作品紹介・あらすじ
1991年初めから顕著となり、ますます深刻度を増す不況をどう捉えるか。冷戦後の激変する世界にあって成長を旨とする20世紀型工業文明は価値観の転換を迫られ、日本にあっても、かつてその成長の鍵とされた日本型制度・慣行はいまや世界の批判の的となっている。この不況を契機に、日本は公正・共生を目指す成熟化社会へ移行できるであろうか。構造改革と不況対策の兼ね合いのなかで、選択すべき政治の思想が問われている。
感想・レビュー・書評
絞り込み
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バブル崩壊後の日本の不況が深まった1993年に刊行された本です。
かつてエズラ・ヴォーゲルは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を刊行し、日本の輝かしい経済的成功の秘密を、その独特の経営手法に見いだしました。ところがその後、経済大国日本に対するアメリカの態度は一変し、カレル・ヴァン・ウォルフレンに代表されるリヴィジョニストたちの「ジャパン・バッシング」が加熱して、日本的経営の特殊性と閉鎖性が厳しい批判にさらされるようになります。著者の立場は、この両極端の立場がともに陥っている問題点を指摘し、「公正」の理念に基づく成熟化社会をめざすものだと言えるように思います。
かなり以前から、テレビ番組などで新自由主義的な経済政策を推し進める立場と、持続可能な社会の実現をめざす立場に分かれて激しい議論の応酬がおこなわれているのを目にしており、竹中平蔵と金子勝のテレビ番組での討論を、あたかもプロレスでも見るようなつもりで鑑賞していましたが、それぞれの立場の歴史的経緯についてはほとんど知るところがありませんでした。本書から得た最大の収穫は、反ネオリベ派の系譜の一端に触れることによって、それぞれの立場の拠って立つ歴史的経緯についてもう少し詳しいことを知りたいと考えることでしょうか。
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1994年刊行で失われた20年に先立ち書かれている。著者の慧眼に感激で、政治情勢は異なるが現在も有益な視点を提供している。特に、規制緩和が景気浮揚に役立たないこと、雇用喪失をもたらすことは、現在の状況を言い当てている。また、規制緩和すべきなのは好景気の時だが、その時は人々は現状に満足し、わざわざルールを変えないのが通例とも指摘。その上、緩和の対象となる規制は1万以上もあると指摘しつつ、どの規制を緩和すべきかにつき、具体的な内容には触れられていない(もっとも、紙数の関係から無理か)のは残念。
日本における種々の規制が、規制遵守を実現させるために必要となる雇用を創出し、そのために失業率が低く抑えられていたことは、視座に富む。
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理論家による現状分析の本。
話題としては、
カンバン捨てたトヨタ。
大田区町工場物語。
など、時代を特徴づける事項を漏れなく拾い集めている。
何か提言があるかというと、学者の説だけあって具体性が欠けているかもしれない。
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[ 内容 ]
1991年初めから顕著となり、ますます深刻度を増す不況をどう捉えるか。
冷戦後の激変する世界にあって成長を旨とする20世紀型工業文明は価値観の転換を迫られ、日本にあっても、かつてその成長の鍵とされた日本型制度・慣行はいまや世界の批判の的となっている。
この不況を契機に、日本は公正・共生を目指す成熟化社会へ移行できるであろうか。
構造改革と不況対策の兼ね合いのなかで、選択すべき政治の思想が問われている。
[ 目次 ]
第1章 世界が変わり日本が変わった
第2章 平成不況があらわにした日本経済の「構造」
第3章 日本経済の成熟化
第4章 日本型制度・慣行の自己崩壊
第5章 「変革」迫られる経済政策
第6章 これからの政治そして経済
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[ 参考となる書評 ]
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412101166x 211p 1994・1・25 ?
著者プロフィール
滋賀大学前学長。京都大学名誉教授。専攻は計量経済学、エネルギー・環境経済学。
『経済学とは何だろうか』(岩波書店)、『佐和教授はじめての経済講義』(日本経済新聞社)、『レモンをお金に変える法』(翻訳、河出書房)など、著書多数。
「2020年 『12歳の少女が見つけたお金のしくみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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