惣十郎浮世始末 (単行本)

  • 中央公論新社 (2024年6月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (552ページ) / ISBN・EAN: 9784120057908

作品紹介・あらすじ

浅草の薬種問屋で火事が起き、二体の骸があがった。定町廻同心の惣十郎は犯人を捕らえるが、黒幕の存在が明らかに。罪を見つめて、人を憎まず。捕物帳の新たな傑作が誕生!

みんなの感想まとめ

人の罪を見つめつつ、憎しみを抱かない主人公の姿が描かれる物語です。江戸後期を舞台に、薬種問屋の火事から始まる謎解きを通じて、魅力的なキャラクターたちが織り成す人情劇が展開されます。特に、主人公・服部惣...

感想・レビュー・書評

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  • 罪を見つめて、人を憎まず…
    その男、服部惣十郎

    542ページ木内昇さんの作品にしてはなかなかに分厚い
    そしてこの表紙とタイトルのほのぼの加減に騙された感が…いい意味で笑

    面白い!惣十郎がカッコ良い‹‹\(´ω` )/››
    江戸後期の捕物帳です
    薬種屋の火事に二体の骸
    捕らえた犯人を指示していた男の足取りを掴むため
    手下を使って男を追うのだが…

    惣十郎のキャラはもちろん周りのキャラも個性的
    ラストに向けての謎解きもグイグイ引き込まれて長さも気にならない
    なんならもう短編くらいでシリーズ化して欲しい
    木内昇さん良いわ〜♪

    図書館にまだまだ数少ないのが不満です(๑•́ ₃ •̀๑)



    • bmakiさん
      木内さん、何読んでも面白そうな感じですね。私もいつか、、、多分、きっと。。。
      木内さん、何読んでも面白そうな感じですね。私もいつか、、、多分、きっと。。。
      2025/04/01
    • 1Q84O1さん
      みんみんさん、リクエスト出しちゃいましょう!
      図書館にガンガン入れて貰っちゃいましょう!w
      みんみんさん、リクエスト出しちゃいましょう!
      図書館にガンガン入れて貰っちゃいましょう!w
      2025/04/01
    • みんみんさん
      リクエストってした事ないけど頑張ってみる
      リクエストってした事ないけど頑張ってみる
      2025/04/01
  • 去年ハマったNHKのドラマ『大奥シーズン2』を思い出しながらの読書となった。
    疫病が蔓延する江戸後期を舞台にした物語。
    ドラマでも赤面疱瘡を撲滅しようと、男女逆転した江戸幕府が懸命にもがいていたっけ。
    人痘種痘はこの時代から試行錯誤されていたんだと思うと、先人たちの苦労には頭が下がる。

    木内さんのお江戸の捕物帳。思った通り義理人情にアツくカッコいい漢たちの物語でワクワクした。
    特に主人公・服部惣十郎を手助けする町医者・口鳥梨春、岡っ引・完治が良かった。
    あと惣十郎を密かに慕うお雅の美味しそうな手料理の数々には、読んでいてお腹が減ってきた。

    「正義とは聞こえのよい言葉ですが、さようなものは実はこの世のどこにもないと、私は常々思うております」
    人の数だけ存在する義。その曖昧な定義に苦悩する惣十郎は、時にはヘマもする未完成な人で、だからこそ周囲の人たちから支えられ慕われる魅力があってとても好ましい。

    「俺たちゃそもそも、恥をかくために生きてンだってことにさ。そいつが、人に与えられた一番の仕事だってのを思い出したのだ。完璧なんてもんは幻想でしかないからな。生きて、恥かいて、また生きてってのを死ぬまで繰り返すのが本来の役目なんだと気付いたら、俺の歩んできた道もあながち間違っちゃいねぇと思えてな」
    お雅がヘマをした時、惣十郎からこんなセリフを目の前で言われて、怪我した手を手拭いで優しく拭き取られたら、お雅じゃなくてもそりゃ惚れるよ。

    このほかの登場人物たちのキャラもいいし、続編に期待してます。

  • 薬種問屋の火災に端を発した謎を追う廻り方同心の物語。木内さんの最新作。読売新聞に掲載(2022.10〜2023.11)
    著者の作品を読むのは8作目。木内さんらしい時代小説でしたが、550ページは少し長かったです。

