少年期の心: 精神療法を通してみた影 (中公新書 515)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121005151

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  • 河合隼雄『子どもの宇宙』にて紹介されていたのが切っ掛け。
    精神科医として10年間の間、多くの子どもたちの臨床医として活動してきた記録を何例かに渡って記している。著者は河合隼雄と共に「箱庭療法」の研究および普及につとめ、自身が勤めていた病院でもいち早く箱庭療法を取り入れた。本書では、箱庭療法を取り入れ、どのような経過があったのか、また遊戯療法として子どもが一体どのようなことをしたのかなど、詳細に述べられている。
    まだ言語的に発達程度が低い小学生から言語発達が高い中学生や高校生にわたって、実践例をあげられているので、臨床が子どもたちにどう影響しているのか、また年齢層や症状の違いによりどういった臨床で彼らを診ていくのかということが幅広い年齢層から比較するように見ることが出来る。私自身、生徒と共に生活していることが多い分、臨床とは違うのだが、彼らが何を考え何を望んでいるのかということを考えることが多い。何に共感し、何についてお互い語ることが出来るのだろうか。そのためには何を知ることが必要なのか。そういった疑問や悩みからこういった臨床関係の本をよく読み、影の部分の彼らについてを例として知ろうとしている。
    十人十色とは言ったもので、それぞれが様々な色を持っているのは確かだ。私と誰かが全く同じと言うことは無い。それでも、こういった実践的症例から学ぶことは「受け入れる」という私たちの器があるかどうかということだ。「自由」を保障する時間と空間、それに彼らを「受け入れる」やさしさとゆとりが私たちに存在しているかどうか。この二つで様々なことが変わってくるように感じる。真に「ゆとり」が必要なのは子どもたちに対する教育ではなく、私たち自身の教育なのではないかと、こういった臨床の書物を読むたびに感じてしまう。
    書かれたのは1978年だが、今読んでも教えられることが多い。臨床に関しても内容が濃く興味深い著書である。

  • 素晴らしい。の一言に尽きる。
    ユング派のイメージを用いた心理療法のうまみを、
    あますところなく説明している。

    脇にそれるが、私が驚嘆したのは、
    子どもの心に対応しきれず、
    小児科医をやめようかと悩んでいる父親に対し
    ”続けろ。悩み抜いて自分の道を見つけろ。逃げ道はない”
    と言い切るところ。
    クライエントとはいえ、初対面の他人にこのようにはっきりと言いきれる山中先生。
    格好が良すぎて一気にファンになってしまった。

  • 放送大学の授業で山中先生のことを知り、さらにこの本が「心理臨床の古典的名著」という評価であることも知って手に取ってみたが、評判どおりの本だった。「子どもを支える」とはどういうことなのか、さまざまな症例を通じて、山中先生が訴えたいことが、ひしひしと伝わってきた。大人として、山中先生の足元にも及ばないけれど、でも、その姿勢・その気持ちは見習っていきたいと思う。

  • 大学の先輩から勧められて読んだ本。本当に感銘を受けました。
    臨床心理学系の大学院に進む決心をつけてくれたのもこの本のおかげです。
    是非とも心理系大学生のみなさんに読んで欲しい一冊です。

著者プロフィール

北海道大学大学院環境科学院准教授/理学博士(東京大学)


「2010年 『Sustainable Low-Carbon Society』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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