- Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120055157
作品紹介・あらすじ
直木賞受賞第一作
昌幸、信之、幸村の真田父子と、徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永らの思惑が交錯する大坂の陣――男たちの陰影が鮮やかに照らし出されるミステリアスな戦国万華鏡。
誰も知らない真田幸村
神秘のベールに包まれた武将の謎を、いま最も旬な作家が斬る!
七人の男たちが、口々に叫んだ――幸村を討て!
彼らには、討たなければならないそれぞれの理由が……。
感想・レビュー・書評
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今村翔吾さん「幸村を討て」
「じんかん」がとても素晴らしかったので立て続けて3作品目に突入。
舞台は大阪の陣、あの有名な真田幸村の奮闘の影で何が、そして誰がどう関わっていたのか?
現代まで当時の「真田」の名が何故色濃く残っているのか、その真相が描かれている物語。
徳川家康や伊達政宗を含め6人の大阪の陣の逸話を綴り、その謎に迫る連作短編集。
まず構成が素晴らしい。
兄源三郎と弟源二郎の名前に困惑するのだが、各章の間に信幸と信繁の兄弟の幼少期のエピソードを挟み、父昌幸、主君武田信玄との関係がよく分かる。
真田家の武田家に対する厚い思い、御屋形様と慕う信玄公の愛情と人間味が好感を誘う。
そして信幸が信之、信繁が幸村へと改名する、この信玄公の「信」真田家の「幸」の字に纏わる二人の命運。
決死の覚悟の表れが正に「名は体を表す」という字の如く。
その「名」とその「体」とは何か?という事に見事に準えた作品だった。
この作品では大阪で戦う幸村の影で江戸にいる信之が黒幕として指示内通していたという物語だったが、さもあり得る話にも感じる。
こういう突飛な逸話を描ける作者に脱帽。ただの歴史小説と一線を画している。
物語の佳境、家康と信之が江戸城にて真相を巡り攻防を繰り広げる展開、この両者の立ち回りはお見事としか言いようがない。
今までの伏線回収にもなりながら、お互いの腹の探りあい、一言一句はき違えられない、その一言一言の間合いもが緊張に飲み込まれる様。
江戸城での家康と信之のこの向かい合い繰り広げた談義こそが長き戦国時代最後の戦い、即ち平定の幕開けなのだと感じさせられた。
家康も素晴らしい人物像として描かれており、やはり天下人の器と器量を覗かせて物語は終わる。
最高だった。
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真田幸村を中心にここまで大阪の陣を分厚く扱った作品は過去ないのでは。
勇猛果敢なイメージの幸村を、ミステリアスな切り口で描く妙はさすが今村 翔吾といえる。
信長の野望にハマっている自分としては、武将が出てくるたびにステータス確認をしてしまった笑 ★4.2-
2023/03/11
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2023/03/11
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かなりの大作だったのですがあっと言う間に読み終えてしまいました
大阪の陣の裏側で仕組まれた真田家の宿願を6人の武将の視点からつまびらかにしていくという構成になっています
連作短編のような形態も取りつつ終盤に向けてスピード感が上がっていく筆運びは見事としかいいようがありません
石田三成の人となりを賤ヶ岳の七本槍の視点から描いた傑作『八本目の槍』を読んたときにも感じたんですが今村翔吾さんの描く歴史と相対するときに史実(と言われているもの)とどういう距離感でいればいいのかちょっと悩みますよね
例えば本作の真田幸村の人物像は史実とはちょっとかけ離れているように思います
それを本当はそういう人だったんだーと捉えるのかいやこれは今村翔吾さんの創作だよ舞台を借りただけで全く別の人物だよと捉えるのかです
ちなみに自分は後者で、本作もなるべくこれまでに積み上がった己の中の真田幸村を排除しながら読み進めようとしたのですが…
まぁ無理ですよねw
そもそもそんなことをしたら本作が楽しめないし、それだったら真田幸村である必要がないんですよね
日本人の中にある(ある程度共通してある)真田幸村のイメージを崩すところが物語の面白いところなのに
本当はこんな企みもあったのかもねってところが面白味なんだよね
んーでもやっぱり戦国武将好きとしては許せないところがけっこうあるんだよなー
の割に★5じゃないかって?
