科挙: 中国の試験地獄 (中公新書 15)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000156

感想・レビュー・書評

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  • 科挙のイカレ具合を歴史を追いながら、下部から順に説明していくすごい労作。
    おもしろい。

  • 高校時代に人から薦められて読んだ。科挙について書かれた名著である。科挙についての詳細が事細かに書かれている。驚いたのは当時のカンニング技術。命懸けのカンニングだね。

  • 1テーマ解説本だが出来はすばらしい。
    壮大な歴史と過程がある科挙の制度について非常に綿密に解説しているとともに、ユーモアのある具体例が随所に描かれていて非常に面白い本に仕上がっている。何かについて書くときはこのくらい物事に精通してから書くべきであるという手本のような本ではないか。

  • 参考書として読んだのだが、
    かなり良い本。

    科挙の歴史からこぼれ話まで。
    科挙受験者に比べれば、私の受験体験なんて小さい、小さい。
    そういう話がたくさん出てくる。
    面白い。

    なにより
    硬質な文章が素敵。
    そこらへんの作文本読むよりは、この本を読んだらいいと思う。
    もしかしたら「日本語の作文技術」読むよりずっと参考になる。

  • 宮崎市定が書いた『科挙』という題の書籍には二つあり、一つは筆者が出征前に書いて、たまたま金庫に保管されていたのが戦災を免れ、前後に出版され、今は絶版しているもの。もう一つは、初代の内容に満足のいかない筆者が改めて執筆し直した内容で出版されたもので、即ち本書。後者には、区別するために副題「中国の試験地獄」がつけられた。
    筆者は戦争に出て、よほど見たくないものを見たんだと思う。本書中に度々日本軍のことが出てくる。それがあってか、それとも元々思っていたのかは知らんが、巻末近くで述べている数文が非常に感慨深かった。

    「どんなに手柄をたてた将軍にも、政治の最高方針には参与せしめないという制度は……無情……に見えて実は政治の最高の眼目なのである。……軍隊は国家を保護するためにこそ存在すべきで、それが国家・国民の支配者になられてはたまらない。」p.209

    中国は文治国家で、特に宋代以降は文が武を抑える構造が顕著になったらしい。同時代の欧洲がまだまだ武に頼る政治から抜け出せなかったのに対して、欠陥こそあれ、中国は文をもって政治の中心としていたと。それを支えていたものの一つが科挙であった。

    -----

    ・魯迅の『孔乙己』(竹内好 訳, 岩波文庫) を前に一度読んだがよく理解できず。解説や脚註を読んでもピンと来ず。それが、本書『科挙』p.206に『孔乙己』の三文字がでてきてようやくその背景を知れた。棚から牡丹餅。
    ・中国でよくみかける屋根のついた門、状元坊と呼ぶらしいが、あれが科挙で状元になったお祝いに国の助成金と郷里の後援で建てられるいわば記念碑だとは知らなかった。勿論、今見られるもののうちの大半は偽物だと思うが、それでも次から見る目が変わりそう。

  • 流し読み。蒼穹の昴でも科挙の激しさは知っていたけど、歴史的な試験制度の変化について触れられていた。私には無理だー

  • すさまじい試験競争ですね。この国の受験「地獄」どころの騒ぎじゃない。司法試験をさらに何重にも輪をかけて厳しくした感じですかね。ただ、王朝によって軽視されていた時期があったとはいえ、これが中国で10世紀以上にわたって継続していたことに驚きを隠せない。イェールの成田さんが言っていたように、貧者であろうが出自がどうであろうが社会不適合者であろうが、お勉強ができて一発試験にさえ合格すれば人生の道が広げられるシステムはその点では決して批判されるものではない。そのシステムをを専制独裁王制の中国諸王朝が古代から採用し、所属階層[級]に関わらず人材を求めていたという事実は西欧や日本の人材採用歴に比べてなんて先進的であったのだろう。そして現在の共産党は学歴プラス徹底したメリクトクラシーを採用している点もHRM の先進的国家であることがよくわかる。まあ、とは言っても、秘密主義の一党独裁体制国家で生まれ育てられなくてホッとしているけど。

