理科系のための英文作法: 文章をなめらかにつなぐ四つの法則 (中公新書 1216)
- 中央公論新社 (1994年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121012166
作品紹介・あらすじ
文法的に正しい英文でも、つながりが良くないと明快な文章にはならない。本書は、コンピュータで開発された文章解析技術と、言語学の新文野である「談話文法」が明らかにした文と文をつなぐ画期的法則を紹介する。この法則は、自分で書いた英文を客観的に眺め、自然な英文をつないでいくための道標となり、気のきいた言い回しよりもまず英文で主張を明確に表現しなければならない多くの人にとって、すぐに役立つ道具となるだろう。
感想・レビュー・書評
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気づきの本
本書でいいたいのは、(理科系の)英文を書くためには、英単語と、英文法だけをやっていてはだめであり、文と文とのつなぎ方のための法則を学ばなければならないといってます。
<ポイント>
・文中の語順は、古い情報から新しい情報へとなるように並べるのがよい。
・道しるべを適切に配置することで、道しるべがない文章より読みやすくする
・接続詞を使えば簡単だが、二つの文章を結合することとなるため、長文となり勝ちである
・そこで、副詞(あるいは副詞句等)をつかえば、二つの文章を無理なく並べることができる。
・ここでいう、副詞(副詞句)は、文全体を修飾するものを使う。
・副詞、副詞句は、接続詞よりははるかに多く、いろいろなニュアンスの意味を伝えることができる。
・文章を結合する道しるべの例がたくさん紹介されています。”帰結”を表す道しるべ
①帰結、②理由、③逆接、④焦点、⑤情報の追加、⑥仮定・条件、⑦動機、⑧類似、⑨例、⑩言い換え、要約、⑪話題の転換、⑫古い情報の確認、⑬先を示す、⑭共通の座標軸に対する位置、⑮列挙
・文は文法的な構造をもっている。その構造を書き手が表したいものを選ぶ。誤解を受けないように不適格な言語表現にならないように注意する。
・動詞は5文型どころか、たくさんある。目的語として取りうる how+to 不定詞 , to 不定詞、 that節、why節等があり、動詞として目的語とできないケース等がある
・文書を作るのに、切りのいいところで、やめてはならない。頭出しをしてもう少しかけば、次に出だしの文書をひねり出す手間がすくなくなる。
・書き手が文章に与えた視点をころころ変えない。能動態と受動態を常に対象xから見た視点に固定すれば読み手からみてわかりやすい。分詞構文や、to不定詞なども交え、視点を変えるとわかりにくい文書となることを示している。
目次は以下の通りです。
第1章 談話文法を利用しよう
第2章 話の道筋に道標を
第3章 中身に合った入れ物を
第4章 動詞が支配する文型
第5章 古い情報を前に
第6章 視点をむやみに移動しない
おわりに
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この本は最近読んだ中でも、かなりヒットです。実用的です。
受験から論文作成までの英語について疑問に感じていた点をまとめてくれた。「安全な文章」を書くためにはとても役立ちます。
目新しいと思ったことでも、ちゃんと考えている人は昔から考えているということもよくわかった。 -
すごい昔から積読していたが、ボリュームもさほど無いので隙を見て一気に読んでみた。
タイトルから英作文の話かと思いきや、半分以上は日本語の文章の書き方で、それもいわゆる「ロジカルライティングをちょっと劣化させた考え方」プラス「著者の専門であると思われる言語解析の観点」という印象。
しかもこの「観点」には恐ろしく大量の仮説が設定されていて、「この仮説が正しい保証は無いのだが、初心者が書く際には従うべきである。」というスタンス。
いやいやいや、これじゃ受験英語と同じじゃないっすか・・・。
というわけで内容の目新しさや気づき、実用度、どれもイマイチに感じざるを得なかった。ちょっと残念。 -
高校英語で壁にぶち当たり、ひょろひょろと逃げて通ってたけど、そろそろそんなこと言ってられない。
文を書くには、辞書使えば問題ない。しかし、文章となると・・・という人にお勧め。今でなんとなく書いてきたが、これから少しはマシになりそう。
こういうことわかってないのは本当に理科系だけなの?