それとこれとは別w(別なんかい!) -
緊張感の一冊。
右も左もわからない物語の戦場にぶち込まれ不安。
が、やっぱり今村さんは巧い。
血生臭い時代の武将たちにも熱き血と息を吹き込み丁寧に描き、揺れる心情、幸村との交わり、思惑の交錯を盛り込み、存分にリードし魅了してくれた。
武力だけでなく知力も物を言う時代、言葉尻一つが己の命運をわける。
問答一つに対しての瞬時の言葉選びには緊張感と感嘆の吐息。
終章は特に緊張感溢れる家康と信之の一幕。
見事な最終戦だ。
ピンと張り詰めた空気が心離さない。
思わず、青い空に真田色の赤い絆の線をひとすじ描きたくなる幕閉じに拍手喝采。 -
直木賞受賞 第一作
大阪の陣
勝つ見込みが、一分もない状況で、大阪方に味方するのは、恩顧の為か、それとも、後世に名を残す為か、それとも、手柄を上げ、自己を高く評価させ、徳川方に寝返る為か。
織田有楽斎・南条元忠・後藤又兵衛・伊達政宗・毛利勝永・そして、徳川家康が、それぞれの思惑で、
「幸村を討て」と叫ぶ。
大阪の陣の後、真田昌幸・信之・幸村親子の企みを明らかにしようと、家康と正信は、信之を追い詰めるが、そこは、真田が一枚上手。
「三度、負けか」と家康が呟く。
戦国の武と知と思惑が交錯して、壮大な物語となっている。
奈良県宇陀市にある、後藤又兵衛が、近郷の者に勧められて、枝垂れ桜を手ずから植えた「又兵衛桜」と呼ばれ有名になっている枝垂れ桜に触れているのが、奈良県出身として、ちょっと嬉しい。
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本作は読みたい本の一冊にあげています。『じんかん』が印象に残っています。
先日図書館に予約していた『塞王の楯』が今、手元に入ったばかり。た...本作は読みたい本の一冊にあげています。『じんかん』が印象に残っています。
先日図書館に予約していた『塞王の楯』が今、手元に入ったばかり。たまたま4年前に旅行し、実際の堅固な石垣を見て説明を読んだ時からずっと気になっていたのですが、今村さんに書いてもらい更に驚きました。
幸村は好きなのでいつか読むつもりです。2022/06/09 -
しずくさん、こんにちは。
今村先生の作品が好きで、単行本から文庫本まで追いかけています(^.^)
『じんかん』も良かったですよね〜。
『塞...しずくさん、こんにちは。
今村先生の作品が好きで、単行本から文庫本まで追いかけています(^.^)
『じんかん』も良かったですよね〜。
『塞王の盾』も職人魂に圧倒されました。私も実際の石垣を見てみたいです。
『幸村を討て』もぜひ読んでみてくださいね。
コメントをありがとうございました(*^^*)2022/06/09
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構成の妙。幸村と兄との話を間にはさみながら幸村と関わる男たちを描く。
家康の真田への怯え、有楽斎に不可解な行動、南条の忍びとの関係、又兵衛の功名心、正宗の男気、勝永の秘めた思いが順番に幸村との関係で描かれ、最後に真田信之と家康・正信の勝負で全てを回収する。順に話を熱く盛り上げていき、最後の真田家と家康との緊張感Max勝負で振返りつつ、終息(回収)する。
見事な展開。非常に面白かった。 -
いかにせん長い…。
そして私には何が何だか途中から理解できなくなり、8割強過ぎから飛ばし読み。
長い…。
毛利勝永という人物を私は知らなかったが、その人と淀殿との話は切なかった。
大河ドラマの『真田丸』は観たし、大阪に遊びに行った時にひとり街ランをして茶臼山と真田丸跡周辺と大阪城との距離感を体感したこともあったが、本書を読んでも真田幸村の生涯のことを思い出せない。 -
作者の方がテレビのコメンテーターをやられていたときに、何かおめでたいニュースがあって、コメントしつつ涙されていた姿を拝見して興味を持ちました。
なかなかの大作でしたが、一気に読了。
愛がある。 もちろん、全ての登場人物にでは無いけど、愛を感じる。
枯れ草シニアの心にも響き、胸の奥が熱くなる。
久々の感覚。
出会えて良かった一冊になりました。