  • 322
    [かつて中国では、官吏登用のことを選挙といい、その試験科目による選挙を・科挙・と呼んだ。官吏登用を夢みて、全国各地から秀才たちが続々と大試験場に集まってきた。浪人を続けている老人も少なくない。なかには、七十余万字にもおよぶ四書五経の注釈を筆写したカンニング襦袢をひそかに着こんだ者もいる。完備しきった制度の裏の悲しみと喜びを描きながら、試験地獄を生み出す社会の本質を、科挙制度研究の権威が解き明かす。]

    「宮崎さんは日本の中国史研究をリードしてきた京都大学の教員であり、中国の古代から現代まで、すべての時代にわたって論文を書き、本を出版している。しかもそれがいずれも抜群に面白い!!そして本当にすごいのは、難しいことを素人でもわかるような文章で書いていること。若い人にぜひ「ホンモノ」の歴史家の文章に触れてほしい。ーこの本も、中国のある特定の時期(清)について、限定された課題(科挙)を考えるだけのものではない。広く分明史として中国をとらえる視点があり、そのために現代社会とも結びつけられていて、さまざまなことを考えさせてくれるものになっている。」
    (『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)
    津野田さんは宮崎市定さんの本のファン^^

    目次
    試験勉強
    県試―学校試の一
    府試―学校試の二
    院試―学校試の三
    歳試―学校試の四
    科試―科挙試の一
    郷試―科挙試の二
    挙人覆試―科挙試の三
    会試―科挙試の四
    会試覆試―科挙試の五
    殿試―科挙試の六
    朝考―科挙試の続き
    武科挙―科挙の別科
    制科―科挙よりも程度の高い試験制度
    科挙に対する評価

    著者等紹介
    宮崎市定[ミヤザキイチサダ]
    1901‐1995。長野県飯山市に生まれる。1925年、京都大学文学部東洋史学科卒業。60年から65年にかけ、パリ、ハーバード、ハンブルク、ボフムの各大学に客員教授として招かれる。専攻は中国の社会・経済・制度史。89年、文化功労者に顕彰される。もと京都大学名誉教授

  • 隋の時代から行われてきた科挙…
    なんていうか、貴族だけで政治を動かして行きたいだろうに、そこに平民でも政治に参加できるシステムを作ったのがすごい。
    本の中では科挙のシステムやタイトルでも「地獄」と称される、科挙試験の内容まで記されていて分かりやすい。

    以前、南京市内の孔廟横にある科挙博物館に行った時に見た当時の資料たちで中国語なのでちょっと意味がちゃんと取れているか自信がなかったところもこの本のおかげで補強できた。
    またこれを忘れる前にもう一度行きたいなぁ…

  • 貴族勢力を削ぐために遥か隋の時代から始まった科挙制度。受験資格にほぼ制限がなく、権力の世襲や軍部勢力の拡大も抑制できるこの制度がいかに当時優れていたかは、王朝が交代しつつも長年にわたって広大な土地に中央集権国家を持続できたことが証明している。
    しかし優れていたからこそ清代まで続いてしまい、近代化された外圧に耐えることができなかった。

    童生から進士にいたるまでの気が遠くなるような試験地獄が、ドラマを観るようにリアルに想像することができた。

    この本が書かれたのが今から60年近く前であることに驚いた。特に後序の筆者の見解は現在依然として問題となっており、筆者の先見の明に脱帽である。

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著者プロフィール

1901-95年。長野県生まれ。京都帝国大学文学部史学科卒業。京都大学名誉教授。文学博士(京都大学)。文化功労者。専門は,東洋史学。主な著書に『東洋に於ける素朴主義の民族と文明主義の社会』(1940年)、『アジア史概説』全2巻(1947-48年)、『雍正帝』(1950年)、『九品官人法の研究』(1956年、日本学士院賞)、『科挙』(1963年)、『水滸伝』(1972年)、『論語の新研究』(1974年)、『中国史』全2巻(1983年)ほか多数。『宮崎市定全集』全24巻+別巻1(1991-94年)がある。

「2021年 『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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