犯罪心理学入門 (中公新書 666)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121006660

感想・レビュー・書評

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  • 本書では犯罪を犯した人物がどうして犯罪を犯してしまったのか、また、その心理状況はどういったものであったのかが記述されている。
    犯罪の原因としては主に二つあると指摘している。一つは本人の素質である。といっても生まれながらということではなく、どういった家庭や地域、教育を受けて育ってきたのかということである。
    二つ目に環境である。これは犯行時に置かれていた経済的・家庭的・社会的な環境の要因と言う意味である。
    そして、二つの素質と環境が一致して犯罪が発生してしまうとしている。
    その中でも起こす犯罪の傾向や再犯率も素質と環境の割合によって異なる。

  • 学生時代に数度よんだ。
    心理学に興味を持つようになった端緒となる本

  • 犯罪心理学入門、は正に教科書的な構成となっている。一冊を読み終えると、長い旅路を終えたような気持ちになる。複数の分類が列挙されており、それに照合する複数の実例が細々と列挙されている。このあたり加賀乙彦の「死刑囚の記録」とは対照的である。死刑囚の記録では、著者の視点でかなり精緻に犯罪者像が描かれていたが(ときおり感情移入も見られた)、こちらでは簡単な概説にとどまっているという点で物足りなさは感じた。また著者の言いたいことが何かというとそれを読み取るのは少々難儀となっている。それはこれが教科書的な体裁をとっているからであろう。とはいえ、著者が言いたいところは、犯罪について考える際には、遺伝的要因、環境的要因、心理的要因、社会的要因などが複合的に考える必要があり(クレッチマー)、とはいえ、複合的であるがゆえに、簡単な構図というものはつくることは困難かつ危険であるといったところだろうか?


    また、個人的に犯罪者を考える場合には知能指数の高さというやつを考えなければならないのだという感想も抱いた。これはある種の差別となりうるが、実際にデータが知能指数の高さが犯罪を類発させうると実証している。知能指数が一定程度あり社会良識をやはり一定程度見につけているならば、損益を考えることによって犯罪を回避できるはずなのである。そして、もう一つが精神状態であろう。結局のところ、犯罪を犯すのは個人であるので、心理状態に全てを帰せられるとは思うのだ。ただその心理状態を掴むためには、遺伝環境社会文化などについても考えねばならないのだろう。著者は個と社会との二面的な捉え方を提案しているが、個人的には犯罪者の個に対してそれらを複合的に結びつけて理解すればいいのではないかと感じる。また、著者は責任能力について述べている。自分としては、仮に意志したものではなくとも、人間はその肉体に責任を負うべきだとは感じている。途中で、精神的なてんかん発作によって意識のないまま車を運転し、対向車と衝突して相手を殺してしまった人物が無罪となったのは、責任能力がないのだから当たり前だというような意味合いで書かれているように感じたのが、そこには猛烈に反発心を引き起こされた。それでは殺された人は天災によって殺されたということになるのだろうか?

    とはいえ、個人的に一番興をひかれたのは代理性とでも呼べる原理であろう。人間ならば誰しもが心に犯罪性を持っている。それを犯罪者を通して代理的に実行してもらうことで満たされるという心理作用は確かにあろう。人が殺される小説を平然と読み続けられる、あるいは、人が殺されなければミステリとして迫力にかけるなどといった感想を抱いてしまうのは正にその心理的作用と言えよう。誰しもがそれを認めたがらないだろうが、犯罪事件に心を悩ませながらも、ワイドショーを面白がって見てしまうあたりにその醜さとも呼べるものが集約されているように思う。また、厳格な家庭の子供が非行に走るのは、親たちが無意識的に抑圧しているシャドウを代替実現しているというあたりもかなり鋭くて反面で受け容れがたい理論でもある。人間は自分が思っている以上に鈍感でありながらも、しかし無意識的には自分が思っているよりもはるかに繊細であるのは誰しもが異論のないことであろう。要するに、自分は騙せても子供は騙せないということになってしまうのだろうか?心理学や精神医学では酒を飲むことによって発揮される性格は基本的には本来のものだと言われてしまう。酒を飲むことで粗暴になる人は生来的に粗暴な人なのである。妄想や幻覚に駆られる人は異常酩酊であるが、そうでなければ基本的には本来の性格と言える。そなわち酒癖の悪い人とは関わらない方がいいということになろう。まあ、酒癖悪い人はすごく嫌いなのだけれど。