  • 「この感想をご覧の方々、この本をそこいらの時代小説といっしょにされちゃあ困っちまうぜ。そう思わねぇか、完治」と、同意を求める主人公惣十郎。
    「わっちも含めて個性豊かで人情味あふれる登場人物が読み手にとっちゃあ面白さこの上なしに仕上がってますぜ」完治もまたそれに従う。
    そんな二人を横目に佐吉は「さっき書肆を覗いたんですがね、売り切れ御免入荷待ちってなぁ札が貼られて驚いたぁ次第で」

    という感じで江戸の言葉で本作は綴られて、最後まで読み飽きさせない。
    北町奉行所定町廻同心の服部惣十郎が、取り巻きの完治と与助、佐吉と共に巻き起こる怪事件を次々と解決に導く、いわばミステリー要素も含んだ捕物帖なのである。
    またそれだけでなく、要所要所に旬の素材を使った料理の美味そうなこと請け合いなし。
    惣十郎も通う湯屋の重蔵に垢すりしてもらいたいなぁ。
    てことで江戸の文化も学べますよ。

  • これも新聞小説だと知って驚いた。
    新聞小説「かたばみ」が書籍として発行されたばかりなのに、次の新聞小説を執筆していたとは。
    一体どれだけの引き出しとパワーをもっているのか。恐るべし木内昇。

    苦手な時代小説ではあるが、木内昇ならきっと面白いに違いないと思った。
    予想通り。
    続きが気になって、ほんの少しの隙間時間にも没頭した。

    これはテレビドラマになるに違いない。NHKですよね、きっと笑

    ところどころに披露される人間観、なるほどね、と納得することばかり。木内昇だから、鋭くイヤミがない。そして右往左往する人を肯定する懐の大きさ。それが上から目線でないところがまたいい。
    江戸が舞台でも、現代社会の人間たちと心性は同じ。私たちの周りに起こっていることとなんら変わらない。(そういう描き方をしているのだよねとわかった上で)どの時代も人間って同じなんだよねと思う。

  • 定町廻同心の服部惣十郎の活躍の物語です。

    時は、天保十三年(1843)。

    佐吉は、惣十郎が、北町奉行所の定町廻同心を拝命してから小者として使っている。その佐吉が、八丁堀の屋敷に、浅草阿部川町で火事が発生したのを知らせてきた。薬種問屋「興済堂」から出た火が町を焼き尽くす。たまたま戻ってきた手代の信太に訊いたら、この日は、年の二回の藪入りの休日で奉公人全員は、留守をしていたと。

    ただ、主人の四代目藤一郎25才と番頭が、店に残っていたが姿が見えない。奉公人は、信太の他は、小僧が三人、女中がひとりきりだという。火元から二体の亡骸が見つかったが。探索していくと、藤一郎を甲州街道の第一の宿場である新宿で発見する。とすると、二体の亡骸は……。

    木内昇さんの本を読むのは始めてです。
    読売新聞に2022年10月21日から2023年11月24日まで連載。
    ※単行本は、字が小さくて読めず。新聞連載の切り抜きを読む。

    【読後】
    字が小さくて、読むのに苦労しました。あばた面の佐吉は、幼い頃に疱瘡に罹っている。面相を気にして、薬種屋には、よく出入りしている佐吉の活躍と、惣十郎の推理が。番頭の死と、不可解な火事の原因を。発見された二体の亡骸は、誰なのか。謎が謎を呼びます。
    「新聞切り抜き」
    惣十郎浮世始末
    2024.06発行。
    字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    2022.10.21~2023.11.24読了。★★★☆☆
    図書館から借りてくる2024.07.28

  • 良い本を読んだ。
    木内さんの捕物帳どんな物語かとワクワクして読んだ。
    期待は裏切られることなく、すいすいと読めて夢中になってしまった。
    最初の火事からつるつると繋がり、そこに繋がるのかーと圧巻。
    登場人物もそれぞれ味がありら読み応えあり。
    続編出て欲しいなぁ。

