大帆船時代―快速帆船クリッパー物語 (中公新書 542)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121005427

感想・レビュー・書評

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  • 1979年刊。
    著者は神戸商船大学教授、甲種船長。


     大航海時代。それは大帆船時代である。
     複数のマストが聳え立ち、そこに翻る帆。巨大木造建造物。モデラーの心を擽るであろう帆船は、1850年を半ばとする50年間において、スピードでは当時の汽船を凌駕し、アヘン戦争や三角貿易など世界史の重要な舞台で欠くことのできぬ役割を演じた。
     その極地がスコッチウイスキーの銘柄ともなっている「カティサーク」である。

     本書は帆船、中でも快速帆船が果たした歴史的役割と美しさを内包した機能などについて解説する書だ。
     帆船好き。そんな人こそ本書を紐解いて欲しいと感じさせるものである。あるいは歴史的には奴隷貿易など闇も部分も大きいものの、血湧き肉躍る海賊船の活動に興味のある人もまた本書(特に前半部分)には興味を惹かれるのではないか。

     個人的には、アメリカ独立戦争とアヘン戦争に頁を割いていることに意外な感を覚えた。そしてティークリッパーとして名を成した1860年代には中国を出航した帆船の何れが先着するか、賭けの対象となっていた辺り、今のヨットスポーツ・競技の源流を感じさせ興味深い(多数の五輪メダル等、ヨット競技は英米仏豪等で隆盛)。


     元より後世の眼から見ると、歴史上は、帆船は汽船に取って代わられるのだが、その原因は汽船の輸送機関としての劣後ではなく(実際、石炭船の場合、20世紀になっても補給のため彼方此方での寄航が余儀なくされ、航続距離や全行程日数に関し帆船が完全に劣後していたわけではない)、汽船のみ通航許可が出たスエズ運河の開通。船舶用の木材の枯渇にあった。
     そして、何よりも帆船の船内環境が改善されず、熟練水夫が帆船を忌避し、待遇改善の著しい汽船を選んだことが止めになった点に、何事も改善と革新が必要なのだなぁと心に響かせられた。

  • 帆船小説の読み始め、特殊用語に右往左往していた頃、この著者の海洋文庫『帆船』(舵社)にはずいぶんお世話になりました。ただ、あちらは淡々とした解説。ところが本書を読んで、「ああ、この著者さんは本当に帆船が好きなんだなあ」と実感。とくにカティ・サークは、まるで命があるかのような描きっぷり。船長も船員も、みな彼女の点景のよう。まだ、ご存命なのか、気になります。
    イラストや巻末の詳細な図も最高です。

  • ●構成
    クリッパー誕生す
    お茶とアヘンと
    ティー・クリッパー・レース
    カティ・サーク物語
    ウール・クリッパーの活躍
    生き続ける帆船たち
    --
     古代から長く人類の歴史上で活躍した船は帆船であろう。19世紀後半に汽船にとって変わられるまで、様々に形や大きさを変えながら、海上の運輸・交通を助け、人類の発展に寄与してきた。この帆船の、究極の進化形と言えるのがクリッパー型帆船である。
     クリッパーは、18世紀末にアメリカのボルチモアで建造されたクリッパー・スクーナーを起源とする。19世紀の50年代から70年代初頭までがクリッパーの黄金時代であり、中国からヨーロッパに茶を運ぶティー・クリッパーとして活躍した。クリッパーの速度や運行日数(特に中国からロンドンへの復路)を競いあうクリッパーレースもこのころが最盛期であった。やがて汽船の発達やスエズ運河の開通により、茶の輸送に関しては汽船の方が短期間で輸送できるためにティー・クリッパーは廃れていった。ティー・クリッパーは、オーストラリアの羊毛をヨーロッパへ運ぶウール・クリッパーに振り返られ、ここでも速度や航海日数が競われたが、最終的には帆船は衰退してゆく。
     本書は、商船であるクリッパーの歴史を、カティ・サークをはじめとした著名なクリッパー船を紹介しながら綴ってゆく。黄金期のクリッパーレースは抜きつ抜かれつのデットヒートであり船員のみならず船主や町の人々まで熱狂したことや、ティー・クリッパーからウール・クリッパーへの転換の過程などにも詳細に触れられており、クリッパーという船についての分かりやすく丁寧な本である。巻末に帆船の基礎知識として各帆船の分類やマスト・ヤードの呼称などの附録が付いているのも嬉しい。

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