ゾウの時間ネズミの時間: サイズの生物学 (中公新書 1087)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121010872

作品紹介・あらすじ

動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    ネズミであっても、ゾウであっても、人間であっても、どんな動物でも一生のうちに心臓が打つ回数は8億回前後だと言われている。体が小さい動物ほど、体重当たりの代謝量が多いため、脈拍が早い。そのため寿命と体の大きさはほぼ比例する傾向にある。
    2つの関係性を計算すると、生物にまつわる「時間」は体重の1/4乗に比例することが分かっている。これを「生理的時間」という。

    本書では、「身体のサイズ」が生物のあらゆる行動原理を決めていると仮定し、多くの項目を検証しながら動物それぞれの「世界観」を考察している。
    例えば、食べる食事の量も体重によって決まる。身体が大きければ食べる量も多いのは当たり前だが、体重の増加分ほどに餌の量は増えない。そのため、1トンのゾウ1頭と1グラムのイナゴ100万匹では、後者の方が圧倒的に草を食べる量が多く、従って個体数の増大も早い。また、生活圏の広さも身体の大きさに比例しているという。一般的に身体が小さいほど移動距離が短くなるため生活圏が狭い。例外は人間であり、毎朝通勤電車に揺られて移動する距離を生活圏とみなして、それを体重ベースに逆算すると、4トンの動物と同じだけの生活圏を有しているという。

    では本題の、「なぜ時間が体重の1/4乗に比例するのか」という謎については、実は解明されていないままだ。一応、「動物の身体はバネのような弾性相似である」と仮定した上で証明を行ったケースが挙げられているが、鳥類や他の哺乳類では仮定が成り立たないとしてお蔵入りとなっている。

    そもそもの話になるが、動物の寿命を測定するのは結構難しい。野生下では寿命が尽きる前に餓死か捕食かケガで死んでしまうし、飼育下では野生下と比べて寿命が全く異なる。
    また、身体が小さい=寿命が短いという仮定への例外が多過ぎる。短命と言われるネズミだが、ネズミの中でもハダカデバネズミは30年近く生きる。大型動物と同じぐらいの寿命だ。これは同種の動物を比べても同じであり、人間で言えば、その人が暮らす環境や生活様式によって寿命には1~2割程度のブレが出る。要するに個体差が激しすぎるのだ。

    結局のところ、「寿命」という概念はあまりに他の要因が絡み合いすぎて、一律に論じきれるものではないというものがあるだろう。ただ、大きな生物ほど長く生きるというのは、何となく我々の想像に合っているのは間違いない。このことを念頭に置きながら、各動物の世界観を想像してみるとちょうどいいのかもしれない。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    1 時間は生き物の大きさによって変わる
    生物にまつわる「時間」は体重の1/4乗に比例する。
    大きな動物ほど、寿命や大人のサイズに成長するまでの時間が長くなる。また、息をする時間や心臓が打つ間隔、血が体内を一巡する時間も、体重の1/4乗に比例する。
    また、体積に関係するものは体重に正比例し、体積変化率(単位時間内にどれだけ体積が変化するか)は「体積÷時間」で求められ、体重の3/4乗に比例する。

    ゾウにはゾウの時間、ネズミにはネズミの時間があり、生物におけるこのような時間の概念を、物理的な時間と区別して、生理的時間と呼ぶ。
    動物のサイズは、動物の生き方に大きな影響を与えていると言えるだろう。


    2 サイズと進化
    サイズが大きいということは、一般的にいって余裕があるということだ。サイズが大きくなればなるほど、体積あたりの表面積は小さくなる。体温が逃げにくくなるし、体内の水分も蒸発しにくい。また、体重あたりのエネルギー消費量はサイズの大きいものほど少なくなるので、より長期間の飢餓にも耐えられる。

    一方、小さいものの利点は小回りが効いて省エネなところだ。小さいものは個体数が多いため、種全体で見れば、生存競争に残る確率はサイズが大きいものと同じになる。環境が厳しくなれば、突然変異による新しい種が生まれやすいのも小さい種の特徴だ。
    また、大きいものは体温を維持するために常に大量のエネルギーを使い続けなければならない。サイズが小さい変温動物は、冬眠時には体温を下げて省エネに徹することができる。

    一般的に、島などの閉ざされた環境にいると、サイズが大きいものは小さく進化していき、サイズが小さいものは(捕食者の減少により)大きくなる。これを「島の規則」という。


