遊牧の世界 下―トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から (中公新書 684)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121006844

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  • (2016.07.25読了)(1999.10.02購入)
    副題「トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から」
    トルコ中央部よりの高地から地中海寄りの低地に移動して、冬を迎えます。
    ヤギ、ヒツジ、ウシ、たちはここで出産します。
    ヤギやヒツジは、たくさん飼っているので親子の組み合わせの識別は難しそうに思うのですが、遊牧民は親子の組み合わせをすべて覚えているそうです。個体識別のポイントとなるのは、毛の色や耳の形ということです。
    夏営地で、毛を刈ります。
    ラクダやヤギの毛は、自家消費用、ヒツジの毛は売り物になります。ヒツジの毛を刈る前には、川で洗ってきれいにしてから毛を刈ります。
    昔我が家でヒツジを飼っていたときは、毛を刈ってから洗っていたような気がします。
    暑くなってくると、再び北上して、高地へと移動します。
    牛を狂わせる昆虫、毒のある植物、毒蛇、など、注意の必要なこともあるようです。
    遊牧民は、獣医も兼ねている感じで、家畜達の病気の症状と治療法を心得ています。必要なら手術も行います。死因が不明な場合は、解剖して原因を探ります。
    家畜が死にそうなときは、イスラム教の作法に従って屠殺した場合には、食べることができるけれど、何もせずに死亡した場合には、食べることができないそうです。
    定住化政策が進んでいるので、遊牧生活は、難しくなってきているようです。

    【目次】
    第三章 冬営地にて―家畜の出産と認識体系
    1 家畜の出産と成長
    2 家畜の病気
    3 家畜の認識体系
    第四章 移動―冬営地から夏営地へ
    1 コプラングチの花
    2 ヤイラ・トプラク
    3 さまよえる遊牧民
    第五章 夏営地にて―経済活動と定住化
    1 経済活動
    2 社会構造
    3 定住化
    あとがき

    ●所有者印(28頁)
    (焼印と耳への切れ込みで所有者を特定します。)
    焼印は一つのスラレ単位で共有されている。スラレは五~六世代前の父方の先祖を共有する血縁集団である。それにたいして、耳に入れた切れ目の形は各チャドル(世帯)単位になっている。
    ●害獣(37頁)
    1960年以前の状況だと、家畜にとっての害獣がたくさんいた。ハイエナ、ジャッカル、ヒョウなどが代表的な外敵だった。家畜にとっての害獣のほとんどは、ここ十数年のうちに絶滅した。
    ●勝手に移動したウシ(69頁)
    10年位前のことだが、移動を目前に控えたある日、チョシル・ユルックの一人がもっていたウシの群れが忽然と姿を消してしまった。
    露営を重ねて夏営地へあがると、移動の10日前に姿を消したウシの群れが悠々と草を食んでいたという。200キロメートル以上におよぶ移動路を、ウシの群れは熟知していたのだ。
    ●塩(143頁)
    一般的に塩不足になると畜群の食欲はおちる。あたえすぎると肝臓をいためたり、病気になる。夏営地にいる間は塩を要求する頻度が多く、ほぼ一週間に一回程度与える。
    冬営地においては、二週間から一カ月に一回塩を与えるくらいだ。
    ●剪毛(147頁)
    剪毛の対象になるのは、ラクダとヒツジ、ヤギである。
    ラクダの毛の大部分はキリム用に使う。一部はチョッキなどに仕立てる。いずれにしても、ラクダの毛はすべて自家消費用に充てている。ヤギの毛も、原則として自家消費用だ。

    ☆関連図書(既読)
    「遊牧の世界(上)」松原正毅著、中公新書、1983.03.25
    「古代への情熱」シュリーマン著・村田数之亮訳、岩波文庫、1954.11.25
    「埋もれた古代帝国」大村幸弘著、日本交通公社、1978.04.01
    「鉄を生みだした帝国」大村幸弘著、NHKブックス、1981.05.20
    「古代アナトリアの遺産」立田洋司著、近藤出版社、1977.01.10
    「埋もれた秘境 カッパドキア」立田洋司著、講談社、1977.10.30
    「トルコ史」ロベール・マントラン著・小山皓一郎訳、文庫クセジュ、1975.10.10
    「スレイマン大帝」三橋冨治男著、清水書院、1971.09.20
    「シルクロードの幻像」並河萬里著、新人物往来社、1975.03.10
    「地中海 石と砂の世界」並河亮著、玉川選書、1977.12.25
    「トルコという国」大島直政著、番町書房、1972.08.30
    「遊牧民族の知恵」大島直政著、講談社現代新書、1979.06.20
    「オリエントから永遠の都へ」大島直政・加藤久晴著、日本テレビ、1983.08.19
    「ケマル・パシャ伝」大島直政著、新潮選書、1984.05.20
    「トルコ民族主義」坂本勉著、講談社現代新書、1996.10.20
    (2016年7月27日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    一九七九年夏、熱く乾いた空気のなか、トルコでの遊牧生活は始まった。家畜の群れとともに秋営地から冬営地、夏営地へ、活気に満ちた一年がすぎてゆく―。遊牧という生活様式がユーラシア文明に及ぼした影響をめぐる考察を交えながら、「自由」な暮らしを求めるユルックたちの営みをヴィヴィッドに綴った民族誌。

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著者プロフィール

国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。専門は社会人類学。
主な著書に『遊牧の世界―トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から 上・下』(中公新書、1983)、『世界民族問題事典』(共編、平凡社、1995)、『カザフ遊牧民の移動――アルタイ山脈からトルコへ 1934-1953』(平凡社、2011)などがある。

「2020年 『中央アジアの歴史と現在 草原の叡智』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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