コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 77
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121010957

作品紹介・あらすじ

東アフリカ原産の豆を原料とし、イスラームの宗教的観念を背景に誕生したコーヒーは、近東にコーヒーの家を作り出す。ロンドンに渡りコーヒー・ハウスとなって近代市民社会の諸制度を準備し、パリではフランス革命に立ち合あい、「自由・平等・博愛」を謳い上げる。その一方、植民地での搾取と人種差別にかかわり、のちにドイツで市民社会の鬼っ子ファシズムを生むに至る。コーヒーという商品の歴史を、現代文明のひとつの寓話として叙述する。

感想・レビュー・書評

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  • 題名の通りですが、コーヒーを基軸に世界史の知識が深められる本です。
    以前に拝読した「おにぎりと日本人(増淵敏之著)」と共通した面白さがありました。
    本書の中で、バッハのコーヒーカンタータ(1732年)が紹介されていたので、YouTubeで聴いてみました。当時のコーヒーの流行っぷりを音楽を通して感じ取れた気がします。

    モカブレンド好きの私は、本書でモカの歴史を知れて嬉しかったです。

    --------------------------------
    ◆モカについて
    イエメンの「モカ」コーヒーが、オランダのアムステルダムに定期的に輸入されるようになったのは1663年。増大する消費量に対し、イエメンだけが産地であるコーヒーには、需要と供給に差があった。
    利益が保証されているのなら、アラビアの商人を介在せずに、自分たちで作って売る方が稼げると気づいたオランダ人は東インド会社を設立。自分たちの植民地にコーヒープランテーションを作り始める。(1658年 セイロン、1680年 ジャワ)

    その後、モカ港は衰退。理由は下記の通り。
    ①港の海底に砂漠の砂が溜まり浅くなった。
    ②土地が政治的混乱。1万トンのコーヒーを生産できなかった。
    ③ヨーロッパの莫大な資本で、ジャワ/西インド/中南米の国際商戦に敗れた。

    ◆コーヒーの飲み方。
    元々、イスラムのスーフィズムのコーヒーは苦いものだった。
    ・砂糖を入れるようになったのはトルコ。
    ・コーヒーとケーキ文化は、ヴェネツィア。
     ヴェネツィアは砂糖の貿易の中心だった。  
     (エジプト/キプロス/シリアから入る
     砂糖の玄関口)
    ・フランスでは、カフェオレが生まれる。
     当時のフランス人はコーヒーは心身に悪い
     と思い込み、牛乳で毒性を抹消できると
     考えた。(←ちょっと適当な感じが
     フランスっぽいw)

    ◆ロシア人は、コーヒー派ではなく紅茶派。
    小説「戦争と平和」で、ピエール/ナターシャ/ソーニャたちは、紅茶を味わっていたそう。
    皇帝アレクサンダーのロシア軍が駐屯した際、パリは紅茶ブームになる。その時、多くのカフェはビストロと名称を変えた。これはロシア語の「быстро(ブイストラ) 早く」を意味し、出入りするロシア軍人に紅茶を早く出していたことが由来。

  • 初めて読んだのは大学の時。
    日常的に何となく飲んでいるものを入り口として世界史が学べる、という驚きと感動を感じた本だった。

    その後も近代について考えを巡らせるときには何となく読み返すようになっている。

  • コーヒーっていうと、ブラジルってイメージしかないから、
    夜通し祈りをささげるためのコーヒーって意味で、イスラム社会から始まってるってのは意外だった。
    あと、ブラジルでコーヒーを燃料とした蒸気機関車があった話とか、もろもろ。
    世界史に通じていれば、もっと興味深く読めたのかも。

  • タイトルから推測できますが「珈琲」という物が如何にして世界の歴史(主に欧州)に影響を与えてきたのか?を主題とし、歴史的なアプローチから関係を辿っていく。といった内容になっています。 珈琲自身の発祥は勿論の事、欧州での珈琲定着の速度を爆発的に促したコーヒー・ハウスについての解説もあり、珈琲が好きな世界史好きには自信を持って勧められる1冊だと自分は思います。

  • アフリカを経てイエメンから世界へ発したコーヒー

    精神を高揚させる「ザムザムの黒い聖水」としてスーフィーに愛され、それがヨーロッパに広がり、やがては植民地のモノカルチャーを形成する

    イギリスやフランス革命におけるカフェの役割や、ドイツ人の生活に与えたコーヒーの役割は大きく、たかが嗜好品、とは言っていられない
    また植民地に与えたコーヒープランテーションの影響も大きい

    現在コーヒーが世界中に広まったのはダイナミックな歴史とともに

    これから一杯コーヒー飲むときにそんなロマンを感じられたらいいなあ、と思った。

    後半はややこしくて著者の自己満に近い気がした

  • 欧州中心の歴史に加え、コーヒー誕生のストーリーが著者の粋な文章で、楽しく読めた。たださすがに歴史を理解するのは難しいので、欧州の歴史についてもっと知りたい。

  • [ 内容 ]
    東アフリカ原産の豆を原料とし、イスラームの宗教的観念を背景に誕生したコーヒーは、近東にコーヒーの家を作り出す。
    ロンドンに渡りコーヒー・ハウスとなって近代市民社会の諸制度を準備し、パリではフランス革命に立ち合あい、「自由・平等・博愛」を謳い上げる。
    その一方、植民地での搾取と人種差別にかかわり、のちにドイツで市民社会の鬼っ子ファシズムを生むに至る。
    コーヒーという商品の歴史を、現代文明のひとつの寓話として叙述する。

