ヨルノヒカリ (単行本)

  • 中央公論新社 (2023年9月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784120056901

作品紹介・あらすじ

いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来“普通の生活”をしたことがない。そんな男女2人がひとつ屋根の下で暮らし始めたから、周囲の人たちは当然付き合っていると思うが……。不器用な大人たちの“ままならなさ”を救う、ちいさな勇気と希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 恋愛感情が分からない木綿子と、家族という存在がよく分からない光。
    不器用な2人が見つけた幸せの形とは、、。

    うわ〜この作品めちゃくちゃ好きだった(*´ω`*)
    かもし出す空気感がたまらなく好きで、いつまでも読んでいたい気分。
    "多様性"がテーマのお話は、もうお腹いっぱいで飽きつつあったんだけど、押し付けがましくない穏やかで優しい雰囲気のせいか抵抗なくスーッと入ってきた。
    なんとなく瀬尾さんの作品を読んだ時の感覚と似てる気がしたかも。

    自分らしくあればいいんだよ、と言われても、一般的な"普通"からズレてしまうと、実際のところ他人もそして自分自身もなかなかそれを認めなかったりする。
    悩みながらも、自分の素直な気持ちに向き合っていこうとする2人のことをそっと見守ってる気分だった。

    幸せの形は人それぞれ。
    誰にどう思われ様とも、じっちゃんの言うとおり、自分の事を大切に思ってくれる人たちの事だけを考えて生きていけばいいんだと思う。
    もうちょっと2人のこの先を見ていたかったな〜。
    とても優しい素敵なお話でした♡♡


    ✎︎____________
    成瀬夫婦の温かさが沁みる〜ඉ_ඉ
    司さんの生き方もカッコいい!
    ご飯も描写もたまらん〜(´﹃`)











    • 1Q84O1さん
      ですよね〜
      ハラスメントも何でもありですよねw
      あれもハラスメント、これもハラスメント、きっとまた新しいハラスメントもでてきますよ!w
      ですよね〜
      ハラスメントも何でもありですよねw
      あれもハラスメント、これもハラスメント、きっとまた新しいハラスメントもでてきますよ!w
      2024/10/31
    • あいさん
      みひろちゃん♪こんばんはぁ(^-^)/

      畑野さん、気になる作家さん。
      この作品良さげ〜
      多様性って本当難しい。
      ちょっと騒ぎす...
      みひろちゃん♪こんばんはぁ(^-^)/

      畑野さん、気になる作家さん。
      この作品良さげ〜
      多様性って本当難しい。
      ちょっと騒ぎすぎなような…
      そっとして欲しい人もいると思うんよね。

      自分の事を大事に思ってくれる人たちの事だけを〜のところ、分かるわ。
      うちの主人が、結構そんな感じ。
      違うかなぁ?読んで確かめてみたいよ(⁎˃ᴗ˂⁎)

      まさきさん、ネタバレになっているので、すごく我慢してる(笑)
      ボタンをポチしようとする指を必死で押さえているよ、ブルブル。
      いつか読んだらポチしに来るからね。
      私の頭がしっかりしている間に頑張らねば。
      最近、あれなんだったっけ〜って言うのが増えてきていけないわ。
      言葉が出てこない。
      今日は「メイプル超合金」が出てこなくてね…
      2024/11/02
    • mihiroさん
      あいちゃーん\(*ˊᗜˋ*)/こんばんは♪
      畑野さん、私も気になってたんだけど読んだことなくてこれが初読みだったよ〜!
      よく行く本屋さんの...
      あいちゃーん\(*ˊᗜˋ*)/こんばんは♪
      畑野さん、私も気になってたんだけど読んだことなくてこれが初読みだったよ〜!
      よく行く本屋さんの手書きpopにつられて、図書館で予約した〜←買わんのかい!笑

      多様性って難しいよね〜(・・;)
      何でもかんでも多様性で片付けられてる気もするし、騒ぎすぎな気もするよね〜(´口`)

      あいちゃんの旦那さんは、そういう感じなんだね!
      私もそういう人になりたい〜( ᵒ̴̶̷̤-ᵒ̴̶̷̤ )
      私はどうしても人目を気にするタイプだから、この言葉に、そうだよな〜って、なんだかホッとした気分になったよ。

      まさきさん、こういうパターンで話が進むみたいな事書いちゃってるから、読むまで見ないでね笑
      私もあれなんだっけ〜っていうの、めっちゃあるよ!
      メイプル超合金?アハハヾ(≧∀≦*)ノ〃
      私もお笑いには弱いから、あいちゃんといい勝負かも〜笑笑