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 4121006666 216p  1995・5・30 23版

  • なかなか興味深い。

    「日本人は家族とか親戚とか職場とか近所とか、親しく知り合った共同体の中では申し分のない紳士淑女として振舞うが、いったん知らない世界に出ると、旅の恥は書き捨てとばかり(中略)
    日本人一般の情性も、案外と狭い「拡大された自己中心性」にすぎないのではないかと思われるのである。」

    確かに、そういうことを感じるときあるねえ。
    想像力が足りないんだよ。結局。相手の気持ちを想像できない。

    精神病が、精神病質から起こる行動を押さえ込むことがある
    ということが書いてあってなかなか興味深かった。
    無意識から、自己破壊を抑制する信号が送られてくることもあるのか。
    これは、本能なのか、偶然なのか。どっちなんでしょう。

    意外だったのは、犯罪者のうち、パーソナリティ障害の割合が
    少なかったと言うこと。まあ、精神科医がみたわけじゃないから、
    きちっとしたデータと言えるかどうかは疑わしいけど、
    これが事実ならば、犯罪者の多くは、性格の偏りがない人間だと言うこと。
    軽犯罪は、情性薄弱等はあまり関係なく、
    知的障害≒想像力欠如の傾向にあるだけなのかもしれない。
    放火は23%、殺人は12.5%だから、重犯罪では高いけれど。

    思ったのだけれど、精神障害者で括ることって良くないと思う。
    統合失調症とパーソナリティ障害は明らかに区分すべきだと思う。
    統合失調症は病気だけど、パーソナリティ障害は病気じゃないし。

  •  犯罪心理学で有名な福島章さんの本。犯罪心理学とはどういうものか、という本。

  • 様々なケーススタディを元に、犯罪がどのような心理状態で行われるのか、犯罪者の生い立ち等との関係を分析していく。

    私たちは普段、テレビのニュースなどで「凶悪犯、〇〇を惨殺」というような刺激的な犯罪をかいま見る時、無意識に「犯人が悪い。死刑にすべき」と短絡的に思ってしまいがちだが、実は犯罪の背景には犯罪者の生い立ちが深く関係していることもある。表面上の報道だけですべて感情論になってしまうのではなく、その背景にある犯罪者の生い立ちや性向を知ることで、冷静に事件の報道を見ることができるのではないか。

    裁判員制度時代には、冷静に事件を見る目が必要となる。感情論的に、凶悪犯罪だから死刑というような短絡的な判断ではなく、犯罪の背景に潜む事情を斟酌して事件を判断することが必要となる。

    その意味で、本書は参考となる。

    また、「犯罪者」の定義と、私たちが実際認識する場合の「犯罪者」とに齟齬があるとの指摘は「なるほどな」と思った。つまり、「犯罪を犯した人」が「犯罪者」なわけですが、実際私たちが「犯罪者」と聞いて認識しているのは「凶悪犯」のような感じであるということ。

    (2009年6月11日)

  • 1998.5.25 26版 660
    日常的にさまざまな犯罪が頻発している。幼児期の環境からひずみを生じて犯罪に走る場合もあれば、まじめなサラリーマンとして過してきた男性が、突然犯罪をおかす場合もある。動機は何か、犯罪者の気質や性格・環境はどうだったのかなど、さまざまなケースを多次元診断によって追究し、犯罪という極限状況にあらわれた人間の心理と行動とをさぐる。それはまた自分について、人間について多くのことを教えてくれる。

  • 想像していたものと違う本だった。
    けど読みやすいし、頭も使わなくて大丈夫。
    参考程度に読むのがおすすめ。

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