アーロン収容所: 西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 3)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000033

感想・レビュー・書評

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  • 英軍捕虜となった著者の回想。
    副題にある通り、体験に基づき西欧ヒューマニズムの欺瞞を告発するという側面はあるものの、自文化・自民族中心主義からくる文明とか残虐への絶対的評価を疑い、相対化してみようとする試みもみられる。
    また、捕虜という極限状態でイギリス人、インド人、ビルマ人、そして日本人の観察を通じて得た人間論でもある。

  • 「戦場で恐怖に圧倒される中、戦場でこそ生き生きする人種がおり、そういう人々は平々凡々な生活の中でその才能を発揮することはない」にかっこよさと切なさを感じた

  • 戦メリかビルマの竪琴の映画でしか捕虜の話を知らないままよみました。捕虜生活もさることながら英国軍人が見るアジア人蔑視の思考がよほどこたえる。戦メリのラストにあるファーザー・クリスマス…のせりふも無邪気に振る舞うアジア人の痛々しさを含んでいるのかと思いました。

  • ビルマのアーロン収容所の体験から、イギリス人のアジア人に対する意識を浮き彫りにする。
    また、ビルマ人の素朴さ、純情さも。

  • 1962年刊。著者は94年時?に京都大学名誉教授。◆アジア太平洋戦争終結後、ビルマにて投降した教育招集者による英軍捕虜収容所体験録。◆他人(特に英国)に厳しく、自分や日本側に甘い見方と感じられる点(特に、対インド人への侮蔑眼を持つと思われる節も)、捕虜収容の社会的意味(少数人で、しかも面従腹背の可能性あるインド人の助力を得ながら、多数の捕虜を管理・維持する必要性がある)を没却している感、シベリア抑留記に比べ相当牧歌的な点、個別の英人の特殊性癖を、さも英国人の国民性に結び付けようとする牽強付会は感じる。
    特に58頁以下の、肉食・牧畜業と捕虜収容の慣れとを結びつける推論は無茶に過ぎる(モンゴル人は捕虜の扱いが上手いとでも言うのか。牧畜業を辞めれば捕虜の扱いが下手になるのか?)。加えて、日本の捕虜収容施設の実見分をしたことがないのに日英の優劣を比較をするという、体験談に根差した論証としては、根本的な誤りをしているなど、とても学者の書いたものとは思えない。また、戦闘終結直後の捕虜収容は感情面など戦時の影響を想定でき、このような特殊性が考慮せずになされた、本書の副題に関する論はあまり説得力がない。
    もっとも、①盗みをしながら捕虜生活を維持した事実など、体験叙述の具体性、②施設での英・印・ビルマの比較が明快、③収容所で解体していく軍隊秩序模様、④生々しい感情描写等、真に迫る情報は豊富。そんな中、①戦時中に日本兵相手のビルマ女性のセックスワーカーが存在していた点、②日本国内での検閲を恐れ通信文は正直に書けず、家族からの送付文も同様だったと開陳する点、③戦時中捕虜になった日本人は、著者ら戦後投降者を避け、挨拶にも応じず(戦陣訓の呪縛が想定される)など、何気に書かれた箇所に見過ごせない記述が散見される。
    西欧=肉食・牧畜業の虚構は「魚から始まる世界史」「粉食文化と肉食文化」にもある。肉食が増えたのは17~18C以降と極めて現代に近い時期に始めて。魚食の多用の実など。◆著者、イタリア・ルネサンスではあるが、西洋史が専門のよう……。

  • 本来はなんてことない職業の人なのに
    収容所での盗みの才能があるもの
    軍では偉いひとなのに
    収容所では大したことない人

    才能や能力なんて
    場に恵まれないと
    発揮できないみたいな
    記載があったと思う

    なんとも心なごむ

  • ミャンマーにおいて捕虜生活を過ごした主人公の体験談。イギリス人の人間性が考察されています。とても残酷な気分になるシーンも多くある一方、捕虜生活をある意味楽しそうに過ごすシーンも多くあり、少し予想外でした。日本人捕虜のイギリス兵に対する駆け引きが多く描かれていました。イギリス兵に隠れて食べ物を盗んだり、仕事を上手くさぼったり。捕虜生活でとても辛い生活をしているはずなのに、読みながら「ぷっ」と笑ってしまうような、とても不思議な気分になる本でした。

    イギリス人士官がミャンマーの女性を輪姦し、その姿を日本人兵に見せつけたシーン、日本人捕虜が服の中に缶詰などを隠しながらイギリス人の検問を突破するシーン、日本人兵が部屋に入ってきても全裸で居続けるイギリス人女性兵のシーン、イギリス人兵がまるでゴミのようにビルマ人の死体を扱うシーンなどが印象に残っています。

    一つ感じたのは、文化(生活環境)の違いは生き物としての違いにまで及ぶのだということでした。作品内で描かれているイギリス人と日本人は同じ生き物(人間)には見えませんでした。

  • 西欧ヒューマニズムの限界というのはやや大げさな気がする。
    読みやすいし非常にわかりやすい反面、「アジア人民との連帯が足りないのではないか」などと60年台の団交のように突っ込みたくなるような気がしないでもない。

    私自身が大いに楽しみつつ白けて読んでいるのは、山本七平、大岡昇平といったあたりで同じようなものを読んでいるからで、内容が似ているので区別がつかない。
    昔は山本七平の戦争ものが好きだった。今でも好きだけど。だけどそれだけに、これはこれで一面的な見かたではないかと思い始めている。

  • 名著といわれるのが理解できるように思えました。
    収容所というとソ連とかがイメージとして大きいけれども
    他にもあったということ。

    著者はミャンマーで収容され、
    2年もの間強制的に労働させられました。
    なぜ彼らは生き延びられたか…
    生きるために「必死」になれたからだと思います。

    ユーモアが混じっているので
    こういった体験記なのに関わらず
    楽に読めてしまったのは驚きでした。
    そして、連合軍のやったことは
    形式上は暴力ではないけれども
    人を壊すものだということ…

    戦争はやはりやってはいけないもの。
    これ以上起こしてはダメ。

  • 学校の読書感想文(確か高校一年生の時)の課題図書
    だった。一読すれば必ず西欧もとい白人が嫌いになる本。
    著者が学徒兵として経験したことをそのまま書かれており
    何人たりとも彼の体験を否定できない。

    西欧ヒューマニズムは人間外とされる黄色・黒色人種には適応
    されないという恐ろしい人間の本性をさらけだした作品。

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著者プロフィール

会田雄次

一九一六年京都府に生まれる。四〇年京都帝国大学史学科卒業。四三年に応召、ビルマ戦線に送られ、戦後二年間、英軍捕虜としてラングーンに抑留された。帰国後、神戸大学、京都大学(人文科学研究所)をへて、京都大学名誉教授。専攻はイタリア・ルネサンス史。著書は『アーロン収容所』『ルネサンスの美術と社会』『ミケランジェロ』など多数。九七年逝去。

「2019年 『日本史の黒幕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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