      2024/11/02
  • 静かな物語だった。
    ラストシーンも静かだった。
    お互い誰よりも大事な人と分っているけれど、恋人ではない関係。
    そして、その“大事”という感情をなかなか相手に伝えられないもどかしさ。だって大事だけれど、恋人になりたいのかどうかは自分でも分からないのだから。こんなことを伝えたら相手はどこかへ行ってしまうのではないか。だけど、誰よりも大事だからずっと一緒にいたい。でもそれは、相手を縛り付けてしまうことなのではないか。
    お互い、究極に唯一無二の人に巡り会えたんだな、と感じます。でも大事過ぎて好き過ぎて、嫌われたくないからなかなか本音が言えないんですよね。
    世間一般からはどうしても、友達だったり恋人だったり夫婦だったり名前のある関係性を求められるから困りますね。
    でも、主人公の周りの人達の「普通に幸せになってもらいたい」という気持ちも痛いほど分かるのです。
    “普通”とは、特殊な関係を排除するということではなく、唯一無二の相手と巡り会ってほしい、心を許し合える人と生涯を共にしてほしい、ということだと私は思います。自分亡き後、その人に託したいんですよね。“大事”なその人のことを。
    そう考えると、主人公の二人は「普通に幸せ」なんだと思います。

    • かなさん
      こっとんさん、おはようございます。
      私もこの作品、読みましたよ!
      このふたりのペースで、普通に幸せならいいですよね♪
      ふたりがよかった...
      こっとんさん、おはようございます。
      私もこの作品、読みましたよ!
      このふたりのペースで、普通に幸せならいいですよね♪
      ふたりがよかったら、それが一番!
      ささやかな、あったかいお話でした(^^)
      2023/12/04
    • こっとんさん
      かなさん、おはようございます♪
      本当にささやかであったかいお話でしたよね。
      かなさんのレビューにもあったように、成瀬と光の友情も唯一無二で、...
      かなさん、おはようございます♪
      本当にささやかであったかいお話でしたよね。
      かなさんのレビューにもあったように、成瀬と光の友情も唯一無二で、お互いが良ければそれでいいんた!と思わせてくれる作品でした(о´∀`о)
      2023/12/04
  • ブクログの本棚でよく見かけるなーと
    手に取った一冊

    初読みの作家さんでした



    初めての作家さんは
    なかなか手に取りづらいのですが
    ブクログのおかげでいろいろ挑戦できてます(^^)



    さて、こちらは
    恋愛にいいイメージを持てないひかりと
    恋愛感情がわからない木綿子の物語



    2人の関係はなんなのか
    それは2人自身が一番わからなくて
    そして周りもヤキモキしてしまって
    相手の気持ちもわからないし
    でも大切にしたい、一番。


    そんな気持ちをずっと抱えながら
    過ごしていく2人を見守っていく
    そんな物語でした


    恋人、友達、家族、知り合い
    人との関係の種類は意外と少ないのに
    どうしてもそれに当てはめてしまいたくなる。

    でも、そういう圧力に苦しむ人もいるんですよね



    2人はすごく悩んでますが
    お互いがどんなことでも
    受け止めようとしてくれる姿勢が
    とても羨ましく感じました。

    穏やかに、幸せに暮らしてほしいです



    後半、手芸店の人たちが
    2人のことを噂してるようなことを読んで
    仲間だと思ってたのに…と
    ちょっと悲しくなりましたが
    そういうものなのかもしれないですね


    2人がわかっていれば
    みんなにわかってもらう必要は
    ないのかもしれません


    その分成瀬と成瀬の家族の温かさが
    めちゃくちゃ沁みました、、、


    あとおじいちゃんや司さんのセリフも
    すごく好きでした


    自分のことを大事に思ってくれる人たちのことを考えて
    生きていきなさい
    それで、自分のことも大事にしなさい


    うんざりするようなことを
    言ってくる人もいるかもしれない。
    でも、胸を張っていれば、
    何も気にせずに付き合ってくれる人が
    周りに増えていく。
    そのうち、自分のいるところが真ん中になる




    じんわりと沁みる物語でした(^^)


    ちょっと手芸やりたくなりますー!

  • 初読みの作家さんでしたが、セリフが多くって注意してないとどちらのセリフか解らなくなったり台本呼んでるようで感情の機微とか読者がイメージしてキャラ付けしていく無骨さを感じたのですがそれも何気に新鮮に思えました。
    住込み従業員募集の貼り紙を見つけ面接にくるヒカリ。台風で洋食屋と勘違いしてた様子ですが手芸店だったとかの件は面白かったです。最初女子だと思って読んでたのですがどうも男だった。身の上を聴き採用してしまう木綿子は35歳の独身女性、自分嫌いで人にも興味ない感じ。ヒカリとは7つ年上とゆう年齢差が絶妙な設定でした。恋愛のできない木綿子の設定も面白く二人の距離感に興味津々で読み進めることができました。
    それにしても、住込みで働くとゆうことは仕事とプライベートの区別が難しく雇用主の機嫌を損なわないようにしなければ追い出されそうだし、この手芸店休みがないようだし働くとゆうよりも、暮らすとゆう感覚で従事しなければ破綻しそうな関係が絶妙なバランスを保ってました。この二人の関係は、はたから見てても稀有で運命的なものを感じさせてくれました。ヒカリは元料理人だけあって料理下手の木綿子の胃袋をガッツリ掴んだ様子で見ていて楽しかったです。またヒカリの友人知人が店を訪れても嫌みひとつ言わず優しく接する木綿子にヒカリも公私わきまえずに対応できてる姿勢が居心地の良さを感じました。何故か親友の成瀬には苗字呼びのところが気になったりでしたが。
    一緒にいて心地よくなければプライベートの時間に顔をあわせて食事したりテレビみたり、買物したりしないですよね。
    同じ屋根の下で暮らしていてもお互い顔も合せず暮らしている親子や夫婦もいる訳だけど、近づきすぎてわがままにならず適度な距離をおいて互いを思いやることのできる関係って何気によさげに思いました。
    ただ共感できるかとゆうとどうかなあって感じです。まあ他人事だしとやかく言うつもりもないわけですが、何か亀裂が入った場合は簡単に壊れそうだし、雇用主に都合のいい関係に思えて仕方ない。健康なうちはいいけど将来どちらか不幸があって一人になってしまう場合とか考えたらある程度の期間すごしたら曖昧に過ごすのも無責任に思えるので覚悟を決めて婚姻関係でないにしても入籍とか養子縁組とか考えたほうがいいのではと思ってしまいました。そうじゃないとなにかあった場合にヒカリが可哀そう。「病める時も健やかなる時も~」とかの誓いの言葉は困難な状態になった時も互いに愛し支えあう意味が込められてると思うのですがそこらへんって自分に都合が悪くなっても思いやることだと思うし普通に重要なことじゃないかなって思いました。

