ちゃっけがいる移動図書館 (単行本)

  • 中央公論新社 (2024年8月20日発売)
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  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120058189

作品紹介・あらすじ

「ちゃっけさん、初めまして」



小田桐実、三十五歳。

図書館に非正規職員として勤務。

将来の夢はない、貯金もない、結婚もできない。

そんな、ないない尽くしの毎日が、子犬を拾った日から激変する!?



青森×図書館×可愛いわんこの感動物語!

感想・レビュー・書評

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  • 青森中心に執筆活動しているご当地作家の高森美由紀さん、今回は移動図書館の話です。
    金なし、趣味なし、彼氏なしの35歳。図書館で働いてるのに司書の資格持ってないとか崖っぷち非正規社員の倹約生活に変化が起こります。
    引きこもりだった、実。
    子犬のちゃっけとのやり取りがぎこちなかったけど次第にほっこりしてくる。
    犬を飼うことで目的意識が芽生え生活が充実してきたって感じ。大筋は変わらなくても意識が変われば毎日楽しんで前向きに暮らせるし、それが積み重なっていけば世界の見え方も違ってくる。
    終盤の、こんなに山は美しかったのか。って一節が心に響きました。青森で暮らしてるんだから山は当たり前に存在してるのにその素晴らしさに気づかないなんて。
    見慣れた日常が特別な一瞬に変わった印象が素敵でした。

  • 心が温かくなる感動物語。

    図書館に非正規職員として勤務する35歳の小田桐実は、移動図書館に配置換えとなり、バスの運転をする元館長の和田さんと司書の佐藤さんと3人で動いている。

    将来の夢もなく悲観的で、貯金もなく毎日節約生活で、結婚もできなく見通しも立たない実は、両親からも非正規であることや未婚であることに散々な言われようだった。

    ある日、移動図書館で運行中に子犬を保護する。
    里親が見つかるまで大家の許可を得て実と暮らすことで…。

    ちゃっけと名前をつけた子犬と出会ってから無愛想で無口だと思われていた実が、変わっていく。

    朝晩散歩をし、食事を充実させ、ぬいぐるみを引っ張りあって遊ぶことは、考えられなかったことで前より人間ってらしく生きていると。

    あんなに煩く言っていた両親もビデオ通話で実の顔を見て、いい顔していると思ったからこそ何も言わず、ちゃっけ宛てにプレゼントを送ってきてる。

    もちろん移動図書館での利用者さんとのコミュニケーションも深くなり、司書の佐藤さんよりレファレンスもできる。
    この物語のなかでも未読の本やもう一度読みたいなぁと思う絵本が出てくる。

    心がほっこりするのは、文章の表現が優しくて良いなぁと感じるところでもある。

    西の空はみかん色、東の空はぶどう色。
    高い梢を揺らしていく風、水たまりの中の空
    ミルクティ色の枯れた草、葉っぱを通る新鮮な光。


    大らかで穏やかな和田さんや少し変わっているけど明るい佐藤さんとクールな実とちゃっけの移動図書館に行きたくなる…ずっと無くならず走ってほしいと思った。






  • 声を出して何度も笑った。
    この間私は人見知りだと話したと思うんだけど、基本的に笑顔でフレンドリー?な人見知りなのです。
    相手がどんな人なのか分からないから笑顔でいる。という感じなのだけれども。
    この主人公、淡々と無表情なの。
    ちゃっけとの生活で色々がんじがらめになっていたことがほぐれて表情も感情も徐々にほぐれていったんだけども。
    無表情でいられるって私にはちょっと羨ましい部分でもあって。
    まぁどっちも良いところ悪いところあるとは思うけど。

    本の中で沢山の本が出てくるんだけど、「ちいさいおうち」も出てきたの。
    あの本の表紙に「her story」って書いてあるのご存知かしら?
    あれは作者の方が「history(歴史)」は「his story 」だけれども、男性だけでなく女性も歴史を作ってきた。
    女性も自分の人生を生きたらいい。
    だから「her story」と書いたんだそうだ。
    戦前?戦時中?の統制がかかっているような時代に出版された本に密やかにそんな意味が込められていたと知った時にはちょっと感動したんだよね。

    で、この本に戻ってくると、この本「her’s story」だったなぁと思って。
    実さんとちゃっけのふたりの人生と歴史が始まったお話だった。

  • ちゃっけの可愛らしさにほっこり♪
    図書館の非正規職員の女性が、子犬と出会ったことで、少しずつ心がほぐれていくという心温まる物語。
    真面目すぎて、こうするべき、こうあるべき、なんて気持ちが大きくなっちゃうと、自分も相手も苦しくなってしまう。
    将来の夢も、貯金も、結婚も、何も持っていないと思っていた彼女に大切なことを気づかせてくれたのは、ちゃっけだった。
    ガチガチに固まった心をほぐしてくれるもの。彼女の場合は、ちゃっけだったけど、動物でなくてもいい。植物でもなんでも、心動かされるものが、この自然の中にはいっぱい溢れているんだもの。
    そういうものにも目を向けられるゆとりを心にとっておくことが大事なのかもしれないね。
    青森の方言もあったかくてよかったなぁ。

