東京裁判 下 (中公新書 248)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121002488

感想・レビュー・書評

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  • 国家の行為に関して、国家の機関であったがゆえに個人が個人責任をおうという法理は、古今東西に例をみないという弁護団の主張。

    検事側が侵略思想とみなす「八紘一宇」は、太平洋戦争前の日米諒解案で「ユニバーサル・ブラザーフッド」(世界同胞主義)と訳され、同じく「皇道」は「治者と被治者が一心になること」、つまりは「皇道とデモクラシーと、二つの思想の間に本質的な差」はない。
    清瀬弁護人の論が真っ当に思えるが。

    東京裁判は結局は政治的戦争責任の追及を目的とする。そして、政治的責任は共同謀議、戦争の遂行、戦争法規違反の三つを犯罪カテゴリーにすれば、十分であり、他の細かい訴因も包含され得る、と判決はいう。

    起訴状伝達が天皇誕生日の天長節、判決朗読開始が日本の建国を祝う紀元節、A級戦犯処刑が皇太子誕生日。何かの意図があったのだろうか。

  • ルポなのか概説書七日の位置づけに問題はあろうが、名著に間違いない。

  • 東京裁判に関する書籍の中では、当時の関係者へのインタビューなども充実してる作品だと思う。

  • 人種闘争の終焉がこのような形とは、、なんとも言えない虚脱感。有色人種の歴史の針を戻してしまったのが、、残念。日本の大東亜共栄圏、八紘一宇は、白人にとっては脅威そのものだったんだなぁ。綿密な計算の元破れた大東亜戦争。7人の御霊で人種差別を撤廃したと
    考えると凄いことだと改めて感じる。日本は世界の指針を指し示すポテンシャルがある。蘇らせたい。改憲が1つの手段だな。。しかし、最後のdeath by hanging。悔しいなぁ。

  • 非常に大勢の人物が登場し、わかりにくくなるところ、何人かに焦点を当て、非常に読みやすい。本書を手掛かりに類書で理解を深めたい。
    結局、判決の大筋は最初から決まっていたようなものか。

  • 1971年刊。◆読みやすく一気呵成に読了。判決~刑執行まで(11~12章)の情景が目に浮かぶように叙述。また、随所に被告人の立場がまるで敗者日本の同一であるかのように書く。そんな一体性は擬制でしかないが、かかる観点からすれば、検察側証人の田中少将は「裏切り者」になるのだろう。◆が、そう単純ではない。田中少将の暴露事実は、誇張を割り引いても、当時の国民が全く知らなかった事実を開示したものだ。つまり、国民の目線から見れば、英雄的行動ともいえる。しかも、神崎弁護人は、田中証言が検察側に不利な内容を含むと見る。
    このように双方に有利な証言は、第三者性が高く、信憑性が高いと見るべきで、田中少将が事実を述べているのであれば、非難されるいわれはない。逆に、これを隠蔽してきた軍人側こそ非難されるべきである。まして、裏切り者呼ばわりするのは笑止千万というほかはない。◆ある種一方的ではあるが、本書のような読みやすく文章力のある著者の叙述する書籍の怖い点、誤読・曲解を生んでしまう。そう、ウェッブ裁判長の述懐にある如く、戦犯として死刑に処せられるのが「殉教者を生み出す」ことを、本書が助長する点だ。
    ◆記録未見で正確にはいえないが、東京裁判の状況から見て、弁護側が注力すべきは、管轄権問題を除き、①日中戦争の自衛性(長期の軍隊駐留から見て無理筋)、②日中戦争と太平洋戦争との異別。この弁護側立証が簡単にしか触れられない、かつ、弁護側立証の悉くの却下は、立証の焦点ボケが予想されるが、何れも本書で十分触れられず、内実は未開陳。◆東京裁判の構図としては、責任者として日中戦争時の広田(首相近衞は既に自決)外相が、太平洋戦争時の東条首相が死刑に科されたよう。両戦争の一体性が否定されない以上当然の帰結か。
    ◆最後に、東京裁判判決後、審理の適法性を争うべく、弁護側が米国最高裁に提訴したところ、最高裁はこれを受理したという点は心底驚いた(結果は裁判権のないことを理由とする却下だが)。結果はともあれ、とりあえず審理をしたというところに、司法権の独立を強調する米国司法制度の力を見る思いだ。