  • アパートの取り壊しが決まり、五年間勤めていた洋食店もオーナーが体調を崩して閉店が決まった。
    台風に物干し竿が飛んできて窓が割れる。
    とりあえず健康ランドでも行くかと出て、大雨の中『従業員募集!住み込み可』の張り紙を見た、28歳のひかりは、手芸店だとは知らずに翌日には面接をしている…。

    祖母から継いだ手芸店を営む木綿子は、35歳になっても今だ恋人もいたことがない生活だったが、ひかりを住み込みで受け入れる。

    ひかりは、母親が家を出て以来家族を感じたこともない生活で、木綿子は恋愛感情というものがわからないままずっと1人。

    不器用な2人がいっしょに住むことで変化していくものとは…。

    普通とは何か?
    普通でなければならない、ということなど何もありはしない。
    恋愛だってそうだと思う。
    これは恋愛小説だと言えそうでいて、もっと奥が深い人間愛なのかもしれないと思った。

    人の心の中なんてわかりにくいけど、自分の心の中をわかりやすく伝えるのも難しいものだと感じた。
    だがいろんな場面で、この2人に愛情を感じてしまう。
    他人だけど家族に近い関係で、お互いに必要として大切に思っているのが伝わってくる関係。

    この2人に幸せになってもらいたいと心から思った。



    成瀬くん、良い友だちだな。


    • アールグレイさん
      湖永さん★こんばんは

      ヨルノヒカリ、名前だったんですね!
      “恋愛小説だと言えそうでいて、もっと奥が深い人間愛”
      湖永さんのレビュー、私のレ...
      湖永さん★こんばんは

      ヨルノヒカリ、名前だったんですね!
      “恋愛小説だと言えそうでいて、もっと奥が深い人間愛”
      湖永さんのレビュー、私のレビューup後にゆっくり読ませて頂きました。その通りですね。不器用なふたりの気持ち、少し苛々もしてしまいましたが、幸せに仲良くしてほしいと思います!
      続編があったら、さくらちゃんの成長も見てみたい?読んでみたいものです。
      good night (-_-)zzz
      2023/11/15
    • どんぐりさん
      湖永さん こんにちは(^^)

      成瀬くん!
      ホントにいい友達で
      共感してコメントしてしまいました


      2人には幸せになってもらいたいです、、...
      湖永さん こんにちは(^^)

      成瀬くん!
      ホントにいい友達で
      共感してコメントしてしまいました


      2人には幸せになってもらいたいです、、、


      silver賞おめでとうございます(^^)

      またレビュー楽しみにしています(^^)
      2024/01/30
    • 湖永さん
      どんぐりさん こんにちは。

      一冊の本で同じように共感できたこと嬉しく思います。
      そして、受賞のコメントありがとうございます。
      拙いレビュー...
      どんぐりさん こんにちは。

      一冊の本で同じように共感できたこと嬉しく思います。
      そして、受賞のコメントありがとうございます。
      拙いレビューで賞を貰えたことに嬉しい反面、とても恐縮しています。
      いいねをしてくれる皆さまのおかげだと感謝しています。

      2024/01/30
  •  こちらの作品、表紙が可愛いですよね♪畑野智美さんの作品を読むのは2作品目ですが、畑野智美さんの描く物語はとっても読みやすくって、それでいて今の生きにくい社会を、懸命に生きようとする登場人物に思わず感情移入しちゃえるんですよね!

