対象喪失: 悲しむということ (中公新書 557)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121005571

感想・レビュー・書評

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  • 近親者の死や失業といった、自己のアイデンティティの喪失を引き起こすような出来事を体験した人びとが直面する危機と、そこからの回復の可能性について考察している本です。本書では、そうした体験を「対象喪失」と呼び、その心理的体験をフロイトにしたがって「悲哀の仕事」(mourning work)と解釈しています。

    著者は、精神分析学の創始者であるフロイトが父親や同僚のフリースに対する激しい心理的葛藤を演じていたことについて比較的ていねいに検討をおこない、フロイトの精神分析学の確立が、まさに「悲哀の仕事」として解釈できることを示しています。

    また、深刻な現代の対象喪失の経験を持たない現代、新たに生じつつある問題についてもとりあげられています。

  • 前半の本当にさわりの部分は面白い。後半も少し面白く為になる内容が書いてあるが、全体的に価値観が現代と違っていて今ひとつピンとこない。「そう…かなぁ?」「ぇえ〜?」と思いながら読み進め続けることになったので苦痛すぎて中盤の退屈なフロイト話は全部飛ばした。
    終章の、フロイトが母親から死について教えられた時の話が良かった。
    「人間は土から作られていて、土に戻らねばならない」
    そして母親が団子を捏ねた捏ねカスを見せて、
    「人間もこういうカスでつくられているだけ」

    あとP66の望郷の一説も良かった。
    肝腎要の対象喪失の克服にはどうしたらいいのか具体的な策については自分の中ではボーンヤリ。

  • これも随分と古い本だが本棚から引っ張り出してみた。間違ったこと言ってないかもしれないが正しいかどうかは証明できないといったところというのが読み方のコツかな。そんなにフロイトが好きなのか、というかフロイトの呪縛から逃れられなかった人だったのか。

  • この著作からどう研究が進んだのか、気になりました。

  • フロイトの「mourning work」を中心にした対象喪失の解説。

    初版79年代のため内容はやや古くさいというか全体的に「70年代知識人」と言った感じがする。良い悪いは別として。

    内容の新しいモーニングワークの本を読んだ方がよかった気もする。

  • 何かを失うということはつらいこと。

    つらいことは避けたくなるけど、きちんと向き合うことが今後の自分にとって大切なことだと教えてくれた本。

  • フロイトの唱えた「喪の仕事」とは失った対象へのアンビバレンツな感情の、そのネガティブな側面への洞察である。防衛機制がそれを妨害するという解釈を改めて確認した。社会へ適応しようとする心の努力が逆効果を招く矛盾。

    しかし、「モラトリアム」が継続し、すべての私は「仮」の私である、という人間にとっては、リアルな不安や悲哀自体がすでに失われている、これはまったく恐ろしい話で、暴力的衝動が野放しというに近いかもしれない。現代の犯罪や社会問題をこういった視点から捉えなおす、これはとても重要に思える。

  • 2年くらい前に読んだ時はちんぷんかんぷんだったけど、改めて読んでみて、対象喪失の過程として説明できることが、こんなにもあることに驚いた。

  • 人が死ぬということについて真剣に考えなければと思ったときに買いました。基礎的な分析理論が半分以上。分析臨床的な話は少なめでちょっと私のニーズには合いませんでしたが、初心のうちに読んでおいたほうがいい本かと思います。

  • まもなく購入予定…。

著者プロフィール

1930年東京府生まれ。日本の医学者・精神科医、精神分析家。学位は、医学博士。1954年慶應義塾大学医学部卒業。1960年「自由連想法の研究」で医学博士の学位を取得。慶應義塾大学環境情報学部教授、東京国際大学教授を歴任。フロイト研究や阿闍世コンプレックス研究、家族精神医学の分野では日本の第一人者である。著書はいずれも平易な記述であり、難解な精神分析理論を専門家のみならず広く一般に紹介した功績は大きい。2003年没。主な著書は『精神分析ノート』(日本教文社,1964年)、『モラトリアム人間の時代』(中央公論社、1978年)、『フロイトとの出会い―自己確認への道―』(人文書院、1978年)など。

「2024年 『フロイト著作集第7巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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