  • 30代半ばで独身、図書館司書の資格がない非正規雇用の図書館職員小田桐実は、青森の田舎町で移動図書館の担当をしている。ある時、移動図書館のバスが移動中、雑種の子犬を見つけ…。

    私は図書館司書の資格があるけど、非正規雇用職員。ただ、旦那の扶養だし、ワンオペなので、現状のままで十分と思ってる。
    けど、多くの図書館司書や図書館職員は非正規雇用で苦労している。まさに、実が抱えている悩みがそのまま現実に起こっている。

    ちょっと堅物な性格で親に反抗できない実を雑種の子犬、ちゃっけが変えていく様はなんだかほっこりしてしまう。犬だけでなく、ペットってそこにいるだけでこちらが幸せになってしまう。

    我が家の犬も10歳を過ぎ寝てばかりだけど、ただ同じ空間にいるだけで安らぎを与えてくれる。

    移動図書館のメンバーが二人とも味のある人たちだし、アパートの大家さんも可愛いおばあちゃん。ちょっと嫌な人たちも出てくるけど、最後は前向きになれる良作。

  • 図書館の非正規職員で35歳未婚の小田切実(みのり)がぼろぼろの子犬を保護したことから始まる物語。「ちゃっけ」は小さいという意味の方言。

    純真無垢なちゃっけに癒されましたー
    夢も希望もない節約生活で笑顔もなかった主人公が、一時的に預かったちゃっけの存在によって少しずつ変わっていく様が描かれます。
    生き物と暮らすことで、色々なことに気付かされるのだなぁと改めて思いました。

    「犬あるある」がいっぱいで我が家に犬がいた頃のことを思い出してしまいました。あのぬくもりが恋しい…
    賢くて人懐こい犬がいる移動図書館なんて、あったら最高。通いたくなります。

  • 非正規で働く30代後半の独身女性。
    前半は親からのプレッシャーや、将来への不安などなど重く苦しい展開だったが、そこに「ちゃっけ」が現れてから、少しづつ明るくなってくる。
    前半はモノクロ展開で、そこに少しづつ色がついていくような感じ。
    無愛想で感情の見えない主人公が、少しづつ人間らしくなっていく。
    何もないと思っていた自分の人生が、「案外持ってる」と思えるほどに変わっていく。
    主人公の未来が明るいものになっていたらいいなと思う

  • 髙森美由紀×高瀬乃一 1万字対談。県内在住作家の創作の源泉とは。【八戸ブックセンター×はちまち特別企画】。(2021.08.26)
    https://8machi.com/products/specialdialog1-1

    【Vol.10:髙森美由紀】編集者が注目! 2023年はこの作家を読んでほしい! | ほんのひきだし(2023.01.10)
    https://hon-hikidashi.jp/book-person/3438/

    ゆったりとした時の流れが育む人生と小説 図書館職員から専業作家へ [青森県]:朝日新聞デジタル(有料記事2023年12月29日)
    https://www.asahi.com/articles/ASRDV4SQPRDPULUC004.html

    髙森美由紀な日々
    https://takamorimiyuki.hatenablog.com/

    ちゃっけがいる移動図書館 髙森美由紀(著/文) - 中央公論新社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784120058189

  • 非正規職員という立場は卑屈になるのもよくわかります。ちゃっけによって、生活が改善し、いろんな事がいい流れになっていくのがよかったです。お母さんの強烈な小言がすごいと思いますが、そんなお母さんにも歩み寄れるようになったのがすごいなと思いました。
    なによりもちゃっけがかわいかったです。
    この本に出てくる「コートニー」や「ちいさいおうち」も読んでみようと思います。

  • 青森の町立図書館で非正規職員として働く実(みのり)は、秋田の実家を出て1人アパート暮らしをしている。
    移動図書館の担当で、正職員の佐藤さん・元館長で運転手として移動図書館のある日だけやってくる和田さんと3人でこなしている。ある日駐車地からの帰り道、山道に出てきた蛇を轢いてしまう。実が見に行くと、道のワキからやせっぽちの子犬が出てきたのに気がつく。どうも捨て犬のようだ。見捨てて行くことができずに図書館まで連れて行く。
    結局、里親が見つかるまで実が預かる事になり、秋田の方言で「小さい」という時に使う「ちゃっけ」と名づけた。。

    お仕事小説かな、と思って読みはじめたのだが、だいぶ違った。ちゃっけとの暮らしにとまどいながらも、子犬の無垢な様子に少しづつ変わっていく実。自分は、何をやってもダメな負け犬人生だと、投げやりな毎日を送っていた実が、前向きになっていく。
    読み終わってみれば、ある意味結末は予想通りなのだが、登場人物たちの変化がとても良かった。
    春を迎え、実や移動図書館がどうなるのか…想像させるかたちで終わったところも良かった。

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著者プロフィール

青森県出身。地元で勤務しながら創作活動を続ける。2014年『ジャパン・ディグニティ』で第1回暮らしの小説大賞受賞。2023年「バカ塗りの娘」として映画化。主な作品に『おひさまジャム果風堂』『お手がみください』『みさと町立図書館分館』『みとりし』『ペットシッターちいさなあしあと』『羊毛フェルトの比重』(すべて産業編集センター)、『藍色ちくちく 魔女の菱刺し工房』(中央公論新社)など。

「2023年 『[新版]ジャパン・ディグニティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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