    3 代謝量
    標準代謝量は、恒温動物であれ変温動物であれ、多細胞であれ単細胞であれ、みな体重の3/4乗に比例する。

    摂取する食物の量を観察してみると、恒温動物ははなはだ効率が悪い。摂取したエネルギーのうち、成長にまわるのはほんの2.5%ほどであり、あとの残りは維持費(呼吸と排泄)に回される。一方、変温動物ではその30%が成長に当てられている。小さい動物のほうが、大きい動物よりも体重あたりの餌の摂取量が大きくなるため、小さい変温動物は大量の餌を消費し、どんどん増えていく。

    移動運動の種類別の使用エネルギーを計算してみると、走ることが圧倒的にエネルギーを食い、体重が大きくなるごとに必要エネルギーが大きくなっていく。
    その次は飛行である。飛ぶこと自体は走ることよりもエネルギーを食うが、速度が速いため、距離あたりのエネルギーでは走るよりも効率がいい。移動時間あたりでは走るほうが省エネだ。飛行も体重が増えるごとに必要エネルギーが大きくなる。
    一方、泳ぐことは体重にかかわらず消費量が一定だ。ライオンやチーターといった陸上の大型動物が常に休んでいるのに対して、アシカやイルカといった水中の大型動物がくるくると泳ぎ回っているのは、移動運動にあまりエネルギーを使わないからだ。


    4 器官のサイズ
    脳のサイズは、成長の早い段階で発育しきってしまう。その後は体が大きくなっていっても、脳のサイズはあまり変わらない。脳のサイズは体重のほぼ3/4乗に比例すると言われている。

    一方、骨格系の重量は、体重の1.09倍に比例して大きくなっていく。体重が増えるほどそれを支える骨が太くならなければいけないので当然のことだが、かといって、体重の大きい動物が骨だらけというわけではない。内臓が入るスペースを確保するため、ある程度強度を犠牲にしなければならないからだ。
    一般的に、身体の小さい動物ほど衝撃への圧力に強く、大きい動物ほど弱い。ネズミがビルの上から落ちてもピンピンしているのに対し、ゾウはジャンプしただけで骨折するのはこれが理由だ。


    5 動物の世界観
    動物が変われば時間も変わるということは、おのおのの動物は、それぞれに違った世界観を持っているということだ。動物の生活のしかたや体のつくりの中に、世界観がしがみついており、それを解読して、人間に納得のいくように説明する、それが動物学者の仕事である。

  • 畳みかけるように次々と展開するため、ワクワクしてページをめくる手をなかなか止められない
    おまけに著者の想像力豊かな表現力が大変素晴らしく、いちいち拍手をしたくなるのだが…
    今回そちらを強調したいので、その部分に(面白表現)と記載してみた
    (こういうのって楽しい♪)

    動物は体のサイズに応じて違う単位の時間をもっている
    ゾウはゾウの時間
    ネズミはネズミの時間があるという

    一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量はサイズによらず同じ
    生物における時間を物理的な時間と区別して、生理的時間と呼ぶ

    物理的時間でいえばゾウはネズミよりずっと長生き
    しかし心臓の拍数を時計として考えるならば、ゾウもネズミもまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになるだろう
    小さい動物の体内で起こる現象のテンポが速いのだから一生を生き切った感覚はゾウもネズミも変わらないのではないか

    (うわー面白い!物理的時間でしか物事を考えたことがなかったため、こんな考え方があるとは驚いた
    生理的時間で物事を考えると違った見方が出来そうではないか!
    年を取ると時間を早く感じてしまう…とかね)

    先ほどの生理的時間をもう少し専門的に描写されたのが以下の内容だ
    ・体重が増えると時間が長くなる
    時間は体重の1/4乗に比例する=体重が16倍になると時間が2倍になる
    体重の増え方に比べ時間の長くなり方はずっとゆるやか
    ・1/4乗則というのは時間が関わっているいろいろな現象に広く当てはまる
    寿命から成長の時間、性的に成熟するまでの時間、赤ん坊が母親の胎内に留まっている時間、
    息をする時間間隔、心臓が打つ間隔、腸がじわっと蠕動時間、血が体内を一巡する時間、
    体内から入った異物を再び体外へ除去するのに要する時間、タンパク質が合成されてから壊されるまでの時間など
    生物における時間を物理的な時間と区別して、生理的時間と呼ぶ

