続・発想法―KJ法の展開と応用 (中公新書 210)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121002105

感想・レビュー・書評

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  • “今日の社会はもはや敏速さと器用さだけで切り抜けられる時代ではなく、人間性の回復という面も開拓しなければ、とうていこの激変の時代の社会的危機を乗り越えることはできない” とある。
    とても50年前に書かれた著書とは思えない。今の時代も全く同じ課題を抱えているからだ。

     物質的な充足、従来の科学的アプローチへの妄信などといった現実から、発想が乏しく、考えることが不十分であるから遠目がきかない。
    結果、行きあたりばったりで計画性がなく、目先のことや新しい知識にばかりに振り回されている・・・是非判断を急ぎすぎているのだ。
    ものごとを深く考える人間を求めるというのは、いつの時代も同じなのかもしれない。

    KJ法は混沌たる素材から、新しい秩序を発見したり、きずきあげたりする。自分の立脚点がどこにあるのかを知りたい人間にとって、KJ法は ひとりひとりが考える人間になるための手段となりえる。状況がほんとうに自分の腑に落ちれば、人間というものはおのずから「わかった」という状況とともに「よし、やろう」という勇気が湧く・・・事実をして語らしめるものは勇者となるのだ。

     KJ法は、進めてゆく過程でヒントやアイデアが浮かび、発想につながる。また、対立や矛盾、葛藤が生産的に生かされる。

    KJ法を効果的に進めるには、従来の科学的アプローチへの妄信、早急な是非判断を一度忘れ、事実を偏りなく、先入観なく、量より質を意識して集め、もとの素材の本質をしっかりとらえたままデータの語るところに耳を傾けなければならない。
    解決策をあわてて論ずるよりもまえに問題点の真底を徹底的に読みぬかねばならない。おのれを空しくしてといわれるが、心の姿勢を幾分変えなければならない。自分との静かな戦いでもある。
    KJ法を実践した人びとは、流れのあるストーリーとして構造がつかめたり、よりよい欲求が働いたりなどを通じ、自分の内面に、ある力強い喜びを感じる。

     しかし、このいい知れぬ喜びを感じるまでには心の壁が存在する。
    KJ法により なにがよくなるか前もってわからない、表面的な適用で満足してしまったり、妥協してしまったり、データの語るところに耳を傾けることなく解決策を論ずるという誘惑に負けてしまったり という壁だ。
     ”仕事のことを自分のことのように痛切に感じる切実感こそKJ法の上達に必要なもの” ともいわれる(行動観察では ”マインドセット” の重要性が説かれている。とても近しいものを感じる。)が、まとめる人の能力相応のKJ法でいいのだ、大切なのはやってみることだ。
    やってみればきっと、自分の内面に、ある力強い喜びを感ずることができるはずだ。

  •  一人ではなくチームで何らかのアイデア創出、問題解決、チームビルディングするための手法を知りたいなら読むと良い。
     本書では「衆知を集める」「民主主義を改造」などの記載もある。そのための有用な手法であると思う。通常の会議の場合、ほとんどの意見は無視サれることになる。そのため参加者のモチベーションは下がる。KJ法では全ての意見が何らかのカタチでまとめられる。
     結論は短い文章になったとする。しかし、A型図解によりその短い文章と自分の意見はつながっていることは残される。よって自分の意見は最終的な結論とつながる。これは自分ごと化に役立つというのがその根拠である。
     そういう意味では集合知や集団の活動を飛躍的に向上を考えている人は読むべき。また、KJ法について何となく知っている内容で取り入れている人も読むと良いだろう。KJ法には2種類あるが1970年に出版された後期のもの。
     現在広まっているKJ方は2種類あるうちの前期のもの「発想法―創造性開発のために」がもとになっていることが多い。こちらは1967年に発売されている。
     2つの違いはわかりやすさと手順。前期のものは簡単・容易。後期のものはステップが詳しく解説されている分難しく感じる。本書が難しく感じるのはとくかく文字が多い。要約が無いの問題である。たぶんこれはこの本自体がKJ法で編まれたものなのだろう。抜けもれないのだと思われる。その代わり簡単なメッセージにするというところが抜けている。単純化されていないので理解と記憶が難しい。
     一度このフル・バージョンを体験するのはとても良いことだと想像できる。その人がこの本を読めば「あぁ」となるだろう。一度もその体験が無い人にとっては「?」が出まくると思われる。

  • KJ法を使う人は必ず読んでおくべき本.

