漱石が見た物理学: 首縊りの力学から相対性理論まで (中公新書 1053)
- 中央公論新社 (1991年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121010537
作品紹介・あらすじ
漱石の生きた半世紀は、X線、電子が発見され、量子論が誕生し、特殊相対性理論が発表されるなど、古典物理学から現代物理学へと移行する激動の時代であった。理科が得意で、自らも建築家志望であった漱石は、寺田寅彦と科学談義を楽しみ、作品にも最新の話題が登場している。本書は文学者漱石の旺盛な好奇心に従って、熱、光、量子、時間と空間について物理学発展のあとを辿り、乖離する文科と理科の交流を目指す。
感想・レビュー・書評
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近代日本文学の文豪として知られる夏目漱石の生きた時代は、科学分野において古典物理学から現代物理学へと移り変わる重要なターニングポイントであった。本書は漱石の作品中に現れる科学的な話題を皮切りに、当時の物理学の発展を振り返る。さらに、文学と自然科学という一見相容れない分野の共通点を見出す。本書を読めば明治-大正期の科学史を学ぶことができるだけでなく、漱石作品がより味わい深いものとなるだろう。
(地球惑星科学コース М2) -
夏目漱石が同時代の物理学に関心をいだいていたことを話の枕にして、19世紀から20世紀にかけての相対性理論および量子力学に代表される物理学の革命を、一般の読者に向けてわかりやすく解説している本です。
タイトルから、漱石についての本だと思って手に取ったために、やや期待はずれでした。本書の解説そのものは、物理学についての素養のない読者にとっても読みやすい文章で書かれているように思います。 -
資料ID:C0005493
配架場所:2F新書書架 -
前々から気になっていた本で、やっと読む機会が得られた。
付録の年表をみてあらためて思うのが、漱石と同時代に活躍した物理学界の顔ぶれの華々しさ。ラザフォード、ボルツマン、キュリー夫妻、マクスウェル、プランク、ボーア、シュレーティンガー・・・アインシュタインの特殊相対性理論と『我輩は猫』は同じ年に発表されているではないか。古典物理学から現代物理学にパラダイムシフトする最中、知識人の先端だった漱石には、否応無く先端情報が入り、それを理解することできたのであろう。この手の話題で避けて通れないのが、漱石と寺田寅彦の関係。寺田の本を読んでも思ったが、彼らに今の科学技術の有様(特にIT技術)を見せてあげたいと思う。 -
漱石の生きた時代は科学の転換→隆盛の時代に当たる。本著は直接漱石文学に関係しないが、一般科学史の教科書として読むのがいいのだろう。それにしても「吾人の心中には底なき三角形あり、二辺平行せる三角形あるを奈何せん」という漱石先生の呟きは、矢張り痛い。