星の王子さまの世界―読み方くらべへの招待 (中公新書 (638))

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  • 中央公論新社
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本棚登録 : 82
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121006387

感想・レビュー・書評

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  • 古典を読み始めたいと言ったら友人に勧められ、ちょうど「星の王子さま」を通読したところだしちょうどよいと思って。 文学研究だと思われるものに触れたのが初めてだったので、発見も感動も反発もあった。

    発見
    ①作品の時代背景や著者のことを知ることで、作者の真意を読み取ろうとする読み方があるのだということ。

    「星の王子さま」に戦争のメタファーとして様々なモチーフが散りばめられているという。確かに、フランスは文章に複層性を持たせて、隠された意味を見いだせるかで教養の有無を判断したりする文化という理解なので、そういう意味を持たせていた可能性はあるかなと思った。Boa(ウワバミ)とBaobab(バオバブの木)という語感が似た単語に戦争の恐怖や脅威を込めているという指摘は面白かった。
    また、占領下のフランスでひもじく寒い思いをしている親友を慰めるために書いた本だと思って読むと胸がより締め付けられる。

    ②いつの時代の人が読むかによって反応が変わるということ。

    星の王子さまが旅の途中で出会うBusinessman、なんでここだけ英単語で書いてあるんだろう?と思いつつ、読み飛ばしてたけど、著者曰く「フランスの実業家を名指しするのを避けるため」とか。しかし出版当初、アメリカ人から自分達への批判ではないかと反発があったらしい。古典だと思って読むのと、同時代を生きている人が現代の風刺や政治的なメッセージが込められていると思って読むのと、言われてみれば見え方が違うよなぁと思った。

    感動
    結局、著者の企てとは裏腹に、サン=テグジュペリの真意がわかったということより、物語の持つ力に感動してしまった。戦乱の時代のフランスの国家的危機を前に、大人たちの言動を観察しその無責任さや愚かさに憤りを覚えた結果、それをフィクションの物語に託したことで、個別具体的な文脈を離れて普遍的なメッセージを持つようになった。だから、「星の王子さま」は長く読み継がれ、愛される作品になったのではないか。そこにむしろ感動してしまった。

    反発
    ①原典を絶対視し著者の真意を正確に読み解くことにどれだけ意味があるのだろうと思ってしまった。古典の読み方はまだよくわからない。読者の色んな解釈を許す豊かさこそこの物語の魅力ではないのか?

    ②サン=テグジュペリの奥さんに対する態度にイラッとしてしまった。こんな著者の姿は必ずしも知りたくなかった。

    156ページ マリ=アンヌ・バルベリさんの本から引用
    「『星の王子さま』は≪性差別≫の物語か。『星の王子さま』の世界はまったく男ばかりの世界である。 唯一の女性的イメージはバラで持ち込まれるが、何というそのやり方であろう。うそつきで、おしゃべりで、気まぐれで、彼女は王子に大したことは教えず、ただ苦痛を与えるだけである」

    こう考えると「apprivoiser(飼いならす)」の単語のチョイスも男性が女性を守り飼うという思想が背後にあるのでは?と思えてきて、あまり良い感情は抱かなかった。

  • 「フランスにいて飢えと寒さに苦しんでいる」献辞のレオン・ヴェルトは、ユダヤ人であった。「ゾウも呑み込む」Boaは「大切なものは目に見えない」だけの暗喩だろうか/6つの星めぐりのエピソードもそれぞれに意味がありそう/20億の人間がいるが「詰めあって立てば縦横20マイルの広場におさまる」チャップリン『独裁者』のスピーチにも似た論理/アントワーヌは「自由フランス」ともヴィシー政権とも立場を異にしていてアメリカに来て、ヨーロッパ戦線に飛行士として復帰しようとしていた。王子さまがバラに再会するため彼の星に帰るように

  • 「星の王子さま」が書かれた時期の背景と先行研究を踏まえての論。
    出て来る数字などにこだわるのは必ずしも良いとは限らないと思うけれど、論の根拠なども丁寧に書かれていてわかりやすかった。

  • サン=テグジュペリの『星の王子さま』に込められた意味の解釈を試みた本です。

    著者は、『星の王子さま』は子どものための童話ではなく、サン=テグジュペリの向き合っていた現実への批判を試みた寓話として読み解こうとしています。また、友人のレオン・ウェルトや妻のコンスエロに対するサン=テグジュペリの思いがそこには込められていると主張しています。

    物語の寓意をファシズムに対する批判と解釈する見方が示されており、確かにそうした解釈も可能だとは思いますが、『星の王子さま』の物語世界を狭くしてしまっているのではないかとも感じます。

  • 作者が本を通して伝えたいことってかなり奥の奥に隠れていて、見つけ出そうとしない限り表層的なものしか見つけられない。 星の王子さまは、子供の気持ちに戻ろう!っていうメッセージ性だけだと思ったら大間違い。

  • 請求記号:953.7サ
    資料番号:010767804

  • 星の王子さまの世界

    この星の王子さまについて諸説あることは知っていた。素直に読めば児童書であることは間違いなく、切ないお話で終わる。

    ところが著者サン=テグジュペリの生きた背景と照らし合わすことで大人の、そして、これから生きていく子供たちへのメッセージが込められていると言うことである。

    なるほどこんな読み方もあるものかと、読み進めていくうちに単なる読み物として好きだった「星の王子さま」が違った角度からも大きな興味がわいてくる。

    更に後半には、本書著者の読書感とでも言うべき教えが説かれており、星の王子さまばかりでなく、どんな本を読むにも著者のように本と向き合うことで本から得られる知識や想像力は大きなものとなるよう感じた。

    星の王子さまを読んだことのある方はもちろんのこと、星の王子さまを取り上げた別の解説書を既に読まれたという方も本書で違いを吟味してみるのも面白いと思う。

  • [ 内容 ]
    すぐれた作品はその滋味を読者にくみつくされることを望んでいる。
    それをより深く楽しむ読書の一つの濃密なケースとして、サン=テグジュペリの有名な「童話」を読む。
    そこに書かれていることを、何よりもまず読者のめいめいが自身の感性によって、文脈にそって総てにこだわりながら読みとり、その全体の構造が意味することを繰り返し問いつづけていくとき、「童話」としての既成のイメージを超えた、感動的な世界が見えてくる。

    [ 目次 ]
    プロローグ
    『星の王子さま』に会う
    『星の王子さま』を楽しむ
    読み方くらべへの招待
    エピローグ

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • そーなの?どーなの?そーなのかも?
    納得できないところもあるけど、腑に落ちるところもあって興味深いです。もっかい読みなおそーっと。

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