    [ 目次 ]
    第1章 スーフィズムのコーヒー
    第2章 コーヒー文明の発生的性格
    第3章 コーヒー・ハウスと市民社会
    第4章 黒い革命
    第5章 ナポレオンと大陸封鎖
    第6章 ドイツ東アフリカ植民地
    第7章 現代文化とコーヒー
    終章 黒い洪水

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 世界商品シリーズ、今回はコーヒーです。
    ザムザムの黒い水、知性のリキュールと呼ばれるコーヒーですが、
    この手の世界商品って(紅茶・たばこ・砂糖・綿など)
    プランテーションとか奴隷貿易を抜きにはあり得ないよなーと、
    しみじみ思いつつ読みました。勉強になったです。

    2010/3/1読了

  • コーヒー好きだがコーヒーについては何も知らない私。学生時代の恩師から、最近授業のテキストに使ったとの話を聞き、読んでみることに。

    この本の概要はコーヒーの普及を通して世界史の展開をみるというもの。それにしてもコーヒーと世界史的出来事には図ったかのような一致が!現代文明はヨーロッパ社会によってつくられたものだと思うのが、我々の通説。しかし、もう一歩ふみこめば、中東という存在がそのバックボーンにあることも常識。そして、コーヒーとは、その中東からもたらされ、ヨーロッパを啓蒙した媚薬だったのだ~というのが、この本を読むとよくわかる。

    中東は「千夜一夜物語」が象徴するように夜の文化。もっと言えば、真夜中、深夜の文化。そして夜には神秘が巣くう・・・
    イスラム神秘主義者たちは、夜の深みにひかれ、眠らない方法を考える。そこへ登場したのがコーヒー。これにより、人は眠らなくなる。眠らない文化。そう、現代社会と同じではないか。

    そしてコーヒーは人を醒ます。覚醒。つまりは啓蒙。そう、目覚めの液体だったのだ。

    ヨーロッパにもちこまれたコーヒーは、まずイギリスのコーヒーハウスで、郵便制度、保険、株式市場、ジャーナリズムの原型が生まれ、フランスではカフェで自由・平等・博愛の思想が生まれた。そしてドイツでは・・・

    コーヒーと甘いお菓子の結合が生まれた・・・

    というと、なんか甘ったるい感じだけど、ドイツのカフェ文化は軍人や官僚とともに発展。フランスのような流浪の民が階級を超えて文士にのしあがる場ではなかったというのが、もうすごい目から鱗。

    そしてなぜか筆者の筆もドイツについて書くときは、自虐的、自嘲的。そう、この感じ。ドイツってそういう国だと思う。なんか抜けきらない感じ。体制にくみすことができれば、そんな”いけてなさ”を省みることなく、そのまま盲目的に従えばいい。だけど、そこにくみせない人たちは、そうした何とも言えないモヤモヤ感を処理するために、自分を笑うしかない。そしてそんな自分について考えるしかない。

    ドイツにはまる人って、このいけてなさ、このダサさにコミットするんだと思う。私を含め。

  • ウィットに富んだ小気味いい文章を書く方だなと思った。著者の他の本も読んでみたい。
    東アフリカからアラビア、ヨーロッパをめぐり、植民地支配やファシズムを経て自由資本主義時代の現代にいたるまで黒い血液として世界を巡ってきたコーヒー。世界史の中でその歴史や性質をひもといていくと、コーヒーがどれだけこの世界に直接的にも間接的にも影響を与えてきたのかがうかがえる。今自分がコーヒーを飲む時も、そのアロマの中に歴史の重み、人類の儚さや愚かさを感じずにはいられない。

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著者プロフィール

1946年福島県生まれ。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。新潟大学教養部助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。現在、東京大学名誉教授。専門は、文化学、ドイツ・ヨーロッパ文化論、言語情報文化論。
著書に『コーヒーが廻り 世界史が廻る――近代市民社会の黒い血液』(中公新書、1992)、『パンとワインを巡り神話が巡る――古代地中海文化の血と肉』(中公新書、1995)、『乾いた樹の言の葉――『シュレーバー回想録』の言語態』(鳥影社、1998)、『榎本武揚から世界史が見える』(PHP新書、2005)、『『苦海浄土』論』(藤原書店、2014)、編書に『バッハオーフェン論集成』(世界書院、1992)、翻訳にイバン・イリイチ著/デイヴィッド・ケイリー編『生きる希望――イバン・イリイチの遺言』(藤原書店、2006)等。他にバッハオーフェン及び母権論思想に関するドイツ語論文多数。

「2016年 『アウシュヴィッツのコーヒー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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