あ、でも、出てくる例文は理科系だった。
買おうかしら。 -
実は目次を見ると著者の主張が殆ど分かってしまうのだが、この本を必要とする読者層の場合、何が自然で何が不自然なのかを、例文を実際に比較して理解する必要があると思う。個人的には、これまで経験的に感じていたことを再確認できた、という意味で有意義だった。
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英文作法となっているが、2章の前半くらいまでは「どう書くか」とほとんど同じ。
面白いのは3章からで、文章の構造に関して日本語英語問わず成立する性質を仮説として立て、それを基に日本語ではこういう構造となる、続いて英語ではこうなるという形で話を行い、極めて論理的に、科学的な文章を構成する方法を説明している。
例えば、5章では
「仮説5.1 文章の中の各文は、古い情報を引き継ぐ部分と、新しい情報を付け加える部分からなる。このとき、古い情報を引き継ぐ部分が早く表れる文ほど読みやすい。」
という仮説を立て、the、this、関係代名詞等での情報の引き継ぎ方の例文を示している。
著者のスタンスはあくまでも科学に関するわかりやすい文章を書くことであり、別に仮説が絶対に正しいということを立証することではない。仮説という簡単なルールを意識することで、理系として最低限度必要なわかりやすい文章を書くことができるようになる、ということである。
確かに漫然と他人の書いた文章をまねするより、文章を書く上で一般的に成立するルールを意識して書いた方が文章を書きやすい。特に表現に悩んだ時や、自分の書いた文章に違和感を感じた場合、この本に掲げられている仮説を基に推敲を行えば、理系らしく論理的に正しい表現を導けるだろう。
文章の作成能力はアートではなく、訓練により習熟できる技術である。そして小説家や芸術家でない限り、仕事や学問で必要とされる文章のほとんどは論理的なものである。であれば文系理系に関係なく、大学生か、できれば高校生ぐらいから、この本のような論理的な文章を書く方法をもっと教えた方が良いのではないかと感じた。 -
皆さんは、ある程度のまとまった文章を英語で書いたことはありますか?もしあれば、どのようなことに気をつけて書いていますか?なければ日本語でも構いません。何に気をつけていますか?
日本語・英語を問わず、我々が文章を書く際に気をつけなければいけないことは「伝えたいことが読み手にきちんと伝わるか?」ということでしょう。再現性が重要視される科学論文(特に理科系の論文)では、読み手が論文を読むだけで、論文の内容を再現できなければいけません。これを可能にするには文章に過不足があってはいけません。実際に書いてみるとわかるのですが、過不足がないように文章を書くのは簡単なようで実は結構難しいです。まして、外国語である英語を使って文章を書かなければいけないこともあるのです。その難易度たるや。
ではここで、英語で文章を書くと仮定して、何がそんなに難しいのでしょうか?考えられる原因は3つあります。1つ目は、文章を構成する一文一文を正確に記述できないという問題。2つ目は、文と文をつなぎ、段落にまとめていくことができないという問題。そして3つ目は、段落を組み合わせて、論理的な文章にできないという問題です。この中で、最も苦戦するのは2つ目の「文と文をつないでいく」ことかもしれません。なぜならば、1つ目の一文を正確に記述することに関しては、学校で習った単語・文法を辞書やインターネットを参考に丁寧に記述していけばできると思います。さらに、3つ目の段落を構成し、文章にするという問題については、方法論を学校で習った方も多いかもしれません。またインターネットやYouTubeなどでも、わかりやすいやり方を知ることができます。このように文章の細かい部分(一文の記述方法)と大きな部分(文章全体の構成方法)については、たくさんの情報が出回っているにもかかわらず、真ん中の「文同士をつないでいく」ということに関しては、案外ノーマークなのです。しかし、この真ん中の部分も他の2つと同様に非常に重要です。一文一文がかなり正確に書けていて、文章構成もばっちりであるにも関わらず、ところどころ話の方向性が見えなくなったり、不必要な文が突然現れたりする文章を書いてしまうことはありませんか?これは。一文一文のつなぎ方が良くないことに起因します。
では、「文同士をうまくつなぐ」はどうすれば良いのでしょうか?その答えに繋がる考え方が、今回紹介する「理科系のための英文作法 文章をなめらかにつなぐ四つの法則」にあります。「話の道しるべの書き方」や、「古い情報から新しい情報へのつなぎ方」など、この本では実例をふんだんに用いながら、意味が無理なく伝わるなめらかな英文の書き方を紹介しています。タイトルに「理科系の」「英文」とありますが、「どんな人でも」「日本語でも」参考になること間違いなしだと思うので、現在文章の書き方で悩んでいる人がいらっしゃいましたら、ぜひご一読ください。きっと助けになると思われます。
(ラーニング・アドバイザー/環境科学 SASAGAWA)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/volume/1437598 -
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https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99730067