ガヴァネス(女家庭教師): ヴィクトリア時代の余った女たち (中公新書 1204)
- 中央公論新社 (1994年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121012043
作品紹介・あらすじ
一九世紀英国で、未婚の女性がレディの体面を保ちつつ就ける仕事はガヴァネス-住み込みの女家庭教師-以外にはなかった。低賃金で家具の一部ででもあるかのように扱われ、縫いものまでさせられる日々。当時の日記や求人広告、ガヴァネスをヒロインにした『虚栄の市』『ねじのひねり』、自身がガヴァネスだったC・ブロンテの『ジェーン・エア』などの文学作品を通して、彼女たちの意識と、それを取り巻く社会の諸相を描く。
感想・レビュー・書評
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シャーロック・ホームズなんかの英国の小説によく登場する「女家庭教師」という職業は、現代日本の「家庭教師」のイメージからは、あまりピンとこない。この女性を英語では「ガヴァネス」という。そうした女性像を、当時の資料や当時のフィクション小説から描きなおしてみた本。使用人よりは格上だけど、家族とは一線を画すという半端加減が、時には悲壮なエピードを生んでいたようだ。一定階層以上の社会において、扶養される側の女性が、自ら糊口をしのぐには、この職業しかかなったというが、今にして思えば、大変な時代である。この反動でフェミニズムという流れが醸成されていくという構図らしい。
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“構造的強者の立場にいる人間”
なんでしょうね。
ヴィクトリア時代の「余った女」に関してのレポートを残した人間は、
――そして、この著者の方も。
「遠い時代の遠い国の物語にみえるかもしれない。」!?いえいえ、現代日本とさしてかわらんな~ と、思いましたよ。
一番おもしろかったのは『ジェイン・エア』を通しての考察。
「経済的自立は精神的自立の当然の前提であろう」
「扶養される存在としての妻の座の拒否」
ジェインかっこよすぎる。さすが名作。
そんな女を愛したロチェスター氏もあっぱれ、おしむらくは、彼は未婚の女性による創作の世界の男であることだろう。
現実のガヴァネスたちの生き様をみてこれだけは言えると思ったのは、自分の力に拠るものでないプライドは生きるのに邪魔なだけだな、ということ。
ただ、そのプライドにすがるのが”悪いこと”とは思えない。
ひとは誰しも弱いものです。(自己弁護か?)
それを押し付ける社会にはこれっぽっちの敬意も払えないが。 -
とても面白かった。ビクトリア時代のイギリスを知る、とてもいい一冊。
あの価値観の時代に、植民地経営に男が出かけるということは、こういうことなんだ、と改めて歴史は男によって書かれたんだと認識させられた。
特に、彼女たちの職場での、奇妙に中途半端で微妙な孤独さというのは昨今の非正規労働者が増えてきている日本でも理解され、共感を得やすいだろうと思われる。 -
武田ゼミ