     いとや手芸洋品店の店主、糸谷木綿子は35歳になるが恋人がいたことがないという女性。そして、夜野光28歳は、母親から充分な養育をしてもらった経験もなく(むしろネグレクト)、中学卒業を機に自立し様々な飲食店に勤務してきた経験を持つ。光が住むアパートを取り壊しも決まり、そして勤めていた飲食店も閉店することになり、途方に暮れる中台風の影響でこれ以上住めなくなる事態に陥ってしまう。アパートにいられなくなった光は、灯りの灯ったいとや手芸用品店の店先に掲示された、従業員募集(住み込み可)の貼り紙を見て翌日面接を受ける。翌日面接を受け、住み込みで働かせてもらうことになる…。木綿子はこのお店の上階に住んでいることから、ふたりの生活がここから始まることになった…。

     お互いを想いながらも、その気持ちをどんな風に表現していいのかがわからないふたり…ちょっと焦れながら、それでもふたりの今後をそっと応援したくなるような、そんな読後を持ちました。他の人がどう見ようと、どんな風に思われようと、そこは関係ないんですよね…。そして、小学生の時から続いている光と成瀬の友情…これもまたいいなって!優しい気持ちになれるそんな作品でした。

    • どんぐりさん
      こんにちは(^^)


      私も成瀬くんとのやり取りが
      とても好きでした(^^)

      成瀬くんやその家族の全て受け入れてくれるような
      懐の深さが読...
      こんにちは(^^)


      私も成瀬くんとのやり取りが
      とても好きでした(^^)

      成瀬くんやその家族の全て受け入れてくれるような
      懐の深さが読んでいて安心しました(^^)
      2024/02/03
    • かなさん
      どんぐりさん、遅くなってしまってごめんなさい…。
      コメント、ありがとうございます(*^^*)

      私も成瀬くんがいてよかったと思ったし、...
      どんぐりさん、遅くなってしまってごめんなさい…。
      コメント、ありがとうございます(*^^*)

      私も成瀬くんがいてよかったと思ったし、
      成瀬くんのお母様も光の味方になってくれて、
      なによりお料理を教えてくれたのがよかったですよね♪

      でも私では無理だなぁ…
      人に教えられるほどのお料理の腕、ないもん…
      とか、感じてしまいましたが(^-^;
      2024/02/05
  • 以前に読んだ「世界のすべて」にも、通じているような多様性を意識させられる。タイトルから想像つかなかったけれど、日常のごはん描写がたびたびあるので、おなかが空いた…オムライスもクレープも食べたいです(*´﹃`*)

    『人と違うから、社会の隅で生きていこうとかも、思わなくていい。…うんざりするようなことを言ってくる人もいるかもしれない。でも、胸を張っていれば、何も気にせずに付き合ってくれる人が周りに増えていく。そのうち、自分のいるところが真ん中になる。』

    人と同じじゃないことで、悲しくなったり、苦しくなったりしてしまう。同じである必要はないはずなのに、隣の芝が羨ましくなる。あんなふうに生きたかったなー、どうして私はこんなことになってるんだろう。個人的なモヤモヤフェーズにちょうど差し掛かっていたので、優しく寄り添ってくれて、それはそれは励みになった1冊だった。

    2025.7

  • 大切な人との関係。
    恋人とか夫婦とか、あるけれど、同じ「恋人」でもその関係は本人たちによって様々で、それでいいんだなと思える本。

    どうしても世の中に多数の関係が「普通」になってしまうけど、そんなことを気にせずに2人の関係性を大切にしていきたい。

    終わりも、これからも物語がやさしく流れ続けるのが見える、素敵な終わり方。

  • アセクシュアルの女性が出てくる。誰かを大事に思う気持ちは、みんな一緒なのだなと思った。

  •  光は家族というものがわからない。
     木綿子は恋というものがわからない。
     自分が「普通」とは違うということに悩む2人が、小さな一歩を踏み出すまでの9か月間を描くヒューマンドラマ。
     物語は主人公の2人、光と木綿子の視点で交互に描かれていく。
              ◇
     大型台風が町を襲ったその日、強風で飛ばされた物干し竿がアパートの部屋の窓ガラスに突き刺さった。たちまち吹き込む雨風。
     6畳ひと間の部屋が居場所もないほど水びたしになっていくのを見て、光は隣の駅近くにある健康ランドへの避難を決めた。

     駅に向かいながら、光はこれからの身の振り方を考える。

     働いていたレストランの閉店まで1か月を切っている。蓄えもさほどないため早く次の職場を決める必要がある。
     おまけに次の住居も早急に探さなければならなくなった。台風被害で部屋が住める状況ではないからだ。
     取り壊しが決まっている今のアパートの退去期限は2か月後という約束だが、今さら修復は頼みにくい。もう退去したほうがいいだろう。
     とにかく職場と住居探しを急ごう。

     隣駅を出た光に対し、威力を増す雨風は容赦ない。ビニール傘は一瞬で壊れた。全身ずぶ濡れで商店街を通っているがどの店もシャッターが下ろされ照明は消えている。
     途中で目についた店の軒先で一旦休憩しようと近寄った光は、店の壁に貼り紙がしてあるのに気がついた。貼り紙にはこう書かれていた。
    『従業員募集! 住み込み可!』( プロローグ )