    以下は興味深いものの抜粋

    ・大きいもの
     メリット:ちょっとした環境の変化はものともせず長生きできる
     デメリット:1世代の時間が長くその結果、突然変異により新しい種を生み出す可能性を犠牲にしている
    (例:象…象の仲間で現在生き残っているのはインド象とアフリカ象の2種類だけ)
    ・小さいもの
     メリット:1世代の時間が短く、個体数も多いため短期間に新しいものが突然変異で生まれて出る確率が高い
     デメリット:小さいものはしょっちゅう餌を食い続けなければならず、餌がちょっとでも見つけられなくなったらすぐ飢えて死ぬ危険に直面する
    ・島の法則…島に隔離されると、サイズの大きい動物は小さくなり、サイズの小さい動物は大きくなる
    理由:島という環境は、捕食者の少ない環境であるため
    この島の法則は人間にも当てはまりそうだ
    大陸に住んでいればとてつもないことを考えたり、常識外れなことをやることも可能だ
    だが島では出る釘はすぐ打たれてしまう…(面白表現)
    ・体重が増えるほどには、食べる量は増えない
    ・大きいものほど速い
    ただしサイズがどんどん大きくなれば際限もなくどんどん速くなるわけではない
    地上で1番速いランナーであるチーターは体重約55キログラム
    これ以上体重が増えても速度はほとんど増えない
    サイズが大きくなると、足にかかる衝撃は大変なものになり、足は体を支えきれなくなってしまう
    ・主要な臓器はサイズが変わっても体の中で占める比率は変わらない
    つまり哺乳類の体の作りはサイズに限らず、ほぼ一定の比率でできている
    ただし体重が増えるほどには器官の重量が増えないものがある
    脳や内分泌器官である(体の機能を制御しているもの)
    制御する方の重さが制御される方の重さに正比例しない
    (例:車の鍵…軽自動車とトラックの鍵の大きさはそれほど変わらない、ハンドルも2つにならない) (面白表現)
    ・動物では時間は体長の3/4乗に比例する
     まだ理由は不明だが、長さは空間の単位だから、時間と空間はある一定の相関関係を保っていると言うことを意味する
    動物を理解するためには、「空間」と「時間」と「力」、この3つに対する感覚が必要
    ヒトは視覚主導型の生き物
    空間認識はよく理解できるが、時間感覚や力の感覚はあまり発達していない(時計に支配されている人間)
    ・細胞のサイズは、動物の種類が違っても、ほとんど変わらずの一定(直径約10ミクロン)である
    細胞の真ん中には遺伝子情報を持った核がある
    ・植物細胞は50ミクロン
    ・動物が柱と梁を組み合わせた骨組み建築(動物では骨格系が体を支えている)
    ・植物はレンガ積建築である(細胞1個がレンガ1個に対応)
    ・建築法の違いは動くか動かないかと言う事と深く関係している
     骨組み建築なら、柱と梁のつなぎ目を間接にしてあれば体が変形して動くことができる
     レンガ積ではレンガ同士が全て貼り合わされているので動くことができない(壊れやすいが増やしやすい)
     増やしやすい→光合成において光を受ける面積が広い方が良いし、背丈の高い方が他の物の影にもならずにすむ


    ■昆虫
    ・サイズが小さいことの長所…変異を短時間で生み出すことができる
    ・サイズが小さいことの短所…外の環境に左右されやすい
    陸上の生き物では、乾燥にいかに耐えるかが大問題となる
    体の表面を殻ですっぽり大ことにより、乾燥の問題を解決した(この殻をクチクラという)
    ・サイズが小さいが故、循環系に頼ることなく、空気をチューブで酸素を必要とする細胞まで直接配達する気管がある
    空気の詰まったチューブのため拡散だけで速やかに酸素が運べる
    ・昆虫は成長のたびに脱皮する、気管も脱皮する
    脱皮というものは費用と危険を伴う(面白表現)
    ここから昆虫のサイズの上限を決めているのではないか
    ・昆虫は変態(羽化)を節目として、食性と運動法を切り替える
    幼虫期はあまり動かずひたすら食う (この時は胃袋が重くても良い)
    羽化して成虫になると、飛びまわることが最優先になり、消化の良いものだけを食べる

    ■動かない動物たち(サンゴ)
    ・サンゴは体の中に、褐虫藻と言う小さな単細胞の植物を大量に共生させている
    この共生藻が光を受けて光合成をし、作り出した食物を気前よく親であるサンゴに分け与える
    サンゴは自前の農場を体の中に持っている(面白表現)
    ・レンガ積建築法
    単一ユニットをどんどん積み上げていく
    つまりサンゴはたくさんの個体が集まってできた群体である
    ・個々のユニットは分裂や出芽によって無性生殖的に増え、成長に制限がない
    また硬い殻はユニットが死んでも残るので体が大きくなるに都合が良い
    個体には寿命があるが、群体としては新しい個体が付け変わっていくので寿命は無い
    ・固着性の生物にとって、土地と言うのは最大の財産である
    日当たりの良い場所を確保したら死ぬまで手放せないほうがいい(面白表現)

