本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784120055881
作品紹介・あらすじ
「屍体の重量がずしりと腕先にきたとき、はじめて私に任務らしい感情が充実しました」――。国民作家が終生描き続けた「組織・社会と個人との葛藤」をテーマに、これまで単著・全集未収録だった短篇小説を精選。自身の体験を反映した戦争小説から実在の事件をモデルにした小説まで、巨匠のエッセンスを凝縮した全十篇。没後三十年記念企画第二弾。
【目次】
任務(1955)
危険な広告(1954)
筆記原稿(1957)
鮎返り(1955)
女に憑かれた男(1956)
悲運の落手(1957)
秘壺(1960)
電筆(1961)
特派員(1979)
雑草の実(1976)
解説:権田萬治
感想・レビュー・書評
-
単行本未収録短編集。1950年代から70年代に雑誌などに発表されたが単行本未収録のものを集めた。
「雑草の実」は1976年読売新聞連載で、1966年の「半生の記」とは重ねたくないが、これまでの生涯は単純だしほかに書きようがない、とデビューまでの10代、印刷工時代、朝日新聞社時代、兵役、入賞までなどの心情が綴られていた。「半生の記」はずいぶん前に読んだことがあったが、「西郷札」応募も入賞金が目的とあり、それまでの生活するのに手いっぱいの状況、しかし新聞社に入り大卒が主流の職場での画工、という位置での閉塞感などが伝わってくる。
作品では、衛生兵としての自身の経験を基にしたのか?と思われるような「任務」、瀬戸焼の文化財指定をめぐっての真贋を描く「秘壺」、なぜかそばにいる女性に心中してくれと頼まれる男の「女に憑かれた男」などが印象的。
「任務」(「文學界」1955.12月号)
「危険な広告」(「オール読物」1954.6月号)
「筆記原稿」(「小説公園」1957.9月号)
「鮎返り」(「地上」1955.5月号、「渓流」と改題され「小説春秋」1956.9月号に再録)
「女に憑かれた男」(「小説春秋」1956.6月号)
「悲運の落手」(「週刊新潮」1957.5/6号)
「秘壺」(「芸術新潮」1960.9月号)
「電筆」(別冊文藝春秋」1961.1月号、「とっておき名作短編 北村薫・宮部みゆき編」ちくま文庫2011に再録)
「特派員」(「オール讀物」1979.2月号)
「雑草の記」(読売新聞1976.6.16-7.9 連載)
2022.11.10初版 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この作家の膨大な作品の数々を「清張山脈」と称することがあります。デビューの遅さを反発力とするかのように社会構造、昭和史、古代史、占領下の闇、そして天皇制…テーマがテーマを呼び次々と連なっていく激しい造山活動は発表当時のジャーナリスティックなインパクトを超えて没後30年を過ぎ今もなお仰ぎ見られています。今年になってもNHKで「小説 帝銀事件」という作品自体の成立をテーマにしたドラマが放映されていました。しかし遠くで眺める山脈の中にどんどん分け入っていくとちょろちょろとした渓流にもならない湧き水みたいなものがあることを知るのです。湧き出ているのは人間の嫉妬、恨み、憧れ、虚栄、諦観、自分でもコントロール出来ない感情の漏れ。そういった「清張源泉」みたいな短編集が本書です。今まで雑誌や新聞には掲載されただけで本になってない作品の数々。それは人間の小さな心の揺らぎのスケッチみたいなもので大作になる前のデッサンのようにも思えるのです。きっと「清張山脈」は「清張源泉」という感情の水脈が社会テーマという山塊を削って出来た作品群なのかも知れません。そして巻末の「雑草の実」を読むに至り、登場人物の心の泡立ちはすべて清張自身の心から生まれているのだと確信します。「半生の記」は読んだことがありましたが「雑草の記」で語られる友人という存在に憧れ、逆にそれから距離をおく感情の痛々しさこそ松本清張の原動力なのではないか、と思いました。
-
未発表の短編を集めた本。実際の事件を元に作られた短編が多く、日本の速記がどのように作られたかがテーマの「電筆」など興味深く読んだ。松本清張の自伝も収録されているがとても印象に残った。作家になるまで経済的にとても苦労されている。学歴がないこともコンプレックスだったとのこと。作品からは学者よりの高学歴な作家さんだと思っていたので驚き。自伝からはさらりと無欲な印象を受けた。とことん深掘りした作品を書く松本清張とは結びつかない。
-
多作だった松本清張。偶然に単行本の掲載から漏れていた10の掌編。
特にテーマなく集められた分、清張の広い分野に渡る筆力が満載の一冊。
何より「半生の記」の続編ともいえる「雑草の実」が秀逸。 -
未刊行ってのも 分かるな。
強烈な劣等感を お持ちだったんですね。 -
・多彩な短編。戦後(戦中)の色が濃い。
・松本清張が新聞社勤めであったことは知っていたが、社会問題を扱う作品達やはっきりとした文章のキレから記者出身だろうと思い込んでいたので、下積みの長い印刷技術者で、広告部に所属と知って驚いた。
・半生を振り返って書くのが本や執筆への思いよりも家族を食わせなくてはならない焦りと学や社交力の無い自分への内省なのが意外。 -
いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
松本清張さんは私の好きな作家のひとりですが、本書は、松本さんの没後三十年記念企画の1冊で、いままで未収録だった短編から10篇を選んで書籍化したものとのことです。
採録された10篇、どれも密度の濃い短編ですが、それぞれに色合いが異なっていて、その筆の多彩さに素直に驚きました。 -
2022秋に発刊された当作品、行間から清張のあの【顔】と作品の根となったとてつもない臭いが立ち込めて来た。
匂いではなく臭い・・・北九州から中央へ出て、「清張在り」という立ち位置を確立した彼の足取り。
旧弊むんむんの文壇に一見さらりと立ち向かい 実は執筆人生のほぼ24時間脳裏に救う物凄いエナジー。
サスペンスモノはなく、実録を基にした周辺エピソードを膨らませたものが大半。
清張好きにはたまらないだろう・・関心がない人にはこの「臭さ、暗さ、湿り気」に辟易するだろう。
案外、昨今のインスタグラムにも近いねっとり感すら覚えた。
特にラストの「雑草の実」~清張ファンなら既読感ある情景が立ち込めると思う。
最後の1行で~「友達は多すぎても行けないと思う・・父も友達は一人もいなかったが楽天的な一生を終えた」とあることに妙に真実味を覚えた。 -
長編の方が好きかも?
-
松本清張未刊行短篇集。あまりミステリ寄りではないです。自らの体験をもとにしたものや、実際の事件をモデルにしたものなどリアリティ満載の作品集です。
お気に入りは「女に憑かれた男」。これまたリアリティはあるのだけれど、内容としては完全にホラーです。恋愛小説でもあるのだけれど、いやいや怖すぎますって。世間から見れば藤川は単なる犯罪者になってしまうのでしょうが。実は被害者だよね。しかしあるいはそのような何かを背負ってしまった加害者でもあるのでしょうか。ぞくりとします。
「雑草の実」は自伝だったのですね。まったく予備知識なく読んでいて、「西郷札」が出てきたところで「あれっ」と思った次第。時代背景がよくわかる小説としても読めそうです。 -
自身の体験を反映した戦争小説から実在の事件に取材した小説まで、単著・全集未収録短篇十篇を精選。没後三十年記念企画第二弾。
著者プロフィール
松本清張の作品
本棚登録 :
感想 :
