クレムリン秘密文書は語る: 闇の日ソ関係史 (中公新書 1207)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121012074

作品紹介・あらすじ

一九九一年末のソ連邦解体後、新生ロシアは鉄の扉に覆われた秘密文書を積極的に公開した。日本関連の文書も明らかになり、秘められた真相公表が日ソ関係史の書き替えを迫っている。本書は、戦前の社会に衝撃を与えた女優・岡田嘉子の越境亡命事件、日本共産党と日本社会党のソ連資金疑惑、北方領土など日ソ交渉の舞台裏をソ連公文書を基に解明し、理想と幻想の国家・ソ連に憑かれた日本人の悲喜劇を描くノンフィクションである。

感想・レビュー・書評

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  • 岡田嘉子亡命の顛末が白眉。

  • ソ連邦崩壊後、大量の機密文書が公になった。日本共産党や
    社会党(現・社民党)は、ソ連共産党からの資金援助を必死に
    なって否定するが、ロシアの公文書館に保存された膨大な文書
    からは日本への資金流入が明らかだ。

    ソ連共産党からの援助資金はふたつの党の選挙資金として活用
    された痕跡がある。海外からの政治献金は法に触れるので、
    ソ連のスパイだったとして100歳にして除名処分になった
    元名誉議長・野坂三参個人が勝手にやったことにしちゃって
    るしなぁ。

    未だ解決の糸口さえ見えぬ北方領土返還にしても、日本側からの
    2島返還の提案があったとか、ソ連が売却しようとしていたなんで
    話も出てくる。ロマノフ王朝時代に二束三文でアラスカを売却した
    国だから、売り払おうとしてても不思議じゃないな。

    日本がいかに旧ソ連に振り回されたかが分かる1冊である。

    さて、戦前の大女優・岡田嘉子と演出家・杉本良吉が、樺太国境を
    越えて旧ソ連に亡命を試みた「恋の逃避行」。しかし、杉本は日本の
    スパイとして銃殺され、嘉子も強制労働収容所に送られる。

    日本に残された杉本の妻・智恵子は、どんな思いでこの知らせを
    聞いたのだろう。肺結核を患っていた智恵子は、ふたりの越境から
    9ヶ月後に亡くなっている。合掌。

  • 1994年刊行。著者は時事通信社外信部記者。ソ連崩壊後公開された秘密文書。その中から判明した日ソ関係の裏面史を解説。テーマは、①岡田嘉子ソ連亡命事件、②日本共産党のソ連からの資金提供疑惑、③日本社会党へのソ連からの資金提供疑惑、④その他(北方四島売却・貸与計画、サンフランシスコ講和条約不調印秘話、日ソ共同宣言時の秘密交渉、シベリア抑留、終戦時の北海道上陸計画、日独伊三国同盟+ソ、北方二島返還秘密提案など)。

  •  クレムリンの秘密文書から、日本とソ連の関係を暴いていこう、という本です。最初は、女優が愛人とソ連に亡命して、かなり苦しい状況にあったことが秘密文書から明らかになった、という話で、はっきり言ってそんなこと暴いてどうするのよ、という感じはありました。もっとも、途中からは共産党・社会党とソ連との関係、それも表ざたにはできない関係を秘密文書から暴いていくという感じで、興味深く読めました。

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著者プロフィール

(なごし・けんろう)
1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語科卒業。時事通信社に入社、バンコク、モスクワ、ワシントン各支局、外信部長、仙台支社長。2012年から拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授。現在、拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。

「2022年 『ゾルゲ・ファイル 1941-1945』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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