          * * * * *

     様々なタイプの人たちが登場していて、とてもおもしろかった。また、現代の社会問題の数々も取り上げられていて、いろいろと考えさせられる作品でもありました。


     主人公の1人、夜野光。

     いわゆる毒母からネグレクトに近い育てられ方をした。美人の母に似た顔立ちをしており、幼い頃には短期間同居した母の恋人から性的虐待を受けそうになったこともある。
     最終的に母親に捨てられるのだが、幸い祖父母の支援と親友の成瀬一家の支えがあり、道を外れることなく成長した。

     ただ、成長段階において「家族像」がまったく作れておらず、家庭を持つ自分をイメージできない。さらに何かのはずみで感情を爆発させるところがある自分に嫌悪と恐れを抱いており、人と親密な関係を結ぶことを避けようとする。
    そんなことから28歳になった今も、将来への夢や希望を抱けないでいる。
     
     もう1人が糸谷木綿子。

     木綿子には恋愛感情というものが昔からわからない。美人で明るく気立てもよいため、男子から告白されることは少なくなかったのだが、その「恋する」という気持ちが理解できないでいた。
     それでも高校・大学時代には誘いに応じデートもしてみたが、手を握られただけで気持ちが悪くなってしまう始末だった。

     自分はそういうタイプなのだと思うことにしたものの、人目を引く美人であるゆえ勤務先でも恋人や結婚について詮索されることが多い。そんな日々に疲れていたところ、手芸店を営む祖母が亡くなったのを機に退職し、手芸店を継ぐことにした。

     店の客は常連さん中心で、そのほとんどは女性。木綿子は元々、休みの日に祖母を手伝いに来ていたこともあり、顔見知りの客が多いのもよかった。
     多数の好奇の目に晒されることがなくなって、やっと落ち着いた。趣味の手芸を活かせるということもよかったのだろう。
    とは言うものの35歳になった今、生涯1人きりで生きていくことにそこはかとない淋しさを感じている。
     
     と、なかなか深刻な人物設定です。
     主人公がこうだと、普通は暗く重いストーリーになりがちだけれど、そこはさすが畑野智美さんです。展開を速くして重暗い空気を引きずらず、光と木綿子の人間性のよさをほのぼのと描くことで読者にひと息つけさせてくれています。

     例えばこの2人の会話がなんと言ってもいい。
     いつも遠慮がちに、そして敬語で話す光ですが、家事の苦手な木綿子に代わってその一切を引き受けているだけあって家内に関することはきっちり言います。
     年下で子犬のような可憐さを持つ光にフランクに話しかける木綿子。でも光が少しでもしょげた顔をすると、慌ててフォローしたりもします。 ( なんて微笑ましい! )

     料理人の仕事を探していた光。学校で服飾を学んだ女性や手芸店で働いた経験のある女性を探していた木綿子。
     本来ミスマッチとなるはずの2人の出会いが台風によってもたらされたという設定が、とてもよかったです。


     さて主な脇役陣です。

     恋愛依存の女性が2人出てきます。光の母親の由里と、木綿子の親友の真依です。同じ「恋多き女」でも2人はまったく違います。

     自分に言い寄ってくる男 ( 結構いる ) なら誰とでもくっつくのが由里です。

     由里自体が、知性もなければ人間的な奥行きもないという、見てくれだけの薄っぺらな女です。

     そんな由里に言い寄る男にろくな人間がいるはずもなく、アパートに居着かれ、暴力を振るわれた挙げ句、捨てられる。
     そんなことを繰り返し、ついには光を置き去りにして男と夜逃げしてしまう。結局、出奔先でも男に捨てられ病死する。

     という絵に描いたような、色ボケで身勝手な因業女です。

     一方、恋は好きですが相手をきちんと見極めるのが真依です。自分を決して安売りしない。

    大手広告代理店でバリバリ仕事をしているだけあって、頭の回転が速くなかなか気が強い。言いたいことははっきり言う。 ( 恋が長続きしないのはそのあたりに理由があるのではと推測します )
     木綿子にとって、よき相談相手であり頼りになる友人でもある。

     と、なんとも魅力的な女性です。

     相手任せの恋に終始した由里と自分をしっかり持って恋に臨む真依。対照的な「恋多き女」が印象的でした。


     次は、光と木綿子に関わってくる2人の男です。

     光の小学生時代からの親友で恩人とも言える成瀬良一と、出版社に勤める編集者で木綿子についての記事や本を企画した日向です。
     どちらも至極まっとうですが、そのまっとうさの使い方に違いがあります。

    成瀬は、教室で1人になりがちで小柄なため虐められやすい光の面倒を、何くれとなく見てやるようになります。また姉とともに光の身の回りのことにも気を配り、両親に相談したうえで再々、光を家に呼び食事や入浴、団欒など心身のケアに努めていきます。 ( 両親がよくできたステキな人たちなんでしょうね )
     また、光の祖父が光と同じアパートに越してきてからは、祖父にも気を遣って始終顔を見せに来たりもするのです。