  • 極東国際軍事裁判、いわゆる「東京裁判」に関しては KiKi 自身若い頃から「あの裁判は何だったのか?」という興味を持っていました。  そして大学生の頃にこの本を一度読んだことがあったのですが、今回久々に図書館で見つけたのを機に再読してみました。

    正直なところ今回の読書では、学生時代にこの本を読んだ際に感じた大きなショックは感じられず(と言うのも当時の KiKi は東京裁判の実態をほとんど知らなかったのに対し、今回はどちらかと言えば「既知のこと」の再確認という感じだったので)、ところどころでその後入手して何回か観たことがあるこの記録映画(↓)のシーンを思い出すのみ・・・・・という感じでした。

    東京裁判
    ASIN: B00005F5X3  監督・脚本:小林正樹  原案: 稲垣俊  脚本:小笠原清  音楽: 武満徹  ナレーション: 佐藤慶  講談社


    ある意味で日本人の劣等史観のベースにさえなり、「戦争犯罪」という実態がよくわからないものを裁くという摩訶不思議な裁判。  戦争裁判と言いつつも結果的に政治裁判だった裁判。  これを知らずに現代日本を語ることはできないと言っても過言ではない裁判。  そんな裁判がどんなものだったのかを俯瞰するにはよい書籍だと感じます。 

    それにしてもアメリカという国は面白い国だとつくづく感じます。  世界の超大国で先進国をリードする国であるというイメージだけは強いけれど、大統領選挙(特に予備選あたり)なんかは選挙というよりはお祭り騒ぎみたいなところがあるし、要するに劇場型というか、プレゼンテーション型というか、「人にいかにアピールするか」というマーケティングに近い様な行動には実に熱心です。

    東京裁判にしてみても、一応「裁判」という形をとり、日本人の被告にアメリカ人の弁護人がついたりもして、しかもこのアメリカ人弁護人がおざなりな弁護をするのか?と言えば、日本人弁護団がもっと声高に主張してもよさそうなことまで頑張って主張したりもする。  一見、フェアに見えなくもないお膳立てはちゃんとするけれど、裁判そのものはある意味で「結論ありき」だし、多民族国家特有の「落としどころ」的な感覚は実に鋭い。

    その後の国際紛争への関与の仕方などを見ていると、東京裁判では「有罪」と断罪されたようなことをあの裁判で裁く側だった国が平然と行っているのを見るにつけ、「戦争に敗れるということは、こういうことなんだな」と思わざるをえません。

    実に良書だと思うけれど、残念なことを1つだけ挙げるとするならば、この本の中では占領政策と東京裁判の関連性に関する記述が極めて少ないことだと感じます。  天皇の責任問題という極めてデリケートなトピック絡みで若干は触れているものの、どこか足並みの揃わない検事側の背景やら、そもそもの極東国際軍事裁判開催決定時、その後の裁判中、そしてサンフランシスコ平和条約 & 日米安保条約に至る中でもっとも大きな流れを左右していたのは占領政策にこそあるわけで、そこはもっと触れて欲しかったなと感じました。

    最後に・・・・・・

    年寄りの冷や水的な意見を1つ。  今では日本屈指の歓楽街の1つとも言える池袋はサンシャイン付近。  かつては池袋に住んでいた KiKi なのであの辺りはよく行ったんだけど、あそこらへん一帯でキャアキャア騒ぎ、遊び呆けている若い人たちを見る度に KiKi は思ったものでした。

    「知ってる??  この辺はかつては巣鴨プリズンがあったんだよ??  巣鴨プリズンって知ってる??  あ、じゃあA級戦犯って知ってる??  東京裁判は??  ここは東京裁判の時、A級戦犯とされた人たちが収容されていて、結審後は処刑が行われた場所なんだよ。」

    ってね。  もちろんだからと言って避けて通れとか、ここでは合掌しろとかそんなことが言いたいわけではありません。  せっかくできたサンシャイン60ですから、そこを平和的に使用し、多くの人が楽しい思い出を作る場所になるのはそれはそれでいいことだと思います。  でもね、何となく、何となくではあるものの、単なる遊び場という意識のみならず、その土地にまつわる日本の歴史を知って欲しいなぁと思わずにはいられないのです。

