品のキーワードとなっているクラゲ。クラゲの描写が時に美しく、時に残酷に、時に幻想的に描かれていて、クラゲの様々な一面を味わえました。
    登場人物に着目すると、主人公のナツオは最初は辿々しかった雰囲気だったのに終わる時には、芯のしっかりした青年に成長していくので、心の変化も楽しめました。

    一応、ミサキの死の真相は分かったのですが、それ以外の「楽園」の今後の事などがわからないまま終わったので、モヤモヤ感満載でした。「え?ここで終わり?」とつい思ってしまいました。果たしてプロジェクトは継続するのか?ついつい続きが気になってしまいました。

  • 読み切るのが寂しくなる本

    また読めばいいかって
    ことじゃないくらい儚い物語だった

    読んでる途中から
    これは初読が肝心だと感じて
    ゆっくり読んだ
    特に最後の数ページは
    ゆっくりゆっくり読んだよ

  • 【9月読み終わり】
    こういうのめっちゃ好き。表紙の青さに惹かれたのと、帯の「死にたいっておもったこと、ない?」の謎に惹かれて、購入した。少年の身になって、ノートにメモ解析するほど、ハマっていった。

  • なにも煩わしいことのない海上コロニー「楽園」に住む人々。そこで大量のクラゲ発生事件がおきる。まもなくして、ある少女が自殺をする。
    友人であった少年は、亡くなった少女から一通のメールを受け取ることになり、少女が自殺した理由を解き明かそうとする。
    と、いう所謂SF、青春、ファンタジー的な話かと思いきや、自殺した少女をとりまく人達(大人子供かかわらず)の人間性を深掘りしたような作品でした。
    文章自体もするする読めて、内容も入ってきやすいので、漂うクラゲのように何も考えたくない時に読むことをおすすめします

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1981年静岡県生まれ。天理大学人間学部宗教学科講師。東京大学文学部卒業,東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了,博士(文学)。2011-2013年,フランス政府給費留学生としてパリ・イエズス会神学部(Centre Sèvres),社会科学高等研究院(EHESS)に留学。2014年4月より現職。専門は宗教学,とくに近世西欧神秘主義研究,現代神学・教学研究。訳書に,『キリスト教の歴史 ―― 現代をよりよく理解するために』(共訳,藤原書店,2010年),論文に「もうひとつのエクスタシー ―― 「神秘主義」再考のために」(『ロザリウム・ミュスティクム:女性神秘思想研究』第1号,2013年),「教祖の身体 ―― 中山みき考」(『共生学』第10号,2015年)など。

「2016年 『ジャン=ジョゼフ・スュラン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

渡辺優の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×