     と子犬のような光を好きになった成瀬は、少年時代の光にとっては保護者のような存在でした。

    日向は優秀な編集者で、木綿子の作る小物をSNSで知り、まず雑誌で作品を取り上げ、続いて作品と木綿子自身を紹介した本の刊行を主導します。 ( 手芸店のネット販売の注文が殺到したり来店客が増えたりしたので、まずまず売れたと思われます。)
     ある日、日向は木綿子に恋人として付き合ってほしいと告げます。もちろん恋愛や男性に後ろ向きな木綿子は断り、日向との仕事は終わりにしたいと申し出たのだけれど、日向は木綿子との仕事を諦めませんでした。恋愛抜きでいいから ( 口先だけです ) と、木綿子に連絡を取り続けて来ます。

     と、一見紳士的な日向は、恋愛対象や取材対象にはグイグイいく暑苦しい男でした。

     成瀬も日向も、気に入った対象にかける想いはまっすぐで、言うことも至極まっとうです。けれども、相手のために動く成瀬と自分のために動く日向。その「まっとう」の使い方の違いがおもしろかったです。

     
     その他、女装趣味のイケメン偉丈夫エリートサラリーマンの司 ( イメージとしては『マカンマラン』のシャールさんです ) も重要な役割を果たしています。そのかっこよさもお楽しみに。


     家族を持ちたいという欲求のない光。
     アロマンティックアセクシャルらしい木綿子。

     でも光は木綿子と一緒にいることで安らぎを感じることに気づいたし、木綿子は光がそばにいることで孤独感を忘れ、心が満たされていることに気づきます。
     そして互いに、これまで人に話せずにいたことを打ち明けあったあと、一緒に暮らしていこうと決めました。すごくいいシーンでした。
     
     家族や夫婦の形態って、きっといろいろあっていい。その人たちにとっていちばん合うスタイルで一緒にいられればそれで十分なんだということを、改めて感じさせられた作品でした。

  • ――ヨルノヒカリ――夜野光―
    彼の子供時代は寂しさに耐え、母親の帰りを待ち続けていた。お腹をすかし、
    服を替えることもなく。たまに帰る母は
    男が一緒のこともあった。
    そんな生活でも、周りの人々に助けられ
    後に祖父母の元へ行った。
    光は中卒で独りバイトで生計を立てた。

    “普通”の人とは?
    両親の元で育ち、高校又は大学へ行き就職をする。恋愛をして結婚、そして子供
    が生まれ・・・・だろうか?いや、違う。
    自分で自分が普通であるか?自分のことをどう思っているのか?複雑だ。

    三十五才、恋愛経験なし。手芸用品店
    経営者、糸谷木綿子は独り暮らしで寂し
    かった。シャッターに「従業員募集!住み込み可!」と貼紙を出した。木綿子は
    恋って?恋愛感情って?そんな思いを抱いていた。

    台風の夜、光は避難する為街中を歩いて
    いて、貼紙を見つけた!アパートは取り壊しが、バイト先は閉店が・・・・光には
    ぴったりの貼紙だ。

    ひとつ屋根の下状態、恋愛感情いまいちの木綿子、成長に問題のあった光。
    お互いに自分を普通ではないと思っている。それでも、二人は生活を楽しんで
    いた。

    読んでいて苛々した。仲が良いのに、
    お互いを思っているのに、それ以上へは
    無理。・・・・きっと、きっと・・・・だって
    二人の周りには見守ってくれる人が沢山いる!
    ゆっくり、ゆっくり、今以上の仲に、
    絶対なれる!幸せに!!

    2023、11、15 読了

    • 湖永さん
      アールグレイさん こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      アールグレイさんとしては、この2人に少し苛々しちゃったようですね。
      確かに...
      アールグレイさん こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      アールグレイさんとしては、この2人に少し苛々しちゃったようですね。
      確かにそう思うのもわかります。
      恋愛感情って、複雑だけど一括りに皆同じとは言えないですね。
      変化するかもしれないし、しないかもしれない。
      2023/11/15
  • なんか好きだ〜この作品
    初めての作家さんだけど静かで優しい文章
    手芸好きのわたしが表紙の可愛さに借りた作品

    恋愛感情がわからない木綿子は誰にも知られないように生きてきた。おばあちゃんの後を継いだ手芸店で好きな物だけに囲まれた日常は平和だけど寂しさに耐えられないとも感じている。
    そんな時求人募集の張り紙を見てやって来た夜野光は住み込みで働くことになるのですが、それは周りの人達には理解できない2人の関係で…


    光の育ってきた環境が悲しいの。゚(゚´Д`゚)゚。
    光も自分の感情を出さずに生きてきたから
    木綿子と光の関係はゆっくりゆっくり進むし悲しい程焦ったい。
    でも内容が暗くならないのは文章が優しいからなのか?

    ネグレクトや多様性の話は正直満腹気味で最近あまり読む気になれなかったけどこの作品は良かった!

