- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121007650
感想・レビュー・書評
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桶狭間の戦いから遡り、参謀本部の歴史をたどり、今次対戦の敗戦を探る一冊。
日本には封建武士軍隊と近代大衆軍隊の間に傭兵軍隊時代の歴史がない。軍隊の忠誠をつなぎとめるものが兵站だという歴史経験がなかった。参謀本部が一方では兵站を軽視し、他方では軍事情報のみならず、本来は政略に属する分野の謀略や情報政治にまで手を出すことになった。戦略の欠如を政略でカバーする傾向が生まれた。
軍人政治家は多いが戦略家がでなかった日本陸軍の体質を、日本の参謀本部の起源が決定したといえる。
日露戦争以降は、まさに驕りとしか言えないな。 -
日本陸軍参謀本部の始まりから終わりまで。
参謀本部を特に取り上げた本は少ないような気がする。どういう経緯で成立したのか、日清・日露から先の戦争が終わるまでの参謀本部の動き、歴史を知るには、コンパクトにまとまっていて良いと思う。 -
[評価]
★★★★★ 星5つ
[感想]
悪い意味で有名な日本の参謀本部
そもそも参謀本部がどのような経緯で生まれ、どのような過程を経て、日中戦争、太平洋戦争に至ったのかということを解説している。
この本を読む限り、参謀本部は明治時代に複雑化する軍事に対応するために生まれたようだけど、明治時代は政府が軍部を統制することができていたようだ。
特に明治維新の功労者がいた時代は対立はあったものの問題にはならなかったようだ。しかし、その対立から統帥権の独立され、明治維新の功労者の死後に暴走するようになったようだ。
政治から独立した軍事は害悪にしかならないということがよくわかる内容だった。 -
新書文庫
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日露戦争という世界の戦争史に残る体験をした日本はその経験を生かせず、二流の陸軍国に堕していった記述が印象的です。日露は近代戦争としてそれまでの決戦型会戦と時代を画するものだったのですね。日本も大変な経験をしたものです。そして、陸軍の歴史を中心になぜ日本が無謀な戦争に突入していくのか、戦略も目標もない、混乱した路線の下での愚かさを今更ながらに痛感します。プロシャがドイツ統一を目指し、デンマーク、オーストリア、フランスと相次いで戦うその国家戦略と対照的です。
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日本の参謀本部が成立して自壊していくまでを追う。
ドイツ陸軍参謀本部を手本にして作られた参謀本部は
日露戦争の負の遺産をそのまま継承し、保身に走る
官僚機構は上司の統制を無視して部下の独断だけで内部
分裂していく。このことに関して容赦なく批判を加える。
陸軍省=対中国強行派/参謀本部=中国撤退派 -
茨城大学名誉教授(日本近現代史)の大江志乃夫(1928-2009)による近代日本の参謀本部盛衰史。
【構成】
1 メッケルの遺産
2 参謀本部の起源
3 外征軍の頭脳
4 日清戦争前後
5 日露開戦と参謀本部
6 日露戦争中の幕僚の機能
7 幕僚機能の官僚機構化
8 目標喪失の時代
9 目的・目標がない時代
10 二正面の重圧
11 参謀本部の崩壊
近代日本軍事史の泰斗であった大江志乃夫による近代日本を牛耳った参謀本部という組織の歴史である。構成としては1874年の佐賀の乱より参謀本部の性格が定着する日露戦争までの期間に紙数の大半を割いている。プロイセンの参謀本部を模範としながら、戦略を学ばず戦術パターンのみ身につけた日本陸軍の参謀達は、リデル・ハートが後年主張するような間接的アプローチなど見向きもせず、教条的な歩兵戦術に固執するようになる。
そして日露戦争以後は、戦勝に酔える参謀スタッフ達は、根本的な過ちを犯す。
「陸軍のスタッフ・システムにすぎない参謀本部が、軍事的スタッフとしての任務を逸脱して、大日本帝国の存立の基本方針を策定する国家のスタッフをもって自任した。」(p.125)
本書後半の太平洋戦争の下りはやや著者の感情が入りすぎた筆致になっている感があるが、近代日本の軍事史を語る上で不可避な統帥権の運用について、最も整理され示唆に富んだ一冊である。