太陽の男 石原慎太郎伝 (単行本)

  • 中央公論新社 (2023年1月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784120056192

作品紹介・あらすじ

『太陽の季節』で日本中を熱狂させた「無意識過剰」「価値紊乱者」の石原慎太郎は、社会に何を警告したのか。三島由紀夫を動揺させ、多大な影響を与えた慎太郎。交錯、衝突し、天皇制と国家観をめぐって離反した2人の天才を考察することで、慎太郎がその作品群に込めた真意に迫った。東京都知事と副知事として、作家同士が都庁舎で折々語りあった猪瀬直樹が見た慎太郎の素顔とは……。『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』に続く作家評伝を、一周忌に満を持して上梓する著者渾身の書き下ろし。

プロローグ―ー「君が代」と「日の本」            
第1章 敗戦の子            
第2章 ヨットと貧困          
第3章 公認会計士の挫折と裕次郎の放蕩           
第4章 運をつかむ                      
第5章 スター誕生                      
第6章 ライバル三島由紀夫        
第7章 拳闘とボディビル  
第8章 『亀裂』と『鏡子の家』                
第9章 「あれをした青年」                   
第10章 挑戦と突破                
第11章 石原「亡国」と三島「憂国」   
第12章 「嫌悪」と「海」                    
第13章 天皇と核弾頭       
エピローグ――価値紊乱は永遠なり

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

二人の天才作家の複雑な関係を深く掘り下げた本書は、石原慎太郎と三島由紀夫の友情と対立の過程をわかりやすく解説しています。著者は、慎太郎が作家としての道を歩みながら政治家としても活躍した背景を描き、彼の...

感想・レビュー・書評

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  • 東京都知事時代の石原慎太郎から、副都知事をお願いされた猪瀬直樹の回想から本書は始まる。電話を受け会食に誘われた時、猪瀬はそんな依頼があるとはつゆ知らず、共通の関心事である“三島由紀夫“を語り合う事を期待していたのだという。

    本書のタイトルは「太陽の男」、これは石原の代表作となる『太陽の季節』を意識した形容であり、猪瀬は石原の半生を振り返りつつ『太陽の季節』に纏わるエピソードから石原を徐々に象っていく。そのフォイルとして三島を使っている。

    猪瀬から見た石原。石原から見た三島。猪瀬がそれらを言語化していく。三島由紀夫だけを見れば、私には彼は臆病さゆえに繊細な言葉を使う事ができたのだと思っていたが、しかし、石原や猪瀬には三島ほどの繊細さは感じない。三島は言葉に正確に当てはまらぬ“無意識や無自覚“に耐えられず、常に精緻な記号を必要とする中で、軸としての天皇という存在を必要としたのではないか。

    他方、風土性に基礎を置く石原には天皇は不要だった。もっと一意に定まらぬ鷹揚な自然こそが日本人を形成し、自らもその礎の上にあるのだと。この点は、心象風景として天皇を捉えた三島とも制度として天皇の必要性を考える猪瀬とも異なり、石原独自の体験による感性である。

    石原の海にもとづく自然観、「観念」の拒否は、三島のメタファーとしての天皇観とは噛み合わない。以下の“僕“とは猪瀬の事だが、石原より一回り若く、天皇と結びつく戦時体験を語らない猪瀬は三島や石原より冷静に分析を語る。

    ー 僕の関心はメタファーとしての天皇制である。「空虚な中心」は争点を吸い込むブラックホールであり、ときに同調圧力の根源であり、意思決定の不在の象徴である。日本人はロジックにもとづいた論争を好まない。西欧における近代化は契約の明文化だった。しかし日本では黙契がもっとも効率よく機能した側面があり、それはあたかもルソーの「一般意思」がアプリオリ(先見的)に存在しているかのようだった。それを担保しているのが「見えない制度」としての天皇制ではないか。三島由紀夫の天皇制論とは違うが、文化概念として捉えようとするところは共通項がある。

    しかし、天皇は嫌いだと石原はいう。そこに本書のもう一つのテーマである“価値紊乱“が浮かぶ。石原を表面的に見れば紊乱者かも知れない。だが、完璧な規定演技の一コマとしてメタファーを要するフォイルに対し、石原のは紊乱なのではなく自由演技の芸術なのだろう。日常を言葉に置き換え正確に抜き取る純文学としての三島に対し、筆から絵の具を飛び散らせながら表現した文学が石原。貴重な評伝、そして面白い。

  • 生前の三島由紀夫と石原慎太郎の、当初は互いを認め合っていた関係が、ある種必然的にすれ違っていく様子をわかりやすく解説をしている。

    石原慎太郎は彼自身の著書の中でも三島由紀夫について縷々述べはているし、私自身彼らの対談集も過去に読んではいたが、ゆとり世代の私にとって非常に抽象的な内容と感じられ、2人の思想、そしてその違いや時代がもたらす当人同士の関係性を理解することは難しかった。本書はこの2人の関係性をわかりやすく紐解くと同時に、個人的に強く持っている昭和への憧憬を強く感じさせる内容であった。

  • 東2法経図・6F開架:910.268A/I74i//K

  • 同じ作家として、また都知事と副知事として誰よりもそばから石原慎太郎を見てきた筆写だからこそ書けた傑作評伝。

    評伝の素材として申し分ない存在。「太陽の季節」の芥川賞受賞で衝撃的なデビューを飾った石原慎太郎。作家からベトナム戦争の体験を通し政治家の道を歩む。

    三島由紀夫と石原慎太郎、マッチョな二人の比較を中心にストーリーは進む。筆者には別に三島由紀夫の評伝もあるが、本書でも三島が多く登場する。

    石原慎太郎のイメージが多少なりとも変わる作品。

  • 知事と副知事という立場で身近に接し、自らも作家で、しかも三島由紀夫伝など、これまでも作家の評伝を書かれている猪瀬氏による石原慎太郎伝。
    どんな作品も、その著者あっての作品なのだが、本書はまさに誰にも書けない唯一無二のものだろう。
    実は、太陽の男をはじめ、石原氏の小説はほとんど読んだことがなく、石原氏には作家というより政治家、毀誉褒貶ある言論者のイメージが強かった。
    そんなタイトルや肩書きはどうでもよいことなのだろう。停滞し、行き場の無いような思いに包まれる今の日本に「価値紊乱」者の石原氏にはまだいて欲しかった。

  • 「価値紊乱者」の時代の寵児は、何を警告したのか。いま明かされる都庁で語り合ったこと。一周忌に上梓する渾身の書下ろし

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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