    畑野智美さん他の作品もぜひ読んでみたい♡

    • みんみんさん
      ペロリーヌは世界一可愛いですよ〜笑
      どんぐりさんちびっ子達に何か手芸を(●︎´艸`)ムフフ
      ペロリーヌは世界一可愛いですよ〜笑
      どんぐりさんちびっ子達に何か手芸を(●︎´艸`)ムフフ
      2025/09/15
    • mihiroさん
      あ!ほんとだ!笑笑
      失礼しました┏○ペコッ
      でも椹野道流さんが そういう方だとも知りませんでした笑‪(  ・᷄ ᴗ・᷅ )ゝ
      あ!ほんとだ!笑笑
      失礼しました┏○ペコッ
      でも椹野道流さんが そういう方だとも知りませんでした笑‪(  ・᷄ ᴗ・᷅ )ゝ
      2025/09/15
    • かなさん
      みんみんさんもこの作品読まれたんですね!
      私もこの作品、好きなんです(*^^*)
      みんみんさんもこの作品読まれたんですね!
      私もこの作品、好きなんです(*^^*)
      2025/09/16
  • 畑野さんの作品3冊目。個人的には1番畑野さんの今まで読んだ3作の中では1番好きな雰囲気のお話。

    タイトルがまさかのこの本に出てくるキャラの名前
    そのものやった。

    この話でも以前読んだ「世界のすべて」に出てくるような恋愛感情を人に対して持ったことがないが、祖母が亡くなり、1人の孤独を感じる女性、木綿子が出てくる。

    もう1人の主人公の光は、幼少期に母親の彼氏や父親から虐待を受けていたり、少しネグレクト気味な家庭環境で育ったためか人との距離感に壁を少し感じるキャラクター。

    光と木綿子はそれぞれ抱える寂しさだったり悩みがあるけれど、何気ない日常での会話やご飯シーンがとても温かくてお互いの心を癒している。
    男女が1つの家に住んでいたら恋人とか夫婦と思われるけれどそれ以外の名前がない関係性があってもいいんじゃないかなと思った作品。

    多様性と言いつつもマイノリティーな部分では、まだまだこの国は未熟だと思う。

    光が作中でのセリフの中で「友達、恋人、夫婦、人の関係性を表す言葉は、とても少ない。そのどれにも当てはまらなくていいと思います。僕と木綿子さんだけの関係を作っていきましょう。」という言葉。

    やさしく、丁寧だけれどとても温かみのある言葉が
    とても心に残った。

    この物語が終わってもきっと光と木綿子は2人だけの名前がない、特別な関係を続けていくのかなと思った。

  • 著者17作目。しかしながら今一つ作風が掴めない。「読まなければよかった」作品の一つになっている著者の『消えない月』でトラウマになってしまった為かもしれない。あの話は今回同様男女両方から交互に視点を変えて描かれてなかったか??
    構成がよく似てるからどうしても暗闇を手探りで進む様に恐る恐る物語の展開に構えてしまう。
    物語の時間軸と共に主人公の過去のネグレクトの話が少しずつ浮き彫りになってきます。
    主人公の雇主もアセクシャルとして平行して描かれていて、その2人のお互いを想う感情を恋愛とは違う触れるか触れないかの微妙な距離感を見事に表現しています。

    穏やかな文章で穏やかな展開の中、唯一出てくるある場面が、物語の構成上とてつもなく鋭利なナイフで抉られた感じになります。
    かなり後を引いてしまった。

  • 「普通」って何だろうって、改めて感じた。

    「付き合ってる人はいるの?」「結婚はまだ?」「子供は?」
    何気ない会話の一部でも、心に棘が刺さる人もいる。

    「多様性、多様性」と騒がれる時代になったけど、まだまだだよね。
    likeのような好きもあるし、loveのような好きもある。2つ合わさったような好きもある。
    人間一人ひとり個性があるように、好きの感情も人それぞれ。

    木綿子さんとひかり君、心の温かい2人の新たな手芸屋さん、私も行ってみたいな。

  • 亡くなった祖母の手芸店を一人で継ぐ木綿子。誰もが認める美貌の持ち主だが35歳で未だ恋愛経験はない。

    28歳の光は、恋愛に自由奔放なシングルマザーにネグレクトをされ育ち「普通の家庭」を知らずに過ごしてきた。

    木綿子の営む手芸店に住み込みで働くことになった光。 世間から見た「普通の恋愛」の出来ない男女2人が ひとつ屋根の下暮らすことで 周囲からの目を窮屈に思いながらも ゆっくりと心を通い合わせていく。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    レビュアーさんの、あ、カリスマレビュアーさんの(こちらとは別の本)のレビューを読んでいて、ずっとMISIAさんの『アイノカタチ』が頭の中で鳴っていた。

    『愛にもしカタチがあって それがすでにわたしの胸にはまってたなら あなたのことを知るたびに そのカタチはもうあなたじゃなきゃ きっと隙間をつくってしまうね』

    木綿子と光。今まで付き合った誰とも心の隙間を埋めることは出来なかったけど、出会ったんだねぇ。「大切」だけど「恋」ではない2人の距離感がもどかしいと思うのはきっと、私がこの本の登場人物なら真依ちゃんだからなんだろう。

