- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121003454
感想・レビュー・書評
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6版(1978-02-15)
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目次:
序にかえて―翻訳家への道
私の英語学習法/翻訳家を志して
Ⅰ 翻訳とは何か
第一章 不即不離の原理
二つの言語のはざま/逐語訳と翻案/語順への配慮
第二章 文学的効果の再現
伝達荷ということ/既訳の批判としての新訳/原文修正は許されるか/意味の音楽を捉える/補・翻訳者の地位
第三章 対応ということ
相対的な意味の把握/熟した自然な訳文
Ⅱ 翻訳の実際
第一章 『ハムレット』の翻訳
古典の現代語訳/戯曲としての翻訳
第二章 ”外来語”の問題
片仮名語の濫用・誤用/外来語法の侵入
第三章 外国語教育のあるべき姿
基礎教育のありかた/大学での英語教育
あとがき -
故・中村保男氏の翻訳論であります。
まづかなり長い「序にかえて」で、自身の外国語(英語)学習を振り返ります。特に奇抜な学習法ではなく、正攻法で英語をマスターされたやうです。
それにしても、単語カードの活用は効果が高いのですねえ。今は至れり尽くせりのツール類が、却つて学習者を甘やかせてゐる面もあるのではないでせうか。やはり自分の手で書きながら覚える手法は欠かせない。
パートⅠの「翻訳とは何か」では翻訳不即不離の原理を説きますが、これがなかなか一筋縄ではいかないのです。
逐語訳と意訳のはざまで苦しむ翻訳家の姿が窺へます。
そもそも、海外古典作品の現代日本語訳とは? これはすでに二重のフィルターがかけてあるのでは? などと考へ出すときりがないのであります。
パートⅡ「翻訳の実際」では第一章の「『ハムレット』の翻訳」が面白い。本書全体の中でもさはりですね。
本書が世に出た36年ほど前の時点で、『ハムレット』の翻訳は何と14人もの翻訳者が手がけてゐたさうです。
時代とともに翻訳の日本語も古びていくので、時代ごとに新しい翻訳があつても好いでせうが、14人は多すぎやしませんか。
中村氏は、それぞれの翻訳を比較しながら論じてゐますが、やはり師匠格の福田恆存氏の訳業が総合的に一番優れてゐる...と断定はしてゐませんが、明らかにさういふ意見であることは間違ひないでせう。そしてそれは身びいきばかりとも思へません。
古典の邦訳として、意図的に古めかしい日本語を駆使しながら、現代人にも理解しやすい翻訳...難しい条件を見事にクリヤしてゐます。
他の章でも福田氏への言及は多く、中村氏本人が述べるやうに、本書はまるで「断片的な福田恆存論」と申せませう。
第二章・第三章ではそれぞれ外来語・外国語教育について論じてゐます。即ち「翻訳」といふ切口は、それだけ言語全体に関る問題なのでせう。ちなみに著者は、早期(幼時)の外国語学習には反対の立場であります。
言葉に関心のある人ならば、本書は必ず興味を持つて読破できるはずです。
...しかし入手は結構困難です。
http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-95.html