  • (2013.09.13読了)(2008.01.25購入)
    【9月のテーマ(東京裁判を読む)・その②】
    裁判は、満州建国、日中戦争、ノモンハン事件、大東亜戦争、とかなり長い期間が対象になっています。起訴状の朗読のあと、証拠調べや証人喚問などがあり、弁護団による反撃などが行われます。紙が不足しているため資料の印刷ができず裁判が滞ってしまう場面もあったようです。
    病気のため裁判に出席できなかった人もいるし、途中でなくなった方もいたようです。
    判決で絞首刑を言い渡されたのは、7名でした。

    ・裁判の主な日程
    一九四五年八月三十日、マッカーサー元帥、厚木到着
    九月二日、降伏調印式
    九月十一日、東条大将逮捕
    十二月十二日、広田元首相出頭命令(心臓疾患のため一月十五日巣鴨収監)
    十二月十五日、近衛公爵自決
    1946年1月19日、極東国際軍事裁判所条例制定
    1946年4月29日、起訴
    一九四六年五月三日、裁判開始
    一九四八年十一月四日、判決の宣告開始
    十一月十二日、閉廷
    十二月二十三日、処刑

    【目次】
    第八章 弁護団の反撃
    第九章 南京虐殺事件
    第十章 天皇の戦争責任
    第十一章 判決
    第十二章 DEATH BY HANGING
    付記
    あとがき
    主要参考文献

    ●南京事件(71頁)
    中国側は第六師団による市民殺害二十三万人、第十六師団によるもの十四万人、その他六万人、計四十三万人と発表し、この数字は東京裁判でも主張された。
    ●南京法廷(73頁)
    中国は南京事件を最重大戦争犯罪とみなし、すでに第六師団長谷寿夫中将を南京法廷で裁き、しかも、四月二十六日午後零時四十五分、第六師団が攻略した南京城外の雨花台で処刑した。
    ●国家行為(151頁)
    個人弁論では、東条大将のごとく「指導者」を自称して個人責任を自負した例はわずかで、軍人被告の多くは、国家行為は犯罪ではなく、国家そのものが裁かれぬ以上は、国家に対する忠誠義務を持つ軍人に罪はないはずだ、という論調を採用した。
    ●法廷の体裁を(159頁)
    判決は、判事団はあたかも、弁護側証言を最初から無価値と定めて、ただ聞いていただけだと告白しているように聞こえる。それでは、弁護団はただ法廷の体裁をととのえるために、出席させられたにひとしいではないか。
    ●東条大将七つの喜び(166頁)
    ①裁判が順調にうまくいって、皇室にご迷惑をかけずにすんだことがうれしい。
    ②東条邸の問題で誤解がとけたことがうれしい。
    ③自分は長兄、次兄が早死したので、東条家の後継ぎになったが、六十四歳まで長生きできてうれしい。
    ④これまで健康ですごしてきたことがうれしい。
    ⑤巣鴨にはいってから宗教を真剣に味得したことがうれしい。
    ⑥日本で処刑されることは日本の土になるのだからうれしい。
    ⑦とくに敵であるアメリカ人の手で処刑されるのがうれしい、自分も戦死者の列に加わることができるであろう。
    ●愛国心は有罪(180頁)
    愛国心と国際公法とは矛盾するものではないのに、法廷は愛国心を有罪とみなした。愛国者を処罰する国際法があっては、たまらないではないか

    ☆東京裁判(既読)
    「秘録 東京裁判」清瀬一郎著、読売新聞社、1967..
    「東京裁判(上)」児島襄著、中公新書、1971.03.25
    「パール判事の日本無罪論」田中正明著、小学館文庫、2001.11.01
    「日本無罪論 真理の裁き」パール著・田中正明訳、太平洋出版社、1952.05.03
    「落日燃ゆ」城山三郎著、新潮文庫、1986.11.25
    「<戦争責任>とは何か」木佐芳男著、中公新書、2001.07.25
    (2013年9月16日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    昭和二十一年五月三日に開廷した極東国際軍事裁判は毎回波瀾をきわめた。苛烈な立証合戦の末、昭和二十三年十一月十二日、七人の絞首刑を含む被告二十五人全員有罪という苛酷な判決で、歴史的な大裁判の幕は閉じた。「文明」の名によって戦争を裁いた東京裁判とは何であったのか。

  • 歴史とは勝者が作るものだというが・・・恐ろしいものだ。

  • 同名書の下巻になります。

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