死刑囚の記録 (中公新書 565)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121005656

感想・レビュー・書評

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  • 色々考えさせられる本。

    死刑制度の是非や問題点は死刑制度の死刑囚のものの考え方や、拘禁反応については、全く想像できないものであったので興味深かった。おそらく、筆者でなければ描けないものだと思う。

    あとがきで、筆者が敢えて死刑囚の生活のみを描き、死刑制度の是非や問題点はには本文では触れなかった旨が書いてある。

    その上で、最後にあっさり死刑制度は廃止すべきとの結論がアッサリと提示されているが、多少の違和感を感じる。身近に死刑囚と接した筆者にとっては素直な結論なんだろうが、抜けている視点として、遺族感情があると思う。

    残念なことだが、時折、信じがたいものすごく残虐な事件ごおきることもある。加害者が死刑になったからといって被害者の感情が収まるものではないだろうが、死を持って償うしかない犯罪も有るように思う。死刑の適応を厳格にすればいいのではないだろうか。

  • ■死刑囚が犯罪に至った経緯を、生い立ちを含めて生々しく聞き取ったドキュメント…ではなく、死刑囚の精神状態をちょっと突き放すくらいの距離感で淡々と観察するレポートです。ですが、初期は若さ?ゆえなのか、まだ突き放しきれてない感じ。嘘で固めて世界を構築しちゃってる死刑囚にまんまと呑み込まれて、それに気づいて憮然としてる記述は、ちょっと面白い。
    ■著者は最後に死刑に反対だと、さらっと結論づけています。私は死刑反対論者ではないのですが、読み終えて、ちょっと心が動きました。死刑囚は、みんな自分が犯した罪や傷つけた人と対峙はしてない。心穏やかに死んでいく死刑囚すら。ある者は突然圧縮された生に怯え、ある者はその密度に胸を締め付けられ、でもみんな向かい合ってるのも語るのも「自分」。
    死刑を告げるのって、こういうことをさせたいんだっけ?という疑問は生まれました。あと、「恥ずべき死」を与える、っていうフレーズにも重くのしかかります。
    ■凝縮された生を急に突きつけられて、壊れていく様子には、描写が淡々としているのが余計に寒々しくて、ぶるっと来ました。しかもそれがいつまで続くかわからない。逆に弛緩した生を受けるしかない無期刑も。
    今のところ反対も賛成もきっぱりとした答えは出せないのですが、この本を読んで、死刑という「罰」の実態を垣間見ることができてよかった、と思います。

  • 精神科医でもあった著者と死刑囚との精神分析の記録。記録自体は古い内容のものであるので今の死刑囚がどのような環境で生活をしているかわからないけど、たぶん死刑を宣告された人間の精神面というのは普遍的に変わらないだろう。事件について残酷な描写も多いし、精神的に異常をきたした死刑囚の記述はなんとも胸糞悪くなるのもあるけど、改心してキリスト教信仰の道に残された命をささげた正田昭死刑囚との話はとてもよかった。死刑廃止論とかにも通じるのでいろいろ死刑とか囚人とかまったく関係のない一般人こそ読む必要があると思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685425

  • 新書に苦手意識はあったけど読みやすかった。というか興味のモチベーションを維持しやすかった?のかな。

    死刑囚は犯罪にフォーカスを当てられがちだが、獄中生活を細かく文字に起こされているのは私にとっては新しい視点を得たような気持ちになった。
    時代の背景はあれど非常に興味深かった。

  • あくまで拘置所での観察記録となります。

    一番印象深いのがメッカ事件の正田昭死刑囚です。
    「大人」といわれるひとたちをこころから憎み、怖れておりました。(中略)私の、この拭い難い不信と憎悪の対象である「大人」の中に、たまたまHさんがおいでになっただけでございます。
    この言葉に共感してしまう私もいかがかと思いますが、案外同じように感じている方も多い気がしています。

  • 確か、大学生になりたてのころにこの新書の初版本を買って読んだ記憶があるのでした。大いに影響を受けたし精神医学の幅の広さを感じたような、今となっては覚えていませんが、30年以上たって読み返してみて、これ以上の知見が今現在あるのか少し疑問になりました。つまり、進歩があったのかなかったのか。死刑についても議論が十分でないまま時間と執行だけが増えているような状態になってしまっていはしませんか。

  • 2016佐藤優が選ぶ知的ビジネスパーソンのための中公新書・文庫フェアで気になった本。

  • 死刑囚・無期囚たちと面会を続けてきた精神科医による記録である。

    拘禁反応であったり、死刑囚と無期囚の傾向の違い、内面的な変化であったりが詳細に生々しく記録されている。
    著者の加賀先生は1950年代に医師になっている。記述されている死刑囚の時期も1950年代~1960年代であり、まだ「戦後」と呼ばれていた時期のもので、時代背景も知れて興味深い。

  • 精神科医による死刑囚との面談記録
    1980年の著作
    拘禁環境のストレス下で精神的な異常は見せている様だが、個人の素養としての異常性は然程一般人と変わらない様に思われる

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著者プロフィール

1929年生れ。東大医学部卒。日本ペンクラブ名誉会員、文藝家協会・日本近代文学館理事。カトリック作家。犯罪心理学・精神医学の権威でもある。著書に『フランドルの冬』、『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)、『宣告』(日本文学大賞)、『湿原』(大佛次郎賞)、『錨のない船』など多数。『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、続編である『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。

「2020年 『遠藤周作 神に問いかけつづける旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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