日本の行政: 活動型官僚制の変貌 (中公新書 1179)

著者 :
  • 中央公論新社
3.53
  • (4)
  • (10)
  • (20)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 169
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121011794

作品紹介・あらすじ

近代国家を担う立法・司法・行政三権のうちでも行政は政治の中枢に位置する。とりわけ日本においては、追いつき型近代化を遂行する過程で行政の果たしてきた役割は大きかった。しかし明治以来の国家目標が達成され、自民党単独政権が崩壊した今日、行政もまた変革を迫られている。即ち、各省間の競争エネルギーを駆り立てた最大動員システムはセクショナリズムの弊害を露呈しているのである。新しいシステムはいかにあるべきか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 行政とは、規範的にいえば「国民全体の奉仕者として、政府の命ずるところにしたがって政策の実現をすること」。明治以来、とくに日本では、立法、司法、行政の三部門のなかで、行政の役割は大きかったと述べている。
    日本の行政が、戦後からどのような変遷を遂げたのか、国際比較しながら論じている。


    [備忘録]
    ・日本の行政は少ないリソースを補うべく、1.地方政府の活用、2.追いつき型のエトスが節約と能率を生み出した、3.パートナーとして種々の団体の利用、4.地方レベルでの町内会や協会の利用を行なっている

    ・民主主義の導入と浸透で国会は厳しく行政批判を行うが、行政は非難されるたびに、対応するために管轄を拡大していった

    ・自治の拡大と分離型分権化の改革は、リソースの不公平を生む可能性がある可能性がある。自然条件だけでなく、財源、リソースを使う能力、責任追及のシステムなどにも地域差がある。

    ・強力な安定政党が存在するとき、官僚制は政治化され、自律性の弱さゆえに影響力を弱める。政治化とは官僚制がその行政的合理性を喪失する危険にさらされているということを意味する。イギリスでは、画一化の原則で政治家に立ち向かった。

    ・多元主義における行政と利益団体の関係には三つの型がありうる。①利益団体が行政の主導権を極小化するか、一体となり一つの圧力となって政治に参加するという形で、利益団体のリーダーシップが強い②行政機関がリーダーシップを持つ場合③官僚と利益団体の関係が均衡している場合。日本は③に近い。

    ・公共事業について、政治家の関与は社会的な役割を持ちうる。利害調整が微妙であり、市場的に行われないからである。談合は違法かもしれないが、社会的には効率的であったようだ。

    ・官僚の倫理に関しては、官僚にその倫理性を発揮させるメカニズムを必要とする。官僚の自己規律において追いつき型近代化のエトスが重要であったことは明らかである。この目標が官僚に緊張を求め、清廉と専門能力を確保させ、他のアクターに対して道義的優位を感じさせてきた。その緊張が解かれたいま、立法部は機能を回復し、官僚の自己機能を促すメカニズムが必要。

    ・市民概念は常に行政の範囲、性格を決める場合の根本規範

  • 追いつき型から国際的に責任のある国家となる上での行政の変革を説く。

  • 105円購入2011-01-16

  • 現在に通じる行政の役割、あり方とその変化。
    完全はなく、時代と他者との関係において、より良いものであることができるか。

    ・小規模な国家行政と地方行政、外郭団体、民間団体の最大動員(監督・指導)
    ・セクショナリズムのメリット・デメリット(情勢変化)
    ・政官関係(活動量と自律性)
    ・行政改革と地方分権

  • 村松さんの作品、

  • 1994年の著であるから時代も変わっているとしても、行政の枠組みに大きな変化はなく、ここで指摘される点は、今も現存。

  • 【読書その39】本書は、1994年に長きに渡った自民党単独政権、55年体制が崩壊した後の行政システムの在り方について論じた本。
    著者である京都大学名誉教授の村松 岐夫は、日本の行政の大きな特徴として、最大動員システムをあげる。それは人的リソース、資金、制度等のあらゆるものを、目的に向かって、能率的に動員するというもの。

    省庁ごとであるものの、行政組織を超えた民間組織を含むネットワークの構築により社会全体のリソースを最大動員するものである。

    欧米諸国に追いつくためには極めて合理的なシステムであり、時代の要請に応えながら一定の機能を果たしたと一定の評価をするものの、それが省庁間のセクショナリズムを構築し、効率重視のため、他の価値への配慮不足があったという。

    本書では、官僚制度の構築から、その最大の特徴である最大動員システムが成立した経緯や背景、その変貌過程、その課題について論じている。

    本書が発行された94年からすでに18年が経過し、情報公開法や省庁再編、政権交代など、行政をめぐる環境も大きく変わった。しかし、政と官の関係など、現在でも議論になっているものも多く、本書の内容は古くて新しい内容である。

  • 94年出版と省庁再編前であり若干古いですが、日本の官僚がどのようにリソースを調達し行政活動を行っていたかを歴史・国際比較(主にアメリカ)・国内比較といった軸で分析しています。頭の整理になりました。

  • 日本の官僚の政策について書かれている本です。
    許認可行政…ネオリベの視座に立ったら断罪されるべきことなんだろうけど、純粋に「日本」のことを考えるなら賛美されるべきだと思った。

  • 天下りがあるからこそ、官僚の汚職が少ないって・・・

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

京都大学名誉教授。京都大学法学部卒業。京都大学法学博士。

「2018年 『公務員人事改革 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村松岐夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
J・モーティマー...
ヴィクトール・E...
西尾 勝
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×