  • KJ法について知りたくて読んだ。
    上野千鶴子さんの『知的生産の方法』でも絶賛されていた方法論だ。

    私自身、この方法についてはさらに他の人の解説で、あらましを知っていた。
    けれど、自分で実践できる気がどうにもしなくて、ここはやはり、本家本元の本を読んでみようと。

    後にセミナーで学んだマインドマップとも比較できるところがある気がする。
    ただ、マインドマップもそうだがl、やりっぱなしの、拡散しっぱなしでは、真価を発揮しないということが分かった。

    特に大事だな、と思ったことは、データに語らせること。
    決して自分のこうまとめたいという願望を優先しないことだ。

    難しいと思ったのは、二つ。

    一つ目は、紙を作る時のワーディング。
    発想を止めないためには、こだわらずどんどん書き出したほうがいいに違いない。
    インタビューなどのデータなら、相手の話したように、となるわけだが、自分の頭の中のものを整理する場面では、何らかの予見が加わってしまいそう。

    もう一つは、グループ編成から空間配置の方法。
    この作業はマインドマップではやらないことなので、自分でも経験がなく、感覚的につかめないのだと思う。
    とにかくやってみるのみーなんだろうけど。

    読んでいて、何度も、この作業、動画で配信して~!!と思った。
    本書が出たころは、講習会などもあったらしい。
    川喜田先生も、経験者についてもらって経験しないと見につかない、と言う。
    ならば、本書をいくら読んでも難しい、ということになってしまうんだけどねえ?

  • 『発想法』よりもレベルアップ!難しさもアップ!
    基本的なKJ法のやり方を前作よりも詳細に解説している他、活用の幅を広げ、実例も多く載せられている。一層使い易くする模様や発展を読むと、「KJ法って進化してるんだな」と感じられる。
    同時に、如何に良いツールなのか理解は出来るが、自由に使い熟すにはもしかして長期間の訓練が必要なのでは……と察することになる。正直、私にはめちゃんこ難しいし、慣れるのに相当な時間がかかるなと思った。

  • KJ法は、ひとつの完成した知識創造の方法である。
    ただ、それを自分が実践しようという時、あまりに時間がかかり過ぎると思われて、逡巡してしまう。
    実践で使うには、用途に合わせて、KJ法の簡易版等を考えていく必要がありそうだ。

  • 105円購入2011-12-07

  • さすがに、例示は古い感が拭えないものの、図解から「文書化」に至る部分の詳細な説明は、納得感あり。

  • 続けて読んだ「続・発想法」は、野外調査部分はあまりなくて、より実践的・具体的にさまざまな事例をあげつつKJ法(と図解化文章化を含めるとBDA法という文言も入れといた方がいいかも)を解説、かなりビジネス書寄りになっています。やはりKJ法は一朝一夕に出来るモノではなく相当の訓練が必要で、先生は世にはびこる(らしい)なんちゃってKJ法を大変に憂えておられます。それが商標登録とかKJ法正規コンサル会社であるらしいエバーフィールドとかいう団体につながってるんだなぁ。でも私も同感です。3泊4日の集中合宿で第3ラウンドまで経験すると、「わかった」と爽やかな心持ちになるらしいです。本の中に挙げられている「青年の未来像を探る。」とか「企業教育が人間の真の成長に役立つために。」とかいうテーマの一連の流れも、うーんこういうことなのかな?と腑に落ちないのは実際にやってないせいかもしれないですし(でも後者の本質追究が「独立原人=九州男児を作ろう」というキャッチフレーズに収束するのはどうなのか)、これが正解というモノよりは、コミュニケーションとかみんなの知恵とかに焦点が置かれている気がしました。やはり現代でも通用する手法だと思います。なお前書でもそうでしたがKJ法で問題解決に至ると「爽やかな心持ちになる」という表現がなんかこそばゆいです。両書とも手元に置いて時々読み返してみた方がいい気がします。そうだ追記ですが、気軽に取り組むKJ法に関する疑問はこのブログを読んでやっぱりーと思いました。「なぜ、KJ法は失敗するのか」 http://gitanez.seesaa.net/article/124077022.html 誰のブログかな-と思ったらロフトワークの人でした。

  • 比べることのできない資料同士を集め、それらの組み合わせからどういう意味が見いだせるかという意味でのまとめる過程である。あるいは異質のデータの組み合わせから何が発見されるかということ。

    KJ法が効果的なとき
    ・問題の正体がはっきりしないとき、それを明確にする。
    ・周辺情報を幅広く収集する。
    ・カードかされた情報はバラバラなままディスプレイする。

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著者プロフィール

1920年(大正9年),三重県生まれ.1943年,京都大学文学部地理学科卒業.大阪市立大学助教授,中部大学教授などを経て,KJ法本部川喜田研究所理事長,元社団法人日本ネパール協会会長,ヒマラヤ保全協会会長.理学博士.昭和53年度秩父宮記念学術賞,マグサイサイ賞,経営技術開発賞,福岡アジア文化賞受賞.著書に『続・発想法』『野外科学の方法』『KJ法』ほか

「2019年 『まんがでわかる 発想法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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