  • 主人公は、北町奉行所定廻同心服部惣十郎。彼の手下は小者の佐吉と岡っ引きの完治。
    今ひとつ頼りない佐吉に対し、完治はその慧眼と機転を見込んで惣十郎が岡っ引きに引き抜いたもとは名代の巾着切り。
    彼らを使い分けながら、惣十郎が放火殺人犯を追う。
    事件の裏に疱瘡治療を巡る不正な行為が見え隠れし、危険な治験を行う医師が浮かび上がる。惣十郎の亡くなった妻・郁の死因も関わり合うのではと、探索に拍車がかかる。
    他殺と判る死体の発見も相次ぎ、冤罪も絡み、次第にミステリー性を帯びてくる。
    この惣十郎、同役が罪人の数を挙げることに躍起となるのに対し、「犯罪の芽を先に見付けて摘み取ることに重きを置く」という信条の持ち主。
    さらにユニークなのが、惣十郎に請われ、遺体の検視も行う医師の口鳥梨春。
    「ただ淡々と己の仕事をしているだけ」で、「人から崇められ信を置かれている」人物。
    この梨春が己の医療に対する言葉。
    「私は、救ってなぞおりません。医者の立場で申し上げることではないかもしれませんが、誰かを救おうと力むと、かえってうまくいかぬのです。ですから、ただ引き受けることにしております」
    医療に携わる者の理想の姿勢だろう。
    妻が亡くなった服部家では、母親の世話を下女のお雅が面倒を見ている。捕り物となると才気走った推量をする惣十郎も色恋には疎く、このお雅の彼に対する思慕には、とんと気付かぬ。
    惣十郎を中心に多彩な人物が繰り広げるこの小説、シリーズ化が望まれる。
    彼とお雅が今後どうなるのか、その行く末も見届けたいし。

  • ▼木内昇さんが「捕物帳」を書いたらしい、ということで店頭で衝動買い。木内さんらしい捕物帳。地味と言えば地味。でも大いに楽しみました。

    ▼相当に江戸時代の警察組織については木内さんなりに調べはったんだろうなあ、という内容で、原則的には、お仕事リアリズムに基づいて書かれています。主人公の惣十郎さんは、内勤の書類仕事も多いし、いつでもなんでも浪人に変装して単身現場に乗り込むような長谷川平蔵現象は起こさないし、そもそも毎度毎度白刃を振り回して生死の境をくぐるような生活ではありません。捜査実際のほとんどは、部下のいわゆる「目明し」、十手持ちがきちんと上意下達で行います。(「密偵」ではありません)

    ▼エンタメ読み物としては、そういうリアリズムを愉しんでね、という一方で、以下の持ち味かと。

    ・惣十郎さんが、安楽椅子探偵的に「想像」と「人間観察」に長けた名探偵である。

    ・なんだけど「字が下手」。これは今で言うと「パソコンがからきしである」くらいのハンデで、書類仕事が下手なので出世からは遠い。

    ・惣十郎さんは、男やもめである。一度結婚したが子をなす前に奥さんが若死した。そのことを引きずりながら生きている。惣十郎に恋慕する女性がいる。

    ▼全体に連作短編のようでいて、はじめに起こった事件がずっと解決しきらぬまま尾を引いて、最終回で真犯人が分かる。世界観としては池波正太郎的な、「善人と悪人は紙一重、人間みんな業がある」みたいな感触です。

    ▼何より池波正太郎さんと違うのは、女性の描き方ですね。池波さんの女性観は今で言うと耐え難いまでに女性嫌悪、女性蔑視そのものなんですが(笑)、そこは木内さんは全く違います。このあたりが、設定が時代劇で女性の活躍幅は広くないので、言えば「何が起こっているか」はほぼ変わらないのだけど、筆致が変わればこうも味わいが変わるかな、という印象でした。

  • 木内昇さんの直近作。
    私の今の心の中にあるもやもやが、木内さんの紡ぐ日本語によって光で照らされて自分自身に向き合う貴重な時間となる。

    流行のぼんやりした日本語とも言えぬ定義が曖昧な言葉があっという間に流布されては忘れ去られの繰り返し。

    こんな言葉があったんだ。こういうことを指し示す日本語が使われぬままに埋もれていくのかという驚きと哀しみ。
    言葉が持つ複層性と豊かさを時代小説という異次元で噛みしめられる味わい深い1冊だった。

    若い同心 服部惣十郎が主人公だが、沢山の登場人物すべて主人公や物語を動かすための駒や脇役ではなく、それぞれの光と影、強さと弱さを持ちつつ、その背景や人生に想いを馳せられる。
    そして終盤の…。そう来ましたか笑。