    週末には自分で作ったワンピースで女装する司パパの娘ちゃんたちがとってもいい子。光の親友 成瀬もめちゃいい子。 私は何も作れないけど手芸店はワクワクするから好き。

    ☆ギリ3なのは、なんか木綿子があまり好きにはなれなかったこと笑
    近づきたくない相手には心のシャッターを降ろしちゃうのは私も同じ。傷つけられるのはイヤだ。でも木綿子の態度は極端すぎるというか。 この人ダメって思ったら速攻で心のセコムが作動して すぐさまビービー警報鳴らしてシャッターガチャン!で寄せ付けない。 男性が怖い木綿子が自分を守るためであっても、その態度は相手を傷つけてない?
    相手を理解して思いやるって大事だけどなかなか難しい。

    • ゆーき本さん
      わーかーるぅー!ママ友は「適度な距離感」これが一番大切だよね!あ、夫婦と同じか笑
      わーかーるぅー!ママ友は「適度な距離感」これが一番大切だよね!あ、夫婦と同じか笑
      2023/10/28
    • yukimisakeさん
      いえいえ、こちらこそこんな変人をシャッター内に入れて下さりありがとうございます笑
      いえいえ、こちらこそこんな変人をシャッター内に入れて下さりありがとうございます笑
      2023/10/28
    • ゆーき本さん
      カギ開けておくからいつでもおいで
      welcome \( '▽' )/
      カギ開けておくからいつでもおいで
      welcome \( '▽' )/
      2023/10/28
  • ☆4.6
    心に染みた

  • 台風の日の出来事が、ひかりをいとや手芸店に導き、物語が始まりました。母親が帰ってくるのを待つ夜を何度も過ごし、普通に育てられなかったひかり、28歳。恋愛感情がわからない自分に嫌悪感をもつ木綿子、35歳。自分に欠けたものを自覚する二人が、共に生活していくことを受け入れていく。このことが読んでいてとても嬉しくなりました。ひかりの周囲には、じいちゃん達や成瀬くん一家がいて、木綿子の周りには修さんや司さんがいました。この周囲の人たちがあたたかく2人を支えていたのも、安心感がありました。

    生活するのは、信じ合えて、一緒にいて自分が自然体でいられる人とが一番だと思います。結婚や恋愛は必然ではないように思います。恋愛という感情なしで、自分の欠けている部分を話し合いでわかり合おうとすることにとても好感を持ちました。木綿子が祖母から引き継いだ、いとだ手芸店に関わる人達がひかりのことを理解しようとする気持ちもあたたかく感じました。

    「普通の生活」をして育ったであろう人が、この物語では正しいことで押しきる感じがして、いい印象を与えてはいませんでした。ただ自分が一緒にいて心地よく感じる人、そして相手もそう思ってくれている人とならば、自然とうまく暮らせるのではと、この物語を読んで思いました。ひとりじゃないって思えることは、生きていく上でひとつの強さになるような気がしました。

    なにもしゃべらず雨音だけが聞こえても心地よい暮らしが、これから続いていくといいなと思いながら読み終えました。そして、いとや手芸店が改装したあとの物語も読んでみたいなと思いました。

  • 恋をしたことがない木綿子と、家族という存在がよくわからない光。
    光が木綿子の手芸店で住み込みで働くことになり、二人は時間をかけてお互いの特別な存在になっていく。
    恋愛の形は人によって違うし、年齢によっても変化していくもの。確かにその形について他人にとやかく言われるものではないよなと思った。
    「人と違う」と感じている二人だからか、言葉のかけ方や立ち振る舞いに配慮があって、とにかく優しい。
    温かな余韻に包まれて、幸せな読後感。

  • 畑野智美さん3冊目。これまで読んだ3冊を通じ、畑野さんは独身アラフォー女性を描くのが得意だと感じる。仕事をバリバリこなすキャリアウーマンではなく、非正規でカフェや飲食店に勤めていたり、自営業だったりする女性。本作も、35歳の手芸店主の木綿子さんが主人公(の1人)。東京郊外の商店街に佇む、元々は祖母がやっていた手芸店を引き継いだ木綿子さん。とても美人だが、恋愛経験が一度もない。本人も周りと同じように恋愛できてこなかったことにコンプレックスを抱えている。淋しさを抱えつつも、現状を変えるためのアクションは起こさない。そんなところへ、住み込み従業員として7歳年下の男性「ヒカリくん」が来る。この男性も育った環境から、家族への不信感などを抱えており、1人でなんとか食べていくために特段好きではなかった料理で飲食店に勤務し生計を立てていた。

    商店街の人々や家族や友人たちが一つ屋根の下で暮らす2人の関係を男女関係の型に当てはめようとしてくる様子、それを2人がどのようにかわし、実際どういう関係に発展していくのか、お互いの心の動きなども丁寧に描かれていた。

    2人の関係は形容し難いが、手芸店という家庭的な性質を持つお店が舞台のせいか、光の作る美味しそうな料理や、部屋にある「こたつ」などのせいか、ストーリーとは関係なく、ほっこりさせられた。やはり人と人が思い遣りを持って関係すると、これまでの生き方を良い意味で変えてくれるのだなぁと、主人公2人の変化がとても良かった。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

畑野智美の作品

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