文明の庫 I 静止から運動へ (単行本)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053900

作品紹介・あらすじ

江戸時代中期から明治維新前後、西洋文明との邂逅により新技術・新知識がもたらされ、さまざまな知識人の旺盛な好奇心と自由な精神が発露した。本書は、蘭学・博物学・美術など文化の諸相に比較文化の視点からアプローチし――たとえばデューラーと谷文晁、宝島』の作者スティーブンソン描く吉田松陰の肖像など――、それらを密接に結びつけて論ずる中で「パクス・トクガワーナ(徳川の平和)」の姿がダイナミックに浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • ザ・総合人間な本を久々に読んだ。橋本五郎さんのオススメ、やっぱり手強い。そもそも知識の引き出しが凄まじくて追いつけない。

    幕末から明治にかけ、日本で芽吹いた西洋文明の数々。ダイナミックに常識が変わる時代の中で、必死に知の体系をアップデートしようとした「知識人」たちの歩みを探る論文集。

    庫(くら)。同じ言葉でも、蔵とか倉と書くと、何となくアーカイブ的な、保存される印象だけど、庫という漢字にはどこかまだアクティブなイメージがある。車庫とか書庫とか、往来がある感じ。「文明の庫」とは幸田露伴の言葉だそうな。今となっては昔の教養にすぎないけれど、当時は最先端の学問だった蘭学や西洋文化を吸収しアウトプットしてくれた研究者たちの存在。彼らを国やジャンルを超えて読み解くのは生半可な作業ではないはずだ。さまざまな文献に残された一つ一つの言葉(テキスト)への敬意が、日本のカラフルで豊かな学問ガラパゴスを浮き彫りにする。実学に偏りすぎない教養学者ならではの愛にあふれた本という感じ。

    犀の章が良かった。こういう本を余裕を持って読める老後を過ごしたい。時間ができたらもう一度チャレンジしたい(けどやっぱり今はちょっとしんどい)。

  •  本書ⅠⅡ所収論考の初出が50年も昔のものが半数以上あるが、それでも今日もなお説得力と輝きをもって迫ってくるのは驚きである。これは芳賀氏が原資料と真っ向から取っ組み合って生まれた研究成果だからこそ持つ力なのであろう。

  • 平賀源内、杉田玄白、司馬江漢……徳川日本の知的戦士たちによって時代は静かに目覚め始める。比較文学の泰斗の集大成、十八世紀篇。

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著者プロフィール

芳賀 徹(はが・とおる):1931?2020年。東京大学教養学部教養学科卒、同大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化専攻博士課程修了。博士(文学)。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授、日本藝術院会員。プリンストン大学客員研究員、京都造形芸術大学学長、静岡県立美術館館長などを歴任した。主な著書に『絵画の領分──近代日本比較文化史研究』(大佛次郎賞)、『文明としての徳川日本──一六〇三─一八五三年』(恩賜賞・日本芸術院賞)、『外交官の文章──もう一つの近代日本比較文化史』などがある。

「2023年 『平賀源内』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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