    ■ちょっとだけ動く動物(棘皮動物 ウニやヒトデ)
    ・ウニ…棘を折りたたみ式にできる
    棘は根元の殻とのつなぎ目が関節になっていて、と棘を立てたり倒したり(360度どの方向にも)できる
    棘を倒せば、ウニは殻のサイズまで小さくなれるので、岩穴などの隠れ家を見つけやすくなる
    ・ヒトデ…体の表面には、数ミリ程度の小さな骨(骨片)がびっしりと敷きつめられており、
    この小さな骨片が結合組織でつづり合わされた鎧を着ている(面白表現)
    結合組織は硬さを変えられるため、自由自在に体を動かせる
    ・ヒトデの捕食
    貝の食べ方…5本の腕で抱きかかえたくさんの管足を貝の殻に吸い付かせ、殻をこじ開ける
    胃を口から出し、殻の隙間から貝の体内に滑り込ませ、消化液を分泌し、貝を溶かして吸収し食べてしまう
    何時間、何日もかけて(なかなかエグいなぁ)


    著者のあとがきより…
    動物の世界観とヒトとの違いについて
    ヒトの常識にあてはめない
    生物学はヒトという生き物を相対化して、ヒトの自然の中での位置を知ることができる

    生物学というのは身近でありながら、実に謎が多い
    上手いこと出来ているなぁと感心させられることが多く神秘的だ
    後半の動かない動物やちょっとだけ動く動物…面白かった
    生命を司る工夫がなるほど!というものばかり
    さすが生き残った者たちだ!

    さて本書は全て理解できたかは正直微妙なのだが(笑)…
    計算式をすべてすっ飛ばして読んだとしても、初心者でも楽しめる
    専門的な話には都度例えや噛み砕いた説明があり、わかりやすく最初から最後まで楽しめた

    ヒトという常識に囚われていることに気づくと同時に、
    ヒトって生きるための使い勝手が何かと悪いから脳が発達したのかも…とふと思った

  • 動物の時間は体重の1/4乗に比例するそうだ。寿命や大人の大きさに成長するまでの時間、心臓が打つ間隔など、すべての時間がこの法則にしたがうらしい。
    ただ、物理的時間は違っても、生理的時間は一緒だ。だから、ゾウの一生とネズミの一生は本人たちの感覚からすると同じなのである。
    見た目が全然違うのに、きちんと同じタイムスケジュールで一生が成り立っているなんて、おもしろいなあ、と冒頭でぐっと引き込まれた。

    本書ははじめに第一章と第二章の一部をエッセイとして発表し、その後章を追加して一冊にまとめたのだそうだ。そのため、第一章、第二章と比べて第三章以降はより専門的な内容となっている。数式の引用が増えることもあり少々とっつきにくいが、読み進めていくうちに、生命システムの規則性、合理性が少しずつ理解できてきて、何とよくできたしくみなのか、と興味がわいてくる。

    サイズとエネルギー消費量の関係でいうと、恒温動物、変温動物、単細胞生物、どれもみなエネルギー消費量は体重の3/4乗に比例する。え、恒温動物の方が変温動物よりエネルギー消費量が多いんじゃないの、と思うのだが、割合の問題で、恒温動物は変温動物に比べ、摂取したエネルギーの多くを成長(組織の生産)ではなく体の維持に費やしている、ということなのだそうだ。

    このような規則性を見ると、生物は一つの形から環境に応じて進化していったのだ、ということが理論的に理解できる。
    また、本書では、生物としてのヒトがいかにいびつになってきているか、ということも明らかにする。
    例えばエネルギー消費量でいうと、ヒトは食糧以外に石油や石炭などのエネルギーを使用しており、それらを合わせると標準代謝量の63倍、ゾウ並みのエネルギー消費量なのだそうだ。また、動物の生息密度はおよそ体重のマイナス0.2乗に比例するという報告があるが、日本の人口密度はサイズから予想される密度の230倍にもあたるという。