    人生いい時もあれば不遇に打ちのめされる時もある。
    そんな簡単な一言で言われては、「知ってるよ。わかってるけど」とむかっ腹も立つ。

    だが木内さんは言葉で説得しない。白黒つけない。ボールは読み手に委ねられる。それがいい。

    45頁より抜粋

    玄関へと続く庭には、水が打たれていた。濡れた那智黒の玉石が陽に煌めく景色は、どういうものか惣十郎の心を常に解きほぐす。いかに厄介な事件を抱えていても、浮世は世知辛いことばかりでもなかろうと、目の前が仄明るくなるようなものだ。墨引の内には、あまたの者が住み、それぞれの暮らしがある。心楽しい時もあれば、打ちのめされることも、不遇を託つこともあるだろう。一生を順風の内に送ることはかなわぬが、それでも誰しもその生涯で、こうして煌めく刹那があるのではないか・・・無数の玉砂利に、そんなことを教えられたきになるからかもしれぬ。

    以上抜粋。痺れる。

    そして身分制度や階級が己の行く道をほぼ決めていた時代の解釈がいい。

    205頁より抜粋:
    「だが俺は己より他の者になりてえとは思わねえのだ。せっかくこの身で世に産み落とされたんだ、とことんまで付き合ってみるのも粋だろう。生まれた順が悪いだの、家柄が悪いだの、親兄弟に恵まれねえだの、変えられねえものに文句を言ってるうちに一生が過ぎちまったらもったいねえもの」

    「身分や役目や…生まれたときから己の意思とは関わりなく定められたものから逃れて、何が悪いっ」

    「ちっとも悪かぁねえさ。お前がまことに欲を欲する道を見付けたら、堂々と挑めばいいことだ。ただそこで、己を捨てることも、世の間尺に合わせて騙ることもねえのだ。道を拓くときにゃ、不満や僻みをわきに置くもんだ。その痛みを思い出せねぇっくれぇ遠くまで行けたときに、はじめて振り返ればいい話だ。俺はそいつができねぇから、愚痴を言いながらも一所で勤めてるんだが、お前のように己を騙ることはしてねぇ分、上等だと思うぜ」

    「陶玄、お前は嘘の像を作り上げて、何物かになれたかえ」
    以上抜粋。


    そして溢れかえる情報や誰にでも許された世界への、世間への自己発信情報社会での炎上や意見の分断については。
    195頁より抜粋:
    そうしてまで奴はなにを守ろうとしているのか。人々から崇められんと己を飾るうちに、浮世にはあまたの考えがあって然るべきだという道理すら、わからなくなってしまったのだろうか。

    ・・・わっちなら、うっちゃっておくがな。考えの違うものとは係り合いならなきゃ済む話だ。おそらく陶玄には善か悪しかない。自分に非を唱える者は有無を言わさず悪であり、余さず排除しなければならない存在なのだ。

    そして人生訓のような私にとって心の軸となる一文。
    195頁より抜粋:

    この世には確かなことなど、ひとつとしてないのじゃ。いかに善行を積んだとて、災厄が降りかかってくることはある。どこへ怒りをぶつければよいのか、分からぬようなことが、浮世にはままある。なにかにすがりたくなるのも必定よ

    以上抜粋。

    なぜ私ばかりと哀しみと絶望に暮れる穴に落ち込んでしまうことがあるのだけれど、限られた人生の残り時間。
    被害者の轍に拘泥されて生きたくない。
    生き延びて煌めく日々の一瞬の輝きに気づきを重ねている間に、きっと状況は変わるよと信じて。「はかなさ」は美しさでもある私たちの文化だから。

  • 面白かった。

    人を過ちへ向かわせる理由や、心の揺らぎの原因は今の時代と変わらないもので、いつの時代も人は『他の評価』が気になり、自己評価との差分に振り回されてきたのだろうなあ。
    時代劇の書き口だが、問うていることは現代の小説といった感じで共感したし、新鮮な読み心地だった。

