コミュニケーション技術: 実用的文章の書き方 (中公新書 807)
- 中央公論新社 (1986年6月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121008077
感想・レビュー・書評
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【実務文を書くときのplan do seeサイクルの一例】
文を書く前にゴールを明確にする(“What do I want to achieve?”)。読み手をイメージする。読み手についてリサーチする(関心事・目的意識、スキーマ、保有知識、言葉づかい、等)。読み手に引き起こしたい変化をイメージする。読み手の時間制約をイメージする。文全体の量と内容の詳細さ・正確さの水準を決める。文に盛り込む内容を取捨選択する。内容の全体構成を決める。教訓集をおさらいする。
読み手にとってのメリットを増やしつつ、コストとリスクを減らしつつ、ゴールを達成するように文を書く。タイトルや最初の段落で読み手の注意を引き付ける。読み手の関心事・目的意識と関連付けて文を書く。文全体の量をできるかぎり減らす。ロジックをできるかぎりシンプルにする。内容のかたまりごとに段落を分ける。一度読んだら読み返さなくても意味が分かるように表現する。読み手のスキーマをゆがめないように文を書く。ロジックの根拠となる事実を読み手自身で確かめやすいように表現する。
文を書いた後に、ゴールを達成しそうかレビューし、添削する。読み手の視点に切り替え、読み手のリアクションをシミュレーションする。読み手の実際のリアクションを観察し、ゴールの達成具合を評価し、教訓を抽出して次の機会に活かす。他者が書いた実務文(分かりやすい文、分かりにくい文、フラストレーションがたまる文、等)から教訓を抽出して次の機会に活かす。教訓集が雑多になってきたら集約・体系化する。
【読み手のスキーマをゆがめる(または認知バイアスを誘発する)文の例】
意見をあたかも事実かのように誤認させる文
部分をあたかも全体かのように誤認させる文
真偽不明な命題や偽の命題をあたかも真の命題かのように誤認させる文
結論の前提を忘却させる文
事実の一部を隠して結論や印象を歪曲する文
同調圧力をかける文
感情をあおる文詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「実用的文章」について一語一文レベルでこだわった一冊。前レビュー(『理科系の作文技術』)と同じく、文章作法に関する本である。『理科系の~』が文章を書く際の心構えなど全体的な視点を論じた一冊だとすれば、本書は一文における語句選択など細部の視点を論じた一冊と言える。
本書内容は大きく分けると2つ――「1つの文を構成する単語の選び方とその表現技法」・「文章の集合体であるパラグラフの構成とその展開方法」――である。また、いずれの章でも、筆者の主張は一貫している。即ち、1つの単語・文・パラグラフに複数の意味・主張を持たせない(「ワンワード/ワンミーニング」・「ワンセンテンス/ワンアイディア」・「ワンパラグラフ/ワントピック」)というものである。こう書くと意外性はないかも知れないが、本書には多数の練習問題がついているので、是非挑戦して欲しい。案外、自分も伝わりにくい文章を書いていることに気付くはずである。
本書の活用方法だが、内容が細部にわたるため、実用的文章を書き始めたばかりの人が読むと先に進めなくなる恐れがある(その場合は、まず『理科系の作文技術』を読むのがオススメ)。従って、文章がある程度は書けるようになった人がレベルアップを目指して読む形が良いだろう。 -
文の構造が、総論→例文となっている。分かりやすい。
例文が大量に掲載されていることが特徴。
初版は1986年なので、内容が古いと感じるところがある。 -
もっと早く読むべき本でした。「理科系の作文技術」と同様、基本を教えてくれる良書です。
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文章を書くことにも”基本”があるのである。自分の伝えたいことをなかなか読み手に理解してもらえない人は、この本を読んでみても損はないと思う。
思うがままに文章を書いて、自分が伝えたいことを読者に100%伝達できる形で文章を作り上げることができるのであれば苦労はしない。