    ヒトは自分で住む環境をがらりと変え、より多くのエネルギーを使って自分の能力以上の活動を可能にしたが、他の生物とのバランスを考えると、それは極めて危うい状態であるのだ。
    「相手の論理を理解したうえでなければ、決してヒトは動物と正しい関係を結ぶことはできないだろう。この論理を発見し尊重することが、動物学者の大きな使命だと私は考えている。」という最後の著者の言葉が印象的だった。

  • 「時間は体重の1/4乗に比例する。」
    寿命やおとなのサイズに成長するまでの時間、赤ん坊が母親の胎内に留まっている時間などが当てはまるようだ。

    上記の定義を短い文章でまとめているが、この発見の裏には研究者達が膨大なデータを統計し、この数字を割り出したと考えると尊敬の念を抱く。本書は、通常であれば難しい論文に記載されているような内容を、わかりやすい言葉で一般の方に伝わるような表現にしており、名著と呼ばれているのに納得した。

    植物細胞と動物細胞の違いについても言及しており、成長の仕方や構造の違いで適切な細胞の形になっている話が興味深かった。
    私の学生の頃は、教科書のムラサキツユクサの細胞の拡大図を見て細胞構造を学んだが、本書のような一歩踏み込んだ「なぜそうなっているか?」を是非子どもに伝えたいと思った。

  • なるほど、と感心。ゾウとアリ、考え方によっては同じ時間を生きている。島国と大陸、日本人の特性がわかるような。根拠のための数字がたくさん出てきて、文系の私は?分かったような理解不能のような。

  • 哺乳類の心臓は一生のあいだに約20億回打つ。
    それはゾウでもネズミでも同じ。
    …ということは、心臓の拍動を時計として考えたら、ゾウもネズミも同じ長さだけ生きて死ぬことになる。

    …という冒頭の話から、目からウロコがぽろぽろ落ちていくのがわかりました。
    生物のサイズに着目し、エネルギー消費量や体内器官、移動方法などを考察しています。
    実際に計測されたデータから導き出された数式を元に説明が進むのですが、それぞれの生物にとって今ある形が理にかなっているものだということがわかりました。
    特に昆虫の体の仕組みについての第12章と、ヒトデやウニなどの棘皮動物についての第14章が楽しかったです。
    水の中ではやわらかく体をくねらせているのに、手で持ったとたんに固くなるヒトデの仕組み、やっとわかって長年の謎が1つ解けました。
    生物って本当によくできているのですね!

    そして、残念なことに、苦手な数式が出てくるたびに、ぼんやりと眠気をもよおす私の頭もよくできている…と思わざるを得ませんでした…。

  • 数学的難しさを乗り越えると興味深い話の連発でとても楽しく読めた。
    始終生物のサイズについての考察がなされている。「生きる」ことと「サイズ」がこんなに密接に結びついているなんて本著を読むまで気づかなかった。
    あとがきにもあるように、他の生き物の世界観を知ることで、自分を新たな目線で捉え直すことができるのかもしれない。

  • 哲学的な話かと思って読んだら物理学に裏打ちされた話だった。
    陸上の動物から水中の魚類、棘皮動物までのさまざまな動きや形態の着眼点が面白かった。

  • 思ったほど時間のことについて書いてなかったのは残念だったのだが、生物の体の作りや進化について改めて勉強しなおした感じ。
    たしかにこんなこと勉強したかもしれないが、忘れてた、ということを思い出させてもらったような気持ちになった。生物に対して謙虚になる。

    • goya626さん
      「ゾウの時間 ネズミの時間」という著者が歌う歌があります。私の子どもたちが小さい時、親子でCDに合わせて歌い踊ってましたよ。
      「ゾウの時間 ネズミの時間」という著者が歌う歌があります。私の子どもたちが小さい時、親子でCDに合わせて歌い踊ってましたよ。
      2020/12/16
    • momchapさん
      本の最後に楽譜がありましたね!CDがあるとは知りませんでした。楽しそうですね♪聴いてみたいです。
      本の最後に楽譜がありましたね!CDがあるとは知りませんでした。楽しそうですね♪聴いてみたいです。
      2020/12/17
    • goya626さん
      実に楽しいですよ。
      実に楽しいですよ。
      2020/12/18
  • 生物とはいかに素晴らしい設計がされてるのかが、わかる本です。


    この本を読めば、宗教的とは違う視点から神様はいるなと思うことができるかもしれません。


    タイトルは「時間」が大々的にアピールされていますが、実際は副題の「サイズ」の方に重きがおかれています。

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著者プロフィール

生物学者、東京工業大学名誉教授。

「2019年 『生きものとは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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