    シリーズ化しそう。
    お雅がんばれ。

  • 捕物帖の主役はたいていがカッコいい。しゅっとしていて、鋭い閃きをもとに手下を自由自在に操り見事な勧善懲悪劇を披露してくれる。間違っても上役や仕事に愚痴なんか言わないし、字も上手い。
    服部惣十郎。北町奉行所定町廻同心。出世のための手柄を求めず、罪人を捕まえるより、罪の芽を摘むことをよしとする。上役のご機嫌伺もせず媚びることもない。その姿勢は若くして亡くなった妻の父の背中を追うもの。
    けれど惣十郎自身にはもともと心に秘めた思い人がいて亡き妻、そして義父に対してうしろめたさを持っている。
    という、このあたりの設定が上手い。惣十郎の人となりも、彼に関わる人たちも、単なるわき役ではなく、この捕物帖の、すべてにつながる配役。
    薬種問屋の火事、そこで見つかった二体の骸。二人の身元は?犯人は?目的は?
    日々のお役目をこなしつつ事件を追い続ける惣十郎。人々を苦しめる疱瘡と、それを治療、予防しようとする町医者。
    江戸の街でうごめく全く別の出来事たちが1つずつ星座の様につながっていく。星の真ん中にいたら星座は見えない。渦中にいる者にはそのつながりが分らないということ。
    人が犯した罪は離れてみれば別の形をしていることもある。罪を犯すのも裁くのも人。
    裁く己の正義は、必ずしも正義とは限らない。罪の始まりはどこにあるのだろう。
    時代小説、特に捕物帖の魅力は読み終わった後のすっきり感だろう。善を勧め悪を懲らしめる万能感。
    けれど、人の世の罪とはそうそうわかりやすくはない。苦い思いでページを閉じる。この苦さ、癖になる。

  • 久しぶりに読んだ木内昇作品。
    相変わらず、読みやすくてわかりやすくてストーリーテリングが巧み。530ページを超える大作にもかかわらず、ほぼ一気読み。

    人情あふれるキャラクター達の魅力も相まって、とても楽しくすいすい読めたのだけれども、いかんせん、そこまでの語りがとても丁寧だっただけに、オチがやや消化不良。納得感に不満が残るかなあ。
    でもシリーズ化してもよさそうなくらい、各キャラクターに魅力があって、引き込まれたのは確か。
    木内作品はいつも裏切らない。

  • 木内昇氏の捕物帖?!読むに決まってる。そしてよかった。とても良かった。
    装幀画の人物、顎に手を充てている黒羽織の男の面相が高橋一生に見える(たまにこんな表情するよね?)ところも、その主人公の定町廻り同心の惣十郎を始め登場人物ほとんどが脛に傷を持つ人物だらけで乱暴に言えば、善人ではあるがお縄になる下手人との差は僅少とも思えるような人物設定もイイ。
    江戸言葉の使いようも粋だし、現代でも人々を恐怖と対策を惑わせている感染症(ここでははしか)を取り上げながら漢方医と蘭方学医の対立を深堀りしている所も良かった。
    新聞連載じゃなくていいからシリーズ化を求む。

  • 疫病、介護、など医療問題をからめた捕物帳。
    作者の作品に通底する、仕事とは何か、世間と自分、家族との関係など濃い内容。
    登場人物の造形も様々で魅力的。手下の佐吉と完治のコントラストもよかった。
    お雅も魅力的で恋の行方もはらはらした。
    が、惣十郎、あんなに淡々として自分を律するのに人妻の冬羽に懸想するかな?自分の妻を蔑ろにするほどに?冬羽の魅力がそこまで感じられず、その辺りの心情があまり飲み込めなかった。

  • 同心服部惣十郎の生一本で融通が効かない性格で上役には阿らない。でも、事件の見立てなどはなかなかの物。薬種屋の火事で出た死体から始まった探索が思わぬ所へ着地する。
    口鳥先生や岡っ引きの完治や手下の佐吉など面白い人物が登場し、そのやり取りも楽しい。

  • お江戸人情捕物噺…鬼平犯科帳等あまたの傑作を生んだジャンルで、最早出尽くしていると毎度毎度思いつつ、このジャンルからまたしてもとんでもない傑作が生まれた。

    まずキャラクター設定が、とにかく絶妙に上手い。シリーズ物で何作も出てきたような個性の味付けを最初からきっちり纏わせるのは相当な力量だと思うのだが、主要登場人物だけでなく結構な端役にまで、その個性を間とさせているのだからすごい。

    と書くと、キャラの魅力で読ませる小説かのようだが、それだけではない、ストーリー構成も抜群に上手いのだ
    薬問屋の火事に始まる物語は、霊感商法詐欺事件などいくつかの事件を解決していく描写を追いかけていくうちに、当時では絶望的な大病「疱瘡(天然痘)」の治療法や予防法を巡るミステリーとなり、水野忠邦の改革で居心地が悪くなる江戸世相に相まって歴史社会小説と化していく、その化けようが実に巧く築きあげられていて、読み進んでいくときの高揚感というか中毒性がすごいのだ。

    疫病、不景気に失政、あらぬ噂に踊らされ小さな失敗で世間に疎まれていく人々、介護問題、…コロナとSNSと無能政治に苦しんでいる今の俺たちにとって他人ごとではないという親近感もあるから余計にのめり込む。

    550Pと分厚く、活字も小さめで物量的には読み応えがあるが、文章が上手くて波に乗れたら読みやすいし、考えさせられる言葉や挿話も盛りだくさん。

    彼らの活躍をもっと読みたいし、片付いてない恋物語もあるし、是非と続編を読みたいぞ!

  • ああ、面白かった。
    と読み終わってしみじみ。
    大きな事件の流れの中で見える仕事観、人生観、義理人情。語られる言葉が現代にも通じる。むしろ真摯に迫るものがある。

    登場人物が浮世離れしてないのにそれぞれ魅力的。
    表紙と裏表紙描かれたおそらく惣十郎、完治、佐吉を眺めて、親しみが湧く。
    そして口鳥梨春先生は振る舞いや生き様だけでなく、名前も好い。
    時代物は似たような名前で混乱することがあるけどこの作品は分かりやすかった。あえてそういう工夫をしているのかな?
    続編出てほしい!

  • 浅草の薬種問屋で起きた火事の現場に残された二つの遺体。北町奉行所定町廻同心・服部惣十郎が犯人を捕らえるが、指示役の足取りは掴めない。
    小者の佐吉、岡っ引きの完治らと共に事件を追い続け、惣十郎がたどり着いたのは驚くべき真相とは……。


    いや〜面白かった!
    間に偽祈祷師の捕物や、湯屋の三助の母の死の謎などを挟みながら、薬種問屋の火事の真相が少しずつ明らかになっていくワクワク感。

    医は仁術を体現したかのような若き町医者・口鳥梨春の清廉さは物語に清涼感を与え、「正義」は人の数だけあり、その正体は実に曖昧で多様であると考える惣十郎の正義への向き合い方も共感しかない。

    捕物帖でありながらそれだけにとどまらず、惣十郎、梨春、史享、崎岡、完治、重蔵らの仕事への矜持、さらには多津、郁、お雅らが抱えた憂いなど、登場人物それぞれの胸の内が丁寧に描かれる。

    「組織の中で己のままに生きるには、どうすればよかったのかのう」
    正しいと信ずることをなすことが必ずしも実を結ばない現実に打ちのめされた史享の姿にやるせなさを覚え、その義父に惣十郎がかけた言葉には思わず落涙。

    ミステリであり、お仕事小説でもあり、家族の物語でもあり、500ページ超があっという間の味わい深く、去りがたい物語でした。

    このメンバーでまた次作が読めるといいなぁ〜。

  • ミステリと人情が絡み合う、江戸っ子捕物帖。惣十郎を頭に、佐吉、完治、与助たちが複雑怪奇な事件を暴くため奔走。疫病の蔓延、漢方と蘭方の反目、出世争い…難儀な江戸の世であるが、めげずに前を向く彼らの直向きさに感心。

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著者プロフィール

木内 昇(きうち・のぼり):1967(昭和42)年東京生まれ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「Spotting」創刊。2004(平成16)年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。11年に『漂砂のうたう』で直木賞、14年に『櫛引道守』で中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞、25年に『奇のくに風土記』で泉鏡花文学賞を受賞。著書に『茗荷谷の猫』『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『火影に咲く』『化物蝋燭』『万波を翔る』『占』『剛心』『かたばみ』『惣十郎浮世始末』『雪夢往来』他多数。

「2025年 『転がるように 地を這うように』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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