日本外交現場からの証言―握手と微笑とイエスでいいか (中公新書 1134)
- 中央公論新社 (1993年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121011343
作品紹介・あらすじ
本書は、英、米、独、中国等の外交政策の背後にあるものを探って、日本外交の足跡と比較しつつ外交の本質を見極めようとする。情報収集と分析、政策決定、交渉と、外交の主要分野の豊富な実務経験から、今後の日本外交の在り方を模索する試みである。
感想・レビュー・書評
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外交に興味があり、本書を購入した。
孫崎享の書いた1993年発刊の古い本であるが、山本七平賞受賞ということもあり、読んでみたかった。
外交とは「異なる価値観の調整」である。
同質性の高い日本ではこの能力は育みにくい。
欧米では日常の中に、「異なる価値観の調整」が織り込まれている。
自分の考えを持つこと。オックスフォード大学では独自の考えを持つことが求められる。
そして、独自の考えであるからこそ、他人に説明する能力も求められる。
外交は、①分析、②政策決定、③交渉、の3つの要素から成り立つ。
①分析→価値観の相違を分析する
②政策決定→調整の枠組みを決定する
③交渉→具体的に調整する
このプロセスにおいては妥協も重要である。
部分的な正解が全体的には最適解でないことがある。大局に立って判断を下せる人材が求められている。
【補足】日本人には構想力が足りない。細々した企画はできるが構想は苦手だ。
例えば、携帯電話。改善を重ねて使いやすい携帯電話を作ることはできたが、スティーブ・ジョブズのスマートホンに全て食われてしまった。
ipod、iphone、ipadを作り、ituneとの連動や、iosをオープンにしてアプリ開発を促した。
こういった壮大な構想を描くことができるのが欧米人である。
日本人は農耕民族であり、「八百万の神」の国である。自然に逆らわず、災害を受け止め、受け流して生きてきた。
他方、欧米の一神教は世界の創造主である。全てを神が構想し、神が創造したと考える。
この宗教観とそこから生じた思考法が、決定的な違いを生むのではないか。そう思えてならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【由来】
・孫崎さん「戦後史の正体」P24
【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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【目次】
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少し固いので、読みにくかったです!
転ばぬ先のツイが入門書 -
外交とはどのような対応や行動思考をするべきかを書かれたバイブルのような一冊。
今の日本の外交がまさに自己中になっている。それが国益となるかどうか?外交を進める上で何を考えどのような発言をしたり行動するのが国益となるかという事を過去の事例や記録を元に説明されている。
今の日本にも当てはまることが20年前のこの著書の中に詰め込まれていると感じた。 -
冷戦終結後の93年に出された本であるが約20年たった現在においても普遍性を有している。それほど日本外交の根本的な問題は改善されていないということである。それは、本分にある「外交とは互いに異なる利益・価値観をもつ国々の中にあって、相手国の異なる利益・価値観を認識し、利益・価値観が互いに対立するときに、どこまで自己の価値観を譲れるかを定め、その調整を図る」ことであるという基本的な認識が国民全体に浸透していないことが原因であると考える。その認識を共通させるためにも国民必読の書のひとつではないだろうか。
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外交の政策決定も人間関係も恋愛も同じなんだな。
ドイツの欧州統合論(=通貨面)が面白い。異なる利害の調整と価値観の変更。