元禄御畳奉行の日記: 尾張藩士の見た浮世 (中公新書 740)
- 中央公論新社 (1984年9月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121007407
感想・レビュー・書評
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『鸚鵡籠中記』は、これまで読んだ歴史系の本に、参照した史料として紹介されていたので、書名は記憶に残っていた。その書を記した朝日文左衛門が見た元禄から享保までの風俗などを、武士学入門、御畳奉行どの、元禄社用族などに章立てて紹介する本書。密通、心中の章では、当時の女性の哀しさや、女性が脇差で腹掻っ捌く事例を読むにつけ、逞しさを実感。酒と芝居、心中事件まで楽しんでしまう文左衛門。百石と少禄ながら優雅な生活に思える。日記の文面からは生来の人の好さや、バレバレの暗号を記すお茶目さは、読んでいて楽しかった。
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1984年9月。出版当初話題になった本だが、図書館のリサイクル本でようやく読んだ。
酒と女が大好きで好奇心旺盛の尾張藩士朝日文左衛門の長年にわたる日記から当時の世相を生き生きと描き出す。芝居小屋のある地域とか事件の起こった地名とか(大須、若宮、日置、尾頭等々)、知っているところばかりなので親近感が強く持てる。
エンターテイメントとして面白かったが、すべて実話である点、さらに興味深い。 -
国語科の先輩から教えていただいた
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元禄時代の尾張藩士の朝日文左衛門が書いた「鸚鵡籠中記」という日記を紹介。
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元禄の俗物侍の数十年にわたる膨大な日記「鸚鵡籠中記」の解説本。原本はいまだ刊行されておらず、こうしたかたちでしか触れえないのは、歴史の息遣いを知る上で不幸であろう。
著者の解説自体は凡庸で、文章もまずい。半分近くを占める「鸚鵡籠中記」の引用しか、見るべきものはない。 -
尾張藩士の日記。37冊に及ぶという。
野次馬根性全開で、心中や藩主の未亡人の奔放な性の噂などが記された日記が何故かお城の奥深くに残されていたらしい。隠されていたのだけど、一部の藩士が楽しんでいたようだ。
磔を見に行った日記の末尾に、磔台の値段が書いてあるのがたまんない。
あっけない幕切れもよい。 -
ロフト行き
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読了。
元禄御畳奉行の日記 尾張藩士の見た浮世 / 神坂次郎
尾張徳川家に250年間秘匿されていた朝日文左衛門の日記「鸚鵡籠中記」を読み解く本です。
なんか隠されてたみたいですね。
とにかく時勢を批判ありきでいろいろ書きまくってるからか隠されてたのかしらね。
公表されたのは昭和の戦後からさらに20年くらいたったころだそうですね。
元禄の世から始まる日記です。
女、酒、賭け事を愛し、演劇などの娯楽を愛す。
さらに噂(ゴシップ)好き、あっちに事件があれば野次馬に行くこっちに事件があればやっぱり野次馬にいく、釣りを楽しみ、また仲間と酒を飲む。
まさしく某銀英伝2期のオープニングの如き
「時は変わり、所は移ろえど、人の営みに何ら変わりはない」
という印象につきます。
最後は酒の飲み過ぎによる肝硬変でおなくなりのようです。
24年ほど37冊にも及ぶ日記録のようですね。
生類憐れみの令も尾張でも発布されたようだけど江戸ほど厳しくはなかったもよう。
江戸中心の世でも、地方の各藩はいろいろなんでしょうね。
華の元禄文化と言われても文化だけで経済は衰退待ったなし状態だったようで。
この元禄御畳奉行の日記って横山光輝が漫画化してるんですね。amazon見て初めて知りました。 -
神坂次郎 (1984)『元禄御畳奉行の日記――尾張藩士の見た浮世』中公新書
・著者の神坂次郎(1927-)は、時代物が多い作家。
・名古屋城下の御畳(おたたみ)奉行「朝日文左衛門重章」の書いた『鸚鵡籠中記』を紹介するというもの
・2008年には文庫化(中公文庫)された。
・新書版は、文字がつぶれ気味で読みにくいかも。
【目次】
目次 [/]
八千八百六十三日の日記 001
もうひとつの元禄
朝日家の来歴
武芸者志願
花嫁のくる夜
親父どの攻略
御目見の衆
武士学入門 023
文左衛門の初登城
刀の忘れ物
酒飲めば世は愉し
文左衛門の劇評
天野源蔵との出会い
生類憐愍の令
でんぼこ殺生
御畳奉行どの 057
文左衛門出世する
文左衛門の俸給
二人の妻に妾ふたり
元禄社用族 071
御奉行どのの上方出張
京の義恩蝶・大坂の縮皮で豪遊する
御奉行どの遊び疲れる
御側同心頭御国御用人になる
おかしな侍たち 089
ところてん自殺
奇妙な刃傷
好色な落し物
愛欲無惨
ばくち侍
女左衛門と母ばくちに熱中する
浮かれ妻騒動 109
密通ばやり
さまざまな姦通
不義の季節
女のいくさ
本寿院様ご乱行
心中ばやり 129
さまざまな恋
文左衛門心中を目撃する
ものぐさ心中
文左衛門無理心中事件に活躍する
女左衛門またまた心中に遭遇
城下の事件簿 145
姿なき怪盗
けったいな泥棒たち
御勝手不如意につき簡略節減令
にせもの列伝
盗っ人宿駕篭かきと裸女
街談市語 169
町の噂
丑の刻まいりの女
土に毛が生える話
江戸城内の喧嘩
貧窮無類の世
士水之介乞食になる
文左衛門の退場 189
娘の嫁ぐ夜
文左衛門酒に倒る
ひとつの終焉
あとがき(昭和五十九年七月 神坂次郎) [200-201]
参考文献 [202-203]
関連年表 [204-208] -
尾張に居たサラリーマン武士の日記について書かれたものです。
あとがきにもあったのですが、主家批判をしてたり、幕府批判?をしてたりしたのに、何故か藩でしっかり保存して禁書扱いになってたのが不思議ですね。
実在の登場人物が、他の資料と合わせてあっていたりしているので、創作にしては微妙ですしね。
もっとも、書いた本人の役職表記がいろいろ微妙だったりするので、実在の人物を利用した日記風読み物の可能性も。
なかなかおもしろくて、江戸、特に元禄時代の武士から見た世間を読めます。
この日記を書いた文左衛門が野次馬根性丸出しだったり、芝居好きとかだったり、うわさ話や心中話、浮気やそういった話も大好きな上に、記録魔っていうのが面白いんでしょうね。
料理関連で一品一品全部書いてみたり、行かなくてもいいのに死体見に行ったり、酒飲むなって怒られてるのにすぐに酒飲んで吐いてたりと、なんというか楽しいです。
難点は非常に読みにくいことですかね。
あとがきにもありましたが、元々が漢文だったり和文だったり当て字だったり言い換えてたりと、暗号文的なのが多かったようで、それをある程度読みやすくしてくれは居ます。
が、それでも結構読みにくい。江戸時代の文書絡みの特徴的な読みのふりがなが少なかったのがちょっと残念。後の版では良くなってるかもしれませんが(それでも昭和60年の16版読んだのですが)